夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

「孤高のメス」(試写会)

2010年05月10日 23時45分49秒 | Weblog
 1989年が舞台。ある田舎町の市民病院に赴任してきた医師・当麻。その市民病院では大学病院から医師が派遣されているものの、意志は低下し、難しい手術の患者は1時間半かかる大学病院に搬送し、患者の助かる命も助けられない状態だった。しかし、目の前にいる患者を助けようという当麻を目の当たりにし、医師も看護婦も医療に対する意識が変わっていく。
 そんなころ、医療改革を掲げる市長は、議会途中に吐血し病院に運ばれきた。市長は、肝臓移植手術が必要な病状。しかし、手術の方法は生体肝移植しかない。そこに、完全脳死状態の患者の家族が、臓器提供を申し出る。「脳死肝移植」のタブーと向き合うことになる当麻だが…。
 当時はまだ、脳死による移植は法により認められておらず、生体肝移植による手術で、ドナー自身にもリスクが高かった。過去の医療が現在につながっているのは明らかで、医療は日進月歩だ。医療ミス、地域医療など、約20年前の話なのに、とても今日的で胸を打つ。医療において変わったものと、変わらないものとは何なのだろうか?問題を提示されている気がする。
 医師・当麻を演じるのは堤真一。当麻の赴任により、人間的にも成長していく看護婦・中村に夏川結衣。他にも実力派の演技人を揃え、重厚な見ごたえのある作品。興行を見込めるチャラチャラした役者が出ていない分、物語に引き込まれる。それが結果として、良作となっている。
 原作は現役医師でもある大鐘稔彦。監督は『クライマーズ・ハイ』で脚本を担当し、『ミッドナイトイーグル』などで監督を手掛けた成島出。
(6月5日公開)