野田首相は税金を取って解決という最も安易な道を志している

2012-02-05 10:30:04 | Weblog

 昨2月4日(2012年)、野田首相が慶應義塾大学開催の「社会保障と税の一体改革」をテーマにしたシンポジウムに出席、約250人の学生を前に講演した。昨夕7時のNHKニュースから。

 野田首相(力強い声で)「負担無くして給付なし。これが原則だと思います。

 財政規律を守りながら、社会保障を支えなければなりません。そのために必要な措置というのは安定財源を確保すること。一番、景気動向なども踏まえても、安定した財源としてカウントできるのが消費税。

 お子さんからお年寄りまで、これオールジャパンで出すおカネです。そのことによって、全世代対応型のための社会保障を基本的に支えていきたい。

 社会保障と税の一体改革はもう、待ったなしなんです。先送りしてきた、決断しないままにしてきた、そして大きな問題になってきたテーマなんです。これを放って置くと、ダルマが下り坂を転がるように大きな、大きな玉になってしまって、持ち上げていくことができなくなってしまいます。
 
 そうならないためにも、私の政権のときに結論を出したいと思っています。将来の世代を慮ったときに、今さえ良ければいいという政治をやっているわけにはいかないんですね」

 学生との質疑――

 男子学生「消費税10%で本当に足りるのかなあって言うのが、逆に疑問に思っていまして、例えば社会保障、先程からおっしゃられてるようにドンドン伸びていって、高齢化社会も進んでいるという中で何で10%で足りるってことをおっしゃれるのか――」

 小泉政権時代の教育タウンミーティングのように前以て質問者と質問内容を決めておいたサクラ質問ではないとは思う。

 野田首相「年金制度の抜本改革をやっていく中で、そこは消費税を当てていく。増えていくことは、それは勿論、可能性はあるんでしょう」

 男子学生「仮に今通常国会で、えーとー、消費税増税にかかる法案が成立しなかった場合には、衆院選では、その、マニフェストに消費税というのを明記するでしょうか」

 野田首相「出した以上、通すことを目的とするわけですね。だから、通すと、いう前提で。

 通らなかったらという、マニフェストどうするかということは、これはそういうことは考えていない。通すと。通した後に、これ、選挙いつか分かりません。解散の時期は、ここでは言えませんよ」(以上)

 右手を顔の前で否定の仕草で左右に振りながら、極端に目を細めて人の良さそうなニコニコの至ってご満悦な顔となる。

 「財政規律を守りながら、社会保障を支えなければなりません。そのために必要な措置というのは安定財源を確保すること。一番、景気動向なども踏まえても、安定した財源としてカウントできるのが消費税」と言い、「年金制度の抜本改革をやっていく中で、そこは消費税を当てていく」と言って、自身の社会保障制度改革では消費税のなお一層の増税の可能性に言及した。

 以上の発言を簡略化すると、消費税増税→社会保障制度維持→財政規律維持・財政健全化という方式となる。

 いわば消費税増税を出発点として、それを安定財源として社会保障制度の持続性確保、財政規律確保という発想となっている。

 消費税増税ありきなのである。言葉を替えて言うと、野田首相は消費税増税を絶対命題としている。

 当然、消費税増税を絶対命題とし、「年金制度の抜本改革をやっていく中で、そこは消費税を当てていく」手法を常なる政治姿勢とした場合、消費税が「増えていくことは、それは勿論、可能性はあるんでしょう」という追加増税は自然な成り行きとなる。

 なぜこうなるのかというと、野田首相はかねてから「徹底した歳出削減の取組み」とは言っているが、それが野田首相の中で血肉化していて、「徹底した歳出削減の取組み」を重点的な出発点としていたなら、消費税を常に社会保障制度改革の安定財源とするという発想は出てこないはずだ。

 このことは1月24日(2012年)の第180回国会首相施政方針演説にも現れている。

 野田首相「過去の政権は、予算編成のたびに苦しみ、様々な工夫を凝らして何とかしのいできました。しかし、世界最速の超高齢化が進み、社会保障費の自然増だけで毎年一兆円規模となる状況にある中で、毎年繰り返してきた対症療法は、もう限界です」

 そして消費税増税への言及につなげている。

 いわば「徹底した歳出削減の取組み」を言うものの、ムダを排した効率的な予算編成を伴った歳出削減と歳出削減が可能とする赤字国債の減額、「自然増だけで毎年一兆円規模」の社会保障関連の制度運営の非効率性の改善、過剰性のスリム化、ムダの削減、結果としての社会保障給付費の抑制に向けた強い意志を持った取組みが発言からは見えてこない。

 いきなり消費税を社会保障制度の持続的維持の安定財源だと決めてかかっている。そしてさらなる消費税増税を視野に入れている。

 消費税増税ありき、絶対命題としているから当然の取組みの欠如と言えるが、これでは江戸時代の幕府や藩が自らの財政が苦しくなると新たに税金を課して重税化していく方法と何ら変わらない。

 人のよさそうな最大限のご満悦顔になっていたが、一皮剥くと、江戸時代の情け容赦もなく年貢を取り立てていく悪代官の悪形相を隠しているのかもしれない。

 野田首相は男子学生が消費税関連法案が成立せずに解散した場合、次の衆院選でマニフェストに消費税増税を明記するのかという質問に対して成立を絶対前提とした答弁を行なっているが、「正心誠意」な態度とは言えない。

 いくら「出した以上、通すことを目的」としたとしても、参院与野党逆転のねじれ状況下で成立しない法案は皆無ではない以上、成立を絶対前提とすることができないからだ。

 また、1月16日(2012年)の民主党定期大会の挨拶とも矛盾する。

 野田首相「参議院では少数だから、法案が通らないのではなく、野党のみなさんにどうしてもご理解をいただけない場合は、法案を参議院に送って、野党にもう一度、この法案を潰したら、どうなるかということを、よく考えていただく手法も、ときには採用していこうではありませんか」

 野党が参議院で消費税関連法案を潰す可能性、不成立の可能性に触れている。潰した場合、当然、解散以外に道はなくなる。

 野田消費税から見た場合、野党が前門の虎としたら、小沢氏と小沢氏のグループは後門の狼と見るべきだろう。小沢氏は2月4日までの共同通信の単独インタビューで野田消費税増税法案に反対する姿勢を示している。(関連部分を引用)

 《小沢氏の一問一答》47NEWS/2012/02/04 19:22 【共同通信】)

 【消費税増税】

 ―消費税増税についてどう考えるか。

 小沢元民主党代表「論議そのものは否定しない。ただ、国家の統治機構の転換をはじめとする大改革を断行して公正な仕組みをつくることなしに、増税だけするというのはおかしい。

 国民の反対は、マスコミの世論調査よりはるかに大きい。社会保障と税の一体改革というが、社会保障の方はどこかに行って増税の話ばかりしている。野党の主張は、その点では正しい」

 ―欧州のような金融危機を防ぐため消費税率を引き上げて財政再建すべきだとの主張もあるが。

 小沢元民主党代表「一般的な経済政策として、現在のような不況時に増税などあり得ない。デフレ脱却が日本経済の長年の課題だ。いま消費税増税したら、経済も財政もますます悪くなる。

 補助金の一括交付金化、特別会計、独立行政法人の抜本改革などを行えば、かなりの財源ができるのは間違いない」

 ―中長期的には消費税をどうすべきか。

 小沢元民主党代表「上げるべきだと思う。日本は住民税など直接税の比率が高すぎる。直接税を下げて、国民の手元に自由に使えるお金を残すべきだ。間接税の消費税なら、国民に選択の余地がある」

 ―野田佳彦首相の目指す消費税増税関連法案にどう対応するのか。

 小沢元民主党代表「(閣議決定には)反対する。党執行部に『無理やり法案を通すとなったら反対だ』と昨年のうちに伝えた。(国会の採決でも)反対は反対だ。最初から反対と言っており、何かの拍子に賛成になったらおかしい。筋道が違う。経済政策としてもおかしい。大改革を何もしないで増税するのは、国民を愚弄する背信行為だ」(以上)

 かくかようにねじれ状況や民主党内反対勢力を考えると、成立を絶対前提することは先行き不透明で難しく、万が一不成立で解散・総選挙となった場合はマニフェストに消費税増税を明記すると明快に答えることこそが質問した男子学生に限らず、国民に対する「正心誠意」な態度と言えるはずだ。

 野田首相は2月1日(2012年)の衆院予算院会でマニフェストに関して、「基本的に我々政党が政権を取ったら、こういうことをやりたいんだと、お示しをすることであり、自分たちの理念や魂に関わることだ」と言っている。

 当然、マニフェストに明記すること、そして最後まで戦うことを宣言することこそが自身が言っている“不退転”にも通じることにもなるはずである。

 だが、以前の発言と矛盾させて成立を絶対前提とする不正直・不誠実な態度に終始した。

 不正直・不誠実だからこそ、税金を取って解決という最も安易な道を志すことを可能とすることになる。

 何と悪代官な。人の良さそうなニコニコのご満悦顔に騙されてはいけない。

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