◆陸上自衛隊最大規模の演習
6月24日から8月2日にかけて、陸上自衛隊では第一次協同転地演習を実施している。協同転地演習とは、北方機動演習の演習内容を改めたものである。
現在発売中の月刊世界の艦船誌通巻710号167頁によれば、今回の協同転地演習を第一次協同転地演習とし、演習計画に基づき、中部方面隊管区から北部方面隊管区へ、陸上自衛隊の装備や車両の長距離移動が実施されているとのこと。これを通じて、日本全土への有事の際の緊急展開の実施手順を取得する目的がある。
協同転地演習の実施に際して、陸上自衛隊車両は、鉄道、車両による自走、航空機、艦船による移動訓練が行われ、海上自衛隊からも、おおすみ型輸送艦が1隻参加しているとのこと。例年通りであれば、北海道の浜大樹海岸にLCACなどを用いた戦車や車両など各種装備品の揚陸訓練も行われる。
鉄道輸送では、貨物列車が使われる。本日、名古屋の今井商店破産整理の売り出しへ、長躯名古屋へ展開したのだが、東海道本線新快速の車内より名古屋近傍の稲沢貨物ターミナルの奥に資材運搬車を積載した貨物列車が停車していたのが望見出来た。奥の方だが、自衛隊貨物輸送というものを偶然見ることができ、少し驚いた次第。
このほか、北方機動演習の際には、民間のRORO船や通常の旅客機なども輸送に参加しているので、今回の協同転地演習でも、行われるのだろうか。特に民間のRORO船であれば、保有数も輸送能力も海上自衛隊の輸送艦よりも大きなものが多く、旅客機の便数も航空自衛隊の輸送機よりも多い。
もともと協同転地演習の前身、北方機動演習は、冷戦時代、戦略的に重要な宗谷海峡と津軽海峡を睨む北海道に対し、その軍事的圧力が強まった場合に、本州の中部方面隊、西部方面隊などから師団規模の増援部隊を展開させる目的で開始されたものであるが、冷戦後、脅威対象の多極化に対応するべく、北方に囚われない戦略展開の能力を錬成する目的で名称が改められた背景がある。
同時に北海道には、北部方面隊が運用する広大な演習場があり、本州や九州、四国などでは難しい火砲の長距離射撃訓練などを実施することが可能であることから、広大な演習場を駆使し、より高度な展開や射撃訓練を行う目的がある。少数の陸上部隊により広大な日本本土を防衛するという任務上、大きな意義を持つ演習といえよう。
HARUNA
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