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ユーロファイターに新しい動き 航空自衛隊次期戦闘機(F-X)選定

2009-06-13 22:33:04 | 先端軍事テクノロジー

◆欧州機か、米国機か、それとも・・・

航空自衛隊次期戦闘機選定で、F-22について、動きがある中、欧州機であるユーロファイタータイフーンについても新しい動きがあった。本日は、この話題について考えてみたい。

Img_5027 11日付日経新聞Web版より以下の通り引用する:英BAEシステムズ、「FX」採用ならユーロファイターの技術情報を開示
 英BAEシステムズのアンディー・レイサム副社長は11日都内で記者会見し、日本の次期主力戦闘機「FX」の候補機である欧州のユーロファイターについて、日本が採用を決めた場合、日本でライセンス生産がしやすいよう詳細な技術情報を開示する考えを明らかにした。日本の戦闘機は代々、米軍機をライセンス生産してきたが、詳細な設計情報を開示しない「ブラックボックス」化が進んでいる。日本の防衛産業は先端技術に触れられず、生産や整備面での障害になっている。
Img_9490  レイサム副社長は「我々はブラックボックスを設けない」と述べ、米国との違いを強調。ユーロファイター採用のメリットを強調した。
 FXを巡っては、防衛省の大本命だった米ロッキード・マーチンの最新鋭機F22がオバマ政権の発足を受けて生産中止される方針となり、選定作業が混迷している。(19:51):引用は以上。http://<wbr></wbr>www.nik<wbr></wbr>kei.co.<wbr></wbr>jp/news<wbr></wbr>/sangyo<wbr></wbr>/200906<wbr></wbr>11AT1D1<wbr></wbr>106Y110<wbr></wbr>62009.h<wbr></wbr>tml

 F-22の導入について、厳しいとの声が改めて寄せられる中で、ユーロファイタータイフーンの導入について、これを後押しするような動きといえる。

Img_7214  ただし、ブラックボックスを設けないという点には、かなり疑問があり、過去にもユーロファイターについては、これに近い発言もあったことから、慎重に見てゆく必要がある。加えて、ユーロファイターは、段階発展の過渡期にある機体であり、レーダーの換装などを最初から織り込んで調達を行い、ライフサイクルコストについても、将来、急激に増大するという前提で見て行かなければ、その能力を十分に引き出せない運用となる可能性もある。もともとタイフーンは、絶対航空優勢確保を念頭に開発された航空支配戦闘機としてのF-22と、各種攻撃機の能力と運用の要求を統合した統合戦闘攻撃機F-35の中間を上手く取り入れた多用途戦闘機である。レーダーの性能などでは未知数であるものの、自衛隊F-X選定の候補では、F-22に次ぐ制空戦闘での能力を発揮できるとされている。

Img_4903  航空自衛隊のF-X選定は、F-22の導入を繰り返し求めることについて、F-22を必要としていると同時に、国内で航空開発を行う際に、米国製戦闘機導入という政治的圧力をかわすという目的があるのではないかと、みえてくる。先端技術実証機の開発により得られる技術と、日本独自では有してない技術をと併せれば、F-2が有するポテンシャルと同等のものは開発できる余地はあるものの、米国製戦闘機導入を求めるという圧力を回避するには説得力は限られる。米国製戦闘機の輸入を求めるアメリカからの圧力を、それならばF-22の導入を希望するという対案を提示できる。仮にそこで相当不利でもF-22を日本が取得できるという道筋が立てられるならば、それも可。F-35が、日本の防衛産業や防空体制に寄与する形で取得できるまでに、何らかの形で国内での技術開発に見通しがつけば、エンジンなどの米国からの輸入という形での共同開発機の目途も立てられる。

Img_1874  一方で、これらの命題とは別に、航空自衛隊にF-4戦闘機の後継機が必要となっていることも確かである。戦闘機の性能だけで考えるならば、比較も可能であるが、同時に政治的問題も絡んでくるため、一概に決めることが出来ない要素も含まれている。他方で、F-4の後継機だけではなく、時期的にはF-15Jの近代化改修に対応していない初期の、いわゆる非MSIP機の後継選定とも重なることから、安易に特定の機体を後継機としてしまうと、将来の航空自衛隊要撃機体系を必然的に方向付けてしまうことにもなる。この点、米国製か、欧州機か、という問題は大きくのしかかり、これが問題を複雑化させている。

Img_4658  米国を主導として開発されている機体について、現在、F-35のみであり、将来的には現行のF-22の数的不足を補完し、F-15Cの後継となる機体が開発されることも考えられるが、もうひとつ、いえることは、2004年頃から欧州共同開発のトーネード攻撃機の後継機に関する技術開発、その模索が始まっているということだ。米国から最新の技術が得られないのであれば、国産で開発する技術を十年単位で模索するか、もしくは欧州共同開発に日本として参加という選択肢を加えるかである。ユーロファイターの導入が具体化すれば、これを契機として欧州でのユーロファイターの近代化改修や、次世代戦闘機開発への参加という展開も考えることが出来るようになる。もちろん、このためには、技術の相互移転を阻む国内法的要素を克服する必要が出てくるが、これは政治の問題だ。

Img_9473  F-4後継機と、F-22導入問題は、切り離して考える必要も、一つあるのに対して、やはり、F-4後継機について慎重を要する要素として忘れてならないのは、F-22以外は、基本的にライセンス生産を希望していることであり、もちろん、すべての部品を国内で調達しライセンス生産するわけではなく、F-4で5%、F-15で25%が有償軍事供与部品に依存している。このため、ライセンス生産でも開発国には利益が生まれるわけだが、同時にライセンス生産は少数多年度生産となる。したがって、調達は長期間続くわけであり、結果的に長期間運用されることとなる。40機をライセンス生産するとなれば、実際の運用は2050年代まで続く可能性もあるわけだ。

Img_8096  はたして次世代戦闘機はどのようになっているのか、ステルス性とアンチステルスレーダーとの駆け引きはどうなっているのか、また、現在ロシアが進めており、年末までには技術実証機が飛行するとされるロシア空軍の次世代戦闘機PAK FA-T-50計画や、その他のステルス戦闘機がどのような発展を遂げるのか、未知数な点も多い。この点で、現在の第4世代戦闘機は一気に陳腐化するのか、レーダーなどの電子戦技術の発展と近代化改修により第一線での任務対応能力を維持できるのか、これも問題を複雑化させる背景の一つであろう。

HARUNA

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コメント (4)
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