安部政権は9月11日、政府事故調査検証委員会による東電第1福島原発事故対応に関わる関係者聴取書(調書)を公開した。その中に事故対応の中心人物である吉田昌郎第1原発所長の調書も入っている。
2000年9月21日、森喜朗首相が衆参両院本会議の所信表明演説で「e-Japan」構想を披露、その推進を力説した。
翌年の2001年3月29日、IT戦略本部はe-Japan重点計画を公表。
その中の〈(1)現状と課題〉で、〈IT革命を推進し、我が国を世界最先端のIT社会とするため、世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成を目指すこととするが、この世界最高水準とは通信の速度・容量のみで判断されるものではなく、低廉・高速・大容量のインターネットを中心とする多様なネットワーク全体を多様性・安全性・信頼性など総合的に評価した上で、世界の最先端の水準と認められるものでなければならない。〉と高らかに謳い、目標を「世界最先端のIT社会」に据えた。
2001年4月26日発足の小泉内閣が「世界最先端のIT社会」の実現を引き継いだ。
2003年7月4日、片山当時総務相が03年版の『情報通信に関する現状報告(情報通信白書)』を閣議に報告、了承されている。
白書には米国が先導してきたパソコン中心の情報技術(IT)の拡大は『限界を露呈している』とする一方、日本が追いつく段階から先導役に移行しつつあり、ブロードバンド(高速・大容量通信)や第3世代携帯電話などITの先端分野で、日本が既に世界のトップ水準に達しているとの指摘がなされているという。
2000年9月21日に森喜朗国会で「e-Japan」構想を披露してから3年も経たないうちの凄いスピードで世界一に向かっている。
安倍内閣は昨年の2013年6 月14 日、「世界最先端IT 国家創造宣言について」を閣議決定している。
その宣言は「基本理念」として、「世界最高水準のIT利活用社会の実現」を掲げている。
いわば「IT社会」は未だ途上であるということになる。
「IT社会」とは、当たり前のことだが、情報機器の技術性、あるいは高度性や利便性といったことや、情報機器使用時の物理的環境整備といったモノの面だけを言うのではなく、情報機器を使った情報処理と処理情報の創造的活用、あるいは新しい情報(新しい言葉)の創造までを含めた活動様式の社会的定着を言うはずだ。
そのためにはこれらのすべての面に亘って使い勝手が良くなければならない。
だが、内閣府が公表した「吉田調書」を含めた「政府事故調査委員会ヒアリング記録」のPDF記事は紙文書を印刷する形でただ単にPDF化したもので、検索もできなければ、コピー&ペーストもできない。
安部政権が「世界最高水準のIT利活用社会の実現」を閣議決定しながら、この使い勝手の悪さである。
資料は膨大な量に亘る。検索もコピー&ペーストもできなければ、情報処理の段階のみで相当な時間がかかることになる。
文科省が発行した小中学生用の「私たちの道徳」も同じである。
「河野談話」の元となった平成5年8月4日内閣官房内閣外審議室調査・作成の「いわゆる従軍慰安婦問題について」も同様に紙文書をPDF化したもので、コピー&ペストも検索もできない状況となっている。
文字は活字体で表現されているから、紙文書にするにはワープロかパソコンに記録されているはずである。どうしてもPDF文書で公表したいのであるなら、それがWindowsのWordで作成し、保存した文書であるなら、現在、簡単な操作でPDF化できる。PDF化すれば、そのまま検索もコピー&ペストも可能となる。
政府公表の文書の形を取った情報全てに亘ってこの上ない使い勝手を与えないのは「世界最高水準のIT利活用社会の実現」に反する情報オンチとしか言い様がない。
利便性ある情報活動の社会的定着も危ういし、「世界最高水準」の名が泣く。
どうも安倍晋三には口先だけの印象しか受けない。