制作する場合、アイデアスケッチはしない。今回は作品も多く、久しぶりにスケッチブックを買ったのだが、最初の悪戯描きで決まってしまい、以後それを越えられない場合が多い。ファーストテイクが一番なんてけっこうなようだが、チャーリー・パーカーじゃあるまいし、もっと良いものが浮かぶ可能性が失われているのではないか?と思ってしまうのである。しかしそう思ってあがいても大抵はダメである。本日もゴミ袋を掻き回し、捨てたクシャクシャの悪戯描きを助け出す始末であった。 本来墨絵の画題である『慧可断臂図』を写真的広角調に撮ってみよう、と思ったのは、考えてみると、ひとえに〝顔は人形の命です”だからである。そう思うと絵師でもなく、人形作って写真を撮ろうという私の一番の特徴はそこであろう。これから作る山水風景、その造形も撮り方も、すべて表情を生かすためにある。絵師の中にもそんな人物がいたかもしれないが、人形制作者である私ほど極端ではなかったろう。そうした40年の旅路の果てが寒山拾得とその仲間たち?ということであろう。