民主枝野幹事長の「国家公務員の労働組合は民主党を支持しているのは殆んどない」は労組隠し?

2010-07-04 08:49:59 | Weblog

 「日本は明治維新ができ、近代化したが、中国や朝鮮半島は近代化できなかった。日本は植民地を広げる側で、中国や朝鮮半島は植民地として侵略される側になったというのは、歴史的な必然だった」

 行政刷新相時代の3月27日に松江市で講演、政権交代を契機に「新しい政治をつくらないと大変になる」といった演説趣旨で講演、民主党の新しい政治への転換を明治維新になぞらえる中でアジアの歴史を新転換させる、歴史家顔負けの立派な歴史観を述べた民主党枝野幹事長が6月27日日曜日のフジテレビ「新報道2001」で、自身の歴史認識に劣らない政党と労働組合の現状認識を示したらしい。

 《舌禍…枝野氏“炎上” 与党、野党、連合までも けんか売りすぎた果て》MSN産経/2010年7月3日08:00)

 記事は一つは労働組合とは関係ないが、以下の二つの発言を失言として挙げている。

 枝野「公務員制度改革はみんなの党と考え方は基本的に一緒だ」

 枝野「国家公務員の労働組合が支持している大部分は共産党だ。民主党を支持しているのはほとんどない」
 
 それぞれの発言に対する反対論。

 みんなの党渡辺代表6月28日)「みんなの党の支持者の引っぱがしじゃないか。悪質な選挙妨害にしか見えない。顔を洗って出直しなさい!」

 同じ番組に出席していた共産党の市田忠義書記局長が色をなして反論。

 市田「嘘だ。取り消しなさい」――

 記事は労働組合と政党との支持関係を次のように解説している。

 〈■労組も「白い目」

 民主党最大の支持団体である連合傘下の公務員労組も枝野氏の言動に眉をひそめる。

 国家公務員労組には連合傘下の国公関連労働組合連合会(国公連合)と、共産党系の全労連傘下の日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)とがある。枝野氏の「国家公務員労組」発言は、連合から見れば傘下の国公連合を無視した見解となるからだ。

 労組の反発は参院選候補を直撃しており、候補者の不満は募る一方だ。ある連合組織内議員は「幹事長のくせに支持団体のことも知らないのか」と不快感を露わにした。〉――

 失言とされた枝野幹事長は産経新聞のインタビューに答えている。記事は、〈こう胸を張った〉と答えたときの様子を表現している。

 枝野「誤解をされないようにメッセージを発することも政治の責任だ」

 何とも感じないカエルのツラにショウベンのいつもの顔が思い浮かぶ。
 
 発言に対する記事の解説。

 〈どうやら自らの発言が不信を招き、敵を増やしているとの自覚はないようだ。〉――

 要するに「国家公務員の労働組合が支持している大部分は共産党だ。民主党を支持しているのはほとんどない」は間違った発言ではないと言っていることになる。

 「Wikipedia」によると、民主党支持の国公連合の組合員数約12万2000人。共産党支持の国公労連は約12万人。国家公務員の労働組合から支持を受けているという点では両党共ほぼ肩を並べていると言える。

 記事が書いている〈民主党最大の支持団体である連合〉は組合員数約670万人。連合傘下の日本教職員組合(日教組)も、全日本自動車産業労働組合総連合会も、日本郵政グループ労働組合(JP労組)も、日本鉄道労働組合連合会(JR連合)も民主党の支持母体に名前を連ねている。

 6月27日のフジテレビ「新報道2001」でどんな遣り取りがあったのか、一方の当事者である《民主こそ労組に支持押しつけ》(2010年6月28日(月)「しんぶん赤旗」)がより詳しく伝えている。

 労働組合の支持を受けていて公務員削減ができるのかとの指摘に対して――

 枝野「国家公務員の労働組合が支持しているのは大部分が共産党さんです。国家公務員の組合で民主党を支持しているところはほとんどありません」

 「赤旗」はこの発言を当然と言えば当然だが、〈デタラメな日本共産党攻撃を行いました。〉と書いている。

 市田共産党書記局長「日本共産党は、労働組合であろうとどんな団体であろうと特定政党の支持を押し付けたことは一度もない。国家公務員の労働組合が共産党支持というのはうそですよ。枝野さん、取り消しなさい」

 枝野「うそじゃない」

 これを以て記事は、開き直りと書いている。

 市田「政権党の幹事長が公共の電波を使ってうそをついたらだめですよ。労働組合に支持を押し付けているのは民主党じゃないですか」

 記事は最後まで憤懣やる方なしの様子で次のように締めくくっている。
 
 〈民主党が連合加盟の国家公務員労組から支援を受けているのは紛れもない事実です。

 そもそも枝野氏は17日、連合本部に自ら出向いて、参院選で支持を受ける協定を取り交わしたばかり。労働組合に特定政党支持を押し付けている張本人です。参院選では公務員労組の自治労出身候補者を公認するなど人も組織も丸抱えで支援を受けています。

 特定政党支持押し付けの害悪が露呈したのが、同党の小林千代美前衆院議員陣営の1600万円にものぼる違法献金事件です。組合員から半強制的に集めた資金を違法献金などに充てたとして連合加盟の北教組や自治労北海道、連合札幌幹部に有罪判決が出たばかりです。でたらめな攻撃をする前に、枝野氏自身と民主党のあり方こそただすべきです。〉――
  
 政党はどの階層、どの団体の利害を代弁するかで成り立っているのだから、労働組合の利害を代弁すること自体が間違っているわけではない。労働組合の利害代弁は労働者の利害代弁に通じる。

 また、民主党は社会主義政党だと批判する勢力が存在するが、社会主義政党であっても、全体的な国民の全体的な利益に適いさえすれば、問題はないはずだ。いくら民主主義政党を名乗っても、国全体の一部を占めるに過ぎない大企業や富裕層の利害を優先的に代弁する政党であっては、一般国民の利害に反する不公平な状況が生じる。

 不公平な状況を一般国民自体が長い間許してきた。

 「MSN産経」記事は枝野発言を失言とし、「しんぶん赤旗」はデタラメ、いわば事実誤認だとしている。

 それだけだろうか。
 
 労働組合の支持を受けていて公務員削減ができるのかとの指摘に対して、枝野はこう発言した。

 枝野「国家公務員の労働組合が支持しているのは大部分が共産党さんです。国家公務員の組合で民主党を支持しているところはほとんどありません」――

 国家公務員改革をデザインする中で国家公務員側の様々な立場からの様々な賛成・反対、あるいは異議申し立ての雑音が入ってきているだろうし、その様々な立場の中には政党が自分たちを支持する階層、あるいは団体の利害を優先的に代弁する関係から民主党支持ゆえになるべく利害を一致させなければならない国公連合もあれば、共産党支持ゆえに利害をさして一致させなくても済む国公労連もあったろうから、自身は発言どおりにそう思っていて、勘違いだということは先ず考えられない。

 だが、「国家公務員の労働組合が支持しているのは大部分が共産党さんです。国家公務員の組合で民主党を支持しているところはほとんどありません」と言った。

 考えられる理由は民主党は国家公務員の支持を殆んど受けていないと隠すことにあったということではないだろうか。

 労働組合は労働者を所属構成員としていながら、日教組の支持を受けることを一般国民の間では悪と見がちなのと同じ構図で、労働組合の支持をある意味悪とする風潮があるからだ。

 少なくとも世間にあからさまな姿となる形で支持を受けていることを控えるような意識に流されている。民主党は労働者の政党だと一度でも胸を張って言ったことがあったろうか。

 この風潮を流している自民党は逆にこの風潮を利用して、悪者視するニュアンスで日教組やその他の労働組合を攻撃して、間接的にその支持政党を批判するといったことをやらかす。

 枝野幹事長発言にしても、世間の労働組合悪者視の風潮を受けて、その支持を隠したい意図があったのではなかったろうか。

 隠したい意図が民主党支持の国公連合の存在を知っていながら、「誤解をされないようにメッセージを発することも政治の責任だ」と、自分の発言を事実誤認だとすることができず、間違っていないメッセージだとしたということのように思えて仕方がない。

 少なくとも「国家公務員の労働組合が支持しているのは大部分が共産党さんです。国家公務員の組合で民主党を支持しているところはほとんどありません」の発言には労働組合悪者視を反映させた共産党悪者視、その逆の民主党善人視のニュアンスを感じざるを得ない。

コメント (2)
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