◆偵察番長?無人偵察機を随える戦術偵察機
F-15戦闘機は、近代化改修計画を経て当分、日本の防空に重要な役割を果たしつつ現役で運用される見通しとのことだが、F-15初期の機体の中には近代化改修に対応していない機体がある。
この初期型のF-15Jを偵察機として改修し、老朽化が進むRF-4Eの後継機に充てようという構想が進められている。偵察型に転用される機体は、近代化改修に対応していない非MSIP機で、この中の十数機が偵察機に改修されるとのことだ。偵察機に転用された場合、恐らくRF-15Jが制式名称になるものと思われる。
航空自衛隊では、偵察飛行を行う部隊として百里基地の第501飛行隊を展開させ、偵察専用型のRF-4Eを運用していたが、F-4EJ戦闘機について、90年代前半に近代化改修に対応していない機体を偵察機に転用し、RF-4EJとして運用しら事例が過去にある。初期型のF-15Jを偵察機に改修するというのは、先にF-4EJで実施した手法を踏襲することになる訳だ。
RF-15Jの試作開発は現在進められており、基本的にF-15Jに対し、外装式の偵察ポッドを搭載することで偵察機とする計画とされる。基本的に、F-15Jに偵察用機材を搭載するわけであるから、F-15Jが有する広大な戦闘行動半径と空中での高い運動性能は維持されることとなる。これだけでもRF-4と比べてポテンシャルが高まることとなる。
外装式の偵察ポッドを搭載する運用であれば、新型の偵察機材が開発された際にはいち早く換装することが出来るし、実用上昇限度は約20000㍍、もともと搭載量の大きいF-15Jであるから、高度な偵察機材を搭載すれば、高高度偵察機として、遠距離目標に対しても偵察を行うことは可能となってくる。
さて、先月から岐阜基地にて、無人機を主翼の下に搭載したF-15Jが幾度か目撃されており、航空雑誌の写真投稿でもその様子が掲載されている。技術研究本部が中心となり開発されている無人器は、無人偵察機として、年度内に硫黄島での実験が開始されるとのことだ。胴体下部に偵察機材が搭載され、偵察を行う。
RF-15Jについて、岐阜基地で実施されている前述したF-15Jへの搭載試験と併せて考えると、偵察機としての運用の際に主翼の下から、無人偵察機を発進させ、強行偵察を行う、という運用が行われる可能性がある。主翼の左右に一機づつ、ということは最大で二機の無人偵察機を運用することができ、RF-15Jも偵察任務に当たることが出来る、ということになる。
空対艦ミサイルASM-1/2や開発中のASM-3を最大四発搭載することが可能なF-2支援戦闘機は、一部で通称:対艦番長、としてその名を馳せ、親しまれているが、RF-15Jが二基もの無人機、それもかなり大型の無人偵察機を搭載できるならば、その愛称は、やはり偵察番長、というべきだろうか。
平時の際の偵察や情報収集に用いるのであれば、速度よりも滞空時間に優れた機体、そして各種センサーを搭載した写真のEP-3のような機体の方が運用の柔軟性と要員の負担軽減につながる。しかし、RF-15Jにしても、それから無人偵察機にしても、主翼のアスペクト比が大きいRQ-1やMQ-9といった機体と比べ、速度を重視したような形状となっている。
超音速での運用が可能な偵察機を開発する背景には、いわゆるテロとの戦いにおいて運用されるRQ-1プレデターのような、比較的低速の航空機では、生き残れないような状況での運用、つまり中射程以上の地対空ミサイルを運用する正規軍に対して強行偵察を行おうという運用の要求があるからに他ならない。
他方で、有人偵察機は、撃墜された場合などのリスクは大きい。しかしながら、無人偵察機では運用の柔軟性で今日ではまだ有人機に見劣りする面があることも事実だ。そうした状況を踏まえたうえで、こうした強行偵察を行わなければならない大規模な通常戦力による武力紛争が発生する可能性のある地域は限られており、この限られた地域に日本は接しているからこそ、偵察番長を創らなければならない国情がある訳だともいえるだろう。
HARUNA
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