◆北方機動!東海道本線を往く自衛隊
鉄道関係の記事はあまりWeblog北大路機関を閲覧される方の関心事と合致しないということで予備ブログの第二北大路機関に掲載していたのですが、ご要望がありましたので少し掲載。
6月30日、EF65電気機関車に牽引されて東海道本線を第14旅団の車両を搭載した貨物列車が北海道へ向かいました。協同転地演習は、旅団や師団がどのような交通手段を使ってでも、とにかく大部隊を遠く離れた北海道へ送る、という目的がありますから、当然物凄い輸送力を持つJR貨物の輸送能力にも協力を受けています。
牽引しているのはEF65電気機関車、国鉄輸送能力の強化と客車や貨物の高速化を目指して開発、1965年から308両が生産され、今日でも貨物列車の牽引車として多数が活躍しています。しかし、自衛隊貨物輸送というのは珍しく、通過するホームで注目を集めていました。
日本経済を鉄道の物流面で支えるJR貨物の輸送力は大きく、2009年に発表された数字によれば、機関車保有数732両、貨物電車42両、貨車8804両、コンテナ65474個を保有していて262か所の貨物駅から毎日約600本の貨物列車を運行、年間3308万㌧・221億㌧kmもの貨物を輸送しています。
今回の自衛隊鉄道輸送では、83式地雷敷設装置、資材運搬車、小型ドーザーを輸送していました。昨年は78式戦車回収車を輸送していたので、もしかして来年あたり取り外せるものを全て外して軽量化した74式戦車が、と思ったのですが違いました。戦車はトンネルなどの構造限界から61式戦車以上の大きさの戦車は輸送できないといわれていたのですが、78式が昨年輸送できていたので可能性が生まれているのですが、ね。
小型ドーザーは部隊本部の施設作業小隊等に装備されていて、パワーショベルの機能を備えたドーザー、83式地雷敷設装置は大型トラックや73式装甲車で牽引し毎時300個の対戦車地雷を敷設可能な装備です。搭載しているのはトラ140000型無蓋貨車、鉄鉱石や砂利などを輸送する貨車で、かなり古くなっています。
資材運搬車は、車両が行動できない不整地において施設機材や物資を輸送する車両で、これを輸送するのは長物輸送用チキ7000貨車です。レール輸送用なのですが35㌧まで輸送できるのでかつては61式戦車を、昨年は78式戦車回収車を輸送しました。輸送されている様子をみると、資材運搬車の前後に空間があって、もう一両くらい積めるのでは?、と思ってしまいます。
ちなみにこのチキ7000貨車も相当老朽化しています。老朽化老朽化、と強調したのですが、じつは事情があります。JR貨物の輸送は規格化されたコンテナを輸送するコンテナ輸送と、液体燃料や資材運搬などコンテナに積載できない物資を輸送する車扱輸送の二つに分けられるのですが、輸送はコンテナ輸送が主流で、無蓋貨車や長物貨車という輸送需要そのものが大きく減っているからです。
また、貨物駅にも車両を積載できるような貨物ホームの多くは姿を消して、コンテナクレーン等による積降が主流となっているので、ホームに車両が載りつけてそのまま搭載、ということがやりにくくなっているのです。ちなみに昨年度は78式戦車回収車も日本通運のクレーンでつり上げて搭載したそうで、日数も多くを要したそうです。
加えて60年代までは主要な駐屯地や補給処には鉄道の引き込み線があり、燃料や物資輸送などに用いられていたのですが、今ではほぼすべてが撤去されてしまい、最後まで残った航空基地への燃料輸送もパイプラインが主流となっています。輸送学校では、鉄道輸送の教育は行っているようなのですが、物流の形態と自衛隊の輸送需要が大きく変わっている訳です。
この点、陸上自衛隊としては車両輸送よりも人命救助システムのようなコンテナ化された装備品や物資輸送のコンテナ化を大きく進めて、自衛隊の長距離戦略機動における鉄道の位置づけを再検討してゆく必要もあるのかな、と考えました次第。毎年ながら鉄道愛好家の間では、あの老朽貨車も今年が見納めかもしれない、と言われています。いつまでも古い貨車に頼るのにも限界があるやもしれません。
HARUNA
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