細野原発担当相の国会事故調委員長との面会・接触をテレビドラマ的犯罪心理学から勘繰る

2012-02-25 12:08:43 | Weblog

 国会に設置した「国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(以下「国会事故調」)の設置法である「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」が中立・公正な原発事故原因究明を目的に調査対象等の「利害関係者と面会、文書の送付その他の方法により接触すること」を禁じているにも関わらず、調査対象となっている細野豪志原発事故担当相が2月20日(2012年)、国会事故調の黒川清委員長と面会し、接触、「調査の中立性確保」の点で疑問があると批判が起きている。

 細野原発担当相の方は原子力規制庁や原子力安全調査委員会の設置を盛り込んだ原子力組織改革法案の説明を理由に面会・接触したそうだ。

 事故調が批判を受けて急遽HPに経緯を掲載したということから、インターネットを調べてみた。
 

 国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会

新着情報 2012年02月21日(火)
細野環境・原発担当相が国会事故調に原子力組織改革法(案)を説明。 黒川委員長、新組織で原発事故再発防止が可能なのか疑問点を表明。
2月20日、細野豪志環境大臣・原発担当大臣及び原子力安全規制 組織等改革準備室からの申し入れにより、国会事故調は、原子力組織 制度改革法(案)について、細野豪志環境大臣・原発担当相から説明を受けました。

黒川委員長からは、当委員会における過去の参考人聴取等でこれまでに判明した主な問題点を伝えると同時に、政府が法案提出によって4月発足を見込んでいる原子力規制庁、原子力安全調査委員会(仮称)の新組織が、今回の原発事故の原因について十分に考慮されたものなのか、また、この新組織によって事故の再発防止は本当に可能であるのか、などの疑問点を伝えました。

 面会・接触は細野原発担当相の方から申し入れた。

 先ず最初に黒川委員長の側から4月発足方針の原子力規制庁、原子力安全調査委員会(仮称)の新組織に関わる疑問点を伝えたとしている点を取り上げてみる。

 政府及び関係組織の福島原発事故対応を調査・検証する国会事故調が政府の新組織に関わる疑問点を、いくら原子力発電行政に関係している法案であり、組織だからといって、関与する役目を担っているのだろうかと奇異に感じた。余計な口出しではないかと。

 だが、設置法を調べて驚いた。 

 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法

(2011年10月7日法律第112号)
 
 第一章 目的及び設置

第一条  平成23年3三月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故の直接又は間接の原因及び当該事故に伴い発生した被害の直接又は間接の原因並びに関係行政機関その他関係者が当該事故に対し講じた措置及び当該被害の軽減のために講じた措置の内容、当該措置が講じられるまでの経緯並びに当該措置の効果を究明し、又は検証するための調査並びにこれまでの原子力に関する政策の決定又は了解及びその経緯その他の事項についての調査を適確に行うとともに、これらの調査の結果に基づき、原子力に関する基本的な政策及び当該政策に関する事項を所掌する行政組織の在り方の見直しを含む原子力発電所の事故の防止及び原子力発電所の事故に伴い発生する被害の軽減のため講ずべき施策又は措置について提言を行い、もって国会による原子力に関する立法及び行政の監視に関する機能の充実強化に資するため、国会に、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会を置く。

 事故の調査・検証だけではなく、原子力に関わる行政組織の在り方の見直しや今後の事故発生を見通した施策又は措置についての提言と国会による原子力に関する立法及び行政の監視に関する機能の充実強化に資することをも自らの役目と規定している。

 何となく欲張り過ぎているような印象を受けたが、「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は、委員長及び委員9人をもって組織する」としている各メンバー共、優れた知見の持ち主なのだろう。事故の調査・検証を行うと同時に行政組織の在り方の見直しや提言、監視機能の充実強化も同時に行い得る優れた能力を備えているに違いない。

 だとしても、4月1日の原子力規制庁の設置発足と原子力安全調査委員会設置等を盛り込んだ原子力安全確保法案は国会提出中であり、主として国会で審議すべき問題のはずで、細野原発担当相がわざわざ自分から申し入れて自己利害者として「中立性」を疑われることはしなくてもいい常識は備えていたはずだ。

 また、その手の常識は備えていなければならなかった。

 参考までに国会事故調メンバーの経歴を挙げておく。 

委員長 黒川清 (医学博士、東京大学名誉教授、元日本学術会議会長 東京大学医学部卒業)

委員

石橋克彦 (地震学者、神戸大学名誉教授 東京大学理学部地球物理学科卒業の地震学者)

大島賢三 (独立行政法人国際協力機構顧問、元国際連合大使 東京大学法学部卒)

崎山比早子 (医学博士、元放射線医学総合研究所主任研究官 千葉大医学部卒業 マサチューセッツ工科大学研究員 千葉大学院医学研究科修了)

櫻井正史 (弁護士、元名古屋高等検察庁検事長、元防衛省防衛監察監)

田中耕一 (化学者、株式会社島津製作所フェロー 東北大学工学部卒、ノーベル化学賞受章者)

田中三彦 (科学ジャーナリスト 翻訳家 科学評論家 元原子炉製造技術者)

野村修也 (中央大学大学院法務研究科教授、弁護士 中央大学大学院法学研究科博士前期課程修了 中央大学大学院法学研究科博士後期課程中退・法学者)

蜂須賀禮子 (福島県大熊町商工会会長)

横山禎徳 (社会システム・デザイナー、東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム企画・推進責任者)(以上)

 次に黒川委員長は先ず最初に、当委員会における過去の参考人聴取等でこれまでに判明した主な問題点を伝えた。

 国会事故調は2011年12月19日の第1回委員会から2012年2月15日第4回委員会を開催、開催毎の会議録をHPに公表、中間報告も行なっているが、細野原発担当相は招致を受けた参考人の中にその名前はまだ出ていない。

 いわば取調べ前の身であるが、第4回会議で細野とより頻繁な交渉があったはずの班目原子力安全委員会委員長や寺坂前原子力安全・保安院長、木村原子力安全・保安院参与、安生(あんじょう)東京電力福島原子力発電所事故調査委員会事務局長が参考人招致されているが、ここでも細野の名前は出ていない。

 これまでの4回の会議を通して責任に触れるような取り上げ方で名前は一切出ていないということである。

 会議録の中で細野原発担当相の名前が1箇所のみ出てくる場面がある。 

 ○委員長(黒川清君) もうお一人ということなんだけど、もし差し支えなければ、私、ちょっと聞かせていただいてよろしいでしょうか。

去年、もう今年、この一か月ちょっとですけれども、中間貯蔵地その他の問題があって、もちろん一番の避難はいろいろあるんだけれども、第一原発のすぐ横ですから、すごく最初の退避も大変だったと思います。政府では、中間貯蔵施設について双葉町を候補と考えている一つだと思いますが、細野大臣あるいは野田総理の方からもどうでしょうかという要請もあったやには聞きますが、それについて町長の御意見をちょっとお聞かせいただければと思います。

○参考人(井戸川克隆福島県双葉町長) これは大変大事な重要な問題ですね。

まず一つは、理由付けですね。なぜ、先ほども申し上げましたけど、裁判では無主物ということの取扱いをしてしまったものを引き受けるものになるんだろうということですね。その引き受けた結果、子孫、やがての子孫がそれについて迷惑が起きないだろうかと。なぜ(帰宅が)30年だと。30年ともう言い切っちゃっているんですが、30年の計算式が欲しいと。

それから、最終処分場の明記がなければならない。持ってきたものは全部持って出すということもまだ言われていません。ある高官によりますと、持ってきたもので高度処理して、やがて車一台ぐらいしか持ち出さないんだという言葉も聞いていますけれども、これはとんでもない心外な話でありますので、我々が引き受けるための定義付け、これが大事であります。

そして、持ち出すところの最終処分場、これ全世界でまだ解決されていません。そんなに簡単に済む問題ではありませんので、まずこれも明記してもらわなくちゃならない。東京電力の責任というのも明記されておりません。これも明記する必要がありますね。いろいろまだまだ、そこまで行くには一気には行かないというふうに私は考えております。

いっときの思いでやってしまって、人形峠のように地域の住民が国を相手取って裁判をした事例があります。国は一審で敗訴して、その後ずっと上告して最高裁まで行ったということは、地域の住民に対して人形峠のウラン鉱石を取るためにお願いをしてやったはずですけれども、最後は裁判で争うような形になってしまうと。この問題も放置できませんので、まだまだいろいろ問題はあります。こういう問題を解決しないと、何か造れという意見もありますけれども、それは簡単ですね、だけど、お金だけでやってしまうと今までの原子力発電所と同じくなってしまいますから、よくよく慎重に検討しないといけません。

 もし事故対応に関して自身にこれといった瑕疵はない、取り立てて非難を受けるような意図的な情報隠蔽も情報操作も行っていない、ウソも隠しもなく事実を事実として情報公開してきた、国民に何ら恥じることはないという自負を持っていたなら、国会事故調のHPを窺うまでもなく、参考人招致を受けるときが来るまで静かに待てば済むはずだ。

 ではなぜ細野原発担当相自身は事故調査・検証の利害関係者の一人でありながら、利害関係者の国会事故調メンバーとの面会・接触が制限されていることを知らないはずはないのに、自分から申し入れて黒川委員長を面会・接触、中立性を疑われるような行動に出たのだろうか。

 この手の常識を弁えていなかったという弁解は通用しない。弁えていなかったなら、原発担当相としての資格を失う。

 もし不都合なことを隠していたり、事実を変えたりする情報隠蔽や情報操作を行なっていたとしたら、隠している事実が細野の名前付きでいつ出るか、いつ出るかという不安を抱えることになるだろう、あるいは出ないまま、隠しおおせるだろうかという不安に曝されることになり、責任問題に波及しない形で名前が出ることを確認しないことには不安は止むことはないに違いない。

 いわば何も名前が出ないよりも、あなたは無罪ですという確証を与える名前の出方を待ち望んでいたとしたら。

 テレビの犯罪ドラマでは、逮捕を逃れている犯罪者が新聞・テレビの報道に釘付けになるのは容疑者が特定されているかどうかを確かめるためであり、特定されていたなら、次に隠れている場所が特定されているかどうか、いわば捜査の手がどこまで伸びているかどうかを確かめるためであって、新聞・テレビが何も伝えていないと捜査の進展状況を確認しようがなくなって却って不安に居たたまらなくなるといった犯罪者の心理が十八番となっている。

 しかし責任に波及するような形であってもなくても、1回以外は名前は出てこない。

 逮捕を逃れている犯罪者が新聞・テレビの報道が何もないと警察やマスコミが何かを隠しているのではないと疑い出す犯罪者の心理をテレビの犯罪ドラマでは映し出すことがあるが、細野も国会事故調が細野の参考人招致まで何かを隠していて、参考人招致のときに一気にぶっつけてくるのではないのかと疑ったとしたら。

 面会・接触が条件付きで厳しく制限されているにも関わらず、不安を抑えきれなくなって、直接知ろうとして、原子力規制庁設置法案の説明を理由に自分から申し入れて、黒川委員長に面会・接触した。そして委員長から当委員会における過去の参考人聴取等でこれまでに判明した主な問題点を伝えられた。

 細野原発担当相が完全な安心を得たのかどうか、不安を残したままなのかどうかまでは分からない。

 そう言えば、テレビの犯罪ドラマでは犯人が社会的有力者で、警察幹部に知り合いがいる場合、その幹部を通して捜査情報を得ようと策す場面に時折りお目にかかる。

 
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