明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

一日  


間もなく金魚は来るだろう。水槽からはすでにチョロチョロと水の音。これは心地が良い。めそれにしても殺風景である。長押にあるのは、本物は百に一つといわれる人物の扁額の書、当然九十九の口だと思われる。トイレの横には、ジャック・タチのぼくの叔父さんのフランス版ポスター。もう少し彩りが欲しい。何度か自作品を、と思ったが、どうもいけない。川瀬巴水の版画のレプリカを飾ることにした。深川の水辺を描いた作品などあるし、随分教えられた。 本はなるべく図書館で、と昨日書いたばかりだが、筑摩書房の禅の語録13『寒山詩』が届く。もっと新しい寒山拾得詩を持っていたが、引っ越しの際に置いてきてしまった。まだその気になっていなかったのが判るが、同じ物を買うのもしやくだし、図書館で見て欲しくなった。これから二年間は読み倒すことになるだろうと入手した。奥付を見ると昭和45年11月15日初版第一刷発行とある。三島が自決する十日前。森田必勝と篠山事務所を訪れ「どれが良い?」なんて嬉しそうにやっていた頃だろうか。生首写真もあったという。3日後には、まさか出版が50年後になるとも知らず“男の死”の契約書に実印を押した。 私もいちいち奥付なんて見てるんじゃない、こんなことになるんだから。

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