民主党の枝野幹事長、安住選挙対策委員長が7月14日から党本部で行っている参院選敗因の総括を目的とした党の都道府県連代表とのヒアリング形式の会談。
最終日16日の民主党静岡県連会長牧野聖修衆院議員にマスコミの注目が集まった。
《民主ヒアリング最終日 小沢氏の責任問う声》(日テレNEWS24/2010年7月16日 19:26)
定数2以上の選挙区に2人の候補者を立てた小沢戦略が最大の民主党敗因で、その責任は大きいとの批判の声を上げたという。
会談後の記者会見
牧野聖修「小沢さんは拡大路線をとって、どちらかというと思い上がりといいますか、そういう意味で拡大路線をとった。そのことが大きな失敗の原因だったと思います。(小沢さん)本人が責任を取らなかったら、離党勧告をしろと、私は(執行部に)言いました」
記者の前でも堂々と小沢前幹事長批判を展開し、辞職勧告しろと執行部に迫ったことまで披露したのだから、なかなかの議員魂と言うか、政治家魂と言うか、見事なものである。
牧野聖修「小沢氏から活動費を止められ、いじめられた」
静岡県では小沢氏が県連の反対を押し切って現職のほかに2人目の候補者を擁立。小沢氏が擁立した新人は落選したと記事は解説している。
私事だが、この選挙区に所属していて、菅内閣支持率と民主党支持率から見て、死に票になるなと思いつつ、小沢氏が擁立し落選した中本奈緒子氏(30)に投票した。
活動費を止められたというのは当初小沢主導の党本部2人目擁立に県連が反対、そのことの影響であった。
《参院選’10静岡:党本部に逆らい兵糧攻め? 牧野・民主県連会長が明かす/静岡》(毎日jp/2010年5月24日)
県連が擁立を決定した1人目の候補者、現職藤本祐司氏(53)のパーティーでの挨拶の中で牧野聖修議員は暴露した。
牧野「党本部から『公認料を含め選挙資金を一切出さない』と言われた。・・・・理屈が通らない」
佐藤泰介・党財務委員長から「党本部の言うことを聞かない県連へのペナルティーだ。・・・・選挙資金を切られたくないなら小沢幹事長に謝りに行くように」と伝えられたこと、県連の活動費も止めると告げられたことなどを明かしたという。
あとで記者団に次のように話している。
牧野「小沢一郎幹事長の意向だろう」
そして公認料などが月内に届かない場合、小沢氏に直接質す考えを示したという。
1人目の候補者、現職藤本祐司は記者団に次のように話している。
藤本「小沢氏がそういう指示を実際にしているのか断定できない」
但し、〈再選を目指す当選同期組が党から既に計700万円の選挙活動費を受けた一方、藤本氏には3月に100万円を支給されてから支援がないと説明した。〉という。
静岡県連は小沢擁立の2人目の新人中本奈緒子(30)を支援しない方針を決定。民主党静岡県連会長牧野聖修は相当に感情的になっていたようだが、怒りの牧野聖修といったところか。
テレビが伝えていた参院選敗因総括の会談後に記者団に小沢批判を繰り広げていた牧野聖修はまさに怒りの牧野聖修といったところだった。
この怒りの背景には党公認料等のカネを打ち切られたことへの恨みも尾を引いていたのだろう。それが「小沢氏から活動費を止められ、いじめられた」の恨み節につながったのではないのか。
上記記事は、〈憤まんやる方ない様子だった。〉と書いている。
怒りの牧野聖修の発言を他の記事からも拾ってみる。
《「小沢氏に辞職勧告を」民主・静岡県連会長》(YOMIURI ONLINE/2010年7月16日22時51分)
怒りの牧野聖修「選挙責任者だった小沢一郎前幹事長の責任は重い。万死に値する罪だ」
怒りの牧野聖修「(小沢氏は)政治とカネの問題もあり、執行部は即刻、議員辞職勧告か離党勧告をすべきだ」
記事の解説。〈終了後は記者団に、「余力を1人区に回せばよかった」と述べ、静岡選挙区などの2人区の多くに2人の候補を擁立した小沢氏の参院選戦略が大敗の原因になったとする見方を示した。〉
ヒヤリングした枝野幹事長の反応。
〈枝野幹事長は意見交換会で、「聞きとめておく」と述べただけだった。〉――
この「聞きとめておく」が言葉面からすると、その場限りの「聞きとめておく」の可能性が高く、怒りの牧野聖修の怒りは相手に届かない不発弾で終わる次なる可能性が生じかねない。
《参院選大敗「小沢氏に責任」=静岡県連会長が批判-民主》(時事ドットコム//2010/07/16-13:44)
怒りの牧野聖修「小沢一郎前幹事長が強引な選挙戦略をやって失敗した」
怒りの牧野聖修「小沢氏が拡大路線を取ったことが失敗の原因だった。選挙の戦略・戦術の問題だけでなく、政治とカネの問題でも本人は逃げ回っている(ことが影響した)」
“選挙の小沢”形無しといったところだ。怒りの牧野聖修のこの苦い選挙経験が牧野聖修をして“選挙の牧野”への学習材料となって、ゆくゆくは民主党幹事長にまで登り詰めるのではないのか。
《民主党内の一部から小沢氏に代表選出馬待望論 反小沢勢力からは離党勧告を求める声も》(FNN/10/07/16 19:28)
怒りの牧野聖修「選挙戦術の失敗だけでなくて、(検察)審査会の決定が、また厳しいものが出たということは、国民が、それだけ小沢さんに対して、許していないということだ」
《民主・牧野氏が小沢氏に離党勧告 選挙戦略で「万死に値する」と批判》(MSN産経/2010.7.16 12:27)
怒りの牧野聖修「選挙責任者としての小沢一郎前幹事長の責任は大きい。万死に値する。本人が責任をとらないなら、離党勧告をしてほしい」
枝野幹事長の反応の紹介も、「受け止めておく」の似たり寄ったりとなっている。
記事は最後の次のような解説を加えている。
〈改選2議席の選挙区に2人を擁立する民主党の選挙戦略は小沢氏が発案し、現執行部も踏襲した。牧野氏は「1人区に集中すべきだった」として選挙戦術の誤りを指摘した。民主党は静岡選挙区(改選数2)で現職と新人の2人を擁立。当選は現職議員のみだった。〉・・・・
記事は、改選2議席2人擁立は小沢前幹事長が発案、〈現執行部も踏襲した。〉としているが、単に機械的に踏襲したわけではない。その修正が可能でありながら、鳩山・小沢執行部に代る菅・枝野等の新執行部が修正を必要としなかった“踏襲”であった。
いわば、修正の機会がありながら、新執行部がその必要なしと判断した“踏襲”だったはずだ。
菅内閣は6月8日に天皇の親任を受けて正式に発足させているが、6月4日に既に衆参両院で首相指名を受けている。
《民主静岡県連 “候補者2人” 見直し求める》(第一テレビ/10/6/7 11:56)
民主党静岡県連は菅新代表による新執行部発足を受けて6月7日に参議院選挙静岡選挙区候補者2人擁立の党本部方針の見直しを求める決議をしている。
〈県連の牧野聖修会長は、新執行部が参院選に関する調査を行うと聞いていると述べ、県連が求める現職の藤本祐司さんへの候補一本化に期待を寄せた。また、党本部から藤本さんに公認料などが支払われていない問題も近く用意すると言われていると話した。 〉と記事は書いている。
新執行部側も見直しの修正に動く姿勢を示していた。
《選挙:参院選 民主・安住氏、複数擁立「見直しも」》(毎日jp/2010年6月7日)
民主党選挙対策委員長に内定した安住淳衆院安全保障委員長の発言を伝えている。
安住「どうしても共倒れの懸念があるとか、県連の話も聞かなければならない。状況を見ながら判断する時があると思う」
《“経験者”優遇 主選対委員長 複数擁立見直しに言及》(スポニチ/2010年06月07日 11:19)
安住「無理に立てて共倒れの懸念がある選挙区は、菅直人首相と相談しないといけない。・・・・この党は若い。政権運営上、経験を積んだ現職議員を落とせない」
菅首相と相談してのこととして、現職優先を打ち出している。
小沢幹事長の後任として新幹事長に就任した一方の枝野幹事長の動向――
《枝野幹事長、小沢氏喚問に慎重姿勢 運営の透明化推進》(asahi.com/2010年6月8日3時20分)
6月7日夜のNHKの番組――
枝野新幹事長「改選数2のところに2人擁立する考え方は間違っていない」
但し――
枝野新幹事長「2人立てると共倒れのリスクが高いところもあり、見直すべきところがあれば検討したい」
選挙情勢を見た上での部分的見直しへの言及となっている。
いわば部分的修正込みの「改選数2人以上・2人擁立」は既に菅首相、枝野幹事長、安住選対委員長等の新執行部が関わった判断となっている。
選挙方針を小沢前幹事長からバトンタッチを受けたものの、修正の機会がありながら、新執行部は基本的な戦術に関してはその必要なしと判断した。
要はその判断に誤りがあったかどうかが問題となる。
民主党牧野聖修はデマを飛ばして国民を惑わす類いの政治家か(2)に続く
枝野幹事長の「改選数2のところに2人擁立する考え方は間違っていない」発言は6月7日夜のNHKの番組でのことだが、6月10日の産経新聞どのインタビューでは小沢前幹事長が進めた「改選数2人以上・2人擁立」に関してより踏み込んだ肯定的な答を出している。
《枝野幹事長インタビュー 外国人参政権法案「拙速にできない」 複数擁立見直さず》(MSN産経/2010.6.10 21:58)
枝野幹事長「現時点の情勢分析では(見直しを)やらなくても済む」
情勢分析をした上でのことだと自身の判断の間違いのなさに言及している。静岡県連の怒りの牧野聖修も枝野幹事長のこの判断の報告を受けたはずであるし、その判断に自ら判断して従ったということでなければならない。
新執行部の判断に合わせた怒りの牧野の判断が形作られた経緯を伝える記事がある。
《「無理やり降ろせない」民主・静岡、候補者一本化は困難》(YOMIURI ONLINE/2010年6月11日14時08分)
枝野幹事長と安住淳・選挙対策委員長は6月10日、都内の党本部で党静岡県連の牧野聖修会長(衆院静岡1区)及び参院選静岡選挙区(改選定数2)で再選を目指す藤本祐司・国土交通政務官と会談している。
枝野幹事長が産経新聞のインタビューを受けて、「現時点の情勢分析では(見直しを)やらなくても済む」と答えたのと同じ6月10日だが、時間的にどちらが後先かは分からなくても、枝野幹事長自身その他が判断して党の方針とした、そのことに添う言動となったはずだ。
静岡県連が、〈同選挙区で藤本氏と小沢前幹事長主導で擁立した新人の中本奈緒子氏の当選も目指すとする党本部方針を見直し、事実上2人を一本化するよう求めていた。〉ことに対して、枝野幹事長は次のように答えている。
枝野幹事長「一本化は困難。・・・・無理やり(降ろすことは)できないと思う」
6月7日夜のNHK番組で、「2人立てると共倒れのリスクが高いところもあり、見直すべきところがあれば検討したい」と言っているのだから、その方針を踏まえた「無理やり(降ろすことは)できないと思う」の発言でなければならないと考えると、単に相手を納得させるために言葉のあやとして用いた口実でなければならない。
怒りの牧野聖修「まだ正式決定ではないが、仕方ない。これまで通りやるしかない」
別の県連幹部「中本氏が自ら降りない限り、一本化は難しいと思っていた。無理に降ろしてもマイナスになるだけだった」
この時点での静岡選挙区一本化断念・2人擁立に関わる両者の判断は小沢幹事長の判断から離れて、それとは全然無関係のあくまでも枝野幹事長以下の新執行部の判断として改めて提示されたものであり、と同時に、「正式決定ではないが」としているが、2人擁立のまま選挙戦に突入したのだから、それを最終的に受入れた判断は怒りの牧野聖修以下の静岡県連幹部のものであろう。
この場面に於ける決定の責任及び決定承諾の責任に小沢前幹事長は何ら関わっていない。
会合には小宮山洋子・財務委員長も加わっていたと記事は書いている。財務委員長とは選挙資金も扱うらしい。〈県連では静岡のみ、選挙区では静岡や秋田など6人の候補に一部の資金が支払われていなかったことを明らかに〉した上で――
小宮山「ほかの5件と比べ、なぜか静岡だけは特別視されていた。・・・・誰が見ても前執行部のお金の扱い方は公平ではなかった。理由も不明で不透明。おかしいことはなるべく早く是正したい」
確かに不公平な扱いはあったが、この問題は新執行部発足で解決したはずである。
枝野幹事長が、「2人立てると共倒れのリスクが高いところもあり、見直すべきところがあれば検討したい」から、「改選数2のところに2人擁立する考え方は間違っていない」、あるいは「現時点の情勢分析では(見直しを)やらなくても済む」に至った判断の根拠は菅首相指名を受けた各種マスコミの世論調査であろう。
一例を挙げると、朝日新聞社が6月4、5の両日実施した全国緊急世論調査(電話)を見てみる。前回調査は6月2、3日。枝野幹事長が「改選数2のところに2人擁立する考え方は間違っていない」と6月7日夜のNHK番組で発言した約24時間前の調査発表である。
《菅新首相「期待」59%、民主は回復 朝日新聞世論調査》(asahi.com/2010年6月5日22時57分)
◆「菅首相に期待するか」民主党の菅直人さんが、新しい首相に選ばれました。菅首相に期待しますか。期待しませんか。
期待する 59
期待しない 33
◆「政党支持」
民主党 32(前回調査 27)
自民党 14(前回調査 16)
◆「参院選比例区の投票先」
民主党 33(前回調査28)
自民党 17(前回調査20)
◆今後も民主党を中心にした政権が続いたほうがよいと思いますか。そうは思いませんか。
民主党を中心にした政権が続いたほうがよい 38
そうは思わない 38
◆菅さんが首相になることで、民主党は変わると思いますか。そうは思いませんか。
民主党は変わる 42
そうは思わない 49
◆菅さんは「経済・財政・社会の改革を進める」としています。菅さんは改革を進められると思いますか。
改革を進められる 43
そうは思わない 41
◆菅さんは、財政再建を重視する考えを示しています。菅さんのこの姿勢を評価しますか。評価しませんか。
評価する 75
評価しない 11
◆菅さんは、民主党の幹事長を辞める小沢さんについて「しばらく静かにしていただいたほうがいい」と述べ、距離を置く考えを示しました。菅さんのこの姿勢を評価しますか。評価しませんか。
評価する 82
評価しない 10
◆日本の政治が大きく変わってほしいですか。それほどでもありませんか。
大きく変わってほしい 78
それほどでもない 15
◆できるだけ早く衆議院を解散して、総選挙を実施すべきだと思いますか。急ぐ必要はないと思いますか。
できるだけ早く実施すべきだ 33
急ぐ必要はない 57
〈菅さんが首相になることで、民主党は変わると思いますか。そうは思いませんか。〉と、〈菅さんは「経済・財政・社会の改革を進める」としています。菅さんは改革を進められると思いますか〉、〈今後も民主党を中心にした政権が続いたほうがよいと思いますか。そうは思いませんか。 〉の3点はほぼ拮抗しているものの、菅首相への期待度、政党支持率、比例区投票先に関しては各マスコミの世論調査に共通する傾向であり、3点を十分に補っている。
いわば、枝野幹事長の「改選数2のところに2人擁立する考え方は間違っていない」、あるいは「現時点の情勢分析では(見直しを)やらなくても済む」の判断は発言時点では間違っていなかったと言える。だから通常国会を早々に閉会にして、参議院選挙を急いだ。
「改選数2人以上・2人擁立」は小沢前幹事長の判断から離れて、新執行部の判断となり、その判断を受入れたということは怒りの牧野聖修は自身の判断としたのである。小沢前幹事長の判断に常に反撥を示していたから、自身の判断としていなかったと言えるが、枝野幹事長を筆頭とする新執行部の判断には反撥を示す記事はない。要は共倒れしなければよかったはずだ。
だが、6月17日の民主党参院選マニフェスト発表記者会見での菅首相の消費税発言に端を発して、菅内閣支持率も政党支持率も比例区投票先も数字を下げていくことになり、枝野幹事長の間違っていなかった当初の判断に狂いを生じせしめたということだろう。
静岡選挙区では県連は藤本氏のみを支援、中本氏はその応援を小沢派の一人を除いて誰もしていない不利な状況に立たされていたのだから、このことと併せて菅内閣支持率低下状況にあっては、2人当選は県連の方で最初から投げていたことでなければならない。
いずれにしても新執行部となって以降は小沢前幹事長の遊説先での消費税増税反対の発言に邪魔されることはあったが、新執行部の主導の下、参議院選挙を戦った。小沢幹事長の手の平で踊っていたわけではない。躍らせていたのは菅首相の消費税発言であろう。
「改選数2人以上・2人擁立」の修正の機会がありながら、新執行部がその必要なしと判断した選挙方針であり、その判断に間違いはなかったが、のちに狂いが生じてきたということである以上、怒りの牧野聖修の参院選大敗の原因は小沢前幹事長の拡大路線だ、思い上がっていた、万死に値する罪だは無実の者に罪を着せる、逆に怒りの牧野の方こそが思い上がっていると言える不遜な独善行為に当たらないだろうか。
さらに言うと、事実ではないことを事実とするデマゴギーを発して国民を惑わす情報操作を行ったことに等しい行為ではないだろうか。
怒りの牧野聖修は09年末以来、普天間基地移設問題での徳之島移設をさも実現可能性あるが如くに鳩山首相に吹き込み“腹案”とさせたハッタリを抱えている。ハッタリだったことは徳之島の3町長も住民の大多数も移設に反対していて、交渉が一向に前に進まないことが証明している。この問題を自らの手で解決してから、小沢前幹事長云々を言うべきではないのか。