この方に私の河童がウケなければ駄目だ、と思っていた方から拙著を褒めていただいた。何よりも嬉しい。表紙の三郎を何度も見てしまう、と。表紙はやはりこれで良かった。 GYAOで日活特集をやっている。それで判明したのは、私は日活があまり好きでないことである。社の作品傾向が一変してからは、また別の話であるが。 ついに観ることができたのが『にあんちゃん』(昭28)である。私が小学校3年の時、担任が産休で、かわりに転任してきた女性の田中先生という方が、『にあんちゃん』の話をしていたことがずっと記憶にあった。田中先生は一年間だけだったと思うが、私があまりに本好き、とくに片っ端から図書室の人物伝を読んでいるのを知っており、転任される時、世界偉人伝を内緒で下さった。人物伝好きは未だに続いており、それがこうじて立体化するに至っているわけである。 九州の廃鉱寸前の村が舞台である。父親の葬式から始まる。あまりにも貧しい兄弟。小学生の次男がにあんちゃんで、姉の松尾嘉代はまだうすボンヤリとした顔の少女。村の衛生状態の改善など奮闘する吉行和子がはつらつとして美しい。朝鮮人役の北林谷江、小沢昭一、自分のところも食べるのに精一杯なのに兄弟を助ける殿山泰司など今村昌平映画の常連が皆素晴らしい。小学生で重労働をし、居候の妹を少しでも楽にしてやろうとするにあんちゃん。かつてはこういった中から足腰の強い横綱や強肩の大投手が生まれたのであろう。最低の暮らしながら最後のにあんちゃんのセリフに感動。石炭を掘っていた時代の日本が描かれている。原発が大問題の今日。今こそ観るべき映画であろう。
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