◆ひえい等多数の艦艇が停泊
本日から数回に分けて、5月に散策した際撮影した海上自衛隊呉基地について掲載したい。今回は、主に水上戦闘艦を特集、続いて潜水艦などを特集し、そうりゅう型潜水艦についても掲載の予定。
呉基地といえば、ひえい。満載排水量6800㌧、はるな型二番艦で、第4護衛隊群旗艦のヘリコプター搭載護衛艦ひえい、が有名だが、同時に潜水艦部隊や輸送艦部隊などの母港であり、海上自衛隊幹部候補生学校が置かれた江田島や練習艦隊が置かれるなど、海上自衛隊教育の中枢でもある基地だ。
呉基地は広大である。今回の呉基地特集は、呉遊覧船から撮影した情景と、幸地区桟橋を地方総監部前バス停から貿易倉庫前バス停まで、散策した際に撮影した情景の写真を併せてお伝えしたい。古くからの海軍基地であるので、写真の角度は限られているが、派手な水上戦闘艦ばかりで評価されがちな海上防衛力、しかし、各種支援艦艇を充実させていることで、有する能力の底上げに資しており、わが国の防衛力の一端を垣間見ることが出来る。
呉の沖合に二隻の輸送艦。呉基地の第1輸送隊に所属する、おおすみ型輸送艦が二隻、停泊している。第1輸送隊は、護衛艦隊直轄の輸送艦部隊で、おおすみ型輸送艦3隻から編成されている。地方隊の小型輸送艦を除けば、海上自衛隊唯一の輸送艦部隊であり、日本の貴重なパワープロジェクション能力という位置づけにある。
おおすみ型は、満載排水量14000㌧、全長178㍍。全通飛行甲板を有し、ヘリコプターによる空中機動により揚陸輸送任務を展開出来るほか、ホバークラフト方式の揚陸艇LCACを船内に二隻搭載することができ、海空一体の任務遂行が可能。90式戦車10両と装甲車や支援車両など、そして330名の隊員を展開させられ、短期的にはさらに多くの人員を輸送可能である。
掃海管制艇おぎしま。にいじま型掃海管制艇の一隻で、自航式掃海具SAMの母船として、はつしま型掃海艇を改造したもの。満載排水量510㌧、全長55㍍。乗員は28名と従来の掃海艇よりもやや少ない。SAM2隻をデファンシャルGPSにより位置を確認、リモコン及びプロッターにより管制する。
SAMは、重量26㌧、1997年から導入されたスウェーデン製掃海機具。構造は双胴型形状を採用している。母船と横づけで展開、掃海時は、無線誘導を受け、8ノットの速力にて磁気・音響複合掃海を行う。掃海管制艇ともども掃海隊群第101掃海隊に所属している。ちなみに、SAMとはSelf Propelled Acoustic and Magneticの略。
補給艦とわだ。護衛艦隊第1海上補給隊の補給艦で、とわだ型のネームシップ。満載排水量12100㌧、燃料などの液体貨物、食糧や弾薬、機械部品などのドライカーゴを護衛艦や潜水艦などの補給するもので、1隻が護衛隊群8隻への支援能力を有するとされる。奥に見えるのは、掃海艇いずしま。
護衛艦せとゆき。護衛艦隊第12護衛隊に所属する護衛艦で呉が母港。満載排水量4200㌧、対空対潜対水上にバランスがとれた武装を有し、哨戒ヘリコプターの運用能力、そしてガスタービン推進を採用した量産型汎用護衛艦で、12隻が建造され、海上自衛隊の能力全般を大きく飛躍させた。
護衛艦やまゆき。同じく、はつゆき型護衛艦で、その向こうには、おおすみ型輸送艦がみえる。ズームした写真ばかりだが、これは、呉の遊覧船が開放型ではなく、キャビン型であることに起因しており、キャビンの窓が海水により汚れており、広角ではどうしても海水が乾いた斑点がついてしまうためだ。
輸送艦ゆら。満載排水量710㌧、自衛艦では最小の大きさである。呉地方隊直轄艦で、50㌧の貨物を搭載可能、73式中型トラック4台を搭載することが出来る。70名の要員を輸送することができ、居住区は設けられていないが仮眠などがとれる待機室がある。小型のためCICなどは無く、指揮は艦橋で行う。
音響測定艦ひびき、護衛艦まつゆき、敷設艦むろと。敷設艦むろと、は満載排水量6000㌧、海底固定ソナーやケーブルなどを敷設する任務を有する。なお、竣工は1980年、老朽化が指摘されている。ケーブル敷設のために海洋観測艦としての能力も有しており、海洋業務群直轄艦。敷設された海底ソナー網は、かなり広範に及び、日本に接近する潜水艦は、かなり離れた距離で探知されるという。空にレーダーサイトが睨みを利かせるように、海にはソナー網が睨みを利かせている。
第4護衛隊群旗艦ひえい。第4護衛隊群は呉基地に司令部を置き、ヘリコプター護衛艦ひえい、ミサイル護衛艦はたかぜ、護衛艦うみぎり、護衛艦はまぎり、からなる第4護衛隊、ミサイル護衛艦きりしま、護衛艦いなづま、護衛艦さみだれ、護衛艦さざなみ、からなる第8護衛隊から成る。各艦母港は、呉基地、横須賀基地、大湊基地と別れている。ひえい、は、必ずしも旗艦に充てられる訳ではないが、DDH,ということで旗艦という表現をとった。
輸送艦しもきた。おおすみ型は、一番艦おおすみ、二番艦しもきた、三番艦くにさき、より成る。輸送艦というが、世界的にはドック型揚陸艦というべき艦型で、内部に60×15㍍のドックを有している。また、飛行甲板は前半分は通常車両の格納に用いるが、全域にわたってヘリコプターの発着に耐える構造となっている。
輸送艦ゆら。海上自衛隊のは、その任務範囲について年々国際情勢への対応と人道上の要請から、特に海上自衛隊の任務範囲をかなり広範に政治の要望は拡大する傾向にあり、補給艦、また、パワープロジェクション能力を高める輸送艦の必要性も高まっている。他方、大規模災害や島嶼部防衛に際して、地方隊にも初動対処能力や災害対処能力に高い期待が寄せられており、編成と予算体系の再検討が必要になっているようにも思う。
音響測定艦ひびき。満載排水量3800㌧で2隻が採用された。潜水艦の音紋を収集する任務につき、採用の背景には政治的なものがあるが、曳航式パッシヴソナーSURTASSを搭載しており、3ノットで海洋条件が良ければ数百キロ先の音紋を探知する。長期間の航行を可能としている。他方、この種の艦はとにかく数が必要であり、米国の収集したデータを合わせ、データ収集を行っているとされる。しかし、防衛力の行使に法的制約のある日本としては、音響測定艦や電子偵察機などの情報力を強化し、後方支援や紛争予防に資する運用体系もあってしかるべきなのか、とも思う次第。
HARUNA
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