■臨時情報:能登半島地震
元日に発生した能登半島地震は今なお被害全容が不明という厳しい状況にあります。過去の自衛隊行事写真などから現在の状況の一端を解説できればとおもいます。
能登半島地震、発災から9日を過ぎたところですが、能登半島という長大な地形、近傍の航空基地である小松基地から150kmを隔て、しかも海に突き出た半島であるにもかかわらず、今回の地震は半島北部で4m程度地形が隆起しており船舶の港湾施設入港が大幅に制限されている状況ですので、陸上自衛隊は孤立地域へ徒歩での物資輸送をおこなっています。
第14普通科連隊や第10師団と中部方面隊や防衛省SNSなどにこの概況が支援され、なにしろマスコミが近寄る事も出来ない地域が道路の崩壊やトンネル破損、土砂崩れにて孤立してしまっていて、ここに人力での輸送を行っている状況、具体的には、高機動車やトラックで中継地まで運びその先は徒歩という、山間部の徒歩機動が孤立地域を支えています。
金沢市や小松市など、救援物資は全国から集まっているが、現地へ運ぶのは山間部の徒歩機動のみ、自衛隊は孤立地域から避難所や被害の無かった地域へのヘリコプターによる広域避難の支援も開始していますが、厳しい。熊本地震や東日本大震災のように、能登半島にもう少し基地があれば、とおもうところですが、今考えても既に震災は始まっている。
山間部にヘリポートを緊急造成する方法はないのか、と問われますと、ある。しかし、危険で実行できない、という現実です。具体的には、森林地帯にアメリカ軍が開発したヘリポート造成方式で、デイジーカッターという爆弾があります、正式名称BLU-82,これは6.8tと重量が有り爆撃機ではなく輸送機から投下、含水爆薬により強力な爆風を起こすもの。
BLU-82は落下傘で降下させ地面に接触すると大爆発を起こして木々を一斉になぎ倒し、ヘリポートを森林に一瞬で造成する代物なのですが、こんなものは被災地で使えません。BLU-82そのものは自由落下型で制度も低い為に2000年代初めに退役し、GBU-430MOABという、9.8tの爆弾に置換えられていますが、米軍しか保有せず、被災地でもつかえない。
応急へリポート、というならば1985年の日航ジャンボ墜落事故に際して御巣鷹山に第1空挺団と第12施設大隊が仮設した実例があります、この際には手作業で木々を伐採し、UH-1用ヘリポートを24時間で、V-107用ヘリポートを72時間で造成した実例があります。孤立地域が二箇所三カ所程度であれば、選択肢ですが、今回の孤立箇所は50カ所以上という。
輸送機から何故物資投下を行えないのか、こういう疑問があるようですが、第1空挺団降下訓練始めを見ても、高高度空中投下装置でも、人が操作する落下傘でさえ風で流されます。現行法ではこうした物糧などが流されて被災者に当ってしまった場合の免責は無く、人のいない場所に限定され、考え得るのは能登空港のような立入り制限できる施設くらい。
JPADS統合精密投下システムというGPS誘導方式の物糧投下システムが米軍などで使用されていますが、これでも直径800m程度の範囲に降ろすこととなってしまい、山間部などですと斜面などに落下傘が引っ掛かり、被災者自身が回収する事は難しいことになるかもしれません。また重さも相応にありますので、住宅地に投下することも危険が伴う。
輸送機からの投下、自衛隊は自治体より要請された物資を運ぶことが災害派遣における任務ですので、どうしても、といわれれば能登半島に輸送機から無作為に投下する事は出来ます、しかし、投下したものを被災者が入手できるかといいますと、危険を冒した投下で数%、安全な無人地帯に投下した場合は1%以下、XXトン運んだという以上の意味はない。
ヘリコプターで空輸できないのか、という点について。やっているが不充分、発災から9日を経て、避難所の位置などはほぼ判明してきています、輸送艦からの携帯電話移動基地局搬入や道路復旧の進展などは発災時点と比べれば劇的に改善しているのですが、難しいのは自衛隊ヘリコプターは、ダウンウォッシュという、ローターの巻き起こす突風がかなりの強さという点です。
コンクリート建造物でも、過去に古い五階建ての建物にUH-1多用途ヘリコプターを着理うさせたところ、建物構造にひずみが出てしまい、エレベータが修理不能となった事例がありました、これは自衛隊施設への損傷でしたが、今回災害派遣に投入されたヘリコプターの中でも最小のUH-1でもこうした事例があり、輸送ヘリコプターは数段上の風を呼ぶ。
CH-47輸送ヘリコプターですと、数百m離れていても、過去わたしは木更津駐屯地祭にてカメラバッグが風で飛ばされはしないにしても流されてしまいました、百数十m程度だと雨戸は飛び半壊木造家屋などは倒壊する危険があります、こうした危険を冒して無理に着陸するよりも、隊員による徒歩での輸送、被災者にこれ以上二次災害を起こさない事を重視しているのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
元日に発生した能登半島地震は今なお被害全容が不明という厳しい状況にあります。過去の自衛隊行事写真などから現在の状況の一端を解説できればとおもいます。
能登半島地震、発災から9日を過ぎたところですが、能登半島という長大な地形、近傍の航空基地である小松基地から150kmを隔て、しかも海に突き出た半島であるにもかかわらず、今回の地震は半島北部で4m程度地形が隆起しており船舶の港湾施設入港が大幅に制限されている状況ですので、陸上自衛隊は孤立地域へ徒歩での物資輸送をおこなっています。
第14普通科連隊や第10師団と中部方面隊や防衛省SNSなどにこの概況が支援され、なにしろマスコミが近寄る事も出来ない地域が道路の崩壊やトンネル破損、土砂崩れにて孤立してしまっていて、ここに人力での輸送を行っている状況、具体的には、高機動車やトラックで中継地まで運びその先は徒歩という、山間部の徒歩機動が孤立地域を支えています。
金沢市や小松市など、救援物資は全国から集まっているが、現地へ運ぶのは山間部の徒歩機動のみ、自衛隊は孤立地域から避難所や被害の無かった地域へのヘリコプターによる広域避難の支援も開始していますが、厳しい。熊本地震や東日本大震災のように、能登半島にもう少し基地があれば、とおもうところですが、今考えても既に震災は始まっている。
山間部にヘリポートを緊急造成する方法はないのか、と問われますと、ある。しかし、危険で実行できない、という現実です。具体的には、森林地帯にアメリカ軍が開発したヘリポート造成方式で、デイジーカッターという爆弾があります、正式名称BLU-82,これは6.8tと重量が有り爆撃機ではなく輸送機から投下、含水爆薬により強力な爆風を起こすもの。
BLU-82は落下傘で降下させ地面に接触すると大爆発を起こして木々を一斉になぎ倒し、ヘリポートを森林に一瞬で造成する代物なのですが、こんなものは被災地で使えません。BLU-82そのものは自由落下型で制度も低い為に2000年代初めに退役し、GBU-430MOABという、9.8tの爆弾に置換えられていますが、米軍しか保有せず、被災地でもつかえない。
応急へリポート、というならば1985年の日航ジャンボ墜落事故に際して御巣鷹山に第1空挺団と第12施設大隊が仮設した実例があります、この際には手作業で木々を伐採し、UH-1用ヘリポートを24時間で、V-107用ヘリポートを72時間で造成した実例があります。孤立地域が二箇所三カ所程度であれば、選択肢ですが、今回の孤立箇所は50カ所以上という。
輸送機から何故物資投下を行えないのか、こういう疑問があるようですが、第1空挺団降下訓練始めを見ても、高高度空中投下装置でも、人が操作する落下傘でさえ風で流されます。現行法ではこうした物糧などが流されて被災者に当ってしまった場合の免責は無く、人のいない場所に限定され、考え得るのは能登空港のような立入り制限できる施設くらい。
JPADS統合精密投下システムというGPS誘導方式の物糧投下システムが米軍などで使用されていますが、これでも直径800m程度の範囲に降ろすこととなってしまい、山間部などですと斜面などに落下傘が引っ掛かり、被災者自身が回収する事は難しいことになるかもしれません。また重さも相応にありますので、住宅地に投下することも危険が伴う。
輸送機からの投下、自衛隊は自治体より要請された物資を運ぶことが災害派遣における任務ですので、どうしても、といわれれば能登半島に輸送機から無作為に投下する事は出来ます、しかし、投下したものを被災者が入手できるかといいますと、危険を冒した投下で数%、安全な無人地帯に投下した場合は1%以下、XXトン運んだという以上の意味はない。
ヘリコプターで空輸できないのか、という点について。やっているが不充分、発災から9日を経て、避難所の位置などはほぼ判明してきています、輸送艦からの携帯電話移動基地局搬入や道路復旧の進展などは発災時点と比べれば劇的に改善しているのですが、難しいのは自衛隊ヘリコプターは、ダウンウォッシュという、ローターの巻き起こす突風がかなりの強さという点です。
コンクリート建造物でも、過去に古い五階建ての建物にUH-1多用途ヘリコプターを着理うさせたところ、建物構造にひずみが出てしまい、エレベータが修理不能となった事例がありました、これは自衛隊施設への損傷でしたが、今回災害派遣に投入されたヘリコプターの中でも最小のUH-1でもこうした事例があり、輸送ヘリコプターは数段上の風を呼ぶ。
CH-47輸送ヘリコプターですと、数百m離れていても、過去わたしは木更津駐屯地祭にてカメラバッグが風で飛ばされはしないにしても流されてしまいました、百数十m程度だと雨戸は飛び半壊木造家屋などは倒壊する危険があります、こうした危険を冒して無理に着陸するよりも、隊員による徒歩での輸送、被災者にこれ以上二次災害を起こさない事を重視しているのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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