『慧可断臂図』は達磨大師が洞窟内で壁に向かって座禅を組んでいるところに慧可が教えを乞う。その覚悟を己の腕を切り落とし示す。後に弟子入りを許され、それにより禅が中国に伝わることになる。 積雪の日に、洞窟の外にいる慧可に陰影がないのは当然として、洞窟内の達磨に松明だか油灯の灯りが当たり、陰影深い達磨と慧可とのコントラストもドラマチックだ、と一瞬考えたが、達磨大師は面壁座禅を九年の後、手足が腐り落ち、例の姿になる。そんな大師が、洞窟内が暗いから、と火を灯すか?と却下。洞窟奥にいる分、暗くするだけにした。 撮影前に、未だ脚本に手を加えているが、人形手持ちの私の大リーグボール1号は、三脚など一切使わず、街を歩きながら手ブレもかまわず、歩行者も画面に入れてしまえ、と撮り歩いたが、3号になり、脚本通りキッチリとアドリブは許さず、という手法に至った。いってみれば深作欣二から小津安二郎くらいの変化だ。変わるなら生きてるうちである。