北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

能登半島地震:間もなく発災十日,自衛隊災害派遣の救助阻む峻嶮地形と海岸線隆起による港湾使用不能

2024-01-10 07:00:49 | 防災・災害派遣
■臨時情報:能登半島地震
 元日に発生した能登半島地震は今なお被害全容が不明という厳しい状況にあります。過去の自衛隊行事写真などから現在の状況の一端を解説できればとおもいます。

 能登半島地震、発災から9日を過ぎたところですが、能登半島という長大な地形、近傍の航空基地である小松基地から150kmを隔て、しかも海に突き出た半島であるにもかかわらず、今回の地震は半島北部で4m程度地形が隆起しており船舶の港湾施設入港が大幅に制限されている状況ですので、陸上自衛隊は孤立地域へ徒歩での物資輸送をおこなっています。

 第14普通科連隊や第10師団と中部方面隊や防衛省SNSなどにこの概況が支援され、なにしろマスコミが近寄る事も出来ない地域が道路の崩壊やトンネル破損、土砂崩れにて孤立してしまっていて、ここに人力での輸送を行っている状況、具体的には、高機動車やトラックで中継地まで運びその先は徒歩という、山間部の徒歩機動が孤立地域を支えています。

 金沢市や小松市など、救援物資は全国から集まっているが、現地へ運ぶのは山間部の徒歩機動のみ、自衛隊は孤立地域から避難所や被害の無かった地域へのヘリコプターによる広域避難の支援も開始していますが、厳しい。熊本地震や東日本大震災のように、能登半島にもう少し基地があれば、とおもうところですが、今考えても既に震災は始まっている。

 山間部にヘリポートを緊急造成する方法はないのか、と問われますと、ある。しかし、危険で実行できない、という現実です。具体的には、森林地帯にアメリカ軍が開発したヘリポート造成方式で、デイジーカッターという爆弾があります、正式名称BLU-82,これは6.8tと重量が有り爆撃機ではなく輸送機から投下、含水爆薬により強力な爆風を起こすもの。

 BLU-82は落下傘で降下させ地面に接触すると大爆発を起こして木々を一斉になぎ倒し、ヘリポートを森林に一瞬で造成する代物なのですが、こんなものは被災地で使えません。BLU-82そのものは自由落下型で制度も低い為に2000年代初めに退役し、GBU-430MOABという、9.8tの爆弾に置換えられていますが、米軍しか保有せず、被災地でもつかえない。

 応急へリポート、というならば1985年の日航ジャンボ墜落事故に際して御巣鷹山に第1空挺団と第12施設大隊が仮設した実例があります、この際には手作業で木々を伐採し、UH-1用ヘリポートを24時間で、V-107用ヘリポートを72時間で造成した実例があります。孤立地域が二箇所三カ所程度であれば、選択肢ですが、今回の孤立箇所は50カ所以上という。

 輸送機から何故物資投下を行えないのか、こういう疑問があるようですが、第1空挺団降下訓練始めを見ても、高高度空中投下装置でも、人が操作する落下傘でさえ風で流されます。現行法ではこうした物糧などが流されて被災者に当ってしまった場合の免責は無く、人のいない場所に限定され、考え得るのは能登空港のような立入り制限できる施設くらい。

 JPADS統合精密投下システムというGPS誘導方式の物糧投下システムが米軍などで使用されていますが、これでも直径800m程度の範囲に降ろすこととなってしまい、山間部などですと斜面などに落下傘が引っ掛かり、被災者自身が回収する事は難しいことになるかもしれません。また重さも相応にありますので、住宅地に投下することも危険が伴う。

 輸送機からの投下、自衛隊は自治体より要請された物資を運ぶことが災害派遣における任務ですので、どうしても、といわれれば能登半島に輸送機から無作為に投下する事は出来ます、しかし、投下したものを被災者が入手できるかといいますと、危険を冒した投下で数%、安全な無人地帯に投下した場合は1%以下、XXトン運んだという以上の意味はない。

 ヘリコプターで空輸できないのか、という点について。やっているが不充分、発災から9日を経て、避難所の位置などはほぼ判明してきています、輸送艦からの携帯電話移動基地局搬入や道路復旧の進展などは発災時点と比べれば劇的に改善しているのですが、難しいのは自衛隊ヘリコプターは、ダウンウォッシュという、ローターの巻き起こす突風がかなりの強さという点です。

 コンクリート建造物でも、過去に古い五階建ての建物にUH-1多用途ヘリコプターを着理うさせたところ、建物構造にひずみが出てしまい、エレベータが修理不能となった事例がありました、これは自衛隊施設への損傷でしたが、今回災害派遣に投入されたヘリコプターの中でも最小のUH-1でもこうした事例があり、輸送ヘリコプターは数段上の風を呼ぶ。

 CH-47輸送ヘリコプターですと、数百m離れていても、過去わたしは木更津駐屯地祭にてカメラバッグが風で飛ばされはしないにしても流されてしまいました、百数十m程度だと雨戸は飛び半壊木造家屋などは倒壊する危険があります、こうした危険を冒して無理に着陸するよりも、隊員による徒歩での輸送、被災者にこれ以上二次災害を起こさない事を重視しているのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和6年能登半島地震検証:初動左右した能登空港活用可否と自治体に必要なマネジメント能力

2024-01-05 07:00:06 | 防災・災害派遣
■臨時情報-能登半島地震
 テレビの前で勝手な持論を出す事は憚れるべき視座ですが、しかし検討の上で却下されたのではなく検討さえせず幾つかの重要な施策が放置されているとしたならばどうでしょう。

 能登半島地震、災害対処の様子を見ますと、能登半島自治体は昨年と一昨年に繰り返される震度六クラスの地震災害とともに、もう少し防災能力が高かったように思ったのですが、現状は情報収集は勿論、自治体能力を超えているという時点で対処能力が輻輳を起こしているように思えます。もちろん、高齢化、過疎化、財源不足、色々あるのは理解する。

 自衛隊災害派遣、しかし現行法では地方地自法や災害救助法に基づき、防災と災害対処の一義的な主役は自治体であり、能力を超える災害であっても何が足りないのかを具体的に示して足りない能力を国に依存し救援を遂行する、つまりマネジメント業務というものは首長の所管です。自己判断で独断専行を、という制度を省いて法治主義があるのだから。

 神の視線、と揶揄される現場から遠いからこそ実情を無視した発言ができるという例えはありますが、例えば今回の能登半島地震、津波が珠洲市に大打撃を与え能登半島の輪島などが道路網が寸断され4日に漸く能登空港までの道路が回復しました。能登半島北部へは現在、海上輸送とヘリコプター空輸が生命線となっているのですが十分ではない。

 能登空港を自衛隊が拠点として運用できたならば状況は随分改善していなかったか。これこそ現場を知らないカミサマの視点だと批判される覚悟で、滑走路にひびが入り停電している空港ですが、管制塔が機能せずとも小松基地管制塔が航空管制を担えば自衛隊機だけならば運用できたのではないか、事実管制塔の無い福井空港は小松が管制している。

 C-1輸送機は最短600mの滑走路で離着陸できるため、2000m滑走路がある能登空港は真ん中が使えなくとも1000m滑走路として運用できるはずで、そもそもC-2輸送機とC-130H輸送機は滑走路が駄目ならば隣の草地で発着する不整地発着能力があるし、ひびくらいならば滑走路補修マットという、空爆された際に復旧に用いる機材を敷けばよい。

 しかし、前述の通り災害派遣として自衛隊は支援する側ですが、自治体が具体的にどのくらい支援が必要なのかということを示さなければ、がんばります、以上の言葉の効果はありません、何を頑張るのですか的な。災害に関してマネジメント能力が必要とされるわけです。今回は避難所というよりもどこにどれだけ孤立しているのかが把握できていない。

 能登空港に輸送機で中型ドーザやダンプカーとバケットローダを搬入できていれば、またできたことは変わったかもしれませんし、汎用軽機動車でも運び込めば孤立地域へ多少の往来は可能となります。汎用軽機動車は中部方面隊には配備されていませんがそう重いものではない、統合任務部隊として要請するならばV-22で搬入するのも難しくありません。

 連絡幹部派遣。自衛隊は石川県庁、福井県庁、長野県庁、新潟県庁へ迅速に連絡幹部を派遣し、輪島市へも連絡幹部を派遣しています。けれども、珠洲市や能登町といった地域へは派遣していません。輪島市へ派遣できたのは輪島分屯基地という能登半島唯一の自衛隊施設近傍であった為なのですが、珠洲市などは自治体機能を超え対応できていなかった。

 県庁への連絡幹部派遣ですが、石川県庁が珠洲市の情報を考慮出来ていたならば、UH-1JでもUH-2でもいいので多用途ヘリコプターで連絡幹部と通信陸曹を珠洲市や能登町へ派遣してほしい、と要請しているだけで、随分変わったのではないか。金沢の第14連隊以外に連絡幹部は要請さえあれば上級部隊の師団や方面隊から派遣できたはずです。

 海上輸送に期待したい。石川県知事発言がありましたが、金沢港艦艇広報として、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、ヘリコプター搭載護衛艦かが、輸送艦おおすみ型などを見ているでしょうし、少なくとも報道ではこの種の艦艇の存在を知っているでしょうから発言したのでしょう。けれども、輸送艦が全て広島の呉に配備されている事は知っていたのか。

 舞鶴基地には第3護衛隊群の第3護衛隊と第14護衛隊の護衛艦が配備されていますけれども、護衛艦の輸送能力にはもともと輸送を想定したものではありませんから、艦載機であるSH-60K哨戒ヘリコプターと搭載艇による輸送となり限界がある、物資輸送よりも金沢市などへの広域避難のための輸送手段として活用した方がよかったのかもしれません。

 おおすみ型輸送艦、海上自衛隊は1日には派遣を決定し2日には出航、4日には現地へLCACエアクッション揚陸艇を派遣しています。国際情勢のように事前情報で奇襲の懸念がある、というような把握できるものと地震は異なりますので、4日にLCACを揚陸できたのはかなり頑張った方だと思うのですが、被災地からしますと遅く感じたことでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和6年能登半島地震概況:プッシュ型支援の限界,14地区が道路寸断孤立と放送中継装置電源喪失

2024-01-04 07:00:11 | 防災・災害派遣
■臨時情報-能登半島地震
 発災から60時間以上を経た被災地ですが現状では全容さえ把握できておらず手を付けられるところから対応している状況です。

 地震被害状況の把握が遅れているのは、能登半島という過疎地域であり交通網が元々限られていると共に通信インフラ整備に限界があり、そして高齢化人口という特有の問題があるとともに、年末年始の帰省シーズンにより地域人口が急増しており、自治体能力の限界を超えている状況があり、孤立者数や道路状況さえ、判明している範囲はいまでも狭い。

 珠洲市は過疎化が災害対応能力に限界を突き付けています、珠洲市の市制施行は1954年で決して平成の大合併などで生まれた都市ではないのですが、1975年以降度々行政が原発誘致を進めるものの住民反対で実現せず、産業が限られ少子化、珠洲市のもともとの人口構成も影響しているでしょう、珠洲市は65歳以上人口が50%を超えている状況も考え得る。

 珠洲市の過疎化は、例えば1954年の市制施行当時小中学校は39校あったものが2023年までに学校が11校まで縮小、つまり校区が多数あったものが学校一つとって統廃合され、広い地域に人口が分散している状況があります。行政機能では交通が寸断した中で、中央から航空機等の支援が無ければ情報収集さえ厳しいという状況が醸成されたのでしょう。
■テレビ放送が停波しつつある
 時間とともに状況は悪化しつつある。

 テレビ放送が停波しつつある。能登半島の地域孤立はテレビ放送設備の停電と非常用燃料枯渇により地上波が停波する状況にあります。具体的には能登半島の輪島市内で、NHK放送は既に2日、輪島市のTV/FM中継施設が電源停止に陥り停波、民放のMRO北陸放送と石川テレビにテレビ金沢とHAB北陸朝日放送の合同中継所も間もなく電源停止となる。

 本日4日0600時頃までは電源が残るということですが、これ以降は非常用ディーゼル発電機燃料が補充されない限り、衛星放送と短波ラジオ放送以外受信できない地域が生じることとなります。停波の懸念はNHKが3日2359時に報道したもので、夜間であることも含め、燃料を短期間で補充する事は難しく、移動電波中継車などの派遣が必要となります。
■14地区が道路寸断孤立
 実際にはもっと多い地域が孤立しているのではないかという危惧があるもよう。

 孤立地域が非常に多い。NHK報道を見る限り、輪島市と七尾市と珠洲市及び能登町と穴水町で少なくとも14地区が道路寸断により孤立し、物資不足という状況にあるもよう。もよう、という曖昧な表現は、現地では固定電話と携帯電話が不通で無線機なども無く、またNHK3日2155時の報道でこれら地域への船舶や航空機による支援が届いていない、と。

 携帯電話基地局の電源喪失による通信不能と電話線寸断、どこが救援を必要としているのかさえ把握できない状況があり、携帯電話の移動基地局は、防災訓練等では自衛隊輸送艦により海上から上陸する訓練を行ってはいますが、肝心の輸送艦が3隻しか無く全て呉基地に集中しており、また移動通信車輛を現地に展開させる目処が立っていない状況です。
■当事者の被災状況把握
 プッシュ型支援として要請を待たずに物資を送る方式で中央は臨んでいますが肝心の道路網と通信網が破綻したまま根詰まりを起こしています。

 実施出来ないには相応の理由があるのでしょうが、自衛隊が70機以上保有しているCH-47輸送ヘリコプターは救急車を機内に収容可能ですし、ブルドーザーを吊下げ空輸可能です。V-22オスプレイという装備も自衛隊には配備されています。自治体が、何処へどれだけ人員を送りたいかを示せば、職員も物資も運ぶことは可能ですが、できていない。

 現行法では災害派遣は自衛隊が要請を受けて実施するものであり、軍政のように自衛隊が主体となって行政を指揮下に置く事はできません、ただ、だからこそ防災能力を自治体は求められる訳であり、先ず、市役所町役場職員が不足しているならば、どう増員するかだけでも示すべきで、現状では、当事者が被災状況を把握できていないことが問題なのです。

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令和6年能登半島地震発災:元日日本列島揺るがす巨大地震発生と自衛隊災害派遣の概況について

2024-01-03 07:00:05 | 防災・災害派遣
■令和6年能登半島地震
 元日に発生しました巨大地震について気象庁は今回の地震を令和6年能登半島地震と命名しました。

 令和6年は災害から幕を開けました。1月1日、能登半島北部を震源とするマグニチュード5.7の地震が1606時に発生し、また1610時にはマグニチュード7.6の地震が発生、西日本と中日本に緊急地震速報が発令、今回の地震では既に石川県などで死者数57名となっており、被害全容は今なお情報取集中、かつての北海道南西沖地震のような印象があります。

 大津波警報、この地震では日本海沿岸一帯に大津波警報及び津波警報が発令されています。能登半島群発地震として、2020年ごろから顕著に発生し、2022年6月19日にはマグニチュード5.4の地震により珠洲市で震度六弱、2023年5月5日にはマグニチュード6.5の地震が発生、震度六を記録していますが、今回の地震震度は7と最大規模の地震でした。

 能登半島地震について。防衛省は中部方面総監を司令官とする統合任務部隊を創設、全力を挙げて災害対応に当る構えです。ただ、被災地は能登半島を中心とした北陸地方沿岸部で、津波被害も比較的大きかったのですが、浅い震源の為に震源近くの能登半島では橋梁破壊などによる地域孤立などが相次ぎ、その輸送など難しい災害派遣となりそうです。

 陸上自衛隊は、行方不明者捜索と救急搬送支援、輸送と孤立地域支援、また必要ならば道路啓開と架橋支援、入浴支援などを求められます。金沢の第14普通科連隊が被災地能登半島を警備管区としています。FAST-FORCE初動部隊が迅速に展開し、また上級部隊である第10師団隷下の第33普通科連隊や第10施設大隊はもちろん、総力を挙げて対応中という。

 第10師団に加え、隣接部隊である第3師団隷下部隊も被災状況によっては投入、そして新潟県内でも被害が発生し、こちらは新発田に第30普通科連隊、高田に第2普通科連隊が駐屯、新潟県は東部方面隊管区で石川県は中部方面隊管区なのですけれども、隣接方面隊協力が必要となる規模の災害といえるでしょう。そしてヘリコプターの派遣が肝要となる。

 第1ヘリコプター団と、そして日本海側の地震に備えて創設された美保の中部方面航空隊第3飛行隊CH-47などが期待される。道路啓開を自衛隊が対応する必要はあるのか、民間協力会社が対応したほうが早いのか、というところですが、幸い今回の地震では橋梁については倒壊などはなく、架橋というならば自衛隊の方が早いですが、道路についてはさて。

 海上輸送能力と航空輸送能力について、特に海上輸送能力は2011年東日本大震災の時点でも輸送艦のと一隻があるのみで、のと定期整備中には対応できない状況もあり得ましたが、無いよりは、という状況でした。地震発生から三時間後の1900時過ぎ護衛艦せとぎり、あさぎり、舞鶴基地出航、多用途支援艦ひうち、も出航へ。日本海では新潟中越地震以来だ。

 京都府は兵庫県や福井県のような津波警報ではなく幸い津波注意報であり、護衛艦を緊急出航による津波退避ではなく災害派遣準備を行い被災地へ向かったとのこと。輸送艦は呉基地へ集中配備されていますが、年末では輸送艦くにさき沖どめとなっていて必要な物資を搭載し派遣が考えられます。呉基地から被災地までは関門海峡を越えれば十数時間です。

 おおすみ。呉基地からは2日に輸送艦おおすみ派遣準備が完了し、LCACエアクッション揚陸艇を搭載し被災地へ出航しました。この点、海上自衛隊の輸送艦は3隻のみ、東日本大震災の頃には小さい輸送艦が更に2隻いましたので、ちょっと日本列島の大きさを考えれば不充分、輸送艇を増強する計画もあるのですが、必要性を痛感したのが2011年でした。

 被災地へは初動の段階で舞鶴航空基地の第23航空隊が、ほんとうに海に面している飛行場ですので津波が逸れて良かった、ここからSH-60K哨戒ヘリコプターも派遣されているとのこと。もうひとつ、舞鶴の第44掃海隊は初動には参加していないようですが、今回地震で死者が確認されている七尾へは、橋梁破損などの事情で海上輸送が重要とされています。

 能登半島にあって七尾港は最大の公算三号岸壁は深さ11m、過去には客船にっぽん丸も入港実績があります。ひゅうが喫水は7mで接岸は難しいが不可能ではないのか。掃海艇は毎年一般公開のために入港、舞鶴の掃海艇が艦艇広報しています、この実績から小回りの利く掃海艇は輸送力こそ限られるものの、陸路が寸断した状況では重宝するでしょう。

 小松基地と輪島分屯基地が重要な役割を担います。小松基地は海抜が6.7mで、東日本大震災では松島基地が津波被害を受けたことがまだ記憶に残るところですが、今回の大津波警報は小松基地の所在する石川県で最大5mとのことでしたけれども、その5mは能登半島の震源付近、小松基地は日本海の直ぐ近くに立地していますが、松島基地と異なる事情が。

 日本海と小松基地の間には北陸自動車道が盛り土構造で防波堤のやくわりを担える構造となって基地を守っており、輪島で1.2mの津波観測が発表された後、当初警戒された5mの予報は幸い外れ、基地機能は無事でした。入間、小牧、美保、輸送機部隊がそのまま被災地近くの小松基地へ空輸展開できることは大きな強みです。津波が低かったのは僥倖だ。

 輪島分屯基地はレーダーサイトですがCH-47輸送ヘリコプターに対応したヘリポートがありますので、入間や木更津と美保や明野などから輸送ヘリコプターが支援可能で、被災地の中央部にあるため、救援物資はもちろん、災害派遣部隊の展開拠点ともなるでしょう。ただ、小松について、エプロン地区のかさ上げ工事などは、真剣に検討すべきと考える。

 小松基地、築城基地、舞鶴航空基地、館山航空基地、鹿屋航空基地、小松島航空基地、沿岸の飛行場は数多い。松島基地が東日本大震災津波被害を受け航空機が壊滅し、災害派遣に加わる事が出来ませんでしたが、その後松島基地はエプロン地区と格納庫を3mかさ上げし、津波対策としています。この工事は他の基地も行うべきではないかとおもうのです。

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西日本豪雨災害発災五年-気候変動時代の規格外豪雨災害,難しい豪雨災害の見極めと防災インフラの重要性

2023-07-06 20:09:40 | 防災・災害派遣
■西日本豪雨災害発災五年
 岡山県は災害の無い県だと昔から言われていましたので一面に冠水した倉敷の空撮に驚かされるとともに、しかし舞鶴線の長期運休にも驚いたが最も驚くのはそれとて災害の一端に過ぎなかったこと。

 西日本豪雨から5年となりました。巨大な豪雨災害により痛感したのは土砂災害により表層を取り除かれたいくつもの山々を見上げてそして遠望して、自然破壊を行うのは人間だけではないのだ、という不思議な雑感でしたが、単なる豪雨災害、いや2000年の東海豪雨もすごかったと思うし、九州北部豪雨や奄美豪雨も大きな災害でしたが、それでも。

 西日本豪雨が始まったあの日は舞鶴基地へロシア海軍駆逐艦入港を撮影していまして、その帰路にものすごい豪雨だと驚かされつつ、その豪雨が本格的な災害となっている最中には沼津市で海上自衛隊の揚陸訓練を撮影していました。大変なことになっているという認識はありましたが、五年後の今日でも記憶される豪雨とは当時想像力が追い付きません。

 豪雨災害で最も警戒しなければならないのは、その始まりがわかりにくい、という点です。これは危機意識と危機管理にも影響していまして、具体的に言えば“暴風警報”や“津波警報”と違い、“大雨警報”を以て休業や学校休校などの措置は先ず取られません、それは事業者や学校など危機管理を求められる機関から大雨が軽視されているにほかなりません。

 大雨警報が軽視されている背景には頻発しているとともに、実際の被害に結びつくような豪雨災害が限られている、という事でしょう。暴風警報が出た場合には、家屋損害等が報告される可能性は非常に高く、津波警報では基本的にすべての公共交通機関は停止し沿岸部からは退避するのが常識となっています、しかし、単なる降雨では避難者は稀有だ。

 夕立、時雨、こうしたものに紛れ込む豪雨災害は、時として重大な結果を及ぼします、それは河川治水インフラの想定以上の豪雨が発生する頻度が高くなり、また宅地開発は治水インフラ整備時には無人地帯であった地域にも及んでいる、特に治水インフラが重点整備された時代と住宅地開発が進んだ時代に十年単位の欠缺が生まれたことが問題を複雑に。

 治水インフラ整備は、1950年代の巨大台風が頻発し、第二室戸台風や伊勢湾台風に狩野川台風やルース台風に枕崎台風、一回の台風で千人から数千人が死亡する巨大台風とともに、併せて始まった高度経済成長を背景に大車輪で進められています、ただ、気候変動の影響でしょうか、1960年代以降、巨大台風の小康状態が日本周辺で生じてゆきました。

 伊勢湾台風などは1995年阪神大震災まで、戦後最大の災害といわれていたものですが、1960年代にはいるとこうした規模の巨大台風は鳴りを潜めます、これを1950年代から継続された治水事業の成果と誤解してしまった背景があるのではないか、規格外の巨大台風を想定した治水インフラは大型台風に対しては十分な治水能力を発揮できます。

 インフラ整備、しかし惜しむべくはこの小康状態のうちに堤防整備とともに新興住宅街の治水管理強化などを並行して行う必要があった。特に新興住宅整備は、バブル期の地価高騰を背景に従来、浸水被害多発地域を念頭に、50年に一度の洪水に耐えるという水準で整備されています、ただ、治水インフラの実際の豪雨への検証に不十分がありました。

 豪雨による河川への降雨流入は水田など保水能力を有する地域特性を基に算出されており、残念ながら1950年代と2020年代では水田面積に雲泥の差があります、また舗装道路か非舗装道路か、雑木林か工場かで地域保水能力にも差が生じ、保水能力の低下は自動的に河川の流入量を増大、若しくは河川へ流れ込めない降雨量は内水氾濫に直結してゆく。

 ハザードマップなどで問題視されない背景には、インフラ整備後の治水能力が“強化されたのだろう”というおもい込みがあり、治水インフラ整備の一方で宅地開発は危険地域を居住地に変え、地域開発は地域保水能力の低下を招いた、しかし台風や豪雨が一時的に小康状態であった数十年間では、この低下が問題視されず、実際災害も起きていなかった。

 気候変動による豪雨災害の増大に対して、日本は公共事業縮小という、重要な生産地域を水害に対して脆弱なままとして放置するような施策を執っていることは危険ではないか。公共事業は予算が掛かり、インフラの維持にも費用は掛かり、少子高齢化の時代に云々という反論はあるかもしれませんが、生産性の高い地域を守ることは将来を守ることです。

 防災インフラ整備による正規雇用の増大とともに、防災インフラにより守られる工場生産地域や都市部の生産性によりその防災インフラ維持費用と整備費用を捻出するという、一種の経済循環を、洪水は致し方ない、という姿勢で切り捨てるならば、災害復旧費用を捻出できないまま荒廃に任せるという悪循環に陥りかねない危険性を感じるのです。

 気候変動の時代、特に日本の都市部は扇状地に発達した、これは火山性地形において都市部を構成できる平野部は地震などで発生した活断層に沿って形成される河川の扇状地しかなく、例外といえば火砕流堆積平野くらい、という事情がありますので、今後、日本の降水量が減らないと予測するならば、治水は日本を国家として維持するうえで必要だ。

 防災というものを、近年は迅速な避難に重点を置きすぎているのではないか。しかし水没した家屋を建て直し、生活を再建するには費用が必要であり、少なくともぎりぎりまで家財を守ろうとする姿勢が、避難を遅らせる要素ともなるし、避難したとしてその生活再建に大きな課題を残してしまうのです、この債権の負担というものを無視すべきではない。

 土建や国家とか過度な公共事業依存と確かに一時期は批判されていましたが、それも橋本行政改革時代以降大きく変容しています。そして、日本の政治体制は行政の無駄を省くと伸び名とともに、何か削ってはならない部分まで削ってしまった、削りすぎてしまったのではないか、防災インフラ整備についてはその一つだと考え、見直すべきと思うのです。

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ウクライナ情勢-ロシア首都モスクワがふたたび無人機攻撃!ザポリージャ原発IAEA国際原子力機関最新情報

2023-07-06 07:00:32 | 防災・災害派遣
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシアは何故首都防空へ早期警戒機を飛行させないのでしょうか、稼働率の問題で常時飛行させられないのか低性能で小型無人機を捕捉できないのか。

 ロシア国営タス通信の報道によればロシアの首都モスクワが無人機攻撃を受けたとの事、タス通信はロシア国防省の発表として日本時間4日1430時頃、5機の無人機が飛来しロシア軍が撃墜したと報道しています。この無人機攻撃はモスクワ近郊のクビンカとヴヌーコヴォ空港付近に加えられたと別の情報もあり、空港は一時滑走路を閉鎖したとのこと。

 モスクワのソビャーニン市長はこの無人機攻撃による死者はいないとしていますが、モスクワには5月30日にも無人機攻撃が加えられ、高級マンションなどに被害が出ています。今回はロシア軍により撃墜され被害はなかったとしていますが、同時にロシア軍がウクライナ第一線だけではなくモスクワへ無人機対策を行っていることをしめしています。

 ロシア国防省は無人機攻撃をウクライナからの攻撃としていますが、根拠などは不明です。なお、今回はモスクワ中心部にこそ到達しなかったものの、モスクワ近郊まで到達しており、ロシアが5月30日の無人機攻撃以降もA-50早期警戒機やA-100早期警戒管制機などを投入した防空体制を敷いていないことの裏返しであり、首都防空の課題といえます。
■ザポリージャ原発
 幸いにしてザポリージャ原発は平穏を保っています。

 ザポリージャ原発についてIAEA国際原子力機関が7月5日の事務局長声明を発表しました。6月30日0121時、ロシア側は元々四本が架設されていた最後の維持用電力送電線を遮断しました。ただ、これが直ちに電源喪失につながるわけではなく、6月29日にザポリージャ火力発電所からの送電線が接続されており、一本の命綱となっている。

 ロシア側が切断した送電線は750kV出力の送電線であり、ザポリージャ火力発電所からの送電線は330kV出力とのことで、その送電出力は半減した事となります。この火力発電所からの送電線は4か月前にロシア側により切断されたものが漸く再接続されたもので、7月1日には送電が再開されています。その後の送電線への破壊活動は確認されない。

 原子炉6基の内冷温停止中のものは5基で1基が高温状態から冷却中、このため冷却水のくみ上げなどにポンプ動力が必要となっています。ただ、これらの電力系統が破壊された場合でも一定時間は非常用炉心冷却装置が設置されており冷却水供給は継続され、これが破壊されない限りは炉心融解などの大規模事故に繋がるわけではありません。

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ウクライナ情勢-カホフカダム爆破はザポリージャ原発爆破準備の一環か?ドニエプル川核汚染による渡河作戦阻止

2023-07-04 07:00:56 | 防災・災害派遣
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍による原発破壊が実際に行われる可能性について懸念が広がっています、ロシア当局は7月5日までに職員の占領下のザポリージャ原発より退避を呼び掛けている。

 ザポリージャ原発が破壊された場合、放射性降下物が東欧諸国とトルコなどNATO加盟国に降り注ぐという、マクロな視点で分析され、ロシア軍はNATOの介入を招く行動を避けるだろうと分析は成り立つのかもしれません。しかしミクロ的な視点で見た場合、ドニエプル河畔の原発を破壊することはドニエプル川下流域を放射性汚染水で攻撃できる。

 カホフカダムの破壊は、ウクライナ軍反撃に先立ちウクライナ軍のヘルソン方面での反撃をダム破壊による洪水により阻止するためという分析がありますが、これは間違いかもしれない、カホフカダムを破壊してドニエプル川の水位を低下させ、要するにドニエプル川の水をロシア軍のクリミア半島占領地に流入させないための措置であったのかもしれない。

 クリミア半島が干上がることは自殺行為として、カホフカダム破壊により自らの首を絞める行動であるとダム破壊の軍事的合理性欠如を疑問視する専門家意見があるようですが、逆に、ザポリージャ原発を破壊した場合でも放射性汚染水がドニエプル川水系を通じてクリミア半島を汚染しない様に、即ちダム破壊が原発破壊の準備であると、考えられないか。
■原発破壊と軍事合理性
 破壊した場合は一時的にロシア軍に有利な条件となりうる。

 ザポリージャ原発について、専門家の多くはロシア軍による破壊の可能性が低いと指摘していますが、それは正常性バイアス、起ってほしくない事を理由なく発生しないであろうと結論付けているだけではないかと危惧します。根拠として、ザポリージャ原発と同じくドニエプル川に設置されたカホフカダムのロシア軍による爆破を説明できていません。

 カホフカダムはドニエプル川に在り、そしてドニエプル川はヘルソン市内を抜けて黒海にそそぐとともに、ウクライナ国土のロシア軍占領地を分ける分水嶺を構成しており、そしてなによりウクライナ軍はヘルソン市の破壊されたアントノフスキー橋付近からドニエプル川を渡河し、反撃を開始、そしてその戦域はクリミア半島に最も近い戦場となっている。

 クリミア半島は2014年にロシアが武力併合した地域であり、また2014年以前には半島の一部にあるセバストポリ軍港をウクライナから租借地として維持しており、ロシア軍はもとよりロシア政府にとり、ウクライナ軍をセバストポリ軍港に近づけない、という政治的な要求があります、その手段としてドニエプル川の渡河を阻止する必要があるのです。

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ウクライナ情勢-核汚染テロの懸念!ザポリージャ原発操業要員七月五日退去勧告と当日の周辺地域気象条件

2023-07-02 07:00:56 | 防災・災害派遣
■臨時情報-ウクライナ情勢
 万一の事態となればまた日本へも放射性降下物の懸念が広がり自衛隊機での放射線測定が再開されるのでしょう。そして先ず穀物価格高騰が加速し様々な影響が日本へ及ぶ。

 IAEA国際原子力機関はロシア軍占領が続くザポリージャ原発の軍事拠点化を改めて懸念する声明を発表しました。6月22日の発表では、ザポリージャ原発の冷却用水池周辺に地雷が敷設されたとの報告を受けていますが、グロッシIAEA事務局長のザポリージャ原発視察時には目視できる範囲内で地雷原は確認できなかったとは発表していますが。

 グロッシ事務局長はしかしザポリージャ原発敷地周辺に地雷原が敷設されていることは認識しており、また防御用というロシア軍の言い分とともに複数の施設内部、建物内に仕掛け爆弾が設置されていることも確認しているという。ザポリージャ原発は占領するロシア軍が原子炉を破壊した場合、欧州地域へ深刻な放射能汚染が広がると懸念されています。
■七月五日の気象情報
 気象条件を見ますと端的に言えばヨーロッパとアジアには最悪な気象条件というほかありません。

 ザポリージャ原発には六基の原子炉が有り、四基の原子炉が冷温停止中で二基の原子炉が運転準備中、核燃料は残っている為に破壊工作が行われた場合、かなり広範囲に放射性降下物の汚染が広がる懸念が有ります。施設内の爆発物処理や地雷原処理が確実に行われるまで復旧作業が中断する事を考えれば、単なる原発事故よりも復旧が困難となるのです。

 ザポリージャ原発について不安な要素はロシア軍がウクライナ職員へ退去勧告を行っている七月五日の天気予報です、この日にはロシア側に高気圧、この影響でウクライナザポリージャ原発は西に向かって弱い風が吹いており、一週間程度東欧地域へ風が吹きその後南の黒海とトルコの方へ風が吹く予報が出ています、原発が破壊された場合の影響は大きい。
■チョンガル橋
 ロシア軍は重要な兵站路を破壊され苦戦している状況です。

 ウクライナ空軍によるチョンガル橋のストームシャドウミサイル攻撃はロシア軍兵站線に重大な影響を及ぼしている模様です。この橋梁はヘルソン占領地とクリミア半島を繋ぐ重要な補給路の一つで、ロシア軍はこの攻撃から24時間以内に浮橋を架橋し渡河経路を復旧させています。ただ、浮橋通行能力は制限がある為、輸送時間は五割増大したとのこと。

 クリミア半島は現在ウクライナ南部への信仰と占領地維持に必要なジャンコイ兵站拠点があり、この橋梁攻撃はウクライナ南部占領地でのロシア軍戦闘支援に大きな影響を及ぼし得ると共に、南部地域でのウクライナ反転攻勢に対してもロシアの予備戦力の機動防御などを大きく阻害する可能性があります。チョンガル橋では復旧工事が進められています。

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ウクライナ情勢-ザポリージャ原発からロシア国営原子力企業ロスアトム職員退避開始,懸念される原子炉爆破と核汚染

2023-07-01 07:00:22 | 防災・災害派遣
■臨時情報-ウクライナ情勢
 原発が人為的に破壊された場合は一線を越えたと批判するのでしょうがその場合日本はどうするのでしょう。遺憾の意を表明するか、それとも戦車など供与に踏み切るか、軍事介入がありえるのか。

 共同通信が“ロシア軍が占拠するザポリージャ原発からロシア国営原子力企業ロスアトム職員が退避を始めウクライナ人従業員も7月5日までに退去するよう勧告があった”というウクライナ国防省情報総局6月30日付発表を報道しました。退去勧告を行う理由は不明ですが、この原発は占領中のロシア軍が爆発物などを設置し破壊が危惧されています。

 7月5日に原発を爆破するのではないか、こうした危惧を無視する事ができません。少なくとも爆破された際にダメージコントロールに当る職員が不在であれば、毎時10シーベルトの核汚染が広がれば最早人間には対処不能です、120ミリシーベルトが年間被ばく上限ですので10000ミリシーベルトにあたる10シーベルトの核汚染では遠隔操作機しか動けません。

 福島第一原発事故を経験した日本としては深刻な汚染が30km圏内にほぼ収まるという誤解があるのかもしれません、しかしそれは炉心融解という深刻な事故が発生したものの核念慮の大半は地下に燃料デブリとして落下しました。しかし、1986年チェルノブイリ事故のように核燃料の大半が大気中に拡散し致死的な汚染だけで30km圏内となっています。
■アメリカの去就不明
 原発が破壊された場合、アメリカは次の経済制裁を行うのか、それともロシアに対し限定介入を覚悟するのか。

 アメリカはザポリージャ原発が人為的に破壊された場合にはどうするのかを明確に示すべきです。具体的には軍事介入するのか否か、忘れてはならないのは2022年2月までの時点でアメリカのバイデン大統領は、ウクライナがロシアに侵攻された場合でもアメリカは軍事介入しない、と明言した上で最大規模の経済制裁を科すとロシアに警告しましたが。

 開戦直前のバイデン大統領発言は、プーチン大統領にとりウクライナ侵攻の場合にもアメリカは軍事介入しないという言質をとった構図でしょう。さて、仮にザポリージャ原発が破壊された場合には、東欧地域と西アジア地域において深刻な放射能汚染が広がるのは必至です。その放射能汚染はNATO加盟国にも広がり、世界の穀倉地帯も直撃するのです。

 ザポリージャ原発が破壊された場合、NATOはロシアが核攻撃を行った場合には介入すると明言しました、しかし、広範な地域へ核汚染を引き起こす原発での緊急事態、爆破による広範囲の汚染が広がった場合への姿勢を明確に示していません。線引きをして、また介入の準備を示威行動で示すか、後で後悔するか、国際政治において沈黙は逆効果なのです。

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台風2号は100年に一度以下の豪雨-豊川市水害へレッドサラマンダー出動とフィリピン東方に台風3号発生

2023-06-07 07:00:43 | 防災・災害派遣
■臨時情報-台風3号
 台風3号が昨夜発生しました。

 気候変動と共に巨大化する台風と日本に接近する頻度の増大、やはりこれは安全保障上の脅威事項と受け止め、例えばハリケーンハンターのような台風に直接突入し気象情報を収集する航空機や、自衛隊に留まらず防災組織、消防や警察への水陸両用車輛の広範な装備が必要ではないか、と考えます。実際、今年の台風、日本接近の事例は異常に速い。

 6月6日2100時頃、フィリピン東方海上において台風3号が発生したとのこと。中心部の気圧は1002hpaで中心部の瞬間最大風速は25m/sで中心から東方440kmと西方330kmの範囲内が強風圏となっている、現時点ではほとんど停滞している状況ですがこの後発達しつつ北上する見込みとの事で、気象庁は今後の進路などの情報に注意を呼びかけています。

 台風2号、意外な大雨となりましたは、防災科学技術研究所の分析によれば今回の台風の東海地方沿岸に発達した線状降水帯は愛知県南部の、豊川市、特に東海道新幹線と東海道本線に東名高速道路と国道一号という、日本の東西交通の要衝に大雨をもたらし、防災科学技術研究所の分析では、この豪雨の頻度について、100年に一度以下、と解析しました。

 レッドサラマンダー出動、台風2号の豪雨災害において特筆すべきは総務省が岡崎市消防局に配備している日本で唯一の全地形車両レッドサラマンダーが浸水地域へ出動し初の人命救助活動に当った、という事です。シンガポールのブロンコ全地形車両を総務省が東海地震津波災害へ対応させるべく1両のみ導入した装備、これまで出動回数はありましたが。

 全地形車両、しかし1両しか配備されていない為に被災地へ到着する頃には既に洪水は水が引いており、例えば九州であれば陸路で36時間、北関東でも24時間以上現地進出に時間を要し、それならばボートで救助が終わっていた。犬山市水害に出動した事はあるが人命救助は無かった、今回は岡崎市に近い豊川市での水害故に間に合った構図となりました。

 自衛隊も山岳戦や沿岸部での作戦を考えるならばBvS.10全地形車両の様な装備を広範に配備しても良いように考えるのですが、それ以上に消防と警察、都道府県単位で薄く広くでも、少なくとも全国に1両だけという水準では役に立ちません。また、全地形車両の輸送に輸送ヘリコプター等の広範な運用方法も重ねて研究し、喫緊の災害に備えるべきです。

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