9月14日放送の『たかじんのそこまで言って委員会』は「あなたは辛抱できるかSP 」と銘打って、「消費税10%について」、「普天間基地移設問題」、「日中首脳会談について」等を取り上げて、パネラーに辛抱できるかどうかを聞いていた。
その一つが、「過激派組織『イスラム国』の勢力拡大に辛抱できますか』」であった。
山口もえ「辛抱できない 理由―何が大切か見失っている」
田嶋陽子「辛抱できない 理由―アメリカ一辺倒では危険」
長谷川幸洋「辛抱できない 理由―広がったら、次に何が起きるか」
ざこば「辛抱できない 理由―分からない」
津川雅彦「辛抱できない 理由―残虐非道」
金美齢「辛抱できない 理由―ルールと秩序を守らない相手とは付き合えない」
加藤清隆「辛抱できない 理由―独裁でしか治められない国もあるのに」
加藤清隆の「独裁でしか治められない国もあるのに」という理由は、かつてのサダム・フセインのイラクを取り上げ、アメリカがフセインを倒して民主主義になっかというと、過激派が勢力を伸長して内乱状態となった。強制力(=独裁)でなければ治められない国もあるということをどこかで認めざるを得ないのではないかと、独裁体制容認論を掲げもので、そこには独裁体制を容認しない立場を咎める意味を込めている。
津川雅彦「アメリカやイギリスからイスラム国に入る兵隊が多いのがどういうことなのか、これは宗教的に同意するからなのか」
辛坊治郎「経済的問題ですね」
長谷川幸洋「欧米と言えども、中には国の体制にどうしても我慢できない層というのがやっぱりいて、それが宗教的に結びついたのか、それとも単なる、要するに世界を破壊してみたいということで行っているのか。
そこは何とも分からないのですけども、でも、この間、アメリカ人ジャーナリストを殺害したのは英国人じゃないのか。英語の発音から、どうやら。アメリカ本土でもリクルート活動があるって言われていて。
これはね、どういうふうに広がってきて、今までのテロ集団の動きと違ってきたなあ。アメリカ自身が一つ段々戦闘に巻き込まれているというのが凄く心配です。
最初は山の頂きに追い詰められた約4万人という、いわゆる異教徒の人たちを救うこと。それから、アメリカの基地があるので、そこに、要するに米国人の生命と安全の確保、そういうことで始まったのに段々、今度、イスラム国自体を対象とするように空爆を広げつつある。段々こちらの、何か後戻りできないところになりつつあるんじゃないかなあ」
自由と基本的人権が保障されているにも関わらず、欧米人がそれらが保障されているとは思えないイスラム国に参加する。かつて「北朝鮮は地上の楽園」だとする謳い文句に踊らされて、在日朝鮮人が日本人の伴侶を伴うなどして続々と北朝鮮に帰還した。
「地上の楽園」とは自身が十全に活躍できる世界を意味する。それぞれが自分なりの「地上の楽園」を胸にいだいて北朝鮮に渡っていったはずだ。
麻原彰晃が支配者として君臨していた当時のオウム真理教は信者勧誘の謳い文句を「本当の自分探し」としていたという。本当の自分を探すことができる空間とは、自身にとって完璧なまでに自己実現可能な、矛盾のない理想の世界を意味することになる。
いわば現実世界に於ける自分は逆の状態にあったからこそ、その逆転を願い、逆転の保障に誘惑されることになる。新しい世界で少しでも活躍の機会を与えられたなら、自身を生き生きとさせることができるだろうと。
田嶋陽子「この人たちは元はアメリカ人の牢屋にいたんですって。アメリカがこのイラクを征服していたって言うか、そこで戦っていたから、アメリカの牢屋に10年とか長い間いる間にアメリカの遣り方をみんな学んだんですね。だから、アルカイダをつくったのがアメリカと同じように、このイスラム国の人たちもアメリカがつくったんだと、そういう意見の人たちもいますね。
だから、アメリカが戦っても、なかなか、うーん――」
辛坊治郎「アメリカ一辺倒では危険とはどういう意味ですか」
田嶋陽子「これはですね、今度日本でも集団的自衛権行使になるとしたら、中東では日本は非常に評判が良くて、日本人は大事にされている。一人殺された香田(証生)さんがいますけど、普通には中東では日本人は大事にされているけども、今度アメリカについていくとなったら、この人たちはみんなアメリカを敵視していていますから、日本人でも、ああいいうオレンジの服を着て、ああいう目に遭う人たちが出てきても不思議ではないということです。
集団的自衛権行使ならね。
(俯き、極く小声になって消え入りそうに)そういうふうに考えています」
辛坊治郎「ど、どうしてそんなに声が小さいんです?」
田嶋陽子「いつもここまで来ると、みんなギャッーって言うのに、今日は何にも言わないから」
森若佐紀子アナ「周りの方がもっと――」
田嶋陽子「凄いじゃない、いつも集中砲火が――」
辛坊治郎「集中砲火してくんないと、大きな声が出ないって言うことですか」
田嶋陽子「そうじゃないけど、嬉しいんですけど、どうしたのかしら、みんな。疲れたのかしら、お腹が空いたのかしら」(以下省略)
大体が番組自体が保守の立場を取る関係からだろう、保守系のパネラーの出演が支配的であるが、多分、保守ばかりのパネラーだと意見の一致ばかり見て議論が盛り上がらない恐れから、反対の立場の田嶋陽子を加えて番組を面白くしようとしているのではないかと思うが、従軍慰安婦の問題でも、歴史認識の問題でも、安全保障の問題でも、田嶋陽子がリベラルな立場から持論を主張すると、他のパネラーから一斉に反論を喰らう。それがときには集中砲火の形を取ることがある。
だが、今回の田嶋陽子の、集団的自衛権行使によって中東でアメリカ軍と行動を共にした場合、これまで中東諸国から受けていた日本の評判は抹消されてアメリカと同類と見られてアメリカ敵視の巻き添えを喰らい、人質捕獲の対象国として日本も加えられかねないという危険性の指摘に金美齢や津川雅彦、桂ざこば、加藤清隆、長谷川幸洋の保守の面々は、集団的自衛権行使に積極的に賛成の立場なのだから、その危険性は前以て予定調和に入れていて、その場合の対処方法を示して反論すべきを、何ら反論を試みることができずに沈黙するだけの無様さを曝け出した。
竹田恒泰は、「その通り」と、声を出して賛意を示したと言っているが、他の保守の面々と立場は変わらない以上、何ら反論を試みもせずに「その通り」だと賛意を示すのは沈黙したも同然であるばかりか、自身の集団的自衛権行使容認を否定することになり、自身の立場を裏切る無節操以外の何ものでもない。
尤も無節操の似合う人間ではある。