北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ソマリア沖海賊対処 護衛艦せとぎり、護衛艦まきなみ、アデン湾へ出航!

2010-08-24 23:23:25 | 国際・政治

◆日本での報道が少ないアデン湾海上護衛戦

 第六次派遣海賊対処行動水上部隊として護衛艦せとぎり、護衛艦まきなみ、により部隊が編成され、せとぎり、が大湊基地を出航したとのことです。

Img_7926  第一次派遣海賊対処水上部隊として護衛艦さざなみ、護衛艦さみだれ、が派遣された際には大きく報道されたのですが、第二次派遣海賊対処行動水上部隊として護衛艦はるさめ、護衛艦あまぎり、が派遣された時は大きく報道がトーンダウンし、第三次派遣部隊として、護衛艦たかなみ、護衛艦はまぎり、が派遣、第四次派遣部隊として護衛艦おおなみ、護衛艦さわぎり、が派遣された際にはほぼ報道が無くなってしまい、現在は第五次派遣部隊として、護衛艦むらさめ、護衛艦ゆうぎり、が任務に当たっている最中ですが、派遣されている事さえも国民の耳目に触れなくなっているように思います。

Img_1096 こうした中で派遣部隊についての報道がありました、東奥日報より記事の引用です。2010年8月24日(火)    -- 海自大湊 ソマリア沖へ3隻目派遣 ・・・ ソマリア沖・アデン湾での第6次派遣海賊対処行動部隊として、むつ市の海上自衛隊大湊基地の護衛艦「せとぎり」(3550トン)が23日、隊員ら約200人(海上保安官4人含む)を乗せて大湊港から出航した。佐世保基地の護衛艦「まきなみ」と海上で合流し、現地へ向かうhttp://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2010/20100824160142.asp

Img_6353  海賊対処任務について、もう少し報道があってもいいのではないか、と考えるのですがどうでしょうか。そういいますのも、我々日本国民は選挙民としての主権者の地位にある訳ですから、防衛費の在り方についても意思を示さなければなりません。しかし、経済活動や公共福祉という形で秩序と安定というものを維持させる最低水準の安全以上に防衛に費用を投じることは忌避しがちです。一方で、装備体系や任務範囲を示す防衛大綱改訂が近づいている訳ですので、欧州や中東と日本を結ぶ、現在の日本における輸出入の根源の一つに位置する地域の護衛を行っている、ということは知る必要があるのです。

Img_6305  護衛艦定数はどうするべきか、すなわちそれは定員や予算の面に及ぶのですが、考える必要があります。護衛艦せとぎり、護衛艦まきなみ、はアデン湾に到着後、現在任務に当たっている護衛艦むらさめ、護衛艦ゆうぎり、から任務を引き継ぎます。この間まで、海上自衛隊は交代の護衛艦として、せとぎり、まきなみ、を向かわせているのですから、実質的に四隻の護衛艦が海賊対処任務ということで日本を離れている訳です。護衛艦定数を47隻で充分、という事として除籍艦に対し代替艦を建造しない、という現状ですから一時的とはいえ四隻が海賊対処任務という事で離れてしまう事は訓練体系や周辺海域の警戒監視に少なくない影響が及びます。

Img_9116  派遣されている護衛艦むらさめ、護衛艦ゆうぎり、ですが、しかし日本に帰国してすぐに別の任務に就く事が出来る訳でもありません。三か月以上、強烈な太陽光に曝され、補給以外の整備は艦上で可能な範囲内とされており、なおかつ常に動き続けている訳なのですから帰国したのちには造船所のドックに一旦入渠して、消耗箇所や減耗部分を修理しなくてはなりません。護衛艦は25年以上運用される訳なのですから、保守整備が完全に出来なければ艦の寿命にも響いてしまいます。この為、稼働艦というものは決して多くはないのです。

Img_6298  海上自衛隊の任務の増大を考えれば、もう少し人員や装備の規模は増勢されていてしかるべきです。相当無理を重ねていまして、訓練や広報が削られています。このままでは事故や志願者数に響く可能性もあるのですが、緊縮財政、という難題が待ち構えています。こうした中で、子供手当を筆頭に事業評価の怪しいバラマキ政策が行われ、昨今の報道では降霊術イタコの研究に予算がつけられたり、政府主導で不可能技術を実現するための研究所を新設してタイムマシンの開発も含めた先端研究に予算が投じられる構想も出されており、予算の配分が目茶苦茶な状態です。

Img_2236  繰り返すようですが、アデン湾は日本から遠く離れているものの地中海を経由して欧州と日本を結ぶ海上航路の重要な国際海峡ですし、アデン湾に続く紅海の東側には産油国サウジアラビアがあります。石油や物資、部品などは日本に届くのが当たり前なのですが、この当たり前という日常を脅かしているのがソマリア沖海賊事案です。この日常を護るべく海上自衛隊は各国海軍と協同して任務に当たっているのですけれども、その海上自衛隊は予算を縮減され、任務増大に対して対処が困難となってきています。予算が削られるのは防衛費縮減に政治が動いているからです。

Img_1600 このように政治が動いているのは防衛費を縮減するという政権公約を掲げて当選した民主党政権がこれを民意だと受け止めているからです。民意として支持されている背景には日常が維持され、国民にとり日常が脅かされているようには認識されていないからです。しかし、これは事実誤認であり、加えてソマリア沖海賊事案は完全に終息する見通しが無い、一時的に終息したとしても各国海軍部隊が撤収すれば再度活性化する可能性があるため、いつまでこの状況を続けなければならないのか、不明確であるわけです。こうした状況で無理を重ね、万一どこかで事故のような綻びが生じれば、結局責任を問われるのは今努力を重ねている側です。こうした事を避けるためにも、海賊対処任務についてもう少し報道、そして議論があってもいいのでは、と思う次第です。

HARUNA

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コメント (8)
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