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中国瀋陽近郊に国籍不明機墜落 北朝鮮空軍の戦闘機か?

2010-08-18 23:17:00 | 国際・政治

◆旧式戦闘機の侵入を許した中国の防空網

 北朝鮮空軍の戦闘機とみられる国籍不明機が中国の瀋陽近郊で墜落しているのが発見されました。

Img_2304  かつて、中国は中華民国空軍のU-2偵察機多数を地対空ミサイルで撃墜した事例がありましたが、レーダーによる防空監視体制が完成したのが新世紀に入ってから、まだまだ課題が大きいという事を想わせる事例がありました。中国:新華社報道「北朝鮮の飛行機か」 国籍不明機墜落で・・・ 中国東北部の遼寧省撫順県拉古郷で17日、北朝鮮空軍機とみられる国籍不明機が墜落、戦闘機で脱北しようとしたのかと憶測を呼んでいる。新華社通信は18日に「北朝鮮の飛行機とみられる」と伝えただけだが、香港紙・文匯報などは周辺住民が撮影したとみられる墜落機の写真を報じた。しかし、脱北ならば中国上空を通過する危険をおかさず南を目指す方が自然であり、訓練中の事故だった可能性も指摘されている。【北京・浦松丈二、ソウル西脇真一http://mainichi.jp/select/world/news/20100819k0000m030097000c.html

Img_1491  事件があったのは瀋陽軍区司令部が置かれた瀋陽市から東へ30km、北朝鮮との国境から200kmの距離で、日本で言えば稚内から旭川の距離に相当します。中国当局の発表が状況発生から遅れていて、しかも緊急発進を行った、という記載もありません。国籍不明機ということで、第一報があった際にはロシアのステルス機やアメリカの偵察機では、という憶測もあったようなのですが墜落機の写真が発表されていました。写真が実物であればという前提なのですが、北朝鮮空軍の表示があり、垂直尾翼の形状を見る限りMiG-21か中国でコピーされたJ-7のように見えます。MiG-21はソ連が1955年に開発した超音速戦闘機で、北朝鮮空軍にはJ-7と併せて約120機が配備されており、現在は対地攻撃に充当されている、と考えられています。取得から40年近い機体もあり、設計はF-4の1958年よりも古い航空機です。大きくは報じられていませんが、これはかなり重要な意味を持ちます、それは中国空軍の防空網がMiG-21のような旧式戦闘機に対して、緊急発進などの対応を採る事が出来ないほど、まだ途上段階にある、という事を示してしまったためです。日本であれば領空から離れている場合でも洋上に防空識別圏が設定されていて、この防空識別圏に接近した航空機に対しては航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し、領空侵犯を未然に防止します。

Img_1674  中国空軍はロシアからSu-27/30戦闘機を多数取得していて、デットコピーまで開発しています。もっとも、ロシアの看板戦闘機を違法コピーした中国の行為はロシアからこれまでにない不信感を買い、戦闘機が第一に離陸するために不可欠の戦闘機用エンジンの供給を停止する、という警告を行っているのですが、とにかく数が揃ってきていまして、対岸の日本としては旧式化したF-4戦闘機の後継にどの機体を選定して中国の新鋭戦闘機にどう対処するのか、ということが焦眉の課題となっている事は既報の通りです。しかし、中国空軍は戦闘機の数は揃えているのですが、北朝鮮空軍が運用する第一世代機がやすやすと侵入できる、という状況から考えるに、中国本土の防空体制、という肝心な体制については防空監視網、対領空侵犯措置実施という面から、もしかしたらば問題があるのかもしれません。

HARUNA

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コメント (8)
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