仙人には様々な種類があるようだが、物売り、乞食、医者などに紛れていたりするらしい。会える可能性が高いのが町の居酒屋だそうである。仙人は酒好きと相場が決まっている。 30年以上通った煮込み屋の、客の中に仙人が紛れていたとしたら、あれだ、というのが居た。グレーのソフト帽を被り白のワイシャツを着た、70前後の痩せた老人である。仕立て屋だと聞いた。夏の場面しか記憶にないのと、人と話している所、店への出入りするところの記憶もなく、気がつくと静かに飲んでいる。何故覚えているかというと、いつもお銚子に冷やしトマトで飲んでいる。いつの間にか来なくなったのだが、ところが店の人や常連に聞いても誰も知らない、という。仕立て屋というのは誰かに聞いたはずなのだが。むしろ、仕立て屋の幽霊だ、と言った方が話は早いかもしれない。上半身だけ見ると中年のサラリーマンで下はスカート穿いてる生き霊?もあらわれたから。何が現れても不思議ではない。