命名―「背水の陣内閣」
一歩間違えれば自民党が政権を失う恐れが出てくる内閣だとして、「背水の陣内閣」と福田首相が自ら命名したという。いわば「背水の陣内閣」が「政権交代内閣」に変わり得る可能性を限りなく孕んだ内閣ということなのだろう。
民主党以下の野党は「政権交代内閣」となって欲しいとの祈りを込めて、いつどんなときでも、国会の質問でも、「福田政権交代内閣」と呼び習わすべきである。
新人事は、
官房長官・町村信孝。
町村信孝外相―→高村正彦外相
高村正彦防衛相→石破茂防衛相
伊吹文明文科相→渡海紀三朗文科相(初入閣)
再任
額賀福志郎財務相
大田弘子経済財政担当相
渡辺喜美金融・行革担当相
桝添要一厚労相
柴鉄三国土交通相
鳩山邦夫法相(麻生支持)
甘利明経済産業相(麻生支持)
その他有象無象。
町村官房長官を含めて4人の入れ替えで、再任は閣僚候補の「身体検査」に十分な時間を取れなかったためと言う。万が一「政治とカネ」の問題が持ち上がった場合でも、前任命者に責任を擦り付けることができる。高村新外相は安倍改造内閣で防衛相に就任するとき「身体検査」を受けているだろうから、あとは石破・渡海のお二方だけに気をつけてもらえばいいわけで、その分安倍晋三よりも福田首相の方が枕を高くして眠れるわけである。機能性胃腸障害とやらで内閣を放り出す懸念も同じくその分少なくなる。
柴鉄三国土交通相の再任は、どうせ公明党には一閣僚渡さなければならないのだから、相手の求めに応じただけのことだろう。あの胡散臭げなご面相と厭味な体の太りようは公明党や創価学会の人間はみんなあんななのだろうかと疑われて、テレビに映るたびに公明党や創価学会には利益にならないと思うのだが、タレ流しっ放しの公害を放置するのと同じで本人共々頓着ないようだ。
桝添要一厚労相の再任に関して言うなら、宙に浮いた5000万件の年金記録問題を来年3月までに確実に記録照合(名寄せ)を終わらせると約束したのは安倍首相で、その任命を受けて安倍改造内閣で厚労相に就任した経緯から、記録照合(名寄せ)が期日内に終わらなかった場合(現状でもその恐れが十分にある状況となっている)、あるいは訂正したものの遺漏が生じた場合、限った期限が短すぎて元々無理な約束だったのだと前首相に責任転嫁できるし、桝添要一の能力が絡んだ不手際なら、無所属ゆえに派閥や派閥の領袖とかに責任が飛び火する心配もない、泥をかぶるのは本人一人で済むといった計算もあった再任に違いない。
能力遂行上、桝添要一と同じように難しい立場に立たされているのは「天下り」の問題解決に道筋をつけなければならない渡辺喜美金融・行革担当相だろう。これも安倍首相が任命した閣僚である。任命責任は安倍首相にかぶせることができる。
渡辺喜美の話だけを聞いていると、悩み事すべて解決の万能薬を約束してくれそうに思えるいいこと尽くめを並べ立てているが、、本人がノー天気にも俺に任せておけばすべて解決すると、そう信じているからに違いない。
これは安倍1年ポッキリ短命首相の「官製談合、天下りの問題は、私の内閣で終止符を打ちたい」とか「年金問題はすべて私の内閣で解決する」と同じ安請け合いになりかねない。政治資金収支報告に関わる1円以上はすべて領収書添付の義務付けでも、その公開の方法についてもそれぞれに利害を異にしているのだから、十分な法案ができたと思えても矛盾や不足や抜け道が出てくる。いわば「すべて解決」は完璧にはできないことを完璧にできるかのように言っているに過ぎない。そういったことを常に認識して、天下りの問題でも現在できることを精一杯努めるという姿勢を持つことができたなら、何でも解決とかすべて解決といった安請け合いになりかねないいいこと尽くめの言葉は吐けない。安倍前首相がその代表格だったが、言葉が先行する政治家の言動は疑ってかかるに限る。
総裁選を争った麻生太郎に福田首相が入閣要請したが、固辞したと言う。取り込んで従順な羊に変えよとしたのか、断ることを承知していて形式的に要請したのか。取り込んでおけば、次の総裁選で前首相に当たる福田を批判する言動を抑える役には立つ。入閣して羊となった時点で麻生太郎には批判する資格を失うからだ。
形式的ということなら、当たり前のことだが、福田首相はそのことを前以て認識していたことになる。麻生派以外の全派閥が福田支持に雪崩を打った状況を「派閥談合」と批判し、「古い自民党」だと福田支持の自民党の面々をこき下ろしたのである。さらにアキバのオタク相手に「キャラが立ちすぎて永田町の古い自民党にはあんまりウケがよくない麻生太郎です」と福田支持派に厭味な皮肉まで投げつけた。
そのような前科があるのだから、よもや受け入れまいと踏んでいた。ただ単に全党的姿勢を見せるだけの体裁上、入閣要請したということになる。
麻生太郎にしても、散々「古い自民党」、「派閥談合」だとケチをつけていたのである。そのような派閥談合の古い自民党によって成り立たせた福田内閣にいくら要請があったからといって、おめおめ入閣するのは節を曲げることになる。下手をすると、言動不一致の政治家と自分の方が批判されかねない。
もし麻生太郎が一旦示した自らの姿勢を守るとするなら、入閣要請固辞にとどまらずに、例え自分一人であっても、散々批判してきた手前、派閥談合体質の古い自民党と袂を分かつために自民党を出て、自らの言動を一致させるべきだろう。派閥談合体質の古い自民党に居座ること自体、既に自らの言葉を裏切る言動不一致となっている。
鳩山邦夫法相と甘利明経済産業相は麻生候補を支持していた。鳩山邦夫は麻生太郎の選対部長まで務めている。親分が特にその選出過程を批判対象とした派閥談合の古い自民党によって支持され成立した福田内閣に再任を要請されて唯々諾々と受け入れる。批判しながら、その批判対象に身を置くのである。警察官が暴力団は善良な市民を食い物にするに組むべき集団だと非難しながら、退職後に暴力団の相談役に就いたとしたら、麻生太郎と同じ轍となる。批判自体がホンモノかどうか、自分たちを正義の人と見せる単なる便宜的なのウケ狙いではなかったか批判そのそのを疑わせる鳩山・甘利の無節操な変心である。
尤も派閥の支持を受けることができなかったための麻生太郎の「派閥談合の古い自民党」批判なのは既にお里が知れていることではある。