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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大地震注意-南海トラフ臨時情報で気象庁が初の発令,想定地域での準備強化と避難対策準備を

2024-08-09 07:00:52 | 防災・災害派遣
巨大地震注意
 8日1915時、気象庁により巨大地震注意が初めて発令されています。

 南海トラフにおいて最大規模の地震が発生した場合は九州から首都圏に掛け大きな地震の揺れが襲い、沖縄を含む太平洋岸に大きな津波が発生する事が警戒されています。南海トラフ地震が今後一週間で確実に発生するという事ではかならずしもありませんが、家屋の防災準備や避難路の確認と家族との連絡方法の確認を呼びかけました。

 気象庁の今回の発表を受け、九州四国及び本州の対策強化地域自治体は必要に応じ避難施設設置などの準備を進めます。また、まもなくお盆の長期休暇を迎えるところとなりますが、東海道新幹線と東海道本線および中央本線などは一部区間において徐行運転を行い、寝台特急の短縮運転や一部列車の運休措置を取ると対策の具体さくを発表しました。

 宮崎県において発生した地震では、複数の負傷者や家屋倒壊などが消防により確認されていますが幸い死者だけは出ていません。また津波注意報は1900時で宮崎県を除き解除され、2200時には宮崎県に発令されていた注意報も解除、今回の津波は最大潮位が0.5mであり、こちらも僥倖というべきでしょうか、津波による犠牲者などは発生しませんでした。

 宮崎県では今年四月にも地震が発生していますが、今回のようなマグニチュード7規模の地震は40年ぶりということであり、旧耐震基準に基づき建設された建築物等に被害が在ったほか、一部地域で落石などの確認もあり、電線の切断や水道網への麻痺などが有りましたが、地震と津波による被害は限られた規模であった事はやはり僥倖というべきか。

 南海トラフ地震は東海地震と東南海地震および南海地震という、海溝プレートに沿ったプレート境界地震として過去定期的に発生しており、プレートにたまるひずみをそのエネルギーとして断層の破断により発生する巨大地震です。過去に発生した東南海地震は1944年、南海地震は1946年となっており、年々その蓋然性の高まりが指摘されていたもの。

 震度七の激震が広い地域に及ぶことと、また地震の揺れの最中に津波の第一波が到達すると懸念されていることから、政府は2012年の脅威想定により最大37万名もの死者が発生するとし、気象庁は2019年より震源区域における特異な事例、一定以上の規模の地震が発生した場合に南海トラフ臨時情報を出す事とし、今回はその初の事例となりました。


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【臨時情報】宮崎県沖日向灘マグニチュード7.1地震発生!九州四国津波注意報-気象庁南海トラフ地震臨時情報を発表

2024-08-08 17:05:53 | 防災・災害派遣
津波注意報発令
 津波注意報が発令中です沿岸部から離れてください。

 先ほど1640時頃、宮崎県沖の日向灘を震源とする地震が発生し気象庁は南九州と四国地方の沿岸部へ津波注意報を発令しました。沿岸部の方は十分注意してください。当初地震の規模はマグニチュード6.9と発表されていますが、その後の観測によりマグニチュード7.1と訂正されました。最大震度6弱、震度6弱が宮崎県日南市で観測されています。

 震度6弱が宮崎県日南市、震度5強が宮崎県宮崎市と都城市及び串間市及び、鹿児島県大崎町となっています。津波注意報では1m程度の津波が予測され、宮崎港では0.5mの津波が実際に観測されています。海岸線近くの方は海から離れ、海で遊泳中や作業中の方は海から出ることが呼び掛けられています。津波は地形により高くなることがあります。

 原子力発電所について、九州電力は川内原発について“地震による異常は確認されず”と発表しました。現地で確認された震度は4で2号機が運転中で1号機は定期検査のため運転停止中です。また四国電力も伊方原発 について“これまでのところ地震による影響なし”と発表しています。伊方原発は現在運転停止中で現地では震度4が観測されました。

 気象庁は1700時、今回の地震を受け“南海トラフ地震臨時情報”を発表しました。これは今回の震源域が南海トラフ地震想定震源域であり、マグニチュード7.1の地震は、スロースリップやプレスリップといった、前駆地震にあたり、この影響が東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震と同様の広域震源型地震に繋がる可能性があるため。

 “南海トラフ地震臨時情報”は、評価検討会を開き関連が生じ得るかどうかを評価するものです。気象庁は南海トラフ地震震源区域においてマグニチュード7以上の地震が発生した場合、一部割れ、といい南海トラフの一部がずれ動くことで、全体へ影響を及ぼす可能性があり、実際あの2011年東日本大震災においても同様の事例が観測されました。

 マグニチュード9の巨大地震となった2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震、その二日前にはほぼ同じ震源域において2011年3月9日にもマグニチュード7.1の地震が発生しています。一部割れ、にあたる事例では気象庁は、南海トラフ地震想定地域へ避難勧告は出さず、住民自身が確認の上、必要に応じ自主的な避難を行うよう呼びかけます。

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臨時情報:山形県記録的豪雨-第二次大雨特別警報発令,緊急安全確保-分水嶺分り難い豪雨災害の危険性

2024-07-26 03:33:54 | 防災・災害派遣
山形大雨特別警報
 豪雨災害は普通の大雨と災害の分水嶺と云いますか日常が災害に切り替わる瞬間が分り難く判明した時には被災地は危険な状況になっている事が多いのです。

 山形県では25日に二度に渡り大雨特別警報が発令され、最上川流域全体等で洪水被害の警戒が高まっています、日向川などいくつかの河川では既に氾濫が発生しています。気象庁によれば梅雨前線の影響で大気の状態が不安定となり、東北地方では記録的な豪雨となっているもよう。大雨特別警報発令下ではすこしでも人命が助かる方法を呼びかけています。

 大雨特別警報が同一地域に一日の間で二度発令されるのは、気象庁が大雨特別警報気象警報制度を制定して以来初との事で、山形県内では7月の一ヶ月間雨量の1.7倍という雨量を24時間で観測する地点が有るなど、過去にない規模の豪雨となっています。豪雨被害は山形県に加え、秋田県でも大きな被害が有り、新潟県でも床上浸水などの情報があります。

 豪雨被害、この災害を警戒しなければならない最大の理由は、地震災害や台風災害と津波災害と比較し、そのはじまりが日常的に発生している“降雨”であることに尽きます。降雨は日常的に観測されるものであり、これが大雨であってもある程度の大雨は経験しています、しかし、それが河川氾濫に直結しているとは気づき難いのが降雨のこわさでしょう。

 河川氾濫は避難路である道路を簡単に塞いでしまいますし、日常で意識していない高低差から一軒避難路が自動車などで通行可能に見えた場合でも、手前は浸水数cmであっても数百m先が浸水数十cmとなり自動車が通行不能、エンジン停止などで行動不能になる場合や、見知った道路でも水没する、田畑や用水路と道路の境界線が識別不能となることも。

 落雷を伴う豪雨では、先ず停電など需要な情報源となるテレビラジオを封じる状況も起こり得ますし、特に夜間の豪雨では情報閉塞状態、それは深夜の内に周囲の状況が激変しており孤立している、孤立している中で河川氾濫などで危険な状況が悪化するということも生じます、住宅街に水が押し寄せていても夜間では気付かない事があるための事象という。

 こう、書きますのは、過去、西日本豪雨において、これが西日本における災害史に特筆される規模の災害の始まりである事を気付かず、舞鶴にロシア艦を撮影に行きまして翌日は沼津へ陸上自衛隊の上陸を撮影に行っていて、しかしその間に大雨は歴史的な水害に発展していた、ということがあったためです。大雨は災害となる分水嶺がわかりにくいのです。

 夜間の避難は、災害が差し迫っている状況では自動車でも避難経路によっては既に移動不能となっている場合がありますので、先ず現在特別警報や洪水警報など危険な状況に居られる方は、スマートフォンなどで現在位置のハザードマップを、現在位置の市町村HPから確認し、避難所と現在位置の間に燈色や赤色の危険表示が無いかを確認すべきでしょう。

 自宅が三階建て以上である場合は、多くの場合で二階までしか浸水する事例はありませんので、自宅の上層階に避難するのが一つの選択肢です、この場合は一階部分の電気冷蔵庫や水道から必要な飲料水や非常食を上層階に移動させるのが選択肢です。二階建の場合は、二階部分の押入れ上部に屋根裏へ至る点検口などがありますので、万一に備えその確認を。

 洪水の場合は、河道というかつての河川の流れを土地改良した地形などは、再現する様に浸水します。平屋にお住まいの方は、斜面や河川近くの場合はその逆方向に、浸水しますと固定していない家電や家具は浮き上がり押しつぶされるなど危険が生じますので、押し入れなど平屋でも高い位置を確保する、浸水時には、屋根に上る検討なども必要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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台湾東部地震への日本の姿勢を問う,過去の災害時の支援-北京の視線を忖度せず派遣をすべきだ

2024-04-05 07:01:37 | 防災・災害派遣
■日本の姿勢を問う
 台湾東部地震、被害全容をどのように考えるか日本の事例と台湾の危機管理体制との相違がいま一つ分りませんので先走り過ぎと反論があるかもしれませんが。人道支援の必要はないのか。

 東日本大震災に熊本地震から胆振東部地震に能登半島地震、日本ではあまた災害に曝された際に隣国の中には様々な意見がある中で、中華民国台湾は災害の都度というほどに総統は日本語で哀悼の意を示し、そして募金運動では隣国というには同胞のように接して接し続ける中にあって、さて、日本は国を挙げて今回の台湾地震をみているのか、とおもう。

 台湾中部地震、思い出すのは1999年の李登輝総統時代の巨大地震で、発災当初から被害情報を把握するにつれて被害が甚大である事が判明してゆきました。こうした事は珍しくなく、実際日本の東日本大震災や阪神大震災も、いや先日の能登半島地震でさえ、情報が集まらない中での被害全容というものはなかなかみえないものです。ゆえに、考えるのは。

 自衛隊は2000年トルコ地震に際しては、輸送艦と掃海母艦に補給艦から成る救援艦隊を派遣しましたが、1999年の台湾中部地震に際しては、トルコよりも遥かに近いにもかかわらず、なにしろ2000年と2020年代とは法整備の水準が違うのだから、かなり無理をした救援艦隊を派遣していますが、台湾中部地震に対しては、無理をしていたのか、と思うのだ。

 台湾有事は日本有事、という言葉が昨年大きな波紋を生みましたが、緊急人道支援などであっても、日本が台湾に対して支援の姿勢を示す事は北京から予想以上の厳しい反発を招くことは必至なのですが、しかし災害において北京の目を気にするような国家に、台湾海峡の緊張の際に北京の目を見資することなどはできないのではないか、と危惧するのです。

 先走り過ぎの可能性はある、現在報道されている死者数は大阪府北部地震や鳥取県西部地震程度の規模であるので大規模な救援を日本側が提示することは過剰反応、と後に評価される可能性も無視できないのですが、能登半島地震のように、全容解明とともに激甚災害となっている可能性もある、実際台湾中部地震では2400名もの人命が失われたのだから。

 救援物資などをC-2輸送機で被災地に近い花蓮基地へ空輸するとか台湾軍の移動支援に、かつて東日本大震災の際にオーストラリア軍C-17輸送機が当たったように自衛隊機での輸送支援を行う、孤立地域への輸送支援にCH-47を派遣するとか、仮設住宅の、日本国内では能登半島地震はあったが資材はまだある、これを輸送艦で運ぶなど、打診してはと思う。

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台湾東部地震発生-花蓮沖震源マグニチュード7.2,被害状況と台湾海峡情勢など地政学的影響

2024-04-04 20:13:24 | 防災・災害派遣
■沖縄にも一時津波警報
 台湾で発生した昨日の地震について情報を纏めてみました。地政学上の重要地域に隣接しており所謂被災地情報とともにもし災害とは別局面の事態となった場合には当然日本にも影響が及ぶ。

 中華民国台湾東部において3日、マグニチュード7.2の地震が発生しました。日本時間3日0858時、台湾東部花蓮県沖で深さ25㎞を震源とした地震が発生、台湾中央気象所は花蓮県などに震度6強の揺れが発生したと発表しました。台湾では日本と同じ震度7までの震度階梯を定めていまして、またこの地震により津波も発生しています。

 津波警報及び津波注意報は日本にも発令され、気象庁は沖縄県の宮古島及び八重山地方には津波警報、沖縄本島地方には津波注意報を発令、沿岸部の住民が高台に退避することとなりました。津波警報及び津波注意報は3日1200時までに解除されましたが、与那国島と宮古島で30cm、石垣島20cmの津波を観測、避難中に転倒で4名が負傷しました。

 台湾では花蓮県で震度6強の揺れを観測、北東部宜蘭県などで震度5強が観測され臨時首都である台北や新北市など広い範囲でで震度5弱が観測されています。また津波は宜蘭県烏石で82cmが観測され、台湾沿岸部で数十cmの津波がそれぞれ観測されています。震源に近い花蓮県ではビルの全壊や建物倒壊、落石などで広範な被害が発生した。

 花蓮県を中心とした被害は本日1900時までに台湾当局が発表したところによれば死者10名、行方不明者38名となり、また負傷者は1067名に上っています。台湾では1999年9月21日に発生した台湾中部地震以来の巨大地震であったとのこと。921大地震とも呼ばれる台湾中部地震では台中市や震源地の集集鎮を中心に2415名の死者がでています。

 玉山の標高3952mなど、こちらは日本統治時代に新高山と呼ばれ富士山よりも標高の高い日本最高峰として知られますが、台湾中部山間部には3000m級の山が複数存在し、花蓮県は太平洋側に位置しており、一方、台湾空軍のF-16戦闘機60機などを配備する花蓮基地が被災地にあり、滑走路や基地施設には大きな損傷がなく救助拠点となっている。

 天王星ビル、今回の地震では花蓮市の中心部に位置する天王星ビルが大きく傾き、地震被害の象徴のような扱いとなっていますが台湾メディアの報道によれば1986年の旧耐震基準により建設されたもので耐震強度の低い規制前の建物を中心に被害が出ているとのこと。一方、メディアなどが現地に行く事が難しい山間部では地滑り被害が確認される。

 地滑り被害は花蓮県の景勝地などに整備されたハイキングコースでも発生しており行方不明者捜索の際に死者などが確認され生存者捜索を急いでいるとのこと。また山間部道路寸断により台湾有数の景勝地という太魯閣渓谷にはホテルなどで孤立している観光客が600名いるとの事で、また所在不明の行方不明者所在確認を急いでいるとのこと。

 日本からの支援については、林官房長官は“日本台湾交流協会による確認や台湾当局の発表によれば、4日朝の時点で邦人の生命や身体に被害が及んでいるという情報には接していない”と発言、支援要請があれば対応する準備を進めていることを示しました。過去日本国内での震災では台湾からの援助支援は手厚かったのですが、今回はどう対応するか。

 アメリカ政府はNSC国家安全保障会議のワトソン報道官が“台湾で起きた地震に関する情報を注視しており、日本への影響の可能性についても引き続き注視している。アメリカは必要なあらゆる支援を提供する用意がある”旨の発言を行った、NHKなどが報道しました。またカービー大統領補佐官もアメリカ政府が対応準備を行っていると述べました。

 地政学的な影響について。台湾での大規模地震となれば懸念されるのは台湾海峡での安全保障情勢に影響が及ぶことです。ただ、被害の多くは花蓮県に集中しており、2011年東日本大震災の様な広範囲に津波が発生し国家機能や安全保障基盤への影響が及ぶようなものではなく、局地的な激甚災害であるという点は重要でしょう、有事には直結しない。

 台湾海峡有事となるような規模の災害であれば、東日本大震災においてアメリカ海軍原子力空母が実施したような九州南西海域から台湾海峡にかけての軍事プレゼンスを示し、予防外交などを展開する必要がありますが、今回の地震は台湾海峡有事に直結するような災害ではなく、影響が拡大しないよう注視しつつ、支援体制を強化する必要が。

 自衛隊台湾派遣の必要については、現在のところ邦人被害が確認されず、それよりも重要なのは地震発生後72時間という行方不明者の救命率に影響する限られた時間に対応するよう、例えば東京消防庁ハイパーレスキューなどの派遣が求められる可能性があります。また台湾当局や軍の対応も素早く、現地では救助活動と支援活動が展開中です。

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3.11東日本大震災から13年【3】ヒーローはやってこないかもしれない-南海トラフ地震と東日本大震災

2024-03-14 20:23:06 | 防災・災害派遣
■太平洋側全域が津波被害
 東日本大震災が実際に起こるまではあの規模の災害を実際の防災計画に内部化して対策を具現化する事は一種考え過ぎだと注意された事でしょう。

 南海トラフ地震、東日本大震災、この二つを東日本大震災慰霊の日に併せて提示するのは、東日本大震災の災害対処が必ずしも最適解と言えず、この供養君を活かすことで次の震災の犠牲者を幾分か減らすことができなければ、その減災の努力こそが慰霊になるのではないか、という、過ちを繰り返さない事による慰霊という日本的視点ゆえです。

 非常事態法制が必要ではないか。南海トラフ巨大地震に際し、政府が示した想定被災者数は死者37万という恐るべき数字でした、東日本大震災を念頭に置けば一割程度震災関連死が加わることとなりますが、37万の一割といえば、阪神大震災の死者の六倍に当たる膨大な数、能登半島地震や熊本地震死者数の100倍以上という途方もない規模となる。

 都道府県単位や広域連携を行うにも隣県が被災地、という状況が延々と続くわけであり、広域搬送を行うにも大阪神戸名古屋が被災し、内陸部の京都や瀬戸内の松山に広島と岡山がかろうじて直撃を免れる、紀伊半島と四国南部に南九州が津波の直撃を受けるという想定なのですから、先ず救援を受けようにも東京と福岡や仙台しか安全圏はない。

 国が正面に立つ以外に選択肢はないのではないか、すると平時の手続きを堅持していては文字通り37万という死者数に繋がる、復興一つとって年間百万単位の移民を募らねば復旧さえ年単位の期間を必要とするような状況ではないか、その為には特措法、現行憲法にある程度抵触する決断を平時の内に行うことこそ為政者の責務ではないか、と。

 都道府県単位の防災計画の場合は、南海トラフ地震では隣県の支援が充てにならない、災害時に自分の自治体だけで救援計画を自己完結させるという、能登半島地震でさえ石川県だけでは対応できなかったものなのでしたから、非常に大きな覚悟が必要ですし、なにより、消防は市町村単位、消防だけで支援を受けず行う初動数日間の対応となる。

 自衛隊の災害派遣さえ自治体として駐屯地を抱えている地域は別として、いや中部方面隊の駐屯地大半と西部方面隊駐屯地のかなりの数が、被災地の中にある駐屯地、となります。静浜基地と佐伯基地や小松島航空基地は津波の直撃を受けますし、築城基地と呉基地なども影響がおおきい、鹿屋航空基地や阪神基地もある程度影響が考えられ、厳しい。

 ヒーローはやってこないかもしれない、とはNHKなどが南海トラフ地震における広域被害に対して広域消防連携の限界や自衛隊災害派遣の限界などを示唆したものです。すると、地元密着の消防団にもう少し深い能力を付与するべきか、住民参加の防災計画がどこまで考えられるか、電気も水道もなく、末期戦的様相さえ考えなければならない。

 ダメージコントロール。先ず必要なのは津波正面に一定数の原子力施設が存在し、考えたくない事ではあっても稼働していない原子力施設での全電源喪失を含め、何らかの危険な状況は起こり得るという覚悟です。休止中の原発でも全電源喪失となれば燃料プールでの核燃料崩壊熱による漏洩事故は起こり得るため、この場合への備えが必要となる。

 橋梁や隧道に高架道路と歩道橋など、リスクコントロールとして仮に想定される最大規模の地震が発生した場合でも交通を維持できる経路は何処があり得るのか、破損した道路を被災地域の協力会社が重機などを平時に保管している燃料と有事にも確保できる人員を動員した場合の24時間以内に仮通行可能となる区画は、48時間の場合は、などなど。

 太平洋側全域が津波被害を受ける想定ですが、先ず食料を空輸するとして、被災地に含まれない安全な倉庫や食品工場などの協力企業の供給量はどの程度で、初動72時間以内に被災地へ搬入しなければならない物資の推定量はどの程度か、その輸送に必要な装備は津波や被災地からの安全圏にどの程度確保されているのか、体制を一か月間持続できるか。

 東日本大震災の際には被災地へ連絡する手段がなく総務省は国内のアマチュア無線愛好家へ無線機提供を呼びかけました、本来ならばあの東日本大震災から13年となるのですから想定被災地域問わず自治体単位で無線機など地区ごとの情報と指揮統制を維持するための施策を完成させている頃であるべきですが、実態は能登半島地震被害を見ての通り。

 必要な防災備蓄やその輸送手段を都道府県単位で考えた場合、その場合は隣接都道府県との協力は勿論事前調整するのでしょうが、しかし大前提として隣接する都道府県はある程度無事である事を織り込まなければならない、これが南海トラフ地震のような巨大地震では、自治体の想定だけでは、先ず対応しきれない分野が生じるとの認識が必要なのです。

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3.11東日本大震災から13年【2】胆振東部地震の広域停電・熊本地震は双子の本震・能登半島地震の想定外たち

2024-03-12 20:15:41 | 防災・災害派遣
■大規模災害と想定外
 考えたくない事を考える事が必要なのだ。

 3.11、この日に考えなければならないのは防災の日が九月一日に制定され、防災活動を通じて関東大震災と共に次の首都直下型地震への日ごろの備えの事を思い出さなければならないように、幾つもの防災と災害の経験から考えたくない事を考える、あの日多くの被害が想定外、という名のもとに忘れられていたという問題点を顧みるという一点でしょう。

 東日本大震災は、歴史地震として記録されていた貞観地震、いまでは千年前の東日本大震災と説明される事の覆い、過去の歴史、伝承を伝えられない程の間隔で発生する災害は確かに存在する、というものでした。これを考えますと、昨年発災100年を迎えた関東大震災などは、まだ、曖昧模糊とした上で災害の全体像をつかむ事が出来る間隔できている。

 想定外をなくすためには、少なくとも直近始め幾つかの巨大地震や災害などから、せめてこれだけは想定外とせぬように考えなければならない課題の洗い出しから始めるべきではないかと考えます。そう、考えてみますと13年前の東日本大震災の津波と原発事故は確かに想定外の連続ではありましたが、昨今の災害でも、定説を覆した想定外は数多い。

 胆振東部地震、2018年9月6日に発生しました地震では、広域停電、この想定外が発生しました。マグニチュード6.7で震源は23kmの深さでしたので被災地周辺は大規模な山岳崩壊などが発生し、死者数43名という被害をもたらしましたが、この地震では北海道全域が停電する広域停電が発生、復旧後も9月15日まで道内では計画停電が行われました。

 胆振東部地震での広域停電は、道内最大の火力発電所が被災した事により起った送電停止が道内の電力供給全体に影響し48時間以上にわたり離島を除く北海道内全ての電力が停止しました。この影響は低温貯蔵施設や研究施設などに回復不能の被害を及ぼすとともに、仮にこの発災が時であれば被災者の救援活動に対し影響が及んだと考えられています。

 広域停電、南海トラフ地震のような地震を想定する場合、被害範囲が非常に広く本州の広域に渡り電力インフラが使用不能となり、電力インフラに頼らない状況での初動72時間に対応しなければならない状況は起こりえないのか、電力復旧を念頭に自家発電燃料などが確保されていますが、その稼働期間の見直しなどの必要を迫るのが胆振東部地震でした。

 熊本地震、2016年4月14日に発生し死者276名、特に死者の内221名が関連死という災害で在りましたが、この地震では双子の本震というべき、震度七の激震が4月14日と16日に二度発生し、これは最初の地震が誘発したものではなく、したがって余震ではないと気象庁が位置付けているのですが、本震が時間差で圧そうという、これも想定外といえる。

 双子の本震、災害救助活動が本格化すると同時に時間差で双子の本震が被害を起こしたというもの、これにより半壊の建物が全壊し前回の建物が倒壊するなどの被害が発生しました。東日本大震災などをみますと余震により津波の警戒が必要となった点で、災害救助活動に影響を及ぼしたものですが、双子の本震という前例は、救助へ不確定要素を与える。

 能登半島地震、1月1日に発災したばかりのこの地震では、海岸隆起、という、これは正確には関東大震災でも確認されている事象なのですが、これが能登半島の広範囲において発災しました。そして、能登半島地形上陸上交通が限られる一方で漁港を中心に本来は海からの救助などが大きな意味を示すはずではあったのですが、港湾が使用不能となっていた。

 海岸隆起は、同時に海底地形崩壊により極めて短時間で沿岸部に津波が襲来し、東日本大震災の教訓であったはずの、充分に時間が有る為に一目散に避難する有用性、というものが成立たなかった、時針による海底地すべりにより数分後には到達するという、過去の奥尻島での北海道南西沖地震のような素早い津波被害、というものが発生した訳です。

 海岸隆起による海上交通阻害、一部には潮流任せでコンテナに救援物資を積み込み漂着するよう願って放流するという意見も示されたといいますが、通常の船舶が使えず、エアクッション揚陸艇など自衛隊の輸送に依存しなければ対応出来なかったという実情は、陸路が駄目な場合は海路が有る、という常識に対して想定外を突き付ける事になりました。

 こうした胆振東部地震や熊本地震に能登半島地震での教訓は、数多ある災害の一例に過ぎないのですが、問題として、今の時点でこれらの想定外の払拭がどの程度進んだのでしょうか、いや、現状のままでは南海トラフ地震が現実のものとなった場合でも、前例を忘れあれは想定外であったと踏襲しなければならないようなことは、避けなければなりません。

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3.11東日本大震災から13年【1】次の巨大災害へのリスクコントロールの視点とダメージコントロール

2024-03-11 20:24:27 | 防災・災害派遣
■鎮魂-3.11
 今年も3月11日がやってい参りました。

 3.11、東日本大震災から13年目となりましたが、日本列島はあの3.11のような巨大地震と災厄には見舞われていないものの、熊本地震や能登半島地震と断続的な巨大災害に見舞われ続けています。そして、これは恐らく3.11の間接的な要因と考えることも出来ると思うのですが、2011年から続く電力不足は日本経済をむしばみ続けています。

 国家規模の災害に対しては万全のリスクコントロールを行わなければ、十年単位二十年単位で国家に悪影響を受ける、いた、これは1923年関東大震災、これが大正デモクラシーの社会を一変させ昭和初期の破滅的な大東亜戦争と太平洋戦争に突入していった、この教訓から学ぶべきであったのかもしれませんが、今回はまだ手遅れではありません。

 リスクコントロール、巨大災害として第一に考えなければならないのは南海トラフ連動地震、そして首都直下型巨大地震です。第一にと挙げつつ二つ並べるのかと批判はあるかもしれませんが、この二つは安全保障面で例えれば日中全面戦争と米ロ全面核戦争、というようなもので、次点を附けても日本に甚大な影響という点で同義、ということ。

 南海トラフ連動地震は、昭和南海地震や昭和東南海地震と同程度であれば、リスク管理の範疇なのかもしれません、ただ、南海トラフは静岡県中部から本州太平洋沖と四国を機を通り日向灘まで伸びる巨大な海溝であり、歴史地震としては同時に全てが動きマグニチュード9規模の地震を引き起こしたことが例えば宝永地震など、複数確認される。

 白鳳地震、仁和地震、永長地震、正平地震、康安地震、明応地震、慶長地震、宝永地震、安政東海地震、安政南海地震、南海トラフでの歴史地震はこうしたものが理科年表として確認されており、また2年間を挟んで昭和東南海地震と昭和南海地震、というようなものも発生、その一つとって熊本地震や新潟中越地震を上回る被害を及ぼす規模です。

 歴史地震故に再来しない、というよりは逆に、もう少し地学的観点から東北地方太平洋沖地震というもののリスクを評価していたならば、たとえば東北電力の原子力施設と同程度の津波対策を東京電力が取っていたこととなるのでしょうし、被害を局限化する幾つかの施策に対して公共事業を集中させることは出来ていたのかもしれません。

 現実的リスクとしてのリスクコントロールの視点とダメージコントロールというものをある程度考えなければならないのです。ただ、幾つかの施策で逆に東日本大震災の影響が次の南海トラフ巨大地震に対する対策強化を阻害しているのではないか、という危惧があるのです。一例といえば防衛力の転換や国土強靭化計画の遅延、などでしょうか。

 防衛力については、東日本大震災の頃と比較して自衛隊のヘリコプター保有数が激減していますので、非常に残念なことですが次の南海トラフ地震に際して前回の東日本大震災のような大規模な空輸能力を発揮できない可能性がある。防衛費が挙がっているのにきゆうだろう、と思われる方は防衛費の金額しか見ていない事を気づくべきではないか。

 国土強靭化計画の遅延は、東日本大震災に際して、次の地震が差し迫っているとして政府が正当な手続きを経ずして全国の原子力発電所を停止させ、更に高額なガスタービン火力発電など化石燃料に負担する枠組み、世界で最も割高な太陽光発電買取電力制度を開始したことで電気代全般が高騰したままとなってしまい、製造業が衰退していること。

 対策強化には膨大な国費が必要ですが、その為には増税、というよりも日本全体の経済規模を強化することが不可欠です。特に毎年、震災前には殆どなかった、夏の節電要請、冬の節電要請、電力は足りていると豪語し原発不要論を掲げる方は居ますが節電要請を行っていること一つとっても不足は明らかで、製造業が日本から海外へ流出している。

 自由貿易の時代ですのでコスト管理は何よりも重要で、日本の電力は電圧変化がなく高品質故にたかいのだ、という指摘もあるにはありますが、問題は全発電量の三割を超えていた原発を、法的根拠もなく停止したことで再開強制に法的根拠を置く事ができず、結局事なかれ主義、電力不足の責任と電気料金高騰の責任を曖昧としたことが原因だ。

 日本の震災対策は、例えば道路網の強化による津波避難路は勿論、例えば沿岸部居住者への内陸部の万一の際に避難先となり得るセカンドハウス取得の税制優遇措置、港湾や空港設備の拡充と津波対策、津波避難高層ビルの沿岸過疎地建設、防波堤一つとって、いや確かに東日本大震災では世界最大の防波堤は破壊されているが、有用ではある。

 道路網ともう一つ鉄道網は、逆に地方鉄道路線の赤字経営を払しょくする抜本的な施策はなく、東日本大震災では大活躍した鉄道貨物輸送、仙台市など東北地方の製油施設が津波により破壊された為に京浜地区より燃料輸送貨物救援列車が日本海縦貫線を活用し日本海側から東北地方まで燃料を輸送した、こうした緊急輸送措置が次も維持できるか。

 ただ、この全般を見渡したうえで考えなければならないのは、現在の防災は都道府県が主力となり国が全力で支援する構図となっているのですが、そもそも都道府県の情報収集能力や通信と指揮能力、物資集積計画能力や防災インフラ整備能力の範疇に収まる災害、いや南海トラフ地震は都道府県能力にとり想定外ではないか、ということです。

 想定外、というのは防災計画などを俯瞰しますと、地震単体の災害には万全であっても、地滑りを想定していない、津波被害を想定していない、原子力事故を想定していない、大規模火災の被害を想定していない、一つ抜け落ちただけでも、実際に機能しないものとなります、いや、平時のインフラを前提とした防災計画が比較的多いと気付く。

 空輸一つとって、広域災害であれば空港が本当に無事なのか、それ以前に空港へ燃料を運ぶ道路網は無事なのか、想定される大規模なヘリコプターなどの救援を支えられる整備インフラ受け入れを想定しているのか、そもそも増援に駆け付けるヘリコプターの飛行場そのものが維持できない状況は広範囲の災害の場合に在り得ないのか、と問題が。

 物資集積についても、いや東日本大震災の時には東北地方に支援を送ろうとした奈良県の県全体の備蓄食料が段ボール30箱分であったなど、大規模災害が少なかったからこそ、どの自治体も予算に潤沢な自治体などないという現代に在って、備え、というものがおろそかにされすぎてきていた、この状況は多少払拭されたものの、それでも十分かと。

 国が主体となる、憲法の地方自治に関する条文さえある程度超法規的な措置を含むか場合によっては改憲さえ視野に含め、規格外の災害に対しては国が全般的な指揮中枢となり、これは生命の選択さえ含むのだけれども、防災対策と防災指揮の正面に立つ覚悟が必要なのではないか、と考えるのです。そのための非常事態法制も必要でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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能登半島元日地震発災一ヶ月,死者240名往増え不明者15名と進まぬ復旧見えぬ復興着手と迫る次の課題

2024-02-01 20:24:14 | 防災・災害派遣
■能登半島元日地震
 巨大地震というものは突然やってくるものではあるのですが元日の親類が年始のあいさつに集まる丁度良い頃合いがまさか、と。

 元日1610時、能登半島を襲った元日地震の発生から本日で一ヶ月となりました。被害は能登半島北部の沿岸部隆起や輪島市街地の大規模火災など、普及の目処の絶たないものも多く、一ヶ月を経て停電だけは解消されつつあるものの、産業復興はもちろん、住宅被害だけで4万6294戸、避難生活のひと段落さえ目処が立たない状況となっています。中でも。

 能登半島北部の地震は死者240名、行方不明者15名、死者240名のうち15名は災害関連死とされています。元日の地震、能登半島の多くは年末年始の規制により人が置く、此処に激震という震度七の地震が襲いかかり、続いて大津波警報発令、救助活動もままならぬ中に高台避難を迫られ、その間隙を襲うように小さな火災は複数の大火災となりました。

 避難生活は、仮設住宅の完成が輪島市から朗報を届けていますが、能登半島北部は過疎化と共に高齢化が進んでおり、高齢者の住宅復興はどうすれば良いのか、という重い問題がのしかかっています。ここに福祉施設被災などで介護離職を強いられる状況、産業復興が地盤隆起などで目処さえ立たない地域では、被災地からの移住さえはじまているほどです。

 復興支援策として政府は、高齢者世帯として受託が半壊以上の被害を受けた世帯に最大300万円程度の支援金や、現役世代の人口流失を回避するための減税策、能登空港や港湾復興など21の重点インフラ復興を自治体に代わり国が行うなどの施策を提示しました。また今後建設の仮設住宅は一部が石川モデルという、長期使用を想定する民家型となるようです。

 遥かなる能登半島の地震災害、ここを望見しますと我が事のように考えてしまうのは、能登反応の復興や災害対処というものの検証と進展がみられなければ、次に必ず来るであろう南海トラフ地震、能登半島よりも遥かに大きな紀伊半島さえも激甚被害を及ぼす巨大地震に対して、災害対処は勿論、復興さえ遅滞する状況となるのではないかという懸念だ。

 南海トラフ地震を能登半島地震の問題と共に並べる事は飛躍だ、と思われるかもしれませんが、震災の元日から二週間しょうしょうの先には阪神淡路大震災慰霊の日が有り、わたしは直接の被災経験の無い場所に住んでいた訳ではなく隣町で負傷者が出た程度ではあるのですが、東灘区の火災報道をテレビで見た際と輪島の大火災が重なった事はいなめない。

 防災対策が万全だから大丈夫だ、こう反論があるのかもしれませんが、能登半島こそ2018年ごろから群発地震が続き、震度六強の地震さえ定期的に発生していましたので、あの能登半島が自信に油断していたとは思えない。確かに1997年に石川県が策定した阪神淡路大震災を受けての石川県地震想定と比較すると、当初の想定は過小であったようだけれども。

 東日本大震災からの復旧計画などの検証でも、例えば大規模地震が想定される地域では事前に仮設住宅などの避難地を選定する必要性などが既に3.11の数年後に指摘されていますが、必要性の提起などは検討されるものの実際の政策と成れば、巨大な費用と法整備などの問題から実現せず、不十分であった事をそのまま前例踏襲している構図はあるのではと。

 財政再建が求められている現状、特に増税等はこれ以上負担増に世論の支持が続かないという指摘には理解するものの、かつて無駄だと言われていた公共投資の多くが、平時の無駄は有事の余裕となっていたことは落ち着いて検証しますと理解できるものです。すると、行政改革が叫ばれ橋本行革から約30年、インフラ整備などを絞り過ぎてはいないのか。

 行政の無駄見直しは、例えば自衛隊を見ても建設工兵であった地区施設隊はすべて廃止され20年が経ており、ヘリコプターは東日本大震災の頃と比較しても大幅に減少、輸送艦は大きくなりましたが阪神大震災の頃と比較しほぼ三分の一、偵察機は即応できる戦術偵察機も無人機で対応できると全廃してしまいました、かつて震災には偵察機が即応していた。

 防衛力の変革と共に無駄として削られた装備や部隊は、やはり災害派遣能力に響いている、東日本大震災の時点でヘリコプターの規模は充分ではないと考えていましたが、それと比較して直作威厳されてしまっては、能登半島地震災害派遣あ勿論、次の南海トラフ地震では、どんな魔法でも考えているのかと不安はぬぐえません。防衛費がまだ、たりていない。

 防災と危機管理を考えますと、現在の国と自治体の関係は相互支援や調整を軸として災害対処に当っていますが、場合によっては憲法上の地方自治に関する条文を改正してでも、中枢の指揮系統、これは相互の能力把握や後方支援に情報収集まで含めた、体制構築も必要なのかもしれません。能登半島地震は今なお、復旧中、復興着手には至っていません。

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鎮魂1.17:兵庫県南部地震/阪神大震災発災29年-巨大地震,平時ではない非常時の概念とどう向き合うか

2024-01-17 07:00:38 | 防災・災害派遣
■1.17が遺した明日への教訓
 0547時でしたか部屋の鳩時計はもう少し進んでいたようにも思うのですが不思議と揺れる少し前に目が覚めたのを思い出します。

 本日で、あの兵庫県南部地震、阪神大震災発災から29年となりました。経験のない激しい揺れ、というものを経験する事となりましたが、神戸市と淡路島とに伸びる野島断層の直下型地震は震源が浅かったもののその直情には当時は想定外と云われたほどの激震により、建物倒壊と大規模火災により多くの犠牲者を出した、死者数は6000名を越えました。

 戦後日本災害史を顧みれば、あの阪神大震災以前の最大の災害と云えば伊勢湾台風であり、しかし伊勢湾台風を契機に防災インフラ整備が進められ、1973年の大規模地震対策特別措置法や建築基準法改正により、地震災害は最早克服できるのではないかという錯覚を、危機管理というものも突き付けるとともに根本から覆してしまったものが阪神大震災という。

 伊勢湾台風は、まだ太平洋戦争の記憶が新しい頃の災害ではありましたが、そうした戦時という記憶を深く封印してしまった遥か後、阪神大震災は、平時ではない状況がある、といういわば有事の概念を突き付けたのも、特色であったのかもしれません。実際問題、119番や110番が輻輳し通報不能となる様な状況は平時以外としか言えないのではないか。

 震災を鎮魂するだけで、浮かばれるというならばわたしもそうとどめるべきと思うのですが、2011年東日本大震災と、熊本地震に能登半島地震と震災は続き、そして南海トラフ巨大地震が想定され警戒されているうえで、そもそも平時の制度を維持できない状況における国の仕組み、憲法が想定しない緊急事態、というものの必要性と向き合うべきでは、と。

 阪神大震災は、トリアージという制度の必要性を突き付ける機会ではありましたが日本医師会を含め当初はトリアージを命の選別に繋がるとして否定的でした。わたしも否定的なのですが日本医師会は東日本大震災規模の地震でも医療体制が充分な水準への医療基盤を構築するようなことはせず、結局トリアージをせざるを得ない状況に結果的に陥りました。

 東日本大震災、そして次の国家危機というべき巨大災害を考えますと、先ず、阪神大震災において平時ではない状況が起きうるという簡単な事実を突き付けた、その為の平時以外の状況に対応する制度を構築する決断を躊躇することは、もしかするとあの震災で救えなかった人命の幾つかが残した教訓を、風化させているのではないか、危惧するのですね。

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