明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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金魚に餌をやりながら
制作
/
2020-07-15
金魚に餌をやり過ぎてはいけない、と思いながらつい。昭和三十年代、当時はご馳走イコール、カロリーであった。食糧難を過ごした親には食べる程褒められたものである。親には私が、この金魚同様に見えたのだろうか。金魚がパクパクやっている所を見たい。なのでほんの一つまみだけ、何度もやってしまう。そうすると、泡と餌を間違えるのか、泡をパクパクやるのもいる。それを見ていて、空気を飲み込んで、腹を膨らますことは出来ないものか、と何度か試したのを思い出した。制作以外のことはできるだしたくなかった。 再来年、ふげん社で予定される、『寒山拾得展』は、私の個展デビュー四十周年となる。その第一回は、一日豆腐一丁と白菜を、夏に猫舌を利用し鍋にして一ヶ月食べた。十キロは痩せた。手伝いに来た友人は、積まれた豆腐のパックがいつ倒れるかと思って見ていたという。 父は設計技師から脱サラして商売を始めた。専業主婦のはずだった母はお陰で父が亡くなった後も仕事を続け、つい数年前まで苦労をしていた。父の葬式を済ませ、遅くまで仕事を手伝いながら、脱サラするといったとき反対しなかったのか、と聞くと、やりたいというし。としかいわない。そもそも東京に出てきたことが間違いだったんじやないか?と二人して笑った。 そんなこともあり、私に家庭があったなら、作家シリーズを辞めて寒山拾得をやる、とはおそらく言い出せず、「それじゃ人間ですらないじやないの!」と言われるのを想像して金魚に餌をやっていたに違いない。いやそれ以前に、向いてもいない陶芸を続け、苦しむ一生だったに違いなく、この金魚も違って見えただろう。
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