菅首相、ウソ・ゴマカシからは指導力は生まれない

2010-07-11 06:56:06 | Weblog

 特に国民の負託を受けて国政に携わる政治家はウソをついてはいけない。ゴマカシを働いてはいけないはずだ。国民の負託を受けている立場でのウソ・ゴマカシは直ちに国民に対するウソ・ゴマカシとなるからだ。例えそれが小さなウソ・ゴマカシであっても、自身の不利を抹消して有利にもっていく解決方法として用いる手管としてあるのだから、不利の状況に応じて大きなウソ・ゴマカシに転じない保証はない。

 国民に対するウソ・ゴマカシは情報操作に当たり、それ以外の何ものでもない。

 また、ウソ・ゴマカシは本質的には不誠実な性格がその人間に仕向ける処世術として身についている。不誠実な政治家に指導力も期待できない。

 それともウソ・ゴマカシを働く政治家に指導力が期待できると言うのだろうか。

 参院選挙活動最後の10日午前。菅首相の福井県坂井市の街頭演説。《政治とカネ・普天間、首相「心配かけたがそれもクリア」》asahi.com/2010年7月10日13時19分)

 菅首相「政治とカネとか普天間(飛行場移設)のことで少し心配をおかけしたがそれもクリアをして、いよいよこれから時計の針を進めようという時の選挙だ」――

 この発言に関して記事は、〈政権の出直し感を強調したかったようだが、両問題は「解決した」とは言い切れない状況だ。

 政治とカネ問題は依然として野党側が追及の構えをみせ、普天間問題は8月末の移転先工法などの決定を控えて地元から合意を取り付ける見通しは立っていない。〉と書いているが、「政治とカネ」と「普天間」の主役にそれぞれ政治の表舞台から背景に退いてもらったに過ぎないのであって、問題自体が表舞台から消えたわけではない。

 また、「普天間」に関しては自分が代役として舞台に上がることが決まった。本格的な出番がまだ来ないだけの話しで、出番が来たなら、予期しないストーリー展開が待ち構えて舞台が紛糾し、「時計の針」が鳩山首相のときのようにいつどこで狂わない保証があるわけではない。そういったことに目を向けることもできずにいとも簡単に単細胞にも、「クリア」したと言うことができる。

 相変わらず物事を全体的に見る目――合理的判断能力を欠いている。それが楽観的性格から来ている資質だとしても、合理的判断能力は指導力に不可欠の能力であるはずだ。単細胞は指導力とは相反する能力であろう。

 民主党が参院選で不利な立ち場に立たされることになった菅首相発民主党参議院過半数割れ着の可能性高い、〈消費税発言を巡る報道について〉、次のように訴えたそうだ。

 菅首相「財政破綻(はたん)に陥らないため税制について議論する必要があると言った。そうしたら翌日の新聞が『菅直人が明日から消費税を上げるんじゃないか』と書いた。・・・・次の総選挙まで1円も上げない。このところだけ外して報道が流れた」――

 果して事実、「菅直人が明日から消費税を上げるんじゃないか」と書いたのだろうか。「次の総選挙まで1円も上げない。このところだけ外して報道が流れた」のだろうか。

 6月17日に菅首相は民主党参院選マニフェストを記者会見して発表した。それを受けた各マスコミの報道を見てみる。字数の関係から、「毎日jp」記事の自民党のマニフェスト記述を省略する以外、解釈の違いから言い間違いが生じたと受け取られないように、全文参考引用することにした。
 
 《消費税率「自民党の10%を参考に」 菅首相が明言》asahi.com/2010年6月17日23時17分)

 菅直人首相は17日、将来の消費増税について、税率と、低所得者ほど負担感が増す逆進性の対策を含む改革案を今年度中にまとめる方針を表明した。税率については、自民党が参院選公約に盛り込んだ10%を「参考にさせていただきたい」と述べた。さらに、改革案の是非を問う解散・総選挙を行う可能性に言及した。
 菅首相は、こうした方針について、17日に東京都内で行われた民主党の参院選マニフェストの発表会見で明らかにした。

 民主党が昨年8月の総選挙で掲げたマニフェストは消費税率の引き上げに触れておらず、当時党代表だった鳩山由紀夫前首相は「私どもが政権を担う4年間、消費税の増税をする必要がない」と明言していた。党代表が菅氏に交代したとはいえ、わずか1年足らずで党の基本政策をひっくり返したことは、党内外の批判を呼びそうだ。

 この日発表された民主党の参院選マニフェストでは、消費税について「早期に結論を得ることをめざして、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始する」とだけ書かれている。しかし首相は会見で、具体的な税率について自民党案の10%を参考にする、と踏み込んだ。党内の正式な手続きを経ないまま、首相自身の公約として打ち出したかたちだ。「大きな税制改革を行う場合は、国民に信を問うのがあるべき道だ」とも述べた。

 自民党も17日に発表した参院選公約で、消費税率について「当面10%とする」としており、7月11日投開票の参院選は、2大政党がともに具体的な消費税率の引き上げ幅を掲げて戦う構図になる。

 首相は、具体的な道筋について「政府税制調査会で2010年度内に、あるべき税率や逆進性対策を含む消費税の改革案をまとめていきたい」と表明。さらに「超党派での幅広い合意を目指す努力を行いたい」と、6月11日の所信表明演説で各党に呼びかけた「財政健全化検討会議」で合意を目指す意向を示した。

 一方で、「超党派での法案提出が難しい場合は、民主党が中心になって改革案を取りまとめたい」として、最終的には、民主党単独で引き上げに踏み切ることもあり得るという考えも明らかにした。

 具体的な引き上げ時期について、会見に同席した玄葉光一郎政調会長は「2010年度内に政府税調のとりまとめができ、超党派ですぐに合意したとしても、実際に実施するまでには今から2年以上かかる」と述べ、最速でも12年度秋以降になるとの見通しを示した。

 民主党が17日に発表したマニフェストでは、11年度の国債発行額は10年度を上回らないよう全力をあげる▽20年度までに基礎的財政収支の黒字化を達成する▽衆院の比例定数を80、参院の定数を40程度削減▽11年度に公共事業をはじめとする補助金の一括交付金化――などが柱となっている。また、総選挙マニフェストで中学生までの子ども1人あたり月に2万6千円を支給するとしていた「子ども手当」は、「1万3千円から上積みし、現物サービスにも代えられるようにする」と明記し、満額支給を断念した。
 
 《民主 参院選公約まとめる》NHK/10年6月17日 20時1分)

民主党は、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始し、早期に結論を得ることを目指すとした参議院選挙の公約を発表しました。

それによりますと、元気な日本を復活させるため「強い経済、強い財政、強い社会保障」という「第三の道」を目指すとしています。

まず「強い経済」では、西暦2020年度までの平均で、名目の経済成長率を3%超、物価の変動を除いた実質の経済成長率を2%超に設定しています。

具体的な政策としては、法人税制は国際競争力の維持・強化などの観点から見直し、中小企業向けの法人税率は18%から11%に引き下げるとしています。

次に「強い財政」では、新たな政策の財源は既存の予算の削減や収入増によってねん出することを原則とし、来年度の国債発行額は今年度の発行額を上回らないよう全力をあげるとしています。

そして今回の公約では消費税について初めて踏み込み、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始し、早期に結論を得ることを目指すとしています。

そのうえで、10年後の2020年度までに、政策に必要な経費を税金でどれだけ賄えているかを示す基礎的財政収支の黒字化を達成するとしています。「強い社会保障」では、去年の政権公約を踏襲し、年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現するためにも税制の抜本改革を実施するとしたほか、後期高齢者医療制度は廃止し、平成25年度から新しい高齢者医療制度をスタートさせるとしています。

一方、「子育て・教育」の分野では、来年度から月額2万6000円を支給するとしていた子ども手当について「1万3000円から上積みする」としましたが、具体的な金額は明示しませんでした。そして「地域の実情に応じて現物サービスにも代えられるようにし、保育所の定員増や、給食の無料化などを検討する」として、衆議院選挙の政権公約を修正しました。

また衆議院選挙で掲げた高速道路の無料化については「無料化した際の効果や、ほかの公共交通の状況に留意しつつ、段階的に原則無料とする」として、実施の時期は明記されませんでした。

鳩山前政権で大きな問題となった政治とカネについては「政治不信をふっしょくできなかった点は率直におわびしたい」としたうえで、できる限り早期に、企業・団体献金の禁止や、参議院の定数の40程度削減、衆議院の比例代表の定数の80削減を実現するとしています。

また、アメリカ軍普天間基地の移設問題については「日米合意に基づいて、沖縄の負担軽減に全力を尽くす」としています。

このほか、国民新党の亀井代表の閣僚辞任につながった郵政改革法案については、次の国会で「最優先課題として速やかな成立を図る」としています。

さらに衆議院選挙の政権公約では政策ごとに必要な予算や実施時期を示した工程表が盛り込まれていましたが、今回の公約には明記されませんでした。

一方、衆議院選挙の政権公約の進捗状況についてもまとめ、179の政策のうち、高校の授業料の実質無償化など、およそ20%に当たる35の政策を完全に実施できたとしています。
 
 《消費税率で首相「自民提案の10%を参考に」》YOMIURI ONLINE2010年6月18日00時34分)

 首相は、消費税について「2010年度内にあるべき税率や改革案の取りまとめを目指したい。当面の税率は、自民党が提案している10%を一つの参考にしたい」と述べ、10%への引き上げを目指し、今年度中に具体案をまとめる考えを表明した。さらに、超党派での関連法の改正を目指すとしたうえで、「困難な場合には民主党が中心となって取りまとめたい」と語った。

 首相は、「大きな税制改正を行う場合は、国民に信を問うのが本来あるべき姿だ」と述べ、税率引き上げを争点とした衆院解散・総選挙に含みを残した。「(税制改正の)進め方は、どういう政党と合意形成できるか(にもより)、今の段階で『何年度からどうする』と言うのは難しい」とも強調した。

 引き上げ時期について、同席した玄葉政調会長は「仮に10年度内に超党派で合意したとしても、実際に実施されるのは2年以上かかり、12年秋が最速となる」と語った。税率の10%については「最終的に『それで足りるのか』という議論になるかもしれない」と指摘した。参院選後に党内に財政健全化プロジェクトチームを設けて税制改革案をまとめる意向を表明した。

 玄葉氏は、公約に盛り込んだ法人税率引き下げの時期について「消費税を含めた税制抜本改革の時に実施するか、先行的に実施する選択肢もある」と語った。昨年の衆院選政権公約(マニフェスト)の柱に据えた子ども手当の満額支給を見送ったことなどに関しては、「率直に国民におわびしたい」と陳謝した。

 公約は、首相が掲げる「強い経済、強い財政、強い社会保障」を前面に押し出し、経済成長と財政再建、社会保障充実を一体的に実現する方針を示した。財政再建については「早期に結論を得ることをめざして、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始する」と明記した。一方、子ども手当は「財源を確保しつつ、すでに支給している1万3000円から上積みする」との表現にとどめた。
 
 《選挙:参院選 民主・自民、マニフェスト発表 消費増税」競い合い》毎日jp/2010年6月18日)

 <分析>

 ◇菅首相も「10%」言及

 民主、自民両党は17日、参院選のマニフェスト(政権公約)を発表した。菅直人首相は東京都内で記者会見し、消費税増税について「税率については自民党が(参院選公約で)提案している10%という数字を一つの参考にさせていただきたい」と述べ、具体的な税率に初めて言及した。また「10年度内にあるべき税率や、逆進性対策を含む消費税の改革案を取りまとめていきたい」と明言した。自民党もマニフェストで消費税率を10%としたうえで「超党派による円卓会議」を提案した。参院選は、与党・民主党と最大野党の自民党がともに消費増税を掲げて戦う異例の展開となる。

 首相は記者会見で消費増税について「幅広い合意を得ることができれば超党派で法案を提出し、成立を目指す」とも語った。民主党マニフェストに明記していない税率10%に言及したのは、自民党への誘い水の意味がある。税率引き上げを衆院選で国民に問うかについては「原則的には大きな税制改正を行う時には、実施前に判断をいただくことが必要だ。ただ、その進み方は今の段階で何年度からどうするかは言うことが難しい」と述べるにとどめた。だが、玄葉光一郎政調会長は「最速では12年度秋に上がる」と語った。

 首相の「10%」発言に、民主党内では早くも反発が出た。輿石東参院議員会長や平野博文前官房長官、樽床伸二国対委員長、細野豪志幹事長代理らが17日夜、東京都内の日本料理店に集まった。小沢一郎前幹事長に近い議員が多く、会合後、高嶋良充参院幹事長は「期限を切るとか何%引き上げるとか言ったのならば勇み足だ。選挙に悪影響を及ぼす」と批判した。

 昨年のマニフェストは、子ども手当などで家計の可処分所得を増やし、内需主導の経済成長を目指すとした。しかし、事業仕分けなどで確保できた恒久的な財源は2兆円強。国と地方の長期債務残高が国内総生産(GDP)の2倍近くまで膨らみ市場の視線が厳しさを増す中で、財政赤字を膨らませるのは難しい。「家計への直接支援」から、路線を転換せざるをえなかった。

 このため、参院選マニフェストでは「早期に結論を得ることを目指し、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始」と明記。ただ、法人税は「引き下げ」とした。首相が目指すのは「強い経済、強い財政、強い社会保障」。増税で財源を確保し、医療、介護など成長が見込める分野に集中的に投入すれば、新たな雇用が生み出され、経済成長を促せるとのシナリオだ。同時に、財政再建と社会保障の充実も図れるとする。外需を取り込むため、インフラ輸出の促進も盛り込んだ。【中田卓二、坂井隆之、小山由宇】

 どの記事のどこにも、「菅直人が明日から消費税を上げるんじゃないか」とは書いていない。そういった文脈での記述もない。

 「次の総選挙まで1円も上げない。このところだけ外して報道が流れた」という事実にしても記事のどこからも窺うことはできない。

 逆にどの記事も「超党派協議」を書き込んでいる。超党派協議のプロセスを経た決定としている以上、「明日から消費税を上げるんじゃないか」という報道は不可能となる。

 より具体的な引き上げ時期については菅首相は話していないが、マニフェスト発表の場に同席していた玄葉政調会長の発言を「NHK」記事を除いて他は伝えている。

 「asahi.com」記事――〈玄葉光一郎政調会長は「2010年度内に政府税調のとりまとめができ、超党派ですぐに合意したとしても、実際に実施するまでには今から2年以上かかる」と述べ、最速でも12年度秋以降になるとの見通しを示した。〉――

 「YOMIURI ONLINE」記事――〈引き上げ時期について、同席した玄葉政調会長は「仮に10年度内に超党派で合意したとしても、実際に実施されるのは2年以上かかり、12年秋が最速となる」と語った。税率の10%については「最終的に『それで足りるのか』という議論になるかもしれない」と指摘した。参院選後に党内に財政健全化プロジェクトチームを設けて税制改革案をまとめる意向を表明した。〉――

 「毎日jp」記事――〈玄葉光一郎政調会長は「最速では12年度秋に上がる」と語った。〉――

 玄葉政調会長発言の報道は、「菅直人が明日から消費税を上げるんじゃないか」と書かなかったことの有力な傍証となり得る。「次の総選挙まで1円も上げない。このところだけ外して報道が流れた」わけではないことの決定的証拠となり得る。

 菅首相は事実でないことを事実とした。参院選の状況が民主党に不利となった原因が巷間伝えられているように自身の消費税発言にあるのではなく、マスコミの報道の仕方にあるとするための非事実の事実化なのだから、決定的までにウソ・ゴマカシの類に入る。

 ウソ・ゴマカシまで働いて、自身の過ちを、少なくとも不首尾をマスコミ報道に責任転嫁して、自身を正しいとした。

 これは自己正当化のために事実ではないことを事実とする、国民までも誤魔化す情報操作を行ったことを意味する。

 ここに不誠実な性格が些かも関与していないと果たして言えるだろうか。NHKテレビで、菅首相は市民運動家出身で、市民目線を大事にしていると紹介していたが、市民目線は自己正当化のためにウソ・ゴマカシまで働く不誠実な性格の上に成り立つだろうか。

 不誠実を力とした指導力はいつかは破綻する。

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