安倍晋三の靖国神社とアーリントン墓地との等価値論に矛盾する米閣僚の千鳥ケ淵墓苑との等価値化

2013-10-04 04:53:34 | Weblog


 
 日本訪問のアメリカ閣僚による一つの珍事が起きた。《千鳥ケ淵墓苑で献花=米国務長官ら》時事ドットコム/2013/10/03-11:45)

 全文を引用してみる。

 〈米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官は3日午前、東京・三番町の千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れ、献花した。同墓苑は、身元不明の戦没者や民間人の犠牲者の遺骨を納める国立施設。献花は米側の要望によるもので、外国要人の訪問は初めて。 

 同墓苑は宗教色がなく、A級戦犯が合祀(ごうし)されて閣僚の参拝が中韓両国との対立の種になっている靖国神社と異なる。米閣僚の訪問には、戦没者の追悼をめぐり、冷静な態度を維持するよう日本を含む各国に促すメッセージが込められている可能性もある。〉――

 記事が書いている通りの意図のもとの訪問かもしれないが、そうであったとしても、この訪問が決定づけることになる一つの重大な事実を見逃すことはできない。

 参考までに千鳥ケ淵墓苑を「Wikipedia」からより詳しく見てみる。

 〈千鳥ケ淵戦没者墓苑は、東京都千代田区三番町にある戦没者の納骨堂である。第二次世界大戦の折に日本国外で死亡した日本軍人・一般人のうち、身元が不明の遺骨や引き取り手のない遺骨を安置するため、1959年(昭和34年)につくられた。〉

 なぜ靖国神社ではなかったのだろうか。安倍晋三のアーリントン墓地と靖国神社との等価値化による靖国神社参拝の正当化論からしたら、靖国神社でなければならなかったはずだ。

 だが、アメリカ側は靖国神社ではなく、千鳥ケ淵墓苑を訪れ、献花した。

 安倍晋三は2013年2月28日の衆院予算委員会で次のように答弁している。

 安倍晋三「先般、訪米した際に、アーリントン墓地に参拝をいたしました。それはつまり、アメリカのために戦い、命を失った兵士たちに敬意を表するためであり、これは国際的な儀礼として、首脳間の訪問の際に行われることでございます。

 訪米の際に、CSIS(米戦略国際問題研究所)というところで講演をしたのでありますが、そこで質問を受けることになっておりまして、場合によって、私の靖国参拝について質問が出るかもしれないと思って、私なりに答えを用意していたわけでありますが、それはつまり、アーリントン墓地に私は参拝をいたしました、それは国のために戦った兵士たちに敬意を表することであり、これは当然のことであろうと私は思いますと。その中において、日本に於いては、靖国神社に祀られている、日本のために戦い命をささげた英霊に対して、国のリーダーが敬意を表するのは当然のことではないかと私は思うと申し上げようと思っていました。

 かつ、アーリントン墓地には南軍の兵士も北軍の兵士も眠っているわけでありまして、それは、例えば南軍の兵士が南北戦争において奴隷制度を堅持するために戦ったという理念とはかかわりなく、それはすなわち、国のために戦ったということで敬意を表するのであって、その理念とはかかわりがないということについてもお話をさせていただこうと思っておりました。

 いずれにせよ、国のために戦った英霊に対して敬意を表する、これは当然のことであろう、このように思っております」――

 戦没兵士はアメリカではアーリントン墓地に眠っている、「日本に於いては、靖国神社に祀られている」、それらの兵士に敬意を表するのはそれぞれが国のために戦ったからであり、その共通性から日本の首相が訪米した際にアーリントン墓地に献花のために訪れるのは、「これは国際的な儀礼として、首脳間の訪問の際に行われることでございます」と靖国神社とアーリントン墓地を等価値化し、「日本のために戦い命をささげた英霊に対して、国のリーダーが敬意を表するのは当然のことではないか」と靖国神社参拝を正当化している。

 要するに日本の靖国神社に対するアメリカの同等の施設としてアーリントン墓地を等価値化し、アメリカのアーリントン墓地に対する日本の同等の施設として靖国神社を同じく等価値化して、アーリントン墓地訪問が何ら問題がないのと同じく靖国神社参拝も問題がないし、一国の首脳が外国を訪問した際には相手国の同等の施設を訪れるのは国際的な儀礼だとしている。

 アメリカ側は安倍晋三によってアーリントン墓地が靖国神社と等価値化の栄誉を受けたことになる。

 尤も大変名誉なことだと喜んだという報道には残念ながら未だ接していない。

 この等価値化論からしたら、安倍晋三が北朝鮮を訪問することがあったなら、朝鮮戦争を国のために戦って尊い命を失った北朝鮮兵士を祀る朝鮮戦争戦没者墓地を訪れて追悼しなければならなくなると、2013年7月31日当ブログ記事―― 《安倍晋三は北朝鮮を訪れた場合は、朝鮮戦争戦没者墓地を参拝しなければならない - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》を書いた。

 また、同じくこの等価値化論が正当性を得るためには来春予定のオバマ訪日の際には「首脳間の訪問の際に行われる」「国際的な儀礼として」、オバマ大統領の靖国神社参拝を実現させなけれればならないとする内容の、2013年8月6日当ブログ記事――《安倍晋三の自己の靖国参拝正当化のためにはオバマ大統領の訪日時の靖国参拝を実現しなければならない - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》を書いた。

 勿論、オバマ政権の首脳の一員としてケリー国務長官とヘーゲル国防長官も安倍晋三が唱える靖国神社とアーリントン墓地等価値化論に準じることによって安倍晋三の靖国神社参拝は正当化され得ることになる。

 だが、両閣僚はA級戦犯が合祀されている靖国神社ではなく、身元不詳や引き取り手のない兵士や民間人の遺骨が安置されている千鳥ケ淵墓苑を選んで、献花し、それを以て「国際的な儀礼」とした。

 いわば千鳥ケ淵墓苑を自らの国のアーリントン墓地と等価値に置いた献花ということになる。

 意図してのことなのかどうか分からないが、少なくとも結果的には両閣僚は安倍晋三の靖国神社とアーリントン墓地との等価値論を認めなかったことになる。 

 安倍晋三は今後アーリントン墓地を引き合いに出して、A級戦犯が合祀されている靖国神社を等価値に置き、それを以て参拝を正当化することは許されなくなった。

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