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浜田防衛相ソマリア沖海賊事案第2次派遣海賊対処水上部隊編成へ準備命令

2009-06-30 22:38:08 | 防衛・安全保障

◆護衛艦『はるさめ』『あまぎり』

 海上自衛隊の赤星海上幕僚長は6月23日の記者会見で、ソマリア沖海賊対処事案の第2次派遣海賊対処水上部隊の概要を発表した、本日30日に浜田防衛大臣より正式に派遣準備命令が発令された。

Img_7202  第2次派遣部隊は、佐世保基地の第2護衛隊群第2護衛隊司令在原政夫1佐を指揮官として編成し、隷下に第6護衛隊の護衛艦「はるさめ」、第2護衛隊の護衛艦「あまぎり」を以て成る部隊で、今回の派遣は海上警備行動ではなく、7月に施行される海賊対処法に基づき派遣される見通しとなっている。

Img_9789  護衛艦はるさめ、は艦長橋向亮介2佐、むらさめ型護衛艦の二番艦で、各種武装を垂直発射器(VLS)に収め、ステルス性の向上を図った護衛艦で満載排水量は6200㌧。護衛艦あまぎり、は、艦長岡田岳司2佐、護衛艦隊用大型汎用護衛艦としては2代目となる、あさぎり型護衛艦の四番艦として建造され、2本のマストが力強い印象を与える艦容、満載排水量は4800㌧。

Img_6043  第1次派遣部隊には、護衛艦さざなみ、護衛艦さみだれ、が派遣されているが、今回は、あさぎり型が派遣されるということで、緊急時には対艦ミサイルを用いて対水上戦闘が可能なSH-60Kが搭載できるのか、機銃と防弾板を搭載したSH-60Jを運用するのかなど、些細な点ではあるが興味が湧く。

Img_7229  他方で、あさぎり型護衛艦は、ヘリコプターが常用1機搭載にて運用しているが、必要に応じて、さらに1機を搭載することが出来るだけの格納庫容量を有している。一方で、あさぎり型の科員居住区は3段ベッドを採用しており、仮にもう一機、予備のヘリコプターを搭載し、海上保安官の同乗を考えた際、居住区に余裕はどの程度残されるのか、という心配もある。

Img_1431  海賊対処法では、日本関係船舶以外の外国船も警護対象となり、警護対象の民間船に近づく海賊船に対しても、武器使用が可能となる。写真では艦橋ダビットの下に12.7㍉機銃の銃座がみえるが、海賊対処任務に派遣される護衛艦には、機銃の銃座数を増強し、防弾板などを追加する改修が行われる。

Img_9077_1  12.7㍉重機関銃、護衛艦に搭載されている写真が手元に無いので、写真は米海軍のミサイル駆逐艦に搭載されている重機関銃であるが、射程1000㍍、発射速度は毎分600発で、このほか、5.56㍉機銃MINIMIなども搭載されるようだ。なお、ソマリアの海賊には、23㍉クラスの機関砲を保有しているという情報があるが、そういった火器は比較的大型であるので、甲板に載せて攻撃を企てた海賊船が万一いたとしても、護衛艦からは76㍉単装砲が対処する事が可能だ。

Img_9381  このほか、護衛艦には、複合艇の搭載も行われており、必要に応じて臨検任務に対応することが可能だ。護衛艦には、対潜、対空、対水上戦闘に対応する各種ミサイルやレーダー、ソナーを搭載しているものの、海賊は潜水艦や爆撃機を有している訳でもない。他方、一見しただけでは武装漁船との区別は付きにくいため神出鬼没である。哨戒ヘリ、レーダー、複合艇、機銃などを駆使し、任務にあたる。

Img_2508  蛇足ながら、第1次派遣隊の護衛艦は、「さざなみ」と同名の駆逐艦漣が、日本海海戦にてバルチック艦隊司令官であるロジェストヴェンスキー中将座乗艦を拿捕した殊勲艦として知られるが、駆逐艦天霧は、真珠湾攻撃に続く1942年のインド洋作戦やミッドウェー海戦に参加、ガダルカナル島艦砲射撃に参加するとともに、後のアメリカ第35代大統領JFケネディ(当時中尉)が指揮する魚雷艇と交戦、これに衝突し撃沈している。その模様は、1963年公開の映画“PT-109”に描かれている。

Img_4867  第1次派遣部隊は、3月30日から延べ32回にわたる護衛任務を実施、計96隻の船舶を護衛している。また、派遣海賊対処航空隊として展開するP-3C哨戒機部隊も6月11日から哨戒飛行を実施している。上陸や休養が限られるなど文字通り厳しい任務であり、第2次派遣部隊への交代を早急に行う必要性があるのは誰の目にも明白だろう。

Img_7415 同時に収束の見通しが無いソマリア沖海賊事案に対し、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援任務への派遣とともに、教育訓練や艦艇のローテーション、さらに弾道ミサイル防衛や通常の哨戒任務と、どのようにして両立させるかを海上自衛隊、政府一体となって検討する必要があるといえるのではないだろうか。

HARUNA

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