今年に入って5冊刊行し、そのあといちばん気合を入れている本を含めて3冊訳了したが、そのあとほかにも仕事をこなしつつ、今年訳了したいと思っているのが、この1冊だ。
All of the Marvels
A Journey to the Ends of the Biggest Story Ever Told
By Douglas Wolk
マーベルは約60年間にわたってスーパーヒーローコミックを出版し、アメリカ文化の作り手を担ってきた。だが、マーベル映画だけでもキャラクターやシリーズが実に複雑に絡み合い、マーベルの世界を理解するのはなかなかむずかしい。本書はこれまでに刊行されたマーベルコミックスのほぼすべてを読みこなした著者が、まず制覇できないと思われる壮大な「驚くべき(マーベル)山:The Mountain of Marvels」に果敢に挑む大変な野心作だ。
今日のGetUpEnglishはこの本から紹介する。
Its characters and the images associated with them appear on T‑shirts, travel pillows, dog leashes, pizza cutters, shampoo bottles, fishing gear, jigsaw puzzles, and bags of salad greens. (Some of the people who love the story also love to be reminded of it, or to associate themselves with particular characters from it.) Its catchphrases have seeped into standard usage: “Spidey- sense,” “you wouldn’t like me when I’m angry,” “I say thee nay,” “healing factor,” “no— you move,” “bitten by a radioactive spider,” “puny humans,” “threat or menace?,” “true believers,” “’nuff said.” Parts of it have been adapted into serial TV dramas, animated cartoons, prose novels, picture books, video games, theme-park attractions, and a Broadway musical. For someone who lives in our society, having some familiarity with the Marvel story is useful in much the same way as, say, being familiar with the Bible is useful for someone who lives in a Judeo-Christian society: its iconography and influence are pervasive.
マーベルのキャラクター・イメージが、Tシャツ、ネックピロー(旅行用首あて枕)、愛犬のリード、ピザカッター、シャンプーのボトル、釣り道具、ジグソーパズル、グリーンサラダを入れる袋などにあしらわれている(マーベル・コミックを愛する人たちの中には自分が読んだ物語を思い出したり、好きなキャラクターになりきったりして楽しんでいるのだ)。マーベル・キャラクターの名フレーズは日常会話に溶け込んでいる。「スパイディ・センス」*1、「怒ると怖いぞ」*2、「お前にはかなわん」*3、「ヒーリング・ファクター(治癒能力)」*4、「そっちがどけ」*5、「放射性のクモにかまれた」*6、「小さな人間たち」*7、「脅威か敵か?」*8、「真の信者たち」*9、「(説明は)以上」*10……みんなそうだ。シリアルテレビドラマ、アニメーション、小説、絵本、ビデオゲーム、テーマパークのアトラクション、ブロードウェイのミュージカルなどに取り込まれているものもある。
ユダヤ・キリスト教社会で聖書に関する知識が不可欠であるのと同じように、この社会で生きるにはマーベルのストーリーに通じている必要がある。マーベルのイメージは社会全体に広がり、影響力は絶大だ。
セリフにはすべて以下のような注をつけたい。
*1 スパイディ・センス(Spidey-sense) スタン・リーが1962年に『アメイジング・スパイダーマン』シリーズを立ち上げた際に言った言葉。
*2 怒ると怖いぞ(You wouldn't like me when I'm angry.) ブルース・バーナー/ハルクのセリフ。1978年放映のテレビドラマ『インクレディブル・ハルク』(主演ビル・ビクスビー)で初めて使われた。
*3 お前にはかなわん(I say thee nay!) アスガルドの王ソーのセリフで、1965年のコミック・シリーズ『ジャーニー・トゥ・ミステリー』で初めて使われた。
*4 ヒーリング・ファクター(治癒能力、Healing factor) X-メンのメンバー、ウルヴァリンのセリフ。ウルヴァリンがものすごい速さで損傷、破壊を受けた組織を再生できる能力を指す。
*5 そっちがどけ(No — you move) 2006年発刊のコミック「シビル・ウォー」でキャプテン・アメリカが言ったセリ。キャプテン・アメリカは「スーパーヒーロー登録法」について政府の要求を受け入れるべきだとするアイアンマンと対立する。
*6 被爆したクモに噛まれた(Bitten by a radioactive spider) スパイダーマン誕生に関するセリフ。スパイダーマンは放射能を浴びたクモに噛まれたことで超人的な力を手に入れた。1962年発行の『アメイジング・ファンタジー』コミックブック・シリーズで初めて言及。
*7 さえない人間たち(Puny humans) 巨大化して強力なパワーを身に着けたハルクは普通の人間をこのように言う。
*8 脅威あるいは危険人物?(Threat or menace?) スパイダーマンのコミック・シリーズで、『デイリー・ブーグル』紙の編集長J・ジョナ・ジェイムソンがスパイダーマンを指してこう言う。
*9 真の信者たち(True believers) マーベル・コミックの編集コラム「スタンの石鹸箱」(Stan's Soapbox)でスタン・リーが使った。マーベル・キャラクターとマーベルのストーリーの熱烈なファンを指してよくこう言った。
*10 (説明は)以上(Nuff said) “Enough said.”のこと。これもスタン・リーがマーベル・コミックの編集コラム「スタンの石鹸箱」あるいは「ブルペン掲示板」(Bullpen Bulletins)などで「これ以上何も言うことはない、という意味でポイントが伝わったことを示し、もう何も言う必要がない」という意味で使った。
この翻訳も相当骨の折れる作業になるだろう。ページ数もかなりのものになるし、注も膨大に付ける必要がある。心して臨まなければならない。毎日少しずつでも進めることが大切だ。