2018年8月5日のGetUpEnglishであのサノスのおそろしい考えの元になったといわれるThomas Robert Malthus(1766 1834)の経済思想を紹介した。
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/1313b45e7e0fd55b041ff72bf6639add
今年読んで最高に興奮した本の1冊に、モール・モーランド『人口で語る世界史』(文藝春秋)があるが、本書を読むと、「産業革命によってイギリスは人口の拡大によって反映し、一方優生学の思想をとるドイツは人口減に陥り、衰退に向かった」ことが実にわかりやすく書かれている。
だが、まさしくサノスが「指パッチン」で宇宙の人口を半分に減らそうとしたように、まさに産業革命(1760 年ごろから 19 世紀初頭にかけて, 英国を中心として機械・動力などの発明をきっかけに起こった社会組織上の大変革)のさなか、トマス・ロバート・マルサス(1766 –1834))はすでに1798年に自著で人口減の必要性を説いていたのである。
In his 1798 book An Essay on the Principle of Population, Malthus observed that an increase in a nation's food production improved the well-being of the populace, but the improvement was temporary because it led to population growth, which in turn restored the original per capita production level. In other words, humans had a propensity to utilize abundance for population growth rather than for maintaining a high standard of living, a view that has become known as the "Malthusian trap" or the "Malthusian spectre".
1798年の著書『人口論』でマルサスが述べたのはこういうことだ。国家の食糧生産の増加によって大衆の幸福度は増すが、一時的なものに過ぎない。なぜならこれによって人口増加はもたらされるものの、ひとり当たりの生産レベルが元に戻ってしまうからだ。言葉を換えれば、人類の傾向として、生活の高水準を維持するのではなく、人口の爆発的増加を利用しようとすることがある。この見識は「マルケスの罠」もしくは「マルケスの亡霊」として知られる。
observeはこの場合は格式的な言い方で、「(意見・考えとして)…を述べる、 言う」で、以下のように使われる。
Shunichiro observed that his company should take the necessary measures immediately.
「俊一郎は会社は必要な手段を直ちに講ずるべきだと述べた」
in turnは「つづいて」。上のように訳せば、その意味は出ると思う。
restoreは「元に戻す」
per capitaは「一人当たり(の)」
なかなか訳すのはむずかしいかもしれないのでので、よく見てほしい。
『人口で語る世界史』には人口の増加が歴史的にもたらしたことが実に明確に書かれている。人口を通じて人類が歩んだ歴史を考える刺激的な1冊だ。これを読むと、「今考えると、サノスの言葉には一片の真実が含まれていた」と思ってしまうかもしれない。
人口で語る世界史
ポール・モーランド 渡会圭子
定価:本体2,200円+税
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163910857