北大路機関

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COVID-19:WHO世界保健機関PHEIC公衆衛生緊急事態宣言解除と日本感染症法二類相当から五類へ引き下げ

2023-05-07 20:03:53 | 防災・災害派遣
■COVID-19,PHEIC解除
 COVID-19新型コロナウィルス感染症は明日感染症法二類相当から五類相当へ引き下げとなります。世界でも大きな動きが有り、これを記念しブルーインパルスの写真と共にCOVID-19を振り返りましょう。

 WHO世界保健機関は5月5日、COVID-19新型コロナウィルス感染症に対し発令されていたPHEIC公衆衛生緊急事態宣言の終了を発表しました。これは2019年11月22日に中華人民共和国湖北省武漢市において原因不明のウイルス性肺炎が初めて確認されてのち、世界規模の流行懸念から2020年1月30日、中国の春節の後に発表されたものでした。

 COVID-19新型コロナウィルス感染症、超過死亡から類推される死者数は2000万の大台を超えるとも考えられ、文字通り世界が経験した流行禍では1919年スペイン風邪以来の、1959年アジア風邪など新型インフルエンザ感染症による死者数を大幅に上回る災厄となったことは確かです。しかし、PHEICの終了はその脅威が管理可能となった事を示す。

 PHEIC公衆衛生緊急事態宣言、世界はしかし過去の感染症のように中国国内において封じ込めらえるとの期待を持っていました。ただ現実は厳しく、2020年3月6日世界全体の感染者数が10万人を超えており、中国国内で抑えることはままならず長い潜伏期間を通じ、3月8日には全世界での感染が確認された国と地域が100に到達するにいたっている。

 都市封鎖は2020年2月22日の段階でイタリア政府がロンバルディア州など一部の州で実施しています、ただ、当時は国全体の封鎖措置などは中国のような権威主義国家でなければできないとして、社会衛生基盤と病院での治療に期待されていた節があります、けれども結果として、この油断が先進国における広範な医療崩壊を招く感染爆発へ繋がりました。

 WHOは2020年 3月11日の段階で、世界各地域流行についてパンデミー相当との見解を示し、既に特定地域の感染症では収まらないことを早々に示します。そして3月16日には中国共産党は最初の感染拡大地域である湖北省から支援の医療従事者を徐々に撤退させる方針を示し、これによりいよいよ武漢を含めた湖北省が見捨てられる状況となります。

 集団免疫による感染抑制は出来ないか、イギリスは3月12日に国民全員をかけて手段免疫獲得を検討します、それは敢えて徐々に感染させることで感染による抗体獲得を進め、医療崩壊を回避しつつ徐々に全国民を感染により交代獲得により救う検討です。しかし、研究により最低でも3600万の感染と数十万の死亡という数値が示され、決定は撤回された。

 感染拡大は止まず、2020年4月2日には早くも世界全体の感染者数が100万人を超えた。そしてその一週間少々を経て4月10日、世界全体の死者数が10万人を超え、世界はパニック状態となります。100万の感染と死者10万では10%かという混乱のさなかで、4月16日には世界全体の感染者数が200万人を超え、まさに数字が追い付かない状況です。

 日本は、憲法上緊急事態権や非常大権が政府に付託されていない事から対策に限界があり、4月18日に日本での感染者が1万人、そして死者数は200人を超えることとなります。ただ、日本国内では超法規的措置というべき、政府による全国学校休校要請が出される。自粛主体ではあるけれども、政府に権限がない以上はお願い主体の対策が進められました。

 感染拡大は、2020年5月10日に世界全体の感染者数が400万人を超え、いや5月21日 には世界全体の感染者数が大台の500万人を超える。いったん感染拡大が制御不能となれば転がるように最悪が最悪を重ね、5月27日にはアメリカの死者数が10万人を超え、いや2020年7月30日にはさらに増えアメリカの死者数が15万人を超えるという有様だ。

 コロナウィルスは呼吸器系感染症であることから冬の季節性感染症、という常識を吹き飛ばしたのは2020年9月17日に世界全体の感染者数が3000万人を超えたことで、世界最大の感染拡大を赦すこととなったアメリカでは9月22日にアメリカの死者数が20万人を超えてしまう。感染対策は都市単位のロックダウンが頼りであり、パニック状態へ。

 公衆衛生基盤の薄い地域ではいったん感染者が出ると雪だるま式ではなく爆発的で、先ず当初感染者を抑えていたインドは9月28日に感染者数が600万人を超える。同じ日世界は、全体の死者数も100万人を超えた。この頃、深刻な後遺症と二度目の感染による死亡が報道され、感染による免疫獲得ができないことが絶望的な現実となっていましたが。

 政治中枢への感染拡大、2020年10月1日にアメリカ合衆国ドナルドトランプ大統領をはじめホワイトハウスでクラスター感染が発生、同じくイギリスのボリスジョンソン首相は意識不明となる事例から、核兵器を管理する最高指揮官への感染は世界危機の一歩となる懸念も示されました。もちろん、各国軍隊でも感染が拡大、軍事力の麻痺が広がります。

 悲惨な状況は2020年11月7日にアメリカの感染者数が1000万人を超え、フランスの死者数が4万人を超えたとともに2020年12月4日には世界全体の死者数が150万人を超えた、いまどき感染症の流行により数か月間で100万もの人命が失われることがあるのかと、当時戦慄したものでした。他方、日本はお願いベースの緊急事態宣言を行っていた。

 日本は、12月21日に日本の感染者数が20万人を超えたこととなりまして、世界では大車輪でワクチン開発がすすめられ、ワクチン完成までの間の時間稼ぎという方式が日本では採られました。高齢化の進む日本では感染拡大は致命的な人口減少につながりかねない、こうした覚悟とともに、しかし20万を超えたというよりは抑えていた点は凄いと思う。

 2021年になっても、感染拡大は続きます。結局抗体血清による治療が思ったほど効果を延ばさず、一部では効果は出るものの高齢者を中心に死者が増え続け、2021年1月15日にはドイツの感染者数が200万人を超え、同じ日世界全体の死者数が200万人を超える。そして1月20日アメリカの死者数が40万人を超え、第二次大戦の死者数を超えました。

 カミュのペストや映画の第七の封印が再販される中で2021年2月26日に世界全体の死者数が250万人を超え、3月24日ブラジルの死者数が30万人を超え、4月15日フランスの死者数が10万人を超え、そして4月17日には世界全体の死者数が300万人を超えた。麻痺という単語は使いたくないのだけれども、この時点で世界の間隔は麻痺していた。

 世界全体の感染者数が4月30日1億5000万人を超え、2021年8月5日世界全体の感染者数が2億人を超えた。こうした中で8月6日に日本の感染者数が100万人を超え、結局人は強制されるよりもお願いされる方が意識するのか、それとも日本独特の同調圧力の成果というべきか、感染対策の在り方を少し考えさせられることとなりました、正解とは。

 2022年に入っても2022年2月4日にアメリカの死者数が90万人を超え、3月7日世界全体の死者数が600万人を超え、そして4月12日世界全体の感染者数が5億人を超えた。まだ世界規模では脅威ではあるものの、2020年から2021年にかけてのような劇的な死者の増大、たとえば、文明の崩壊、を危惧する規模ではないことが挙げられるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【6】道路は何時復旧するか-重要な被害把握

2023-03-30 20:23:43 | 防災・災害派遣
■想定される広大な被災地
 南海トラフ連動地震の課題は被災地が非常に広大であり後方拠点から被災地までが遠くなることです。

 被災地への道路復旧見積もりをどのように考えるか、これにより救援物資輸送は空輸から陸送に転換できます、また貨物列車の運行が可能となれば、救援拠点への物資輸送能力は大幅に増大するのですが。この場合、長周期振動による本州四国連絡橋の倒壊がどの程度免れるかも大きな要素となるのかもしれません、倒壊してしまうと対処計画は破綻する。

 本州四国連絡橋倒壊の懸念、耐震性は十分確保されているのでしょうけれども、設計当時に長周期振動をどこまで想定していたかは未知数であり、一方で本州四国連絡橋完工と同時に本四連絡船の多くが廃業しており、もちろんオリーブラインやオレンジラインなどいくつかのフェリーは運行されていますが、かつての規模とは輸送力が比較になりません。

 安全確認のための通行止め、もっとも懸念するのは一部損壊した状況で通行可能と見えるのだが念のため止めることで災害初動の通行が不能となる懸念です。もちろん管理者としては安全第一、被災地救難だから通せといわれても被災地救助は橋梁管理者の所掌外です、そして問題は遅発性連動地震、つまり半割れとして次の発災が懸念される状況でしょう。

 半割れという、南海トラフ連動地震は、南海地震、東南海地震、東海地震、この三つの地震が連動することを示すのですが、過去連動しているのですが連動は必ずしも同時発生を意味することではなく、数時間から数年の間隔が開くことをしめします、1944年東南海地震と1946年南海地震は2年間離れていました、二度目で倒壊する懸念も十分あります。

 本四連絡橋はその象徴的な事例として提示しましたが、南海トラフ地震ではどの程度、道路網や橋梁と埠頭などが被害を受けるかが全く未知数です、津波被害も想定されますし山岳崩壊による道路寸断、盛り土崩壊や高架崩落も懸念しなければなりません、ただ、懸念してう回路を探すばかりでは輸送計画を立てられないことも確かで、するとどうすべきか。

 MQ-9無人偵察機とAH-64D戦闘ヘリコプター、MQ-9は導入計画がまだ成立していませんしAH-64Dについては用途廃止が見込まれているために、例示でしかないのですが、まず、修復が必要な道路網は、被害の把握が必要です。しかし現段階では情報収集の手段が十分にない、という点と、広域被害を確認するための研究さえ今はまだ不十分という。

 スキャンイーグル無人機を、例えば集中投入することはどの程度できるのか、発災当日はあらゆる航空機が飛行します、救難ヘリコプターに防災ヘリコプターと消防ヘリコプターに報道ヘリコプターと輸送ヘリコプター、こうした過密空域において同じ飛行高度を飛ぶ無人機をどのように安全に運用するかという技術研究は、十分行われているのでしょか。

 情報収集能力についても未知数の段階があり、例えばスキャンイーグルは監視航空機で、長時間にわたる滞空能力はありますが、第14情報隊が善通寺駐屯地から発進させて四国山地を超え高知県沿岸部を監視させるほどの進出能力はありません、通信管制能力が100㎞、高知市はなんとか範囲内ですが南部までは中継装置をもう少し進出する必要があります。

 MUM能力構築が不可欠となる、今回AH-64D戦闘ヘリコプターを例示しましたが、この機体には無人航空機の管制能力があり、MUM能力、つまり有人航空機と無人航空機の連携能力があるのです。とにかく、無計画に物資さえ送ればよい、という災害規模ではありません、必要な物資を必要な時間帯に輸送する、広範囲が被災するため、無駄な物資はない。

 スキャンイーグルと遠距離偵察能力、特に道路運用をどの程度、限定的に通行できるのか、数時間施設科部隊による障害除去により通行可能なのか、完全寸断しているのか、そして激甚被害地域とある程度地域防災能力が維持されている地域とを把握し、救助計画を立てなければなりません、すると必要なのは道路輸送計画、通行可能な交通量と経路選定です。

 南海トラフ連動地震は、非常に大きな規模ではあるのですが、悪意はありません、これが軍事行動であれば物資集積所や橋梁だけをピンポイントで破壊する、または交通結節点というその一か所が破壊されると迂回路へ移動できない要衝などが重点的に破壊されるのですが、地震は無差別であるものの悪意はない、被害予想に絶望する必要性はないのですね。

 輸送計画は、自衛隊はもちろん、自治体と協力企業や消防救急の輸送も調整することとなります、どれだけの規模が集まれるのか、どの程度の道路網に被害が及ぶのかは、実際発災するまで不明ではあるものの、先ず情報収集を行う、そのうえで割り振る、幸いIT化された現代ですので、システムさえ構築してしまえば計画交付は短時間で実施可能でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【5】被災地への輸送計画の明確化とC-2輸送機の増強が必要

2023-03-25 20:04:16 | 防災・災害派遣
■輸送計画と必要物資量
 C-2輸送機は防衛出動に際しても有用ですし近年はスタンドオフ兵器の運搬手段としても注目されるようになっています。

 C-2輸送機、有事の際には大いに役立つ装備ですので、災害派遣用に増強したとしても日本という国単位で見た場合はそれほどマイナスではありません、いや、これまでは防衛費が不足していましたので、リソースを輸送機につぎ込めないという問題点はあったのでしょうけれども、今回岸田内閣は防衛費を二倍に増額、全く予算がないわけではありません。

 C-2輸送機の強みは速度と輸送力と不整地発着能力の三位一体です、24時間当たり4ソーティとして北海道から四国山間部の応急飛行場へ、C-2輸送機8機の飛行隊であれば1000tの物資を空輸可能です。着陸せず被災地の物資降下地点を定め低空投下するならば、入間基地を起点に紀伊半島へ空輸する場合は1ソーティ4時間、24時間で6ソーティ可能だ。

 有事の際、これも単純に空輸するだけという任務では、南西有事では南西諸島の一部は中国本土の地対空ミサイル射程内に入りますので、飛行させられない、という問題が生じるでしょう。北方有事に際してもロシアのS-500地対空ミサイルは北海道内を射程に収める、無論低空飛行した場合は最大射程を発揮できないのですが、輸送機単体では限界がある。

 しかし、ラピッドドラゴン計画という、アメリカ空軍が進める“C-17輸送機からのスタンドオフミサイル運用能力”、射程1000㎞規模の空対地ミサイルを輸送機から発射するという運用に、C-2輸送機も参画するならば、なにしろC-2輸送機の格納庫はC-17ほどではないけれども、C-130よりかなり大きい、有事の際に航空打撃力の補完として活躍できます。

 入間基地の第402飛行隊と美保基地の第403飛行隊、C-2輸送機はこの2個飛行隊に現在の計画では各8機を配備する計画ですが、“トンガ噴火災害救援”“カブール陥落邦人輸送任務”、このC-2が必要な任務に際し即応機を準備できなかったことから、不足していることは火を見るより明らか、これで不足していないというならばとんでもない怠慢か怠惰だ。

 C-130H輸送機が即応機を常に待機できている点から、小牧基地の第401飛行隊のようにC-2輸送機の定数は、第401飛行隊の定数である16機、つまり現在の編成から倍増させる必要があるよう思う、少なくとも第402飛行隊と第403飛行隊のC-1輸送機配備時代の飛行隊定数は12機でしたので輸送機不足の現実を受け入れ、先ず12機に戻すべきです。

 横田基地か千歳基地に、輸送航空隊をもう一つ増やす必要があるよう思う。このほかにも被災地に近く標高が高い浜松基地とか、受け入れ施設では第5空母航空団の岩国移転で余裕がある厚木基地に海上自衛隊に加えて航空自衛隊厚木基地を新設し、ここにC-2輸送機飛行隊を置いてもよい、空母航空団に配備されたC-2輸送機よりは大分大きいけれども。

 下総航空基地の海上自衛隊教育航空司令部や教育訓練部隊をすべて厚木基地へ移設し、下総基地を航空自衛隊輸送基地とする選択肢もあるでしょう、元々は厚木基地が完全な米軍基地であった時代に航空集団司令部を置いていたのが下総基地、半分厚木に移転しているのですから。こういうのも第1空挺団の習志野駐屯地最寄り基地が下総航空基地です。

 第1空挺団を同時空輸できるC-2輸送機、おおむねこの程度の輸送力を念頭に整備してはどうかと思う、いやC-2輸送機には航空自衛隊後方支援という任務がありますから、空挺団の輸送だけに専念できるわけではありませんが、もう一つの表現をしますと、航空自衛隊の作戦輸送、日施輸送ではなく有事の際の兵站支援と並行し大隊を輸送する程度、と。

 C-2輸送機、小牧の第401飛行隊を仮に16機のC-2飛行隊へ改編し、そして入間と美保の飛行隊もせめて12機の飛行隊に拡充したとして、やはり不足は否めません、稼働率という問題がある、ただ、入間と美保の飛行隊を16機に拡大改編しもう一個飛行隊を下総か千歳か横田に新編して64機体制としたらどうか、初動12時間でかなりのことが可能となる。

 総務省消防庁は南海トラフ地震に際し、遅発連動地震を警戒し、広域巣要望援助隊は東北地方、北関東地方、北越地方、山陰地方、北九州地方から展開することとなっています。C-2輸送機は消防車と小型消防車ならばめいっぱい搭載すれば6両を同時空輸できる、すると使える飛行場はこれらの地方にはかなり多数並んでいるから、空輸で初動を支えられる。

 空輸計画の概略を、初動24時間が人命救助に当たる消防緊急援助隊と応急飛行場を整備する施設科部隊、初動48時間を被災地内陸部の病院の維持や道路修復への民間土木会社などの空輸支援、並行して空荷となった輸送機は可能な限り被災者を被災地外避難所、例えば北海道や東北地方避難所へ空輸、初動72時間以降を食料や燃料等を運ぶ等考えられます。

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南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【4】輸送力の決定的不足と輸送需要量算出不備放置の現状

2023-03-23 20:00:11 | 防災・災害派遣
■必要物資事前見積が必要
 主要道路寸断と主要港湾の被災、輸送機にヘリコプターと上陸用舟艇や全地形車両の輸送力が実際のところ初動を左右する事となるのかもしれない。

 南海トラフ連動地震では、防災当局の空輸能力が試される事でしょう。具体的には被災地を府県単位で空輸拠点を整備し、そこに初動12時間でどれだけ、ブルドーザや油圧ショベルとダンプカーにバケットローダーを運び込めるか、どれだけの救援物資を満載したパレットを運び込めるか、高規格救急車や移動手術システムなどを運び込めるかで決まる。

 移動手術システムは東京消防庁が地下鉄サリン事件に際して派遣したことでその装備の知名度が上がりましたが、自衛隊の野外手術システムのような機材をもう少し、財政難といわれても必要なものは必要なのだ、と揃えねばなりません。そしてもう一つは内陸部の病院を稼働させる移動発電機や燃料空輸体制、真水生成装置や応急テントの空輸体制など。

 アイアンマウンテンを回避する、南海トラフ連動地震災害派遣及び政府防災計画を考えるうえで絶対必要な視点はここに尽きると考えます。アイアンマウンテン、これは不要なものを含む物資の山積み状態を意味する軍事用語で、予備部品や弾薬に糧食や衛生機材と予備装備や応急器具、第一線部隊は不安からあらゆるものを備蓄しようとする心理による。

 アイアンマウンテンは余裕ある物資、というとらえ方もできるのですけれども、限られたリソースを的確に分配しなければ全体として物資が不足する状況では避けなければならない無駄そのもので、そして山積みされているのですから必要なものを即座に取り出すことができないことを意味しますので、結局必要な時に必要なものが間に合わないこととなる。

 被災地の見積もり、非常に残酷な表現と御映るかもしれませんが、被害規模をどの程度と考えるか、事前に見積もることで必要な物資の供給量が決定します、これはもちろん、南海トラフ地震がどの規模で発生するのか、またどの程度連動するのか、という事で大きく変動する要素でもあり一概に出せない要素ということは理解が必要ですが、概算だけでも。

 C-2輸送機とCH-47JA輸送ヘリコプター、いや物資輸送用に老朽化し退役したUH-1を応用しての無人機型などを含め、あらゆる輸送手段が必要と考えます、しかし、単に一機でも多く、となりますと、いやいや十分だ、という財務当局などからの反論に十分応えることができません。そのうえで喩え概算だけでもこの程度必要だ、と示す必要があるのです。

 自衛隊の任務は災害派遣ではない、こう反論があるのでしょうが、繰り返す通り国としてリソースをすべて投入しなければならない規模の災害ですので、自衛隊がやりたくないというならば、防衛予算を減らして総務省に割り振り総務省がC-2輸送機を導入する、というような選択を迫られる規模の問題です、南海トラフ地震想定死者数は核攻撃に匹敵する。

 そのうえでC-2輸送機、自衛隊の本来任務においても必要な装備です。先ず、南西有事に際しては那覇基地に集中する航空自衛隊戦闘機部隊を燃料でも予備部品でも弾薬でも予備エンジンでも空輸して支えねばなりません、F-15戦闘機を一例に出せば弾薬と燃料を満載して一回の任務飛行に必要な物資重量は、C-1輸送機の空輸能力よりも多いのですから。

 不足している、十分ではない。C-2輸送機については“生産予定数を削減する”決定が既にあり、“空輸能力は十分であるために飛行隊定数を8機に減らす”という決定がなされています。すごいなあと思うのは“トンガ噴火災害救援”“カブール陥落邦人輸送任務”、実任務でC-2輸送機が足りず飛べていないのに十分、直ちに不足していない、という方便か。

 空輸能力の基準を先ず整備目標として示して、その上で空輸能力の基準に対して、南海トラフ地震の想定被災地への輸送能力が十分であるか不足しているのか、輸送機をさらに増やすのかそれで十分なのか、という視点を持つ必要があるよう考えるのです。そして断言できる事ですが自衛隊輸送機の十分という現状整備目標は、あきらかに現実を見ていない。

 空挺団降下訓練始めに1機しか輸送機を出していない、この一点で航空自衛隊の輸送機不足は深刻であると強調できます。C-2輸送機は素晴らしい輸送機なので1機あれば空挺作戦を完遂できるに決まっている、こうした反論があるのかもしれませんが、2023年の降下訓練始めはアメリカ軍のC-130J輸送機3機とC-2輸送機1機、米軍に依存していた。

 米軍に自衛隊の四倍もの機数を、それも突発的な事態ではなく年次計画に盛り込まれている空挺団訓練展示に航空自衛隊が輸送機を出せない状況は明らかに不足している以外何ものでもありません、先ず、空輸飛行隊定数をもともとの12機、もしくはC-130、小牧の第401飛行隊のように16機まで増強するところから、開始してはどうか、と思うのです。

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南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【3】最大の強みは"発災前"だ-都市計画単位の事前対策が必要

2023-03-18 20:23:36 | 防災・災害派遣
■無駄ではない事前投資
 戦争と違ってくる方角や規模などが分っているとともに"まだ来ていない"という点は大きな強みです。

 南海トラフ連動地震、非常に大きな被害を覚悟せねばならないのですが、今幸いなのはまだ“発災前”ということです。“発災前”ということは必然的に“被害を受ける前”でもあり、いわばまだ対策は間に合う、という。しかし東日本大震災の被害の多くが津波で在った通り、南海トラフ連動地震の被害想定で津波規模を考えると一筋縄ではいきません。

 津波被害について、日本は大陸外縁弧状列島という地形上、津波被害の及ばない内陸部へ居住地を移転するのは無理です、逆に平野部が沿岸部の沖積地に広がっているために人口が集中しているのですから、盆地には限界がありますし、大陸外縁弧状列島の形成が火山により形成された火山地形ですので、山間部には火山性土壌による土砂災害の懸念がある。

 防波堤を、太平洋の壁、という規模で造成する選択肢もあるにはあるのですが、結局のところ防波堤は、津波の原理が波浪ではなく津波、連続した海水の衝力が原動力ですので防波堤も連続して押し寄せる波には、楔形とすることで左右に逸れさせない限り、後ろから押す衝力により乗り越えられてしまいますゆえに津波の高さよりも高い標高へ遡上します。

 垂直避難の方が安全である、上昇した海面に吞まれる懸念がありますので安易に低層建築物で行うべきではありませんし、日照量に左右されることなく海に対して正面を向かない、オーシャンビューを敢えて避ける方向で建築する必要がありますが、東日本大震災でも七階よりも上まで浸水した事例はありません、すると耐震性の高い中層建物は有用です。

 沿岸部に中層以上の建物を建設する場合の免税措置などがあれば、意外と沿岸部を津波に強い街とすることは簡単なのかもしれません、それは無理に高台移転するよりも地域コミュニティを維持しやすいものですし、沿岸部に一定間隔で津波避難施設となりうる10階前後の中層建築物があれば、居住しない方々にも避難場所を提供できる事となるでしょう。

 一億総タワーマンション、なんてことを要求するものではありません、特にタワーマンションの場合は沖積地では地盤の問題がありますし、長周期振動被害を受けやすい構造です。しかし海岸線に対して正面を向かない、つまり津波が直撃せず逸れさせる構造の10階前後の中層建築物に免税措置を行う、公営住宅として整備を励行する枠組みがあれば、と思う。

 消防団官舎のような、一見荒唐無稽な対策があってもいいと思う。消防団は消防吏員のなかでも非常勤消防吏員を示すものですが、一応総務省からは俸給と出動手当が支給されているものの、その内実が不明瞭である事例が多いようです、実際聞いてみた範囲内でも多い。例えば消防団と水防団の吏員が自衛隊官舎並の費用で利用できる建物があってもよい。

 バイパス道路も、思い切って盛り土により高くできるところは高くして、高架化できる部分は高架道路へと改修すべきです。阪神大震災の阪神高速のように倒壊しないよう耐震構造の確実な励行は必要なのですし、なにより費用が大きいために公共事業費を削減し続けている現状、コンクリート原料にも限りがある現状では難しいのは理解していますが。

 公共事業、しかし日本の低成長は、かつて公共事業依存の経済が批判されていたところを財政再建とともに大幅に減額し見直している一方、これにより廃業する土木建築業者が多く、結果として既存インフラ維持にも限界を来しています。他方で、土木建築は確実な雇用を生み、なにより災害によりインフラは確実に損傷する現実を無視し削減していないか。

 少子高齢化が叫ばされるわが国ではありますが、少子化の要因には不安定な雇用と見通せない将来があり、そして行政基盤そのものが少子化を見通して将来投資を渋っているのですから、一般論が少子化前提へ収斂するのはある種当然といえます。それならば、思い切った公共投資は経済活性化に繋がらないか、実際問題、これで成功した事例もあるのです。

 大阪市の一部区では、所謂日雇い労働者が多かった地域において、東日本大震災後に大きな人口移動があった、その背景には福島第一原発事故に伴う除染という労働需要が特需として生まれ、高齢者を除けばかなりの労働力が福島復興を支援したのち、別の地域で安定居住している、こうした研究がありまして、なるほど復興特需は大阪にも、と思ったもの。

 公共事業頼りの経済に戻るのか、こういう批判はあるでしょう、しかし考えてみてほしいのは、不況に際しては公共事業でインフラを整備し、好景気に際してはインフラ維持に留め民間製造業への労働力移動を柔軟に行う、こうした原始的な施策を行っていた頃の日本経済の方が、経済成長も少子化対策も、比較で実はしっかり行えていたように思うのです。

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南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【2】マグニチュード9双子の地震が及ぼす日本国家後退の懸念

2023-03-16 20:02:55 | 防災・災害派遣
■二度に分かれる巨大地震
 南海トラフ地震は直視しなければならない現実の脅威なのですが、大災害ではあるものの対処の処方箋とともにその対処方式により失われた活力など再興の道筋は存在します。

 二度の地震に対応できない、この点はこのところ指摘されている点です、これは南海トラフ連動地震が同時に発生するのではなく、熊本地震のように二度に分けて襲来するというものです。専門家の間ではこうした状況を“半割れ”という表現で、断層帯の割れが半分ごとに、マグニチュード8から9の規模で二度襲来することを示すそうです。ただし。

 二度の地震は、東北地方太平洋沖地震と南海トラフ連動地震、このように考える必要はないのか、ということです。これは東日本大震災の時に揺れた首都圏の高層建築物が南海トラフ地震で、というような物理的な被災というものではなく、社会的及び経済的な影響についてです。実際問題で、産業シェアや競争力、日本は3.11から復興をはたしていません。

 3.11東日本大震災の大きな影響は、電力価格の高騰です。日本で生活する場合には電力価格の比較はせいぜい新電力と電力会社の比較までですので、実感はわかないところです。もっとも、今比較しようとしますと、ロシアウクライナ戦争に伴うロシア産天然ガス取引制限による世界規模のLNG液化天然ガス価格高騰という問題から霞がちな視点ですが。

 原子力発電所の全国規模の停止により、日本国内の電力価格は大幅に上昇しており、これがあらゆる工業製品や農業製品にまで価格転嫁しています、その価格競争力の低下は否めず、製造業の世界的拠点はもはや日本ではなく中国である、特に再生エネルギー買取価格を高く設定したことで太陽光発電量だけは増大しましたが、その分の費用は消費者負担だ。

 再生エネルギー普及は気候変動対策という視点からはある程度評価されるのかもしれませんが、しかし電力価格が高騰したことで、あげようにも上げられない小売価格を祖会えるために人件費などが唯一削られる分野として削られ、これが正規雇用などを強く圧迫、非正規雇用での技術教育や研修機会の少なさが日本の労働力高度化を阻害し、悪循環する。

 原発をいまから動かせばいい、という単純な問題ではありません。制度的に非正規雇用依存、続いて高齢者労働力依存の体系が確立してしまいましたので、いったん定まった制度は大きな変容でも生じない限り脱構築はできません、いわば法学上の無法状態に近い“例外状態”というべき状態で成立した枠組みは平時の制度では転換するコストが大きすぎる。

 ジェネレーションギャップ、というものはこういうことを言うのでしょうか、例えばこの数年間のCOVID-19新型コロナウィルス感染症に伴う行動制限、強制力は日本の場合はほぼ無いにしてもです、こうした状況に若い世代はよく耐えている、これは言い換えれば3.11世代以降、日本は耐えることに慣れさせる社会基盤を醸成しているのかもしれません。

 ただ、再度東日本大震災やCOVID-19のような状況を、更に労働者に対して耐えることを要求できるのかという疑問がある、具体的にはもう少し安く働いてくれとか、サービス残業で何とかやってほしい、というような、いわば非合理の強要を受け入れる寛容さを、再度発揮できるものでしょうか。南海トラフ連動地震は、こうした点に脅威があるのです。

 他方で、エネルギーコストの面で原発を一例に出しましたが、価格競争力は重要で、もう一つ重要なのは納期です。災害による事業継続計画、しかし事業所の多くは低地にある中小企業など、いまさら大阪から京都の綾部あたりに工場移転、という事も難しいでしょう。それでも一旦災害により事業が停止すれば、競合他社にシェアを奪われる懸念があります。

 阪神大震災と神戸港を例にとればわかるのですが、1995年のあの日まで、神戸港は貨物取扱量世界一の港湾でした、もちろん港湾施設は震災よりも強靭に復興しました、唯一の例外はメリケン波止場の震災遺構くらいです、しかし施設が復興すると世界一の貨物取扱量が戻ってくるのかと問われれば、もう代替港に移管した後、神戸港は世界では港湾の一つ。

 一旦事業が停止した場合、元通りの生産量に戻すことは難しくはないのですが、その間に失ったシェアを取り戻すのは、神戸港の事例を見る通りよほど代替できないものでなければ難しいのです。東北地方太平洋沖地震と南海トラフ連動地震、二度目となりますと日本の経済成長は大幅な後退期に入り、経済大国からアジアの一中堅国に下がることでしょう。

 ただ、対策を行うことでかなりダメージコントロールは可能となります。この為には日本のリソースの少なくない部分をつぎ込み、また外国人労働力などを受け入れる、いわば社会基盤の変容が必要となるでしょう。一方、費用面は負担ではなく、いわば復興特需の先取りと見ることも可能です。すなわち対策に費用を投じることで経済が活性化するのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【1】必ず来る国家危機というべき大災害を正面から直視する

2023-03-11 20:00:26 | 防災・災害派遣
■追悼:3.11東日本大震災
 本日は三月十一日、あの2011年東北地方太平洋沖地震が引き起こした東日本大震災からの慰霊の日です。

 南海トラフ連動地震、東日本大震災の発災から12年となる本年ですが、当時の民主党菅政権がその発災がひっ迫していると警鐘を鳴らして以来、12年目ともなる一方、実のところ抜本的な対策が進んでいないという状況があります。3.11追悼の話題とは間接的にしか関係のない話題ですが、防衛と危機管理の一環として、改めて考えてみましょう。

 四国南部と紀伊半島を中心に阪神地区と中京地区の大阪名古屋の大都市が激震に襲われ、静岡県から九州南部までの一帯を津波が襲うとされる巨大災害、大袈裟と反論があるでしょうが過去に周期的に発生しており、日本列島が大陸外縁弧状列島というプレートの影響を最も受けやすい立地にある以上、地球物理学上必ず再来するという巨大地震です。

 名古屋と大阪が同時に被災する、極めて重大な点ですが、1995年阪神大震災では神戸市が大打撃を受けたものの大阪市などの周辺都市が支える形で被害局限という要諦を為しました、大阪市も被害を受けましたが負傷者を大阪市が引き受けることができましたし、広域消防支援は神戸市や芦屋市の消防を周辺都市が支援できましたが、今度ばかりは違う。

 大阪と名古屋、この二つの巨大都市は医療機能一つとっても巨大なものがあり、ここが被災地となる場合には支えられる受け手がありません、東京の医療機能は大きいのですが、大阪から東京まで緊急搬送を行うには航空機でも厳しく、ヘリコプターでは航続距離の問題もあり、往復6時間は見ておく必要があります、しかも防災ヘリは空中給油ができない。

 東海道沿岸部が津波被害を受ける、この実情は東海道本線と東海道新幹線の寸断、東名高速道路被災、新東名高速道路など一部の例外を除けば日本の東西交通の大動脈を遮断されることとなり、また大量物資移動手段である鉄道は、日本海側の路線、いわゆる“日本海縦貫線”が第三セクター化でJR路線から切り離されており、迂回路線が限られるのです。

 四国や紀伊水道沿岸津波被害は甚大な規模となり、しかも被災地を襲う津波は30m規模、これだけの規模の災害に地域の防災力で対応しろというには、平時から四国だけでいまの1個旅団を2個師団に拡大改編し、九州も冷戦時代の北海道並に4個師団程度を置かなければ、その地域にある防災能力だけで対応するという選択肢は現実的ではありません。

 32万という想定死者数、しかし、これを受け入れろというにはあまりに無理があります、何故ならば32万という数字を受け入れるには、それだけの労働力を失ったうえでの地域復興をどこから持ってくるのか、という根本的な問題が生じますし、そしてこれだけの犠牲を看過するという事は、政府想定通りの産業基盤被害も看過するとなる、復興できない。

 産業基盤破壊の看過というのは、32万という数字は対策が何も行われない状況ではそれだけの死者数がでるとした警鐘です、この場合は四国と紀伊半島の主要道路網及び鉄道網を一から再建することを筆頭にあらゆるインフラを子細した後に作り直すということとなり、復興計画は仮に年間30兆円規模の予算を組んだとしても半世紀以上を要するでしょう。

 復興を断念すべきか、これは意味がありません、東海道の津波被災地や四国南部と紀伊半島南部、それに名古屋や大阪が無くとも日本は成り立つのか、と問われれば、それは日本企業の多くは世界規模のサプライチェーン網に在って地位を有しており、この中間部分を根こそぎ持っていかれるのは、出入口のない工場や飛行場のない滑走路のようなものです。

 ダメージコントロールを地震発生前に確保する必要がある、これはよく防災備蓄などで指摘されるところですが、問題があるのは、この南海トラフ連動地震のリスクは津波災害を伴うものであり、防災倉庫そのものが被災する懸念がある、ということです。また、広域避難や事前の高台移転などの選択肢もあるにはあるのですが、その費用は捻出が難しい。

 費用捻出の問題は、家屋が倒壊してしまえば否応なく建て替え費用を捻出せざるを得ないものですし、銀行などの金融機関も政府特例措置や支援と呼応した積み替えは可能でしょう、しかし、今から新築するための場所を探すならば別ですが、いつか起こる地震のために特例措置を申請するには限界があります。こうした現実と想定の均衡点が重要という。

 しかし、安全保障と防衛を主たる論点として考えてゆきますと、南海トラフ巨大地震は激甚災害ではあるものの、太平洋戦争の戦災ほどではない。そして地震には悪意はないため、対策を構築することへの妨害などはありません。そして対策の中には防衛力との関連性がある視座も含まれるため、その日が来るまでに出来ることは多いようにも、思うのですね。

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トルコシリア地震発災一ヶ月-トルコ全国民中16%が住宅失う,大統領選を5月に控え課題の山積

2023-03-06 07:02:29 | 防災・災害派遣
臨時情報-トルコシリア地震
 トルコシリア地震発災一ヶ月を迎えました。過去のトルコ地震では、1999年トルコ地震において日本は輸送艦おおすみ、中心とするトルコ救援艦隊を派遣、仮設住宅などを緊急支援しています。

 地震による死者数はトルコで4万5968名が死亡しシリアでも5914名の死亡が確認されています。課題はこの死者数が確認された死者数とされている点で、倒壊した建造物から搬出された数であるのか、行方不明者を推定死者数と含んでいるかが正確に示されておらず、言い換えれば全体としての死者数、そしてなにより被害の全容が不明確ということです。

 被害規模が不明、現地での問題として多くの建物が倒壊しており、とくに集合住宅倒壊ではがれき撤去の課題が、なにしろがれきを撤去しなければ復興以前に復旧という段階まで進む事が出来ず、影響の長期化が懸念されます。この兆候は既にトルコ政府の住宅を失った被災者数という形で発表されていますが、その規模は人口の16%にのぼるとのこと。

 16%の人口比で住まいを失う、これは被災した県内という話ではなく、1400万、トルコ総人口の16%といい、もちろん倒壊した建物のほかに全壊判定を受けた建物なども含まれるのですが、なかでも避難所や代替住宅等を確保出来ないテント生活の被災者が144万にものぼるという深刻な状況があり、トルコ一国での復興には難しい課題があるでしょう。

 大統領選挙、課題となるのは再来月、5月14日に予定されているトルコ大統領選挙で、確実に選挙争点となるために被害状況を政府として直面できない状況があり、またこれは被害が政治問題化するという課題以上に、トルコ政府が被害を科学的に示せない為に復興計画の土台となる数字が曖昧模糊となる、復興計画が成立させられない懸念があるのです。

 日本はトルコ支援を先導すべき、金銭的な支援計画には限界があるのは理解しますが、制度的な復興支援や相互協力、被災者の一時避難受入と一定期間や条件を満たした避難者への希望者の日本国籍付与など、強力な支援の必要があります、何故ならば全人口の16%が住宅を失う大災害というのは、想定される南海トラフ地震最大規模の被害と重なるため。

 倒壊した建物など住居を失う国民が全国民の16%に上るという事は、復興一つとってもたいへんな短期で住宅を建設する事となり住宅資材不足や労働力不足からインフレが一気に加速する懸念があります。日本が支援を行う視座には単に憐憫や同情というものではなく、巨大災害からの国家復興を支援する事で、確実に将来来るであろうこちらの地震に備えるという視点も必要でしょう。

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南海トラフ地震-救助隊は被災したあなたの元へたどり着けないかもしれない

2023-03-04 07:00:11 | 防災・災害派遣
■追悼-東日本大震災12年
 南海トラフ地震-救助隊は被災したあなたの元へたどり着けないかもしれない、という論題のNHK特集を視まして来ないというよりもそこで検討を放棄する専門家の視点に危機感を覚えました。

 今年も3.11東日本大震災慰霊の日が近づいてまいりました、12年目となる慰霊の日ですが、NHK特集記事などをみますと、やはり単に地震の話題に触れるのではなくつぎの地震への備えを以て慰霊とする、こうした論調として“南海トラフ連動地震への備え”を提示しています、只気になる論調が、南海トラフ連動地震は非常に規模が大きい点の協調です。

 南海トラフ連動地震あ過去に数回襲来していますが、この再来を考えた場合、“被災地が広大過ぎて72時間以内に救助開始は間に合わないかもしれない”という点から“救助隊が来ない前提で地域のたすけあい”というような、非常に消極的な論点が多いのです。安全保障を研究し論点とするものにとり、こうした対策の放棄的な理念は全く理解できません。

 日本海側は直接被害を受けない、現状ではどうにもならないならば先ず対策を考えるべきです、そして重要なのはダメージコントロール、東日本大震災の通り、復旧着手が一時間遅れれば復旧完了は一日遅れ、復旧から復興への移行を遅らせる、復興着手が一週間遅れれば復興完了は一年遅れる、ということです。それならば先ず、国主導で対策をすべきだ。

 広域救助を行う場合でも被災地が広すぎて現場に到達できないというのであれば、“ヘリコプターをどれだけ増強すれば可能なのか”“輸送機をどれだけ増強すれば可能なのか”というような、いまの体制である消防は被災地まで自走し救助活動における補給は現地のインフラに頼る、という枠組みを見直す点からまず着手すべきだ。幸い日本は造る能力がある。

 防衛費増額の指針が示されたのですから、という部分が大きいのですが、政府は“C-2輸送機の輸送力増大を受け飛行隊定数を削減し調達計画を26機から18機へ大幅削減する”という指針を示しています、これは単純に“他に必要なミサイル等を買う予算が無いので辻褄を併せた”だけではないのか、と考えつつ、災害対応にも18機で大丈夫なのか、となる。

 むらさめ型護衛艦、例えば現在運用している護衛艦後継艦をもう一回り大型化し、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦程度まで航空機運用能力を高めれば、これは政府が進める無人機作戦能力整備にも重なるしトマホークを導入する政府指針には多数のVLSを備えた新型汎用護衛艦が不可欠だ、こうした点で護衛艦の作戦能力に災害対応能力も強化できます。

 輸送機部隊定数を8機から従来の12機に戻し、入間、美保、小牧の3飛行隊に加え、例えば千歳、浜松、新田原に新たな飛行隊を置き、C-2輸送機を6個飛行隊80機体制としてはどうか、木更津のヘリコプター団と同規模の部隊を西部方面隊と中部方面隊に増強できないか、ヘリコプター団であれば1500名救助要員か物資240tを一度に1000km先へ運べる。

 災害派遣は自衛隊の主任務ではない、自衛隊の輸送力などの災害派遣での重要性を説けば詳しいという自称の方から一部こうした反論が来ます、しかしそこで問い返したいのは、南海トラフ連動地震規模の災害で、国としてリソース投入を渋れるほど被害は小さいと考えてよいのか、ということ。想定死者数32万名とされています、日本はリソース投入を渋れるほど国力に余裕があるのでしょうか考えるべきです。

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トルコシリア地震,死者4万1000名-航空自衛隊政府専用機現地救援医療物資輸送と日本国際緊急援助隊活動開始

2023-02-16 07:00:32 | 防災・災害派遣
臨時情報-トルコシリア地震
 トルコ南西地震と当初称していましたが被害規模からトルコ南部地震と言い換え、しかし現状ではトルコシリア地震という1900年以来最大の被害という厳しい状況です。

 トルコシリア地震への緊急援助物資を搭載した政府専用機が14日にトルコへ到着しました。政府専用機が輸送したのは医療器材15.4tとのこと。医療器材には人工呼吸器や麻酔器とベッドなどが含まれていて、現在既に国際緊急援助隊41名が派遣されていますが、政府によれば被害の大きさと現地の状況に鑑みて、更に増勢し、75名体制を目指すようです。

 4万1000名、トルコシリア地震の死者数は15日時点で東日本大震災の倍以上という規模に達しています、現地では地震発生から200時間以上を経ているものの生存者発見の朗報はあるようです。実際問題、14日程度は生存事例がありますので、所謂“72時間の壁”というものはあるのですが、今少し生存者捜索は諦めず継続して欲しいとも考えるのです。

 国際緊急援助隊41名はトルコ南部のガジアンテプ近郊において14日から医療支援を開始しました。ガジアンテプ市は南部ガジアンテプ県の県都で人口は88万名、神戸市の人口が153万ですので半分強という規模の街です。しかし地震により大半の医療施設が機能不随に陥っているということで、日本の国際緊急援助隊は市が設置した医療拠点にはいりました。

 ガジアンテプ市郊外の職業訓練校が臨時両拠点に指定され、日本の国際緊急援助隊は内科と外科及び産婦人科などの診療に対応するとの事です。このガジアンテプは東ローマ帝国が造営した城塞都市を元に発展した都市ということですが、1500年以上維持されてきたガジアンテプ城塞も城壁や稜堡などの施設が倒壊したといい、熊本地震の熊本城を思い出す。

 トルコ国内では今回の被害を拡大させた政治の責任を問う声もでているとされますが、トルコ政府の初動については1900年以来最大規模の地震といい、阪神大震災の村山政権を思い出せば、初動に考えさせられるところはあるが、危機管理上は国軍が防災などを作戦体系に含めていない場合には限界があったのではないか、今後に活かす方が重要ともおもう。

 建築法令違反が多数の建築物倒壊に繋がったという報道もありますが、この点については耐震強度審査の自治体能力拡充と共に、耐震強度を確保した場合に中産層へどのように現実的な建築費で住宅を供給するのか公営住宅制度の拡充などが今後課題となるのかもしれません。いや、日本が出来る現時点の支援は限られていますが、復興と制度構築では貢献できるのかもしれません。

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