政治が国民の期待に応えていないことは衆参ねじれ状況を受けて何も決めることができない事態に陥っていること、政治が何ら機能していないこと、このことの評価として世論調査が示すことになっている二大政党の民主、自民の政党支持率が各20%以下、支持政党なしの無党派が50%前後の政治不信に現れている。
いわば今の政治は不甲斐ない体たらくを曝している。
中央政治のこのような体たらくの反動として注目を浴びている橋下大阪市長その他の地域勢力への期待の高さであろう。
中央政治の情けない姿は何よりも第一番に鳩山・菅・野田の民主党政権の責任とその能力の問題であり、このことに満足に対処することができない国会議員全体の責任とその覇気(進んで事に当たろうとする意気込み)の問題でもあるはずだ。
何よりも民主党政権に責任はあるが、すべての国会議員を含めた政治全体の問題だということである。
戦後ほぼ一貫して自民党一党独裁の政治状況が続き、その長期政権化によって政治は利益誘導を実体とする腐臭・腐敗を引き起こし、財政悪化の一途を辿って、その軌道修正が格差社会をつくり出した。
一党独裁状態に競争原理を取り入れることによって政策を競争させ、相互に向上を図る機会とするために政権交代の必要性を感じて民主党に投票した。
だが、政権交代は呆気なく幻想と化した。何も解決してくれない状況が続いている。
このことは競争原理を取り入れるだけでは各政党間の相互利害の剥き出しの衝突を招くだけで効果はなく、国民が政府閣僚や国会議員にしっかりしろと思い知らせる何らかの効果ある、より直接的なムチが必要なことを教えている。
最も効果てきめんの第一番のムチは選挙で落とすことだが、全員を落とすことは不可能で、国民の期待に応える政治を行なっていない議員であっても、誰かが当選することになる。
このような当選状況は現在、選挙に当選という形で国会の議席を占めている国会議員の面々が国民の期待に応える政治を行う能力がないままに国会議員のバッジだけはしっかりとつけていることに現れている。
では、どのような効果的なムチがあるだろうか。
政府は国民に負担を与える消費税増税に国民の理解を得るためには、「隗より始めよ」(野田首相)と自らが身を切ることになる国家公務員人権費削減や衆議院定数削減を行う方針でいるが、この方法は政治全体の責任を問うものではないゆえに国民の期待に応えることのできない政治は依然として残ることになる。
あくまでも首相以下の閣僚や全国会議員に直接振るって痛みを思い知らせるムチでなければ、厚顔無恥が多い人種でもあるのだから、国民の期待に応えることのできない政治責任に向けた腹に響くムチとはならない。
現在、首相報酬30パーセント、各閣僚報酬にあっては20パーセント減額の「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」を国会に上程、衆議院で審議中だが、これは東日本大震災への対応等のための歳出削減に資することが目的であって、国民の期待に応え得ない政治責任にムチを与える種類のものではなく、政治不信を撒き散らしている責任に直接痛みを思い知らせることに関してはドジョウのツラにショウベン程度の効果しか出てこないはずだ。
同じカネ責めなら、ムチとしての効果を持たせるために首相の俸給月額2,060,000円、各閣僚俸給1,503,000円を全額返上、国会議員に関しては政党補助金を全額返上、共に議員歳費のみで政治活動を強いるムチこそ、「最善・最強」の方法と言えないだろうか。
今年度各党に交付される予定の政党助成金額を「NHK NEWS WEB」(2012年1月17日)記事から見てみる。
▽民主党 ――165億0400万円
▽自民党 ――101億5400万円
▽公明党 ―― 22億7900万円
▽みんなの党 ―― 11億1800万円
▽社民党 ―― 7億6300万円
▽国民新党 ―― 4億4200万円
▽新党きづな ―― 2億0700万円
▽たちあがれ日本 ―― 1億7300万円
▽新党日本 ―― 1億3600万円
▽新党改革 ―― 1億1900万円
▽新党大地・真民主―― 1億1500万円
政治が国民の期待に応えていないのである。政治が満足に機能していない。政府の責任として閣僚俸給全額返上、国会議員の責任として政党補助金全額返上といったこれくらいの過激なムチでなければムチとしての効果は出てこまい。
議員歳費だけの政治活動となれば、国民が日々強いられている遣り繰り算段も学ぶに違いない。
新人議員、古手議員の区別なく平等を保つために当分の間、政治資金パーティも禁じることにしなければならない。
ムチを与えるための俸給全額返上、政党補助金全額返上である。個人献金者も同調せざるを得なくなり、暫く献金を中止する状況が出てくるかもしれない。
痛みを真に痛みとしたとき、口先だけではない閣僚としての、あるいは国会議員としての責任感、覇気が出てくるはずだ。