ミャンマー最大援助国は中国/そして日本の責任

2007-09-27 18:17:16 | Weblog

 「日本を最大の援助国」としたことの訂正及び謝罪

 9月23日の当ブログ記事≪麻生の日本の伝統・歴史に優越性を纏わせた「誇れる国日本」≫で<「軍事独裁国家ミャンマーに対しても日本は現在でも最大の援助国である>と書きましたが、間違えた情報でした。謝罪して訂正します。

 9月27日の朝日新聞夕刊の≪対ミャンマー 安保理議長が「懸念」≫の記事には、≪実力行使の自粛を要望≫の小見出しで、<町村長官は27日の記者会見で、ミャンマーの反政府デモで死者が出たことについて「大変遺憾だ。ミャンマー政府に対して、強圧的に実力行使を求めないように求めたい」と述べた。外務省が駐日ミャンマー大使を呼び、冷静な対応を求めるとの見通しを示した。
 また町村長官は、ミャンマーへの最大の支援国は中国だと指摘。欧米でのミャンマー制裁を検討する動きについて「今後議論するテーマだが、結果としてミャンマーが中国にだけ傾斜していく姿がいいのかも考えなければならない」と述べた。>と出ていて、現在のミャンマー最大援助国は中国ということです。

 同じ日の(9月27日)朝日新聞朝刊の≪ミャンマーデモ 軍政包囲網じわり≫には、<ミャンマー問題は民主化外交を掲げるブッシュ政権にとって象徴的な問題だ。03年にはミャンマー制裁法を制定して同国との貿易、金融取引を規制。米国人の投資や旅行も制限している。
 だが、民主化運動指導者アウン・サン・スーチー氏や政治犯の解放という条件をのまない限り対話に応じないという強硬姿勢は、結果的にミャンマーを中国やロシア、インドとの関係強化に追いやったといえる。
 その結果、最近は国際社会の対応が割れ、国連安保理で今年1月に米国などが提案したミャンマー非難決議案も中ロによる拒否権で否決された。>と出ていて、町村長官の「結果としてミャンマーが中国にだけ傾斜していく姿がいいのかも考えなければならない」とする懸念の根拠を示す内容となっている。

 同じ記事は最後に<日本とミャンマーは経済協力の分野での結びつきは強い。日本は54年以来、ミャンマーに対して経済協力を行ってきた。03年にスー・チー氏が拘束されて以降、新規案件の実施は見合わせたが、緊急性が高く人道的な一部の案件は実施している。>

 <日本は54年以来、ミャンマーに対して経済協力を行>い、<03年にスー・チー氏が拘束され>るまで、50年近くもミャンマー軍事政権に対して経済協力を行ってきたのである。中国のように昨今のことではない。

 03年6月14日日付のHP≪Web東奥・社説20030614≫社説には、≪厳格な対ミャンマー外交を≫と題して、<ミャンマー(旧ビルマ)軍事政権が民主化勢力への弾圧政策を続け、国際社会は非難を強めている。一方で、最大級のミャンマー援助国、日本はき然とした態度を示せず、相変わらずの弱腰外交を維持している。これで果たしていいのか。問われているのはミャンマー軍事政権だけではない。>云々と、03年当時は日本を「最大級のミャンマー援助国」扱いとしている。

 また、3年前の04年更新のHP<首相官邸>の小泉首相(当時)の<アジア欧州会合後の内外記者会見(要旨)>平成16年10月9日)には次のような件(くだり)がある。

 <【質問】 日本はミャンマーの友好国にして最大の援助国であり、アウン・サン・スーチー女史が軟禁状態から解放された際に最初に援助を再開したのは日本であったと承知している。日本の対ミャンマー政策がプラスの方向に変化していくこと、また、スーチー女史の解放について、どのような関係があるのか。

 【小泉総理】 ミャンマーの国民的和解、民主的プロセスについては今回のASEM会合においても各国から活発な議論が出された。議論というか、ミャンマーの民主化に対する懸念。これが各国から表明された。私は、今回新たにミャンマーがASEM首脳会議に参加する国として承認されたが、まだ民主化が十分ではないという懸念は分かるが、果たしてミャンマーを排除して、それが民主化につながるか、ということは疑問に思っている。むしろ、ミャンマーが新たにASEMに加わり、多くの国からミャンマーにおける国内改革、国民的和解、民主化プロセスについて多くの国が奇異の目を持っている、懸念をもっていることを真剣にミャンマー側が受け止めるべきではないかと。そして、ミャンマーが国際社会の一員として、ミャンマーとしての役割を果たしていきたいという意欲を示す方が、ASEM各国においても、ミャンマーにとってもプラスではないかと思う。日本のミャンマーに対する支援は、人道案件に限られている。そのような観点から、私は、今後も引き続き、ミャンマーに対して、民主化努力を促したいと思うし、今回の会合においても、ミャンマーの代表は各国の懸念を十分真剣に受け止めたと思う。私は、むしろミャンマーを排除するのではなく、迎え入れて、お互い協力をできるような改革を国内で進めていくことがミャンマーにとってもプラスである、ということを十分認識して民主化プロセスに向かってさらなる努力を促したいと思う。そのことが、ASEMにとっても良いことではないかと思う。>

 自民党もそうだが、一旦手に入れた政治権力はあらゆる手段を使ってでもしがみつこうとする。特に軍事独裁権力となると、民主的な手続きによって自らの権力の可否を国民に問うことは稀で、国民が抑圧に堪えかねて最後の土壇場で立ち上り武力に訴えるか、外国からの攻撃に頼ることが多いことを考えると、小泉首相の<ミャンマーが新たにASEMに加わり、多くの国からミャンマーにおける国内改革、国民的和解、民主化プロセスについて多くの国が奇異の目を持っている、懸念をもっていることを真剣にミャンマー側が受け止めるべきではないかと。そして、ミャンマーが国際社会の一員として、ミャンマーとしての役割を果たしていきたいという意欲を示す方が、>云々は見込みがないままに当たり障りなく述べた希望的観測に過ぎない。事実ミャンマーは小泉首相がそう述べたときから変わっていないばかりではなく、今回の僧侶たちのデモに対する武力弾圧という最悪の事態を迎えている。

長年の日本からの経済援助がミャンマーの民主化に何ら役に立たなかったことから判断すると、要するに日本は長年続けていた対ミャンマー最大援助国の地位を欧米からの批判等を受けて数年前に日本から中国に手渡しただけのことで、そのことを棚上げした町村官房長官の「ミャンマーへの最大の支援国は中国だ」との指摘も、「結果としてミャンマーが中国にだけ傾斜していく姿がいいのかも考えなければならない」もさも懸命なことのように言っているように聞こえるが、中国にのみ罪を着せるようなもので、日本自らの責任を誤魔化す薄汚い自分勝手の詭弁に過ぎない。
 
 ミャンマーに対する今の中国の姿はかつての日本の姿だということである。しかも中国の何層倍もの姿をしていた。日本が対ミャンマー民主化に力となっていたなら、中国に政治体制を無視した付け入る隙を与えなかったに違いない。

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