明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



写生が幼い頃から嫌いであったので、初個展より架空の人物で始まった。今思うと独学我流者の浅はかな思い込みだったが、人間は実際こうなってはいないかもしれないが、私がそう思い込むには理由があるはずだ、と頑なに、自分の中に在るイメージだけにこだわり、本当のことを知ってしまうと私らしさ、個性がなくなってしまう、とデッサンどころか、本当のことを知ろうとしなかった。それが実在した作家シリーズに転向した際は、写真を参考に制作することになるので、もう戻れない、と覚悟が要った。 ところで日本人が何故陰影を描かなかったのか、決定的な説は未だに知らないが、荒俣宏さんが書かれていた話で、大航海時代、ある島に帆船が漂着する。しかし島の原住民は、そんな大きな船や白人を見たことがないので、歩いていても白人を認識できない。この話が大好きである。日本人が陰影を認識していなかった、などとは思わない。むしろ日本人には陰影など描くに値せず、もっと肝心な描くべき事や物があったのではないか。それが炸裂しているのが浮世絵のような気がしている。



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