夜間・大雨下の避難しなかった場合の過去の土砂災害の事例に習うべきで、避難手段に大型バスはどうだろう

2014-09-08 09:53:28 | Weblog


 2014年8月31日放送のNHK日曜討論「災害列島ニッポン 命を守るためには」で、「広島 土砂災害 なぜ被害拡大?」を取り上げていた。2011年3月11日の東日本大震災で釜石小(岩手県釜石市)の子どもたちが全員無事だったのは防災研究者であり、群馬大教授(災害社会工学)の片田敏孝氏が行った防災教育のお陰であり、全員無事を釜石小の奇跡と言われたが、片田氏の番組内の発言が気になった。

 島田敏男司会者「今回の広島の災害の多くの被害を出した避難勧告の遅れということが、反省点として確かにはっきりとしてきているが、地方自治体が判斷を下すことがそもそも難しい面があるんじゃないかという議論があるが、どうですか」

 片田敏孝「今回1時15分に 土砂災害警戒情報、これは実質避難勧告を出してくださいよというような情報だが、この段階で30ミリ近い雨が降っていた。

 その後結果的には80ミリ、100ミリという雨が降ったので、あの時に出しておけばよかったのにということなんですけど、物凄い雨の中で勧告を出して、実は今、避難の途上の中で亡くなる方が非常に多いことを考えると、行政はあの状況の中で勧告を出すということを躊躇したということは僕は理解できるのですね」

 先ず自然災害に対する避難は過去の自然災害とその人的被害に習い、参考にすべきであろう。いわば過去の災害を直近のマニュアルとしなければならないということになる。
 
 15年前の平成11年(1999年)6月の大雨による325個所の土砂災害で広島市や呉市を中心に広島県で31人が死亡し1人が行方不明となっている。広島市に関しては20名の死者、呉市は8名となっている。

 広島市では新興住宅地で土石流が発生し、都市型土砂災害と呼ばれたという。このことと、しかも今回の被害地区である安佐南区で3名の死者、安佐北区で6名の死者を出していることは広島市自身が十分に承知しているはずである。
 
 勿論、他市町村の自然災害に対する避難態勢の不備による多大な人的被害の発生も参考にしなければならない
 
 まだ1年も経っていない昨年、2013年10月16日の伊豆大島の大島町を襲った台風26号がもたらした記録的な豪雨に伴う、午前2時前後頃から始まった土石流は2013年11月25日現在、死者35 名、行方不明者4名の多大な人的被害を出したこと、その主たる原因が東京都が送信した「土砂災害警戒情報」のファクスに気づきながら、夜間だったという理由で避難勧告も避難指示も出す対応を取らなかったことにある。

 この土砂災害が夜間未明であることと強い雨が降っていたことは広島市と共通する。

 当然、大島町の大規模な土砂災害を参考にし、その上で15年前の広島市の土砂災害を顧みた場合、自ずと避難しなかった場合の人的被害は否応もなしに予想しなければならないはずだ。

 しかし片田敏孝氏は物凄い雨の中で避難勧告を出した場合、「避難の途上の中で亡くなる方が非常に多いことを考えると、行政はあの状況の中で勧告を出すということを躊躇したということは僕は理解できる」と言う。

 だからこそ、早め早めの避難勧告が必要となるはずだ。

 避難勧告も避難指示も出さずに建物内にとどまらせて土砂災害に遭遇した場合の過去の事例に習った、想定されるそれ相応の人数の死者の発生よりも、夜間の強い雨の中の避難の途中で危険性として想定されるそれ相応の人数の死者の発生の回避を優先させて避難勧告も避難指示も出さずに建物内にとどまらせた場合、どちらのケースが救うことのできる命を失わずに済むか計算しなければならないはずだ。

 勿論、後者を選択した場合に生じるかもしれない死者を無視しろ、その命を犠牲にしろと言っているわけではない。このような事態を回避するためには、出水して道路が冠水する前の段階での早めの避難を選択しなければならない。

 だが、夜間、急激な強い降雨によって、特に高齢者の避難が困難となった場合、避難に時間がかかって、片田敏孝氏が言うように「避難の途上の中で亡くなる方が非常に多」く出ることも予想される。

 だとしたら、そうした予想に対して有効な手段を創造することも行政や防災研究者に求められる役目としてあるはずだ。

 私自身は防災に関してド素人だが、それなりの人命尊重の観点から、空振りとなってもいいから、過去の事例に過剰なまでに反応して早め早めの避難を心がけるべきだという立場をバカの一つ覚えのように取っているに過ぎない。行政の避難勧告に従って避難に応じるのは住民の1~2%だというが、どう判断するかは住民の責任である。それぞれに与えられている責任にはそれを履行するに足る判斷を必要とするが、広島市の判斷は結果的には死者72名、行方不明者2名を生み出した。

 夜間の強い雨が降る中での避難に大型バスを使ってはどうだろうか。インタネット上に、〈時間雨量30mm以上の豪雨の中では徒歩による避難が難しく、高齢者単独や夜間といった条件が加わると不可能に近い。また、自動車による避難でも、増水して道路が冠水している中に突っ込み、川へ押し流され被害に遭う例も多く見られる。〉との記述を見つけたが、大型バスなら重量が重くて、その分乗用車より水に対する抵抗力は強いはずだ。

 但しエンジンに水が入るとストップしてしまう。最近の大型バスは床高さ30センチ前後のノンステップバスが主流だというが、エンジンの位置が路面から同じ30センチ程度なら、その水位の冠水には耐えることができるはずだ。

 その自治体がバスを運行している場合は、その部門と、行っていない場合は身近な(あまり遠くては不可能だが)観光バス会社等と前以て契約して、貸し切りとして利用し、その地域の住民と事前に打ち合わせておけば、例え夜間であっても、一度に多人数の避難を迅速に行うことができる。

 広島市では大雨注意報が発表されると実施することになっているという雨量の状況把握や土砂災害危険区域の巡視の過程で発令された場合の大雨警報や大雨洪水警報、あるいは土砂災害警戒情報等の情報と睨み合わせて、土砂災害危険区域で雨の強さは勿論、道路の冠水が徐々に増していくような状況になった場合、直ちに避難勧告を発令すると同時に大型バスを差し向けるようにすれば、避難の途中で被害に合うという事態は可能な限り避けることができると思う。

 いずれにしても、避難の途中で死者が出るかもしれないことを恐れて避難勧告を出すことに躊躇し、結果論だとしても、それ以上に多くの死者を出したのでは意味はない。何らかの解決策を考え出さなければ、避難させずに招くかもしれない死者の発生に手をこまねくことになる。

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