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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

パキスタン水害へCH-47J/JA・UH-1H/J派遣とKC-767、ハイチPKO支援へ派遣

2010-08-11 22:55:51 | 防衛・安全保障

◆自衛隊海外派遣

 大水害で深刻な被害を受けたパキスタンへ自衛隊のヘリコプター部隊の派遣が計画され、ハイチへはKC-767が初の実任務として派遣されるようです。

Img_6106  最初にパキスタンへの陸上自衛隊ヘリコプター部隊の派遣に関して、共同通信からの記事引用です。パキスタンに自衛隊ヘリ派遣 洪水被害で米要請受け・・・ 政府はパキスタン北部で起きた大雨による大洪水を受け、国際緊急援助隊派遣法に基づき自衛隊のヘリコプター部隊を月内に現地へ派遣する方針を固めた。被災住民や救援物資の輸送手段が大幅に不足しているとして米政府が日本に要請したのを踏まえた対応で、事前の調査で安全性を確認した上で具体的な活動の内容や輸送ルートを決める。複数の日本政府関係者が11日、明らかにした。

Img_9911  派遣を予定しているのは、陸上自衛隊の輸送ヘリUH1と大型輸送用ヘリCH47の計7機程度。これに支援の航空自衛隊、ヘリを海上輸送する海上自衛隊の両部隊も加わる。要員は総計で300人を超える見通しだ。活動期間は1カ月前後を想定している。 大洪水で被害を受けた北西部カイバル・パクトゥンクワ州は西隣のアフガニスタン同様、イスラム武装勢力によるテロが相次ぐなど治安が不安定。米側は被災で情勢がさらに悪化し、テロの温床になりかねないと判断。早期の復興を目指し、今月2日、日本に自衛隊派遣を求めていた。2010/08/11 19:18   【共同通信】http://www.47news.jp/CN/201008/CN2010081101000809.html

Img_6236  陸上自衛隊は、過去にパキスタンにおける地震災害に対して北部方面隊のUH-1H多用途ヘリコプターを派遣して、人道任務に当たっています。今回はUH-1と、より大型のCH-47J/JA輸送ヘリコプターを派遣する、ということですが、前回の例では多用途ヘリコプターに関しては航空自衛隊のC-130H輸送機に搭載して輸送しました。CH-47J/JAは大型ですから、ローターを取り外してロシアからAn-124大型輸送機をチャーターするか、米空軍のC-17輸送機の支援を受ける、もしくは海上自衛隊の、おおすみ型輸送艦で派遣する、ということが考えられます。

Img_9421  ところで、ヘリコプターの派遣、といいますと、国連平和維持活動のスーダン総選挙に関する投票箱輸送へ国連から陸上自衛隊の輸送ヘリコプターの派遣を要請を受けた事を思い出されるのではないでしょうか。あのときは断念したのに、なぜ今回は派遣されるのか、と思われる方がいるかもしれません。この種の大型輸送ヘリコプターは輸送能力も航続距離も飛行性能も大きい分、取得費用も維持費も必要な運用基盤も大きいため、陸上自衛隊のように数十機単位で保有している国は限られているのです。このため、陸上自衛隊へ派遣が要請された訳です。

Img_6340  それでは、スーダンに派遣できなくて、パキスタンに派遣できるのはなぜでしょうか。理由は主なもので三つあります。第一にパキスタンにはアフガニスタンでの軍事作戦に関して必要な運用基盤が米軍により整備されていてこの運用基盤をそのまま利用することが出来るという点。第二にパキスタンはアラビア海に面しており海上自衛隊もインド洋給油支援で寄港した事も多くここを起点に海上自衛隊の輸送艦を展開させて航空機の運用支援に充てることが出来る、という事。第三には既にパキスタン軍と自衛隊との交流の基盤があってパキスタン海軍の艦船が日本を親善訪問した事もあります。

Img_0700  運用基盤の有無というものは非常に大きい訳でして、例えば国際線旅客機をたとえに出すと分かるのですが、海外の空港であっても滑走路だけあり、燃料の供給状態が不明で、故障があった場合の整備基盤が無い空港は着陸料が安くとも利用できないでしょう。米軍や海外での任務を念頭に置いている編成の軍隊では、海外に拠点を構築できるだけの装備や人員を持っているのですけれども、日本は基本的に専守防衛、おおすみ型が整備され、中央即応集団が新編されるまでは日本国内での任務を想定した装備や部隊を海外派遣に充ててきているだけでした。こうした意味から、海上自衛隊の輸送艦による支援を受けられて、米軍の基盤を利用できるパキスタンには派遣は可能ですが、スーダンには難しいのです。

Img_9982  KC767:大型輸送機ハイチ派遣 初の実任務--防衛省、今月下旬検討 ハイチ大地震の復興支援で国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊の装備品などを輸送するため、防衛省が航空自衛隊の空中給油・輸送機「KC767」を8月下旬に派遣する方向で検討していることが分かった。KC767は08年以降に空自小牧基地(愛知県小牧市)に4機配属され、今年4月から飛行訓練を行っているが、実任務は初めてとなる。 防衛省関係者によると、現在主力のC130輸送機は、ハイチまでの飛行の際、太平洋の島伝いに4~5回寄港して5日ほどかかっているのに対し、KC767は航続距離が長く、北米西海岸に1回寄港するだけで1日で到着するという。搭載量も30トンでC130の約6倍となる。

Img_0681  KC767は米ボーイング社の旅客機B767の改良機。中期防衛力整備計画(01~05年度)に基づき配備された。全長48・5メートル、全幅47・7メートル、全高15・8メートルで、航続距離は約7200キロ(30トン積載時)。防衛省幹部は「ハイチのポルトープランス空港が復旧したので使用できるめどが付いた。今後の海外派遣でも活用できるか、他国も注目している」と話す。 ハイチ大地震は今年1月に発生し、日本も2月からPKOに参加。東北方面隊主体の3次隊が今月下旬に相次いで出発する予定で、合わせてKC767も派遣する方向で準備を進めている。【樋岡徹也】毎日新聞 2010年8月7日 東京夕刊http://mainichi.jp/select/world/news/20100807dde035010044000c.html

Img_4036  KC-767は、戦闘機への給油を念頭に導入された機体なのですけれども、ボーイング767貨物機と同等の貨物輸送能力があります。XC-2輸送機やC-17輸送機のようにハッチからそのまま車両や物資を下ろすことは出来ず、空港で航空貨物輸送を行うのと同じ支援基盤は必要なのですが、とにかく遠くまで多くの荷物を輸送できます。しかし、最低でも8機、この種の任務を考えれば16機は必要といえるのですけれども、航空自衛隊には4機しかありません。空中給油機があれば、戦闘機の滞空時間も伸ばすことが出来ますので本土防空にも寄与する装備、こちらも任務と脅威が増えている事なのだし、増勢は検討されるべきでしょう。また、付け加えれば広い日本本土を防衛するために数が必要なヘリコプターについても、増強する必要性は大きいと考えます。

HARUNA

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コメント (14)
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