安倍晋三のTPP「主導的役割を果たす」のハッタリ

2013-10-14 09:16:01 | Weblog


 
 10月10日夜、安倍晋三、甘利、林等の関係閣僚の出席のもと、首相官邸でTPP関係閣僚会議が開催された。

 安倍晋三「残された課題は多いが、TPPは国家100年の計であり、年内の交渉妥結に向けて、日本が主導的な役割を果たしていくべきだと考えている。関係閣僚にはしっかり取り組んでいただきたい」(NHK NEWS WEB)――

 「聖域なき関税撤廃」をタテマエとしていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加に向けて日本はコメ、麦、砂糖、乳製品、牛肉・豚肉の農産物5分野586品目を関税撤廃例外の「聖域」と位置づけて交渉に臨んだ。

 つまり、このことだけで日本は守りの姿勢を自らに課したのである。以上の農産物5分野586品目を関税撤廃の例外として如何に守ることができるかを交渉事とした以上、「日本が主導的な役割」をどう果たすことができるというのだろうか。

 それとも貿易分野の関税問題以外の投資や金融、医療保険、知的財産、あるいは公共事業や物品・サービスの購入等に関わる政府調達、その他に関して100%、もしくは100%近い自由化を掲げて、他の参加国に対して同じレベルの自由化を求めながら、5分野586品目に限って関税撤廃の例外を求め、前者の自由化要求に手心を加えるという攻勢の中で交渉を進めているということなら、主導権を握ることができないわけではない。

 だが、前者の分野でも守らなければならない問題はたくさんあるはずだ。

 安倍晋三の10月10日夜の「日本が主導的な役割」発言が何よりも問題なのは、インドネシア・バリ島10月3日開催、10月6日閉幕のTPP閣僚会合に出席した西川TPP対策委員長(自民党)の10月6日会合後の発言を受けてなされた点にある。

 西川TPP対策委員長(関税撤廃の例外の「聖域」と位置づけた5分野586品目について)「(重要品目から)抜けるか抜けないかの検討はしないといけない。本当にどんな小さな状況も勘案しないという(日本の)姿勢がとり続けられるのか」(asahi.com)――

 「抜けるか抜けないかの検討はしないといけない」とは関税撤廃例外の「聖域」と位置づけた重要品目から、「抜くことができるか抜くことができないか検討しなければならない」という意味なのだろう。

 「聖域」と決めながら、そこから抜くというのは「聖域」という言葉の重さ・厳かさを蔑ろにする矛盾そのものである。「聖域」とは侵してはならない神聖な場所という意味があるからだ。それを自ら「聖域」と決めておきながら、自らいとも簡単に侵す。

 主導権ある状況下では決して行わない自傷行為としか言い様がない。守ると決めた陣地から後退して、後退した態勢で改めて守りを固めるという守勢一辺倒の姿勢を余儀なくさせられている状況に日本があるということを教えている。

 日本が関税撤廃の割合を示す自由化率が80~90%弱であるのに対して他の交渉参加国が90%台後半が主流であるということも、主導権を握る状況にはなく、守りの姿勢を強いられていることを証明する事例でしかない。

 安倍晋三自身、こういった状況を認識しているはずだ。

 西川TPP対策委員長が「(重要品目から)抜けるか抜けないかの検討はしないといけない」と言った対象品目はコメ、麦、砂糖、乳製品、牛肉・豚肉の農産物5分野586品目のうち、複数の原料を混ぜる調製品や加工品の約220品目のうちのいずれかを考慮に入れているという。

 「asahi.com」の解説。

 〈対象の調製品や加工品には、国内の消費量を国産品だけではカバーできず、多くを輸入に頼っているものが複数ある。例えば、焼き肉店で人気の牛タンは9割以上が輸入品だ。現在の関税率は12・8%で、仮にこれをゼロにした場合、消費者はより安く買うことができるほか、国内の生産者への影響も限られる。〉――

 「NHK NEWS WEB」の解説。

 〈交渉参加国との貿易実績が殆どない品目や、すでに関税が低い水準にあるなど実質的な影響がない品目などで関税を撤廃し、撤廃率を高めることができないか検討することにしています。〉――

 いずれの解説も、日本側のみの都合を言っているに過ぎない。関税率を下げる、あるいは撤廃しても日本側にさして損失を被ることはないという利益は交渉参加国にとってさしたる利益は期待できない不利益を対立させることになる。

 後者に対して小手先のプラス・マイナスとしか映らない危険性を与えた場合、果たして納得を得ることができるだろうか。経済大国なのだから、もっと身を切れという要求も出てくる可能性も考えることができる。

 そのような要求との攻防に於いても強いられるのは守りの姿勢であって、安倍晋三が言うように「日本が主導的な役割を果たしていく」といった主導権ある姿では決していない。

 要するに安倍晋三の発言は言葉で自身がリーダーシップがあるが如くに見せかけたハッタリに過ぎない。いつものことだが。

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