北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

広島原爆投下65周年記念日 核というものを少し考えてみる

2010-08-06 23:00:06 | 国際・政治

◆核というエネルギーとの共生も考える

 記念日、と言われると少々気に障られるかもしれませんが、当方の手品の師匠でノーベル平和賞候補の方曰く記して念じるということで、なにも祝賀する、という意味は無いとのことでこう表現しました。

Img_1907  個人的には長崎原爆投下で親類を何人か文字通り消し去られている関係で、核抑止という構造は理解するのですけれども、相互確証破壊、つまり核戦争が起きれば人類が滅亡するという提示のもとでの均衡からは脱却する術は模索してゆかなければならないのかな、と思います。あまりに刹那的でダモクレスの剣の下で不安な均衡を求めるよりは全滅か生存かを超えた第三の道というものを探求してゆかなければ、人類が構築した知というものの意義を充分に活かせないように思いますからね。しかし、核廃絶というもの自体は難しいでしょう。一度手にしてしまったのですし、各技術に関しては日本の反核運動でさえも、原子力発電という核エネルギーの利用について、平和利用という意味でくくりはあるのですけれども、理解を示す動きはあるのですから、核分裂の制御という枷を取り去れば本質的に同じ、プロメテウスの火を利用するのですし、区分なんてできません。一度手にした技術は、放棄しても他者がその技術を利用するかもしれないという恐怖の総和が、再度自らに技術の蓄積を促すでしょう。どう進むにしろ、核というものと人類は共存するほか方法はないのではないでしょうか。

Img_5035  一つは信頼醸成を図って、核兵器を使用できないよう体制を構築しよう、という考えがあるのかもしれませんが、しかし、これは国家と国家、対称型の関係を念頭に、もしかしたらば、という理想主義の果てに挙げられるのですけれども、今日では核の技術は国家主体を超えて、個人や団体の範囲内で考えられるようになった以上、少々無理があります。もうひとつは反核を唱える集団が提示する、使用すれば人類の滅亡、という論理の下で反対を提示する手法ですけれども、脅迫を用いて調和を目指す、という手法に違和感を感じる以前に、そもそも非国家主体や通常戦力で大国に及ばない主体が求める破壊力が核兵器なのですから、人類全体の、地球益というものを考える余裕の無い、自らが属する主体の“死”を提示されれば、選択肢として一時的に回避する手段にこの種のものの使用、という選択肢が提示された場合、これに手を伸ばさないという確証は余りにも少ないのですよね。

Img_8882  すると、次の選択肢として、使われるという前提で、使われた際に自らが属する社会を防護する手段の模索、これは核シェルターの構築で地中に潜り数年間の核の冬を乗り越えようという試みでも、もしくはいっそのこと他の天体に移住する、という選択肢でもいいのですが、どういう手段を用いてでも生き延びる、という方向性になるのかな、と。もっとも、これはこれであまりに非現実的と言いますか、これも極端な論議になってしまいます。まあ、有事の際には日本国民すべてを収容できるような退避施設の建設、これは中央新幹線構想にある大深度地下トンネルや青函トンネルの技術を考えれば出来そうな気がするのですが、また、これは大きな公共事業となるようにも思うのですが、実施規模は別として、使用されてしまえば日本の国富の大半が失われる訳ですし、厳しいものがあります。

Img_0004  なにか妥当な選択肢があるのならば、お寄せいただければ幸いなのですけれども、こちらが考える手法としては、弾道ミサイル防衛、でしょう。いまはまだまだ穴だらけなので、同時多数による過飽和攻撃を受ければそれまでですし、落達速度の大きい長距離弾道さんに対しては日本の防性態勢は無力です。ただ、現時点で可能な範囲内の中距離、短距離弾道弾への対処能力の付与は、それこそ冷戦時代では考えられなかった訳で、この事を踏まえれば、将来発展すれば信頼できる技術には成長するのかな、と思います。重要なのは、核兵器に対する防衛力、それも戦闘機で迎撃可能な爆撃機や対空ミサイルでの迎撃が現実的に考えられる巡航ミサイルによるものではなく、これまで不可能と考えられてきました弾道ミサイルに対しての防御力を限定的ながらも得ようとしているこの瞬間に着目したいですね。

Img_7746  核兵器国や核保有国がこの種の技術を得ようとする事は、相互確証破壊という、危ういながらも他に代替手段の無い手法での核抑止機能を破綻させる可能性があるので、全ての面で賛成することは出来ないのですけれども、日本の場合は核兵器は勿論、長距離弾道弾さえ保有していない国である訳ですから、核兵器による恫喝を他の国に対して行う事は出来ません。一方で、他の国からの核の恫喝を受けれ可能性は充分ある訳でして、これに対しては同盟国であるアメリカの核の傘、と呼ばれる体制に入ってゆくしか跳ね退ける方法が無い訳なのです。ここに弾道ミサイル防衛の技術を含めるのならば、少なくとも迎撃困難と言われた弾道ミサイルに対する攻撃にも、報復手段の提示では無く、迎撃して国家と国民を領域内で防護する、とした選択肢が生まれる訳で、核抑止に対して通常戦力で以て対応することが出来るという意味では大きなものと言えるのではないでしょうか。

Img_0167  そしてもう一つ、これはかなり非現実的な案だとは思うのですが、もちろん、技術的にも外交的にも。その案とは、静止衛星軌道からの世界規模での弾道ミサイル早期警戒網を日本が主体となって形成して、それを全ての国家や個人に対して提示する、情報公開する、とした方法です。弾道ミサイルが使用できないような環境を構築するには情報の公開しかない、と1950年代から言われている事なのですけれども、各国が整備できる迎撃ミサイルに対して適切な情報通知が出来る体制を構築すれば、全球規模での弾道ミサイル迎撃網の構築にも繋がります。情報を即時に共有することが出来る体制を構築可能ならば、攻撃があった際に第三国への誤った対処を回避できますし、その警戒網は同時に長距離弾道弾による日本への攻撃にも警戒する事が出来ます。対処法としては、こういう事も出来るのではないか、と考えました次第です。

HARUNA

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コメント (8)
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