民主党マニフェスト「政治家自らが身を削る」は消費税増税を条件としない景気回復を条件とする

2010-07-26 08:04:18 | Weblog

 
 「朝日新聞社」が7月12、13日実施した世論調査の消費税関連の質問と回答。(カッコ内は7月3、4日前回調査)

◆消費税の引き上げに賛成ですか。反対ですか。

賛成 35(39)  

反対 54(48)

◆今回の選挙で投票先を決めるとき、菅首相の消費税をめぐる発言や対応を重視しましたか。重視しませんでしたか。

重視した   32 

重視しない 57

◆消費税引き上げの議論は進めた方がよいと思いますか。進めない方がよいと思いますか。

進めた方がよい  63

進めない方がよい 29

 
 「NHK」が7月17日~19日に行った世論調査の同じく消費税に関する質問と回答。

消費税率の引き上げへの賛否

「賛成」       ――30%、
「反対」       ――31%、
「どちらともいえない」――35%

菅総理大臣が税制の抜本改革について超党派で議論を始めたいとしていることをどう思うか

「始めるべきだ」   ――60%、
「始めるべきではない」―― 9%、
「どちらともいえない」――26%

 超党派議論は「朝日」が肯定は「63%」、「NHK」が「60%」のほぼ同じ傾向の過半数以上を占めているのに対して、増税に関しては「朝日」が賛成「35%」、反対「54%」、「NHK」は賛成「31%」、反対「31%」、どちらともいえない「35%」。

 超党派議論は増税方向の議論を目的としているもので、減税方向の議論を目的としているものではないことは国民は百も承知しているはずである。にも関わらず、増税へと進む議論に賛成を示していながら、議論に賛成する程には増税には賛成を示していない。

 この矛盾する方向の意思表示は誰が見ても、消費税増税の議論は構わないが、消費税が上がるのは生活上の実際問題としては反対だという意思表示の現れであろう。

 議論は構わないということは日本の財政悪化状況からすれば、消費税増税は必要だと頭では理解していることを示している。ギリシャの財政破綻を持ち出して、日本も遠からず多くの国民の生活が破綻し、社会保障が多くの面で破綻すると盛んに言われれば、誰だって頭では理解せざるを得ない。

 だが、頭の理解と生活上の実際問題とは別利害だと言うわけである。

 民主党は2009年衆院選マニフェストで、「衆議院の比例定数を80削減する。参議院については選挙制度の抜本的改革の中で、衆議院に準じて削減する」、そして議員歳費に関しては、議員定数削減による歳費カットを打ち出した。

 2010年参議院選マニフェストでは、議員定数に関しては、「政治改革 参議院の定数を40程度削減します。衆議院は比例定数を80削減します」を掲げ、議員歳費と国会議員経費に関して、「国会議員の歳費を日割りにするとともに、国会の委員長手当などを見直すことで、国会議員の経費を2割削減します」と謳っている。

 自民党の2010年《自民党政策集 J-ファイル》(マニフェスト)には、国会議員削減に関しては、「衆議員・参議院の国会議員定数を3年後に722名から650名、1割削減し、6年後には国会議員定数を500名に3割削減します」、「総人件費改革」について、「平成17年にわが党で決定した10年で国家公務員を20%、81000人を純減する計画(過去4年間で実施済み:約45000人)について可能な限りスピードを速めて取り組みます。

 また民主党政権は自民党政権時に策定した22年までに5.7%、約19000人の純減計画を16000人に下方修正しましたが、これを復活させ、断行します。

 更に中小企業の実情を踏まえてた公務員給与の引き下げ、道州・自治体との重複排除による国の出先機関の廃止、各府省共通の間接業務の一括外部化、業務の無駄撲滅により、総人件費を2割削減します」としている。

 但し、調べた限りでは議員歳費の日割りについての言及はない。

 先の当ブログ《どうも仙谷官房長官の言う議員歳費カット「低い方に合わせるように足を引っ張り合う」が理解できない》で次のように書いた。

 〈菅首相の「議員自らが血を流す姿勢をきちんと示す」にしても、民主党マニフェストの「政治家自らが身を削る」にしても、消費税増税に対する代償行為と位置づけているからだろう。国民のみに犠牲を強いたのでは不公平感を拭えず、政治不信を高めるばかりである、政治家も何らかの犠牲を払って、国民の犠牲に応えなければならないと。

 みんなの党のアジェンダ(選挙公約)も最初に、「増税の前にやるべきことがある!-まず国会議員や官僚が身を切るべきだ-」と謳って、消費税増税に対する代償行為と位置づけている。

 どの党のどの政策、法案が代償案として明確な根拠に基づいて構築されているか、その妥当性を問う検証・議論を経た最もふさわしい政策、法案を国会が採用できなければ、いわば議員歳費の適切なカット、適切な定数削減が実行できなければ、消費税増税もやめるべきだろう。

 実行できないまま消費税税増税を行った場合、国民にのみ一方的に犠牲を強いる政策となり、国会議員にも犠牲を求める代償策を実行しないまま不公平を残すからだ。〉――

 このブログでは、どちらが先に「身を削る」かの優先順位に関しては書かなかった。政治家が先なのは当然なことだが、少なくとも菅首相の最初の消費税発言にはそのことを自覚した節が見当たらなかった。

 国民に最初に「身を削る」ことをさせて、後から政治家が「身を削る」ことをしますでは国民に対する政治家の責任が果たせないから、「身を削る」ことを国民に求める前に先ず政治家自身が「身を削る」ことが必要だろうし、当然、その趣旨で政治家は菅首相を除いて発言していたはずだ。

 まさか逆の趣旨で発言していたわけはあるまい。もし逆で果たせると言うなら、果たせることを説明して、消費費税を先に上げればいい。そんな勇気のある、あるいはバカな政治家はいまい。 

 当然、「身を削る」の言葉は重い。軽いはずはない。言葉に対する責任の点からも守らなければならない“公約”とも言える言葉のはずだ。少なくとも国民との約束と言える。

 民主党の樽床国対委員長も7月6日夜、さいたま市内開催の集会に上田埼玉県知事と共に参加し、「鳩山前総理は『次の衆院選挙まで消費税を上げない』、菅総理は『色々議論したうえで次の衆院選挙で真を問う』と発言しており、同じ意味であり、方針は変わっていない」と菅首相の消費税発言の影響を打ち消す趣旨の発言をしてから、次の臨時国会で衆院議員の定数を削減する方針を決めていることを明かにして、「隗より始めよ、自分たちの身を切ることなしに全てのことは始まらない」(民主党HP)と消費税増税の犠牲よりも議員定数削減の犠牲の方が先だと言っている。

 まさしく国民が「身を削る」ことよりも政治家(国会議員)が「身を削る」ことの方が先だと優先順位に言及した発言となっている。

 また民主党も自民党もみんなの党も、公務員の削減を掲げている。公務員にしても職業上の身分・収入は違えても、日本社会の生活者として存在している点では一般国民と条件を同じくしている。

 公務員削減という名目で人員整理したとしても、社会の生活者として存在していけるだけの保障を設けなければならないはずだ。「百年に一度の金融危機」真っ盛りの間は民間企業が我先に非正規労働者のクビを切り、生活の保証もないままに社会に放り出した。その結果、セーフティネットが問題となり、自民党麻生政権、民主党鳩山政権共に取り繕いの様々な手を打った。

 当然、公務員の人員整理に於いてもセーフティネットは必要となる。第一番のセーフティネットは失業手当の給付期間を伸ばすといった従来どおりの政策ではなく、自分たちで短時間に再就職先を見つけることができる景気状況であろう。

 ということなら、消費税を増税するにしても、公務員を削減するにしても、議員定数削減等、国会議員が「身を削る」政策実現を先に持ってきた、消費税増税を条件としない景気回復が必要となる。

 景気回復が消費税増税による国民の「身を削る」犠牲にしても、公務員削減による人員整理された公務員の犠牲にしても、より軽くすることができるより有効な条件となるということである。

 また、こういった展開を用意することこそが政治家の国民に対する務めであるはずだ。国会議員が国民に負った責任の履行となる。民主党としたら、「国民の生活が第一」の約束を果たすことができる。

 景気回復後の消費税増税と言うことなら、各政策の、特に社会保障関係の実行不足分の手当に用いるとしても、財政再建にまわすことが主たる目的となるのではないだろうか。

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