一番難航しそうな『虎渓三笑図』と『慧可断臂図』の背景はほぼイメージが浮かんだ。人間は頭に浮かんだ物を作るように出来ているそうである。たしか脳科学の養老孟司がいっていたのだが、これを聞いた時、様々なことを思った。私が妙な物を作りたくなるのも、自然物である私の頭に浮かんだからであり、私は全く悪くないし、責任もない。私にとって悪いことというのは悪気があった場合のみのことをいう。 頭にさえ浮かべば、生身の私は苦労するにしても、気が付けば必ず目の前に出現する。一つには、要らない知識、技術を遠ざけて来たのも功を奏した。眼と手のバランスが取れ、眼高手低で苦しむこともない。励んだり勉強したりも、すれば良いという物ではない。昨年、慧可断臂図用の雪を撮りに行く前日、何も描かないことにより雪としよう、と思い付き撮りに行くのを辞めた。後で狩野派の絵師も同じことをやっているのを日曜美術館だったかで知った。思ったようになるのか、早くやってみたい。