◆JM-902ペトリオットミサイルPAC-3
日曜日、横須賀市の武山駐屯地祭を見学したのだが、その際、航空自衛隊武山分屯基地より、ペトリオットミサイルPAC-3が地上展示として参加していた。
入間基地第1高射群、その隷下には、習志野分屯基地の第1高射隊、武山分屯基地の第2高射隊、霞ケ浦分屯基地の第3高射隊、そして入間基地の第4高射隊を有し、ペトリオットミサイルにより首都圏の防空にあたっている。ペトリオットミサイルPAC-2は、射程100km以上の対航空機用ミサイルで、低空侵入する巡航ミサイルに対しても対応し、限定的ながらも弾道ミサイルに対する迎撃能力を有していた。PAC-3は、より弾道ミサイルへの迎撃能力を重視した型式だ。
PAC-3は、従来のPAC-2一発あたりのキャニスタに各4発を搭載でき、宇宙空間を経由して目標へ落下する弾道ミサイルに直撃するかたちで無力化する。これは、従来の目標付近での近接信管を用いた破片効果では、落下してくる弾道ミサイルに打撃を与えることはできても、結局のところ落ちてくることには変わらないため、落ちても爆発しないよう、空中で粉々に粉砕するという目的で採用された方式だ。
また、直撃に失敗した場合、PAC-2と比べ、数倍の大きさの数百グラム破片を用いて、有効半径の弾道ミサイルに大きな打撃を与える構造を採用している。ミサイルが小型化しており、破片が大きくなるためその分、有効半径は短いものの、いまのところ実用化された通常弾頭の弾道ミサイル迎撃手段として、数少ない実用装備だ。なお、ミサイルそのものが小型化しているため、射程は迎撃高度にもよるが15~30kmとなっている。
PAC-3は、弾道ミサイルへの迎撃を念頭に置いていると同時に、限定的ではあるが航空機への対処能力も残しており、首都圏の弾道ミサイルからの防衛では重要な役割を果たす。他方で、射程が短縮したことで、先の北朝鮮弾道ミサイル試験では、首都圏中枢に展開し、万一の弾道ミサイル落下に備えたことは記憶に新しい。なお、従来の航空機などによる侵攻に備える観点から、高射隊はPAC-3を2基程度装備し、同時に航空機や巡航ミサイルに対して大きな迎撃能力を有するPAC-2とで、複合運用を実施している。
PAC-3について、イージス艦のスタンダードミサイルSM-3とともに、弾道ミサイルから日本を防御する上で重要な装備であることから、来年度末までに16個高射隊へ、装備が進められる計画である。一方で、PAC-3の射程には限界があることから、北朝鮮によるミサイル脅威の拡大を受けて、より射程の長いTHAADの導入が現在検討されている。なお、今回展示されていたのは、当然ながら訓練用の模擬弾だ。
ペトリオットミサイルPAC-3は、入間基地航空祭などで一昨年頃から展示されていたとのことだが、当方、ようやく撮影することが出来たので本日掲載した次第。なお、武山駐屯地祭では、武器学校より、現在配備中で、全国でも7両しか装備されていない重装輪回収車など、珍しい装備品が並べられていた。
HARUNA
[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]