GetUpEnglish

日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

GetUpEnglishについて

毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2025 Uesugi Hayato(上杉隼人)

PLURAL

2019-12-23 08:19:15 | P

 英日翻訳をしていて、「複数形」(plural)になっている名詞をどう訳出したらいいか悩むことがよくある。もちろん、複数形をすべて日本語で表現できないが、その意味と感じをなんとか出したいことは常にある。特に風景や状態の描写で使われている場合は、それを日本語に出したいと思う。
 本日のGetUpEnglishはこの問題を考えてみたい。
 例えば以下の表現はどうか?

○Practical Example
One sunny morning I woke and pushed aside a corner of the blinds. Above the frosted, sun-dazzled bottom of the glass I saw a brilliant blue sky, divided into luminous rectangles by the orderly white strips of wood in my window.

  これはSteven Millhauserの短篇 “Snowmen“にある表現だ。さて、このrectanglesをどう訳したらよいか? 
大事なのは、この単語だけで考えるのではなく、この語を含めたdivided into luminous rectangles by the orderly white strips of wood in my windowからイメージを思い浮かべてみることだ。特にdivided into...につながっていることに注目したい。

●Extra Point
もう一例。以下の表現はどうか?

◎Extra Example
From the flat roof of the chicken coop hung a row of thick icicles, some in sun and some in shade. They reminded me of glossy and matte prints in my father’s albums.

glossy and matte printsは「つや出しの写真と艶消しの写真」であるが、このprintsの複数になっている感じは出したい。
 さて、どうしたらよいか?
 これはスティーヴン・ミルハウザーの訳者柴田元幸の訳をみると、「なるほど!」と思うはずなので、ぜひご覧いただきたい。どちらも最近うれしいことに復刊になった『新装版 柴田元幸ハイブ・リット』に収録されている。この本のすごさは
 ①バリー・ユアグロー、レベッカ・ブラウン、ケリー・リンク、スチュアート・ダイベック、スティーヴン・ミルハウザー、ポール・オースターと現代アメリカを代表する作家たちの短篇が読める。
 ②英文対訳で読める。
 ③英語表現の注も充実している。

といくつもあるが、もうひとつ強調しておきたいのは、

 ④それぞれの作家が朗読している音声がダウンロードで手に入る。

ということだ。
 ぜひ年末年始の休暇中に本書で英語のリーディングも翻訳もそしてリスニングも鍛えてほしい。


新装版 柴田元幸ハイブ・リット
ALCO 無料アプリ 音声DL&再生がスマホでできる!
価格(税込)
2,420円
商品分類レベル付属品
書籍英語中級~-

商品構成 本(B6変型、縦182×横131×厚さ20mm、184ページ)+ダウンロード音声106分収録
著者 柴田元幸、バリー・ユアグロー、レベッカ・ブラウン、ケリー・リンク、スチュアート・ダイベック、スティーヴン・ミルハウザー、ポール・オースター
発売日 2019年12月17日
商品コード 7019059
ISBN 9784757433861
関連商品 「ハイブ・リット」シリーズ
商品詳細
日本を代表する翻訳家・柴田元幸が偏愛する作品を選び翻訳し、アメリカ作家自身が朗読。海外文学を楽しみながら多面的にすぐれた英語に親しめる、朗読・原文・翻訳がセットになったハイブ・リットな本書で、ぜひ、一生モノのあなたの物語を見つけてください。

【対象レベル】
中級以上


「文学ほど、楽しむことと学ぶことが不可分に結びついている素材はほかにない」
(『柴田元幸ハイブ・リット』編訳者前書きより)

「ハイブ・リット」とは、hybrid(混成の)とliterature(文学)の合成語で、海外文学を楽しみながら多面的にすぐれた英語に親しめる、朗読・原文・翻訳をセットにしたシリーズの呼称です。
『柴田元幸ハイブ・リット』なら、
1) 柴田元幸が敬愛する作家の短篇小説を原文(英語)のまま読めます。
2) 小説の作者自身が朗読する英語を聞けます。
3) 日本を代表する名翻訳者の訳で英語のニュアンスを味わいつつ学べます。
ハイブ・リットで、ぜひ、心に響く物語、そして、作家を見つけ、あなたを海外文学へ導く扉を開けてください。

収録作品:※朗読はすべて作者
ハッピー・バースデイ/バリー・ユアグロー
私たちがやったこと/レベッカ・ブラウン
大いなる離婚/ケリー・リンク
ペット・ミルク/スチュアート・ダイベック
雪人間/スティーヴン・ミルハウザー
オーギー・レンのクリスマス・ストーリー/ポール・オースター

【目次】
編訳者まえがき 柴田元幸… 004

英語と文学を楽しむ『新装版 柴田元幸ハイブ・リット』 編集部編… 010

音声の活用方法 編集部編… 012

●Story 1 TRACK002-010
HAPPY BIRTHDAY by Barry Yourgrau
ハッピー・バースデイ/バリー・ユアグロー… 013

[Story 2 TRACK011-060
FOLIE A DEUX by Rebecca Brown
私たちがやったこと/レベッカ・ブラウン… 021

[Story 3 TRACK061-107
THE GREAT DIVORCE by Kelly Link
大いなる離婚/ケリー・リンク… 067

[Story 4 TRACK108-122
PET MILK by Stuart Dybek
ペット・ミルク/スチュアート・ダイベック… 111

[Story 5 TRACK123-138
SNOWMEN by Steven Millhauser
雪人間/スティーヴン・ミルハウザー… 129

[Story 6 TRACK139-164
AUGGIE WREN'S CHRISTMAS STORY by Paul Auster
オーギー・レンのクリスマス・ストーリー/ポール・オースター… 155

著者・訳者紹介… 182
初出一覧・コピーライト… 183
関連商品を見る:
「ハイブ・リット」シリーズ
柴田元幸 プロフィール
1954年東京都生まれ。東京大学名誉教授。著書に『翻訳教室』『アメリカン・ナルシス』『ケンブリッジ・サーカス』、村上春樹との共著に『本当の翻訳の話をしよう』などがある。本書掲載の作家以外にも、スティーヴ・エリクソン(『ゼロヴィル』)、マーク・トウェイン(『ハックルベリー・フィンの冒けん』)、ジャック・ロンドン(『火を熾す』)など、現代・古典の多数の作家作品を翻訳。雑誌『MONKEY』責任編集。本書ではAnimals、Objectsの章の翻訳と監訳を務めた。

関連商品

バリー・ユアグロー プロフィール
1949年南アフリカ生まれ。59年にアメリカ移住。『一人の男が飛行機から飛び降りる』(A Man Jumps out of an Airplane, 1984:邦訳96年)や本書掲載「ハッピー・バースデイ」収載の『たちの悪い話』(NASTYbook, 2005:邦訳07年)など、奇抜な設定でありながら、ときに愉快でときに悲しい、妙な現実味を感じさせる短篇を得意とする。

レベッカ・ブラウン プロフィール
1956年カリフォルニア州生まれ。本書掲載作を収録した『私たちがやったこと』(Annie Oakley's Girl, 1993:邦訳2002年)をはじめとして「幻想レズビアン小説作家」(柴田)とでも呼ぶべき作風の作品が多い。『体の贈り物』(The Gifts of the Body, 1995:邦訳2001年)、『家庭の医学』(邦訳2002年)など死をリアリズムで描いた作品もある。

ケリー・リンク プロフィール
1969年フロリダ州生まれ。95年にデビュー後、世界幻想文学大賞(「スペシャリストの帽子」99年)やネビュラ賞(「ルイーズのゴースト」2001年)などさまざまな文学賞を受賞。本書掲載作のようにゾンビを登場させるというシュールな設定ながら、リアルな日常的情景を描く絶妙なセンスを持つ。夫と出版社スモール・ビア・プレスを共同経営している。

スチュアート・ダイベック プロフィール
1942年イリノイ州生まれ。『シカゴ育ち』(The Coast of Chicago, 1990)、『僕はマゼランと旅した』(I Sailed with Magellan, 2003)といった、生まれ育った50年代のシカゴの下町を舞台にした連作短篇を発表。本書掲載作「ペット・ミルク」をはじめとして、すぐれた短篇に贈られるO・ヘンリー賞を4度受賞している。

スティーヴン・ミルハウザー プロフィール
1943年ニューヨーク州生まれ。本書掲載作収録の『イン・ザ・ペニー・アーケード』(In the Penny Arcade, 1986)、表題作でO・ヘンリー賞を受賞した『ナイフ投げ師』(The Knife Thrower, 1998年)など、現代アメリカでは稀な耽美的・ロマン主義的な作風で知られる。子供と芸術家を主人公に据えた物語が多い。大学で教鞭も執っている。

ポール・オースター プロフィール
1947年ニュージャージー州生まれ。1985年から86年にかけて発表した、ニューヨークを舞台とした作品をまとめた「ニューヨーク三部作」で高く評価される。本書掲載作にインスピレーションを得た映画監督ウェイン・ワンが手がけた『スモーク』や、自身でも監督した『ルル・オン・ザ・ブリッジ』など映画との関わりも深い。

 https://ec.alc.co.jp/book/7019059/

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする