知人の紹介で、何かの発表会のおりに横尾忠則さんに、私が中一の時に配本が始まった講談社の江戸川乱歩全集の挿絵にサインをいただいたことがある。初めての大人向け乱歩であったが、こんなイメージにピッタリな挿絵があるのか、と思った。お会いした時、私が持っていった金のマーカーが、ポタリと横尾さんのつま先に垂れてしまった。私の記憶通りなら、この作品はあまり記憶にないようなことをおっしゃっていた。こんな傑作描いて忘れることなんてあるのだろうか? 先日横尾さんのツイートを読んだ。『昔、禅寺に1年間参禅した経験からか、考えないことが苦痛にならない。考えないことほど、至福な時間はない。自分にとって考えるのは地獄だけれど考えないのは極楽だ。』考えるな感じろ。さすが現代美術館で寒山拾得を発表されていた方である。そのとき、あの乱歩作品もちゃんと展示されていたそうだが。 私は禅寺というと昔南禅寺で、女の子と湯豆腐を食べたのと、岐阜の製陶工場の旅行で永平寺に行ったくらいである。ツィートを拝読して思った。私はこのまま坐禅一つせず、作品制作だけで何を、どこまで得られるかやってみよう。