◆DDH×8&DDG×8
本日は八月八日で八八艦隊の日、ということでしょうか。舞鶴では護衛艦しらね、が修理完了して、ひゅうが、は全国での一般公開を続けています。
ひゅうが型に続く、平成二十二年度計画2321艦(22DDH)について、本日はまず少し掲載してみます。基準排水量19500t、満載排水量24000t、全長248m、幅38.0m、喫水7.3m、主機ガスタービン四基COGAG方式二軸推進、出力112000hp、速力30ノット、航空機14機搭載、乗員470名。搭載レーダーはFCS-3を原型としてミサイル管制能力を省いたOPS-50を搭載、ソナーはOQQ-21から側面アレイ能力を省いたOQQ-22が搭載されるとのことです。平成二十四年度計画で24DDHが建造され、しらね型護衛艦の、しらね、を22DDHが、くらま、を24DDHが、それぞれ置き換える計画とのことです。現在は四個護衛隊群八個護衛隊が護衛艦隊の主軸を形成していて、一個護衛隊は、DDHを中心とした護衛隊、弾道ミサイル防衛にあたるDDGを中心とした護衛隊より編成されています。一個護衛隊群は、ヘリコプター搭載護衛艦一隻、ミサイル護衛艦二隻、汎用護衛艦五隻から編成されていて、ひゅうが型、19500t型何れかを編成に持ち、かなり強力な編成となります。現時点で海上自衛隊は、SH-60K/J哨戒ヘリコプター、MCH-101掃海輸送ヘリコプターを搭載する事としていますが、将来的には、艦の能力として数機の他種航空機を搭載することも可能でしょう。
今回、もう少し踏み込んで考えたいのは、DDHをなんとか増勢することは出来ないか、という事です。この提示は過去にも掲載しているのですが、八月八日という事で改めて八八艦隊、という提示を行ってみようと思います。八個護衛隊全てにDDHを編成に盛り込んでDDH八隻体制を確立、全ての護衛隊、現在は六個護衛隊に配備されているイージス艦ですが、現在四隻に弾道ミサイル防衛能力が付与されているのですけれども、これを拡大してすべての護衛隊が弾道ミサイル防衛能力を付与させて、八隻の弾道ミサイル防衛艦を配置、艦隊と本土を弾道ミサイルから防衛しつつ、DDHが機能する、という構想、新しい時代の八八艦隊を編成する必要がある、という事です。シーハリアーを戦闘空中哨戒で艦隊前方に展開させた場合、180km先で二時間の哨戒が可能とのことです。AV-8B攻撃機はAMRAAMを運用可能なAPG-65レーダーを搭載していますので、艦隊前方に進出して最初の防空網を構築することが出来ますし、ハープーンASMを搭載すれば、相手の艦隊の行動を制約することも可能です。イギリス海軍のインヴィンシブル級軽空母には90年代の数字ですけれども平時定数としてシーハリアー5機を搭載していたとのことで、SH-60K/Jを3機程度搭載したとしても、なんとか5機を搭載することは可能でしょう。まあ、ハリアーでこれだけの事が出来るのですから、少々、正確にはユニットコストで一機一億ドルかかるようですけれども、F-35を搭載すれば、海上自衛隊のDDHが有する能力は比類なき、というほどではないにしてもかなり高まる事でしょう。飛行甲板に暫定的に並べて整備補給を行う、旧日本海軍が空母信濃を運用する際に構想したような一時的な拠点として運用するのでしたら、8~12機の搭載は可能かもしれません。
昨今、中国海軍の動性が拡大してきており、排他的経済水域を領海として解釈した新領海法を端緒として、近年は高官の発言から中国の利害が関係する海域の領海化を図りつつある、としか言えない状況が生じています。また、誘導方式の関係から命中するか否かは度外視となるようですが米海軍の航空母艦を狙う対艦弾道弾の開発が行われており、戦略的に東シナ海、南シナ海への中国の影響力を大きく高めようと動いています。こうしたなかで、艦載機は別として航空母艦の建造を継続していますし、中国海軍の航空母艦が日本のシーレーンを脅かす、という可能性がある訳です。また、日本近海を航空母艦が示威の為に遊弋する可能性は充分ある訳で、こうしたある種政治的な示威行動に対して、カウンターバランスを担う水上戦闘艦が無ければ、日本の世論は必ずしも正しい主張を通すべく機能することは出来なくなるでしょう。那覇基地を筆頭に日本の戦闘機の戦闘行動半径の外において、しかし、日本の経済や社会を維持する上で不可欠な、死活的利益が関わる問題が生じた場合、航空優勢の競合地域では空中給油機は活動できませんので米海軍の空母か、相手の戦闘機が哨戒する空域に空中給油機を進出させるか、という状況が生じますが、DDHに固定翼航空機を搭載する能力があれば、もうひとつの選択肢が生まれます。
なんと言いますか、日本の安全保障、特に国防の問題は領土の外の領域で対処することが必要です。専守防衛といいますが、つまり太平洋戦争末期に最後の最後で指導者が果たした苦渋の決断である無条件降伏により、本土決戦は避けられたのですけれども、現行憲法に基づいて平和主義の選択の上での国家存続の手法が、開戦すなわち本土決戦、と位置付けたために、実は1945年8月15日の次に訪れただろう本土決戦の悲劇をモラトリアムのように伸ばして今日に至っているだけのようにも思えてきます。日本列島を主戦場とした場合、そこには住民がいまして、住民がいる場所での戦闘はどれだけ非戦闘員に悲惨かは沖縄戦程ではないでしょうけれども、イラク戦争を見ていますとあまりに悲惨な状況、と言わざるを得ないようにも。陸上での防衛は装甲機動部隊による機動打撃力と長距離火力を結集した水際撃破と、非正規部隊浸透への近接戦闘に重点を置いてもらわないと、困ります。そしてもう一つは輸出入や公益が途絶するような状況があった場合には、日本のみならず日本との関係に依存する諸国にも被害が及ぶ事になりますから、このあたりも配慮が必要でしょう。
こうした体制を実現するには、境界を設定した戦闘能力が必要でして、ううむ、英空軍がかつて夢想した長距離迎撃戦闘機TSR-2のような、相当長距離に進出できるような戦闘機や、ステルス性があり自衛能力があって競合地域に進出できるような空中給油機でも実用化出来ない限り、DDHと固定翼機、という関係が必要でしょう。特に米海軍航空母艦の補完としてのDDHの位置づけ、という意味合いも必要となります。米海軍は航空母艦を徐々に縮減している過程にあり、ローテーションの欠訣を縫うような状況の緊迫化や、航空母艦の運用への軍事的な制約が掛かった場合に補完として、レイテ沖海戦の小沢艦隊のように引きつける覚悟での運用も補完に含めて、その能力は必要になるのでは、と。海上自衛隊も米海軍正規空母のような部隊を持てれば理想的なのですが、航空母艦と艦載機でざっと一兆円、人員にして、むらさめ型30隻分の人員を必要とする航空母艦を最低二隻、損耗を考えれば三隻、訓練を考えれば四隻、と整備することは非現実的ですし、まあ、海上自衛官七万五千名、防衛費が年間七兆円ほど確保できれば、何とかなるのかもしれませんが、やはり難しいでしょう。すると、日本の国力の範囲内で可能な事は、DDHを増勢して、DDHに艦隊防空や戦力投射が可能な航空機を搭載する、という方策くらいしか思いつかない訳です。・・・、まあ、Tu-22のような超音速爆撃機と長距離対艦ミサイルを開発したり、ソ連海軍水上戦闘艦が米空母に対抗しようとしたように大型超音速長距離対艦ミサイルを開発して大型巡洋艦に、という選択肢も浮いてくるのではありますが、索敵能力を支える潜水艦や、シーレーン防衛との兼ね合いの問題から日本には向いていないでしょう。
有事に際に日本が全力で日本の主権を守りきるべく艦隊を動かしたならば、同じ価値観と世界秩序を担うアメリカは国力の全てを掛けて共にその防衛に動いてくれるでしょう。仮に、在日米軍基地に弾道ミサイル飽和攻撃が行われても、仮に第七艦隊が第二次大戦以来の損害を受けても空対艦・空対空ミサイルを搭載する航空機を並べた護衛艦の存在は対等な戦友として動いてくれます。仮に日米以外の航空母艦が東南アジア諸国を示威的に行動したとしても、パシフィックパートナーシップとして友愛ボートの名を掲げて示威を打ち破るべく高い能力を備えた艦船が定期的に寄港すれば、軍事的圧力の前に外交政策を捻じ曲げることは無いでしょう。ううむ、中国海軍の軍事力拡張と日本への示威行動を日本が外交的に抑えることが出来るか、日米関係並みに日中関係が良好な状態を維持できたのならばこうした憂慮は不要だったのでしょうけれども、これは外交的な敗北です。この実情を認めて、抑止力を維持して有事に対処できる体制を構築した上で、新しい信頼醸成の模索を行う必要がある、といえるのではないでしょうか。
HARUNA
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