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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

いままで通りF-22の導入を望む 浜田防衛大臣記者会見[6月9日]

2009-06-09 22:17:39 | 防衛・安全保障

◆次期戦闘機(F-X)選定

 F-22の取得を望む日本に対し、アメリカ側から提示されたのはF-35,F-35の計画はまだ完了には遠い道筋があるものの、それまでF-4を運用しなくてはならないのかが気にかかるところであるが、本日、浜田防衛大臣は記者会見にて、やはりF-22の取得を望む声明を出した。

Img_9347  防衛省HPの2009年6月9日防衛大臣記者会見の内容は、北朝鮮に関する臨検について、そしてF-22の次期戦闘機として導入に関する内容、敵基地攻撃能力について議論には慎重を要する内容、などである。ここに一部を引用する。↓

 記者:ペンタゴンのモレル報道官が、日本に対してF-35をゲイツ国防長官が有力候補として推奨しているということをしゃべっていますけれども、・・・。

Img_6653  浜田大臣:それは今まで通り、F-Xの調査対象機種の中でのF-22の可能性であり、それがだめならば、F-35に限らず、他のものも選択肢に入れながら考えていかなければならないと思っています。現実にF-35に対する情報については、まだ出来上がった航空機がないので、そういった意味では検討の材料がない。F-22がだめだったら、そういった多機種色々なことを選択肢の中に入れながらやっていくことになると思いますけれども、基本は我々としては、まだF-22を引き続き選択肢として追求していきたいというふうに思っております。[引用ここまで][全文http://www.mod.go.jp/]

Img_9902_1  この記者会見について考察をすると、少数の航空機で防空を担うにはF-22が必要、という日本の切実な国情が透けて見える。航空自衛隊としては、決められた数少ない戦闘機定数の中で、島嶼部を含めれば北米大陸東海岸や中国沿岸よりもはるかに広大な日本列島の防空を担わなければならないという厳しい現状があり、他方で、これまで、周辺諸国と比較し、比較的世代の新しい戦闘機を運用することで、数的劣勢を補ってきた、という背景があり、次期戦闘機選定に際しては、他の候補機よりも世代が新しく、かつ多機能性よりも要撃機としての性能の高さが選定の背景にあることを示している。

Img_2098  ここで気づかされるのは、日米間の意思疎通における欠缺だ。なぜ、少数機での防空にこだわるのか。日本側としては、周辺国への脅威を与えないという配慮(もちろんこれだけではないが)から戦闘機定数は防衛大綱に上限が示されている。この防衛大綱に定められた機数上限に触れない範囲内で、最大限の抑止力を確保したい、という思惑がありF-4の後継機にF-22を必要としているのだが、米国側としては、F-22は機密保護の観点から輸出出来ないのであり、周辺国への配慮が機数に起因するという認識は無いのだろう。周辺国の新世代機の増加が問題ならば、日本も周辺国の新世代機と同世代の機体を増加させれば抑止力は維持できるのではないか、ということだ。

Img_5721  策源地攻撃能力、記者会見においては敵基地攻撃能力について触れられており、その手段について具体的に踏み込んだものではないのだが、慎重にあるべき、と間接的に触れられていた。さて、政府に助言した識者は、だいたい想像がつくのだが、トマホークミサイルの護衛艦への搭載により、策源地攻撃能力を付与させるという案が提示されている。トマホークは射程3000km、高性能なミサイルであり、弾道ミサイルなどの関連施設を外科手術的に取り除くには理想的な装備といえる。

Img_07502  海面すれすれを飛翔し、地形を縫うように飛行、命中するトマホークは、米海軍により水上戦闘艦から発射、戦闘開始を象徴する映像として垂直発射器より飛翔するトマホークはメディアに流され、様々な任務に投入、高い成果を上げているが、射程が長い一方で、亜音速で飛行することから、命中までは一時間程度を要し、開発施設や工場に対しては高い効果が期待できる一方で、日本に脅威を及ぼしている弾道ミサイル“ノドン”や“スカッド”の移動発射機に対しては、最新の情報をリアルタイムに入手し射撃したとしても、ミサイルが正確に命中した時には既に移動後となる可能性も高い。

Img_0095  策源地攻撃の手段として必要となるのは、ミサイルだけではなく、やはり肉眼で目標を発見し、即座に打撃を加え無力化することが出来る航空機とその支援能力ではないかといえるのだが、ここで思うのは、年末の防衛大綱改訂に戦闘機定数の上限を思い切って95年防衛大綱のラインまで引き上げ、その上で、対地攻撃能力を有する多用途戦闘機をライセンス生産した方が、日本の防衛力全体に資する点は大きいのではないか、と考える。

Img_8201  F-22を40機導入するコストで、他の機体であればどの程度導入できるか、F-22の場合、ライセンス生産が認められないという前提は当然国内での整備能力、同時に稼働率に大きく響く。数を質で補うことは従来、航空戦では不可能と考えられてきたが、データリンクによる共同交戦能力という概念が情報RMAにより確立した今日、個々の機体性能が全般の作戦能力に及ぼす影響は低下しつつある。

Img_9332  現状の飛行隊定数では、確かにSu-27などの比較的世代の新しい航空機を周辺国が多数配備している今日にあっては、数の上から有事の際には航空優勢の確保に課題が生じることは確かである。他方で、飛行隊定数を上方修正し、加えてデータリンク能力の強化、航空機の近代化改修の頻度を高めることにより、航空自衛隊の能力全般として、必要とされる任務を完遂することは可能なのではないだろうか。

Img_0185_1  同時に忘れてはならないのは、現在開発が難航しているC-1輸送機後継機、次期輸送機C-X,そして遠くない将来にはT-4練習機の用途廃止と代替機導入という課題が生じ、F-X選定を遅らせることは、それだけ、その他の航空機の調達時期と重なる可能性を示している。年間の防衛予算は上限がある為、様々な航空自衛隊向け航空機が予算の争奪戦を繰り広げ、結果、生産数縮小やそれに伴う単価高騰につながりかねない。

 年末の防衛大綱改訂、そこに冷戦終結後一貫して削減されてきた戦闘機定数を冷戦終結直後のラインへ上方修正し、飛行隊定数を増加させることで抑止力を維持する、その機体は多機能性能を重視する、というような視点もあってしかるべきなのではなかろうか。

HARUNA

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コメント (8)
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