菅首相は860兆円の大借金をつくった責任を言うが、自覚していない解消する責任の所在

2010-07-06 08:24:16 | Weblog

 《菅首相「大借金作った責任、民主党にもある」》YOMIURI ONLINE/2010年7月5日20時18分)

 菅首相の昨6月5日の松山市の街頭演説――

 菅首相「消費税の話は好きで言っているのではない。860兆円の大借金を作った責任は、自民党にも公明党にも(あるが)民主党にも、なにがしかの責任はある。財政健全化する道筋を(各党)一緒になってつけたい」――

 財政再建の超党派協議の提案である。何だか、何でもかんでも超党派協議に持っていこうとしているようだ。ではなぜ、郵政改革法案も、ゆうちょ銀行の預入限度額の1千万円から2千万円への引き上げ、そしてかんぽ生命保険の保険上限額も1300万円から2500万円への引き上げに野党や金融界、党内からも色々と反対や異議申し立てがあったのだから、超党派協議を経た案としなかったのだろうか。

 参院選を急ぐ必要から会期延長を求める野党の反対を押し切って通常国会を会期どおりに閉幕したため郵政改革法案の国会上程は先送りされたが、今後とも超党派協議は予定はしていまい。何となく責任分散を図るご都合主義な超党派協議に見える。

 普天間基地移設問題、日米合意も改めて超党派協議とすべきではないだろうか。社民党、共産党は辺野古現行案に反対している。面白いことになるのではないか。社民党は消費税増税と財政再建の超党派協議を受入れる交換条件に辺野古移設案と日米合意の超党派協議を要求すればいい。

 決まったことだからと断られたら、自分たちの都合のいいことだけ超党派協議を持ちかけると、そのご都合主義を批判すればいい。

 記事は同日の〈高松市での街頭演説では消費税問題に全く触れなかった。〉と書いている。

 同じ場面を扱った「MSN産経」記事――《菅首相「民主党にも財政悪化の責任」》(2010.7.5 12:56)

 菅首相「(国、地方の長期債務残高で)860兆円の財政危機を作ってしまった責任は自民党にも公明党にある。もちろん、民主党にもなにがしかの責任はある」

 そしてギリシャの財政破綻を引き合いに出して――

 菅首相「消費税の話は好きで言っているのではない。(各党と)一緒になって財政を健全化する道筋をつけたい」

 ここまではほぼ同じ扱いだが、〈首相は財政悪化の責任を自公政権にあると強調することが多かった。しかし、4日のテレビ討論で各党から激しい批判にさらされた結果、民主党政権の責任にも触れる形で批判のトーンを和らげた格好だ。〉と、これまでの発言とは違うことを指摘している。

 《各党首のテレビ討論要旨-参院選》時事ドットコム/2010/07/04-18:57)は菅首相の国の借金についての次のような発言を伝えている。

 菅首相「この11年間の自公政権で220兆円の国の借金が積み上がった」

 第一番の責任は成果・非成果とした政権党にある。断るまでもない事実であろう。数の力で自分たちの政治を推し進めてきた。その結果の「この11年間の自公政権で220兆円の国の借金」であり、「860兆円の財政危機」の成果であろう。

 だが、事実はそのとおりであっても、民主党はそのような危機的な財政状況を正すべき政治の一つとして国民に政権交代を訴え、国民もそれを正して欲しい政治の一つとして政権を民主党に負託した。

 2010年民主党参院選マニフェストにも、「強い経済・強い財政・強い社会保障」と題して、〈ムダづかいと天下りを根絶し、財政を健全化させます。〉と約束している。

 具体的には、「2015年度までに基礎的財政収支赤字(対GDP比)の2010年度の1/2以下」にすることを中期目標に掲げ、「2020年度までに基礎的財政収支の黒字化達成」と、「2021年度以降において長期債務残高の対GDP比の安定的な低下」を長期目標としている。

 6月8日の菅首相の記者会見でも、「日本の経済の立て直し、財政の立て直し、社会保障の立て直し、つまりは強い経済と強い財政と強い社会保障を一体として実現をすることであります」と経済の再建と社会保障の再建と同時に財政の再建を一体的に行うと約束している。

 また6月11日の第174回国会所信表明演説でも、 「国民が未来に対し希望を持てる社会を築くため、経済・財政・社会保障を一体的に建て直します。90年代初頭のバブル崩壊から約20年、日本経済が低迷を続けた結果、国民はかつての自信を失い、将来への漠然とした不安に萎縮しています。国民の皆さまの、閉塞状況を打ち破って欲しいという期待に応えるのが、新内閣の任務です。この建て直しは、『第三の道』とも呼ぶべき新しい設計図によるものです」と、「経済・財政・社会保障」の一体的再建を「新内閣の任務」だと、政権を担った以上当然なことだが、明確に位置づけている。

 「第三の道」とは、「経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとし、それを成長につなげようとする政策」だと言っているが、政治に素人の一般国民にはよく理解できなくても、本人には確かな設計図が出来ているはずである。

 また、確かな設計図を描かずに言っているとしたら、無責任となる。

 いわば民主党政権は自民党政治、あるいは自公政権が危機化させた財政の再建を請け負ったのである。

 当然、日本の財政の爆弾となっている「860兆円」を解消する責任の所在は民主党政権にあることになる。菅首相がその内閣を現在担っている。責任の中心人物は菅首相だということである。

 と言うことなら、事実を批判することよりも、自身が描いている財政再建の設計図、道筋をこそ、党首討論、もしくは街頭演説で国民に分かりやすく具体的に説明すべきであろう。

 勿論、その設計図に消費税増税が欠かすことができないアイテムだということなら、増税による国民生活への影響と、税収増をどこにどう使って、どういうふうに財政再建、もしくは経済や社会保障の一体的再建に役立てるか、その成果が増税による国民生活への影響を上回ることの説明を行い、党首討論なら、その説明を他党首の正否の批判の対象とする議論を行い、街頭演説なら、そういった趣旨に則った演説の形とすべきではないだろうか。

 重点を置くべきは財政再建の責任の所在(借金解消の責任の所在)であり、政権を担った以上、それを明確に自らに課し、その設計図の具体的な説明を行うことであるにも関わらず、党首討論にしても街頭演説にしても、どちらが悪いのか、悪くないのかの責任の所在を問う議論、もしくは演説を優先させ、解消の責任の所在は明確に自覚していないようだ。

 この点に関しても、菅首相は“甘菅”を演じているようだ。

 消費税に関して言うなら、一般的な国民であっても十分に理解できる具体的な設計図の具体的な説明がないままだから、「朝日新聞」の世論調査だが、「消費税の引き上げをめぐる菅首相の一連の説明や対応を、評価しますか。評価しませんか」といった質問が必要になるのだろう。

 調査結果は、「評価する」21%(前回調査30%)、「評価しない」63%(前回調査50%)となっているが、これは説明責任の問いと重なるはずである。

 いわば首相や閣僚は二言目には「説明責任、説明責任」 とバカでもチョンのように言うが、菅首相は消費税に限った説明責任を実際には満足に果たしいないと多くの国民は受け止めていることになる。

 ところがこの質問の仕方に「弁護士業」として約80万7千円を昨年1年間の事業所得に計上、閣僚の自由業への従事を原則禁止した「大臣規範」に抵触する疑惑を抱えた仙谷官房長官がクレームをつけた。

《「世論調査、メディアの設問に問題」仙谷官房長官が苦言》asahi.com/2010年7月5日22時1分)

 昨6月5日の記者会見――

 仙谷「(首相の)説明の仕方が良いとか悪いとかいうところで評価するのは、ある種の(責任)回避的傾向だ」

 仙谷「メディアが消費税、財政、社会保障問題のポジション(立場)をちゃんと言った方がよい」――

 記事は、〈報道機関はこれらのテーマへの主張を明確にした上で、首相発言などを取り上げるべきだとの認識〉を示した発言だとしているが、要するに報道機関は内閣が提示するそれぞれの政策に対して報道機関自らの主張を提示せずに「(首相の)説明の仕方が良いとか悪いとか」を世論調査で問うのは「責任回避」に当たると指摘したということなのだろう。

 しかしこのことは関係ないことではないだろうか。報道機関がある政策に関して自らの主張を示した上で首相発言が満足に行われているかどかを取り上げたとしても、国民の判断は報道機関の主張を基本とするのではなく、首相自身の説明を基本とするだろうからからだ。

 肝心なのは政策作成者のその政策の必要性、社会的・経済的効用性の国民に対する直接的・間接的説明であって、その説明に国民が理解してこそ、自らが抱える説明責任を果たしたことになる。

 いわば国の借金を解消する責任の所在と同様に説明責任の所在は内閣の責任者たる首相が第一番に握っているということである。

 野党のときはこの手の世論調査の設問を良しとし、与党になると、悪いとする。あるいは支持率が高い間は良しとし、支持率が下がった局面では設問の方法を悪いとする。自己都合なダブルスタンダードではないのか。菅首相の“甘菅”ぶりも相当なものだが、仙谷官房長官のご都合主義も相当なもののようだ。
 

コメント (2)
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