メーリングリストから
【平野:それとね、宮崎さんがご指摘のこの辞め方の背景にね、ぼくは謀略的なものがあると思いますね。
宮崎:謀略的なもの!】からの続き・・・・・
平野:それはですね、所信表明に対する代表質問を終えて辞めた場合ですね、これは安倍さんの政策の継承になるんですね、次の政権は。そういう形で辞めることが出来るわけですよ。
宮崎:うん。
平野:ところが所信表明やりっ放しで、あと投げましたよね。
宮崎:うん。代表質問なしで。
平野:これは所信、やり直しでしょ、新しい政権の。そうすると次に出て来る政権は、安倍さんの政策を継承するとか、影響を受けるっていうことは一切なくなりますからね。これはおそらく私はね、かなり計算されたね、次のなりたい人がね・・・
宮崎:それは今の話の流れからすると、麻生さんがそれを仕組んだという風に聞こえますが、如何ですか。
平野:うーん、まあ推測的にいえばね、意図的に仕組んだのか、或いは
宮崎:流れがそうなっちゃったのか。
平野:流れをそう作っていったのか。
宮崎:それは別として、麻生さんが、そういうことの中心になっていた可能性が高いということ。
平野:完全に小泉・安倍から離れた政策を選択することが出来るわけでしょ。麻生さんはそうすると言ってたでしょ。
宮崎:要するに、「小泉さんは壊した、自民党。自分たちは作らなきゃいけない」という風に幹事長に就任された時におっしゃってましたよ。あれの意味というのは、もう小泉・安倍政権の構造改革の流れというのは継承しないと。そういう構造改革政権ではないという風なものが、まあ決意表明であったと。
平野:そうです。
上杉:小泉路線を放棄したというのは、今回の改造内閣ができた時にわたしが申し上げたのは、これは「麻生仮装内閣」だと。いわゆる麻生準備内閣で、実状の面々をみると、人事権の一部をとった麻生さんが、次の政権のためにもう準備した布陣だと申し上げたんですね。
特にそのポイントとなるのが与謝野さん。官房長官がさっそく経済政策に対して舵を切り、それから遠藤さん、総理を抜きにして事実上の更迭を決めてしまうという形で、もうほとんど、トップは安倍さんですが、事実上は麻生さんが非小泉政権を作り出していたという観点からすると、正に今おっしゃった通りじゃないかなと思いますね。
宮崎:そうなると陰謀めいてくるんだけど、今日も辞任会見では安倍さん、なんで続投したのか仰いませんでした。これ、みんなが疑問に思うこと。
だって7月29日に続投して、1ヶ月半しか経っていないのに辞めるんだっていうのは、これは最大の謎ですよ。それはきちんとしたお答えが無かったですね。なんでなの。
上杉:たまたま明日の「週刊文春」に書いたんですが、実は3週間ほど取材をしていて、やはり精神的なものというか正直なところ、安倍さん自身の精神がもう持たなくなったと。
ちょうど2週間くらい前から、最初は党7役の懇談会があったんですが、それ終わった直後、その7役の一人の方が、「ちょっとおかしいぞ、総理は。前をぼーっと見たまま、全然生気が感じられない。何を言っても棒読みのような返事しか返って来ない。大丈夫か?」というようなことで、ちょっと情報もらったんですね。
で、翌日に論説懇というのがあって、その時も同じような情報が入って。その後にAPECに行く前に、ちょっとかかり付けのお医者さんに少し診てもらって、APEC行ったんですが。APECでも、今までの安倍さんとは違う状態だというような声がずっと聞こえて来てたところ、取材をしているなかで、この週末になって、もうそれも耐えられなくなって来たんじゃないかという声がいくつかあったんですね。
シドニーで職責には拘らないとおっしゃった時点では、もうお辞めになるという意思は・・・
宮崎:だから既に心が折れていたんだね。
上杉:ええ。ただ時期は今日ということではなく、一日でも長くという風に思ってたでしょう。
宮崎:うん。
上杉:あともう一つ大きな要素としては、お母様が非常に重要な・・・
宮崎:安倍洋子さんですね。
上杉:ええ。色んな政治判断をされる時にも、お母様の羅針盤的役割というのを重要視してたんですが、どうも先週以来体調を崩されて。で、そういう家庭内のストレスも含めて、もう内閣総理大臣としての職務を、やるのが辛いと。
宮崎:まあ、悪い言い方をすると、三界に家無しという状況になって、孤立感・孤独感を深めていった。それがやっぱり精神的に影響してきた。そういう風に見てもいいんですかねぇ。
平野:その通りです。もともとね、精神的に弱い方なんです。わたしが衆議院の事務局にいた頃、お父さんの晋太郎さんが幹事長、竹下内閣の、いろいろ使われました。その頃晋三さんは秘書をしてました。
それから私が議員になってから、保保連合・自自連合、しょっちゅう安倍さんたち与謝野さんたちと会合を持って、料亭で色んなことを相談したんですが、他の政治家に比べて、黙って静かに・・・、体調もよろしくない、しわーっとしてる人でしてね・・・。
私は話しかけて、昔話しながら、身体をよくしてしっかりと勉強してお父さんの志を遂げなきゃ駄目だと、
宮崎:うん。衣鉢を継がなきゃ駄目だと。
平野:ええ。「協力するから」というような関係だったんですよね。段々その・・・小泉さんが可愛がるにつれて、格好はつけるけど内容的なものが伴わなくなったと、ぼくは見てるんですよ。
それでそもそも去年の9月に、理念も政策も全くちがう人達が、70%くらいの自民党の応援で、家柄と顔で選挙用に総理に就けた。この時から今日の運命というのは、私は決まってると思うんですよ。
宮崎:ええ。私はね、あれは毎日新聞に、「草木も安倍になびくというような状況で、自民党は堕落した」という風に書いてるんです。
平野:その通りです。
宮崎:結局その禍根というのが、こういう形で出てしまったということですよねぇ。
平野:ですから、これから自民党は崩壊の過程に突っ込むと思いますね。
===== 中略 =====
平野:総裁選を決めたこの早さっていうのは、もう一つ麻生さんが懸念していたのは、総理の職務執行不能という状態になると、これ憲法で規定されているように、ナンバー2という、いわゆる与謝野官房長官が総理大臣になる可能性があったんです。
それをもう早めに摘むために、総裁選をやるということを、もう午前中のうちに発表すると。そういう意味も含めて、これはもう着実に、このために布石を打っていたというのは、まあ取材をしながらも充分に伝わってきましたね。
宮崎:麻生さん、出馬すると思いますか。
平野:すると思います。それから今年になってから、アメリカ方面の情報として、麻生さんを早く幹事長にして、安倍さんと取り替えるというアメリカ側のね、様々な思惑という背景もあったと思いますね。
===== 中略 =====
宮崎: 例えば遠藤武彦前農水大臣の事実上の更迭、辞職させたことも、実は麻生さんがイニシアティブを取ったと。麻生・与謝野で決められたという印象が強いですよねぇ。
しかも世の中に対して、そういうアピールをしたわけです。テレビカメラで、麻生さんと与謝野さんの会談のシーンまで撮らせて。あれを見た時にね、私は「ああ、これはいけない!」と思ったんですが、どうですか、平野さん。
平野:岸信介さんのDNAとね、吉田茂さんのDNAとね、所詮相容れないんですよ。それが一つ。
それから麻生・与謝野・平沼というのはね、麻布高校の同級生で、一緒に机並べていた仲ですからね。平沼さんの復党問題だって、安倍さんにしてみれば物凄く複雑、且つ難問なわけですよね。で、こういうものをあの二人は平然として進めようとする。で、党内を、呑ませようとする。そのとばっちりは、両院議員総会とか代議士会で、みんな安倍さんのとこへ来る。
宮崎:うん。
平野:こういう役回りになったら、安倍さんとしては敵いませんよ。あのお坊ちゃんでは。あの精神力では。
宮崎:うん。でも、麻生さんとしてはね、小泉的なものを掃討するために、これはシンボリックな意味で平沼さんの復党というのは、プライオリティーの高いものだった訳ですよねぇ。そうすると、かなり仕組まれていた辞任劇だった、或いは追い込まれて来た辞任劇だったんじゃないかと思うんですが。
平野:その通りですね。
上杉:やはり麻生さんの復党問題に関する政治力というのは、安倍さんと比較してやっぱり大したものだなと思うのは・・・。麻生さんが平沼さんを復党させると、無条件で。それは党内に対してもそうですけど、やはり小沢民主党に対して最大の牽制になりましたよね。
結局その国民新党が、選挙前は必ず与党側ではなく野党側に付いていた。旗幟鮮明にしたにも拘わらず、あの一言が出た途端に急にぶれて、国民新党は。
要するに郵政民営化。平沼さんが入れれば、当然ながら自分たちも入れる資格があるんで、いきなり統一会派を組まずに、もうやや民主党の方から少し外れたと。
となると、民主党の方としても、国民新党がいれば共産党入れなくて参議院野党過半数いたのが、結果として共産党・社民党にまた頼らなきゃいけないと。こういう数の対小沢戦略のなかで麻生さんがそういう力を発揮したのかなと。
宮崎:そうなると、麻生さんは首相の座に就けば、郵政民営化法案を見直すと言いかねないですね。
平野:その通りですね。わたし一昨日ね、亀井静香さんと偶然会ったんですよ。30分くらいね、上杉さんがおっしゃったような話をしてたんですがね。まあ、国民新党でも、人によって違うでしょうけど、要するに平沼さんを巡って、相当やっぱり新しい政権寄りの流れができて、民主党のまあ保守系としては、国民新党との寄り合いが非常にまずくなってます。
来年にかけて、まあ選挙もあるでしょうけど、これは大きな再編の予兆になると思いますね、自民党を中心とした。
宮崎:民主党も巻き込まれますよね。小沢さん、困るんじゃない?
平野:勿論そうですね。まあこれね、彼はまあ、政権交代をするきちっとした構造を作ることが目的ですから、本来は国民の選挙による選択で政権交代をやるべきだと。それ以外の裏工作の政権交代というのは、出来ないしやるべきでないという論なんですが、
宮崎:正論ですね。
平野:どうもね、それが一体になるような・・・、その・・・選挙巡ってですね、そんな感じが私はしていますね、この安倍さんの突然の異常な辞め方で。
===== 中略 =====
堤:正に嵌められたんだな、可哀想だなという感じがするんですが、それとは別にね、こういう形で首相が途中で放り出すっていうのは、やっぱり他の国からみても異常ですよね。
今後これは日本の国際的な立場とか、民主主義国家としての信頼にどういう風に影響していくのか、お二人にお訊きしたいんですが。
平野:先ずね、平成8年に住専国会で騒いだ時に、村山自社さ政権が予算を編成して国会に提出せずにね、辞めちゃったんですよ。これが先例なんですよね。
宮崎: うん。
平野:ですから日本の政治文化っていうのはね、健全な議会制民主主義国家じゃないんです、はっきり言って。格好だけこう、議会多数決原理を機能させてるんで。
宮崎:形だけ!
平野:形だけ。これは自民党だけじゃなくて、民主党だって他所の党だって同じことなんです。議会主義の真髄っていうものが、日本人はまだ理解してませんね。
宮崎:だからこれは要するに、日本の政治文化の後進性の表れという風に外国から見られても仕方ないと。
平野:はい。で、今度のことはね、特に国家としての信頼性を失って、国益にものすごくマイナスになる。
上杉:もうおっしゃる通りで、例えばAPEC行って来たんですけど、「じゃあ、安倍総理が話したことは、なんだったんだろう」という風に思われて、これは当然ですよね。
それからやはり象徴的だったのは、赤城農水大臣がお辞めになった翌日に、GUTウルグアイ・ラウンドからドーハ・ラウンドに移るときの、アメリカの農務長官との重要な会議の前だったですね。それをどたキャンして、しかも代理も行かせなかったと。
となると今後この一番大事なドーハ・ラウンドに、日本はプレーヤーじゃないということを自ら宣言したようなもので、その時はよかったんですけど、絆創膏は、長い目でみると非常に日本の農政に対してマイナスだということも考えると、こういう政治音痴はいいんですけど、長い目でみると国際的に信頼をどんどん失ってると言わざるを得ないですね。
堤:どうしたらいいんですかね。
上杉:もう、普通のことをすればいいんですよね。人間関係。外交ですら、やはり人間関係だし信頼関係なんで、当たり前のことをすればいいんですが、もうそういう海外に対する目が行かなくなってて、内側内側に向いてるのが今回の10ヶ月11ヶ月の安倍政権だったのかなぁと。
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以上です。(文責: マリネッリ恵)
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(「日本の政治文化の後進性の表れ」――日本の政治家の政治文化は日本の国民の政治文化と対応し合い、相互に響き合う関係にある。決して個別に存在するわけではない。
出席者の話題の質そのものがそのことの証明となっている。)