北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

リニア中央新幹線建設ルートの模索③ 伊那谷ルートは全般的にマイナス面が大きい

2009-06-24 20:23:20 | コラム

◆リニア新幹線を考える

 リニア新幹線の建設ルートについて、最短距離で結ぶことが運賃と所要時間、建設工費を一割から二割低減させ、開通までの時間も短縮できる点を第一に記載した。

Img_6318  第二に、これは昨日の記事であるが、新幹線と在来線の競合では並行する在来線特急は勝てない、中央本線との競合を避けるルートを選択しなければ、中央本線の特急あずさ、しなの、の旅客がリニア新幹線に流れてしまい、結果的に廃止に追い込まれる可能性を提示した。これは同時に中央本線特急停車駅で、かつリニア新幹線停車駅が整備されない区間での過疎化を防ぐためにも必要な措置ではないか、という論理を提示した。

Img_8469  本日、すなわち第三回は、昨日の記事を補完、もしくは延長するもので中央本線の維持を考えると、やはり長野県は南アルプスルートにて建設工事を行うべきだ、という論理を補強したい。前回は、特急あずさ、特急しなの、の存続にかかわる問題であると表現したが、可能性として中央本線そのものから、JRが一部撤退し、第三セクター鉄道となる可能性がある。

Img_8448  具体的な事例としては、東北本線の一部が、東北新幹線が開通した1982年の6月23日(昨日は東北新幹線開通記念日だったのだ)を契機として、長距離輸送需要が在来線である東北本線から東北新幹線に移行し、結果、今日では東北本線の盛岡駅から八戸駅まで、JRが撤退し、この区間は、IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道という第三セクターによる経営が行われている。

Img_0345  東北本線の“寸断”というような状況は、いわて銀河鉄道、青い森鉄道の路線を経由するJRの特急列車について、JRの特急料金に加え第三セクター鉄道の特急料金が加算されるため、寝台特急あけぼの、はこの区間を迂回、北斗星はJR特急料金を特例措置で割り引くという非常措置を採っている。前者は迂回されることで地域に、後者は加算されることで利用者に、それぞれ負担を強いているということだ。

Img_2928  また、北陸新幹線長野区間開業により、信越本線の横川駅と軽井沢駅間が廃線となり、軽井沢駅と篠ノ井駅間は、しなの鉄道という第3セクターが運行する形態となっているし、九州新幹線の開業により、鹿児島本線も全線からJR九州が撤退、第三セクター方式により運行されている。間接的にではあるが、新幹線に追いやられる形で九州ブルートレインが廃止され、観光需要にも、プラス面もあるのだけれども、地域によってはマイナス面が表に出たところも多いようだ。

Img_9770 しなの鉄道は、当初は黒字ではあったものの、今回論じているようなリニア新幹線のへ旅客流出などにより特急が廃止されれば利用者の減少に直結することを意味する。現時点でも2007年に約12%の運賃値上げを実施するなど、利用者への負担増という状況が出ており、見通しは必ずしも明るくない。

Img_1244  結果、中央本線とリニア新幹線との補完関係がうまくいかなければ、中央本線が第三セクター化するという可能性も真剣に考えなければならない。併せて、リニア新幹線に旅客が流れることによって、あずさ号、しなの号が廃止となれば、路線全体が赤字となり、その負担が長野県の財政に重くのしかかる可能性も出てくる。従って、中央本線と重複する伊那谷ルートは問題点が多いのだ。

Img_7351  現在、北陸本線特急で活躍する681系や683系のように在来線特急であっても、路線が整備されていれば、160km/hでの運行が可能な特急車両も整備されていることだし、実際北越急行線では160km/h営業運転が行われている。例えば南アルプスルートが採用された場合、伊那か飯田に駅が建設されることとなる。辰野駅から中央本線の塩尻駅などの乗り入れる特急を運行、併せて路線の改善を行えば、結果的に長野県における利便性を向上させることもできる。

Img_97871  このほかに、この区間を、例えばセントラルライナーのような電車や、普通に指定券不要の快速をクロスシート方式の313系により運行し、リニア新幹線リレー快速を運行するのも、一つの方法としてあり得るかもしれない。なんとなれ、長野県における中央本線のポテンシャルは大きい。リニア新幹線も、この本線と共存共栄できるかたちを模索するべきと思うのだが、どうだろうか。

HARUNA

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