◆F-35か、タイフーンか、F/A-18Eか
時事通信の記事と、少し前ですが産経新聞の記事でF-X選定に動きといいますが、動きが無い事が示されましたので、本日はこの話題を掲載します。
FX候補、F35など3機種に=来年度予算計上は見送り-防衛省 防衛省は13日までに、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)について、米英などが共同開発中のF35、欧州共同開発のユーロファイター、米国のFA18E/Fの3機種に候補を絞り込んだ。同省は、新たな防衛計画大綱や次期中期防衛力整備計画(中期防)を取りまとめる年末を目指し、選定作業を加速させる方針。ただ、年内に結論が出ない事態も想定し、8月末の2011年度予算概算要求段階での調達費計上は見送る考えだ。 FXは老朽化したF4戦闘機の後継機。同省はこれら3機種のほか、米国のF22、F15FX、仏ラファールの計6機種を調査対象に指定し、選定作業を進めてきた。
防衛省は当初、レーダーに捕捉されにくいステルス性能を備えた最新鋭のF22を軸に検討に入ったが、機密保持を理由に米議会が輸出を禁じていることから、最終的に導入を断念した。また、F15FXは、6機種の中では旧世代機に当たることから除外。ラファールも、開発企業などからの積極的な情報提供がなく、候補からはずすことにした。 絞り込んだ3機種のうち、省内では、F22に迫るステルス性能を誇るF35を支持する意見が多い。一方で、開発が遅れており、調達時期が不透明なことや、価格が高額になりそうなのが難点。このため、同機と比べ、性能面では劣るものの、各国で既に多くの運用実績があり、少ない費用で導入できそうなユーロファイターやFA18E/Fを推す声もある。 同省は年末に向け、F35の開発状況や価格、防衛費全体に占める導入費のバランスなどをにらみながら、後継機の絞り込み作業を続ける方針。ただ、概算要求への計上を見送ることから「年内の機種選定にこだわらず、慎重に検討すべきだ」(幹部)との声も根強い。(2010/08/13-16:55)◆http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010081300567&j1
記事ですが、絞り込んだ、という事は既報でF22断念、という内容から進んだものはありませんので、要するに先行して来年度予算に期待取得費用のみを計上する、という方式が採られなくなった、ということが注目すべき点でしょうか。そして先送りするという事は、現時点で入手できない機体が選定候補に挙がっている、すなわちF-35の取得が最有力として考えている、ということが見てとれます。ラファールをどのくらい航空自衛隊が真剣に検討していたのかという事には興味が集まりますけれども、本命はF-35,そしてF-35以外であり得る機体として二機種を提示、という事でしょうか。
F-35ですが、機体のユニットコストは徐々にF-22に迫るものとなっている上に、最高速度マッハ1.6とされているのですけれども、超音速飛行性能が証明されたのは最近、イギリス空軍に今春初号機の納入が成ったというF-35は一見順調な方向に向かっているようにも見えるのですが、しかし同時にイギリス空軍での運用開始が二年間計画の遅延が発表されていて、F-4の後継機として間に合うのか、という一点が問題です。そして、F-35は空中での機動性はもともとF-16と同程度のものが盛り込まれる計画で設計されているのですけれども、しかし、F-22やタイフーンよりは劣るとされていて、どちらかというと戦闘機よりも攻撃機、という印象の機体となっています。ステルス性を活かして敵地奥地へ侵攻して開戦第一撃を加える、という用途には合うのでしょうが、ステルス性を活かして絶対航空優勢確保に用いる航空機、という用途には合わないようで、米空軍の場合はF-22との協同ありきで、考えられているのでは、と。
F35選定に向け調査費 次期主力戦闘機、概算要求に最大10億円 (1/2ページ)2010.8.8 01:30 次期主力戦闘機(FX)の機種選定をめぐり、防衛省は7日、平成23年度予算案の概算要求に初めて調査費を計上する方向で最終調整に入った。米英などが共同開発中のF35ライトニング2の技術情報について、米政府に開示を求める費用として最大で約10億円の計上を想定。21年度に調達を開始する当初予定から大幅に遅れているFX問題は、F35の選定に向け、大きく動き出す。 米国が多国間で共同開発する装備品について、日本が有償軍事援助(FMS)契約で米側に情報開示を求めるのは初めて。ただ、米国以外の国が日本優遇に難色を示す恐れもある。
また、米軍普天間飛行場(沖縄県宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)移設問題で日米同盟がきしむなか、曲折も予想される。 F35は最新鋭の第5世代機。航空自衛隊のF4の後継を決めるFXの候補としては、ほかに米国のFA18E/F、欧州共同開発のユーロファイターが残っているが、ともに第4世代機。レーダーに捕捉されにくいステルス性において第5世代機が格段に優れている。 このため、空自にはF35導入を求める声が強い。共同開発に参加していない韓国が今秋にもF35の情報開示を請求するとされ、日本が出遅れることへの懸念もあり、調査費計上にカジを切った。 年末に改定する防衛力整備の基本方針「防衛計画の大綱」と、来年度から5年間の「中期防衛力整備計画」の検討過程でも、F35を軸に機種選定作業を加速させる。F35の技術情報が開示されれば、ステルス性や装備などを精査し、導入の是非を最終判断する。 ただ、F35の開発は遅れており、導入時期は不透明。それまでの間、国内の戦闘機の生産・技術基盤維持のため、国内に生産ラインが残るF2戦闘機の追加調達も引き続き検討する。http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100808/plc1008080131002-n1.htm
F-35は国際共同開発が行われている第五世代ステルス戦闘機なのですけれども、この航空機が特殊なのは開発計画に参加するか、一定以上の出資を行っていなければこの航空機に関する情報にさえもアクセスできない、というところにあります。これまで航空自衛隊が必要とする航空機があればメーカーが一定の資料を提示してくれるのでしたが、横浜航空宇宙展に展示されるような一定以下の情報以上は、こうした予算計上を行って出資する必要があった訳です。こうした点を見ると、F-35に対する航空自衛隊の関心の高さが垣間見えてくるのですけれども、開発費用増大とユニットコスト高騰を背景にプロジェクトは新しい採用国を求めていて、一方で調達計画を縮小した参加国の機体を日本が買い取るという方式を採るのならば、比較的早期に入手することが出来るかもしれません。
F-2支援戦闘機の生産継続の可能性ですが、F-Xとして新たにF-2を選定するのではなく、次の航空機が実用化されるまでの間の暫定的な調達という形であれば、F-X選定を先延ばししてF-2の生産を続けるという選択肢はあり得る、といえます。もっとも、F-2は日米共同生産ですので、アメリカ側に利点が無ければ継続は難しいでしょうから、F-35調達とF-2生産継続はセット、という事が妥結点でしょう。要撃機として使用するのならばタイフーンが妥当で、どうしてもF-35,といいますかF-22を含めてステルス機を必要とするのならば、F-4後継機にタイフーンを充てて二個飛行隊所要を充当して、その後に耐用年数が待っているF-15初期の機体をF-35で置き換える、という選択肢もあり得るのでは、と思ったりもします。タイフーンにかんしては運用基盤が日本周辺に無いので、相当この点に留意して導入する必要があるので、一概にこれだ、ということはできないのですが、しかし、F-35のようなリスクは抱えていない訳です。F/A-18Eは、空母艦載機ですし、F-2と比べた場合、特にF-2はまだのびしろがありますので、比べてしまいますとF/A-18Eにそこまで高性能、という印象はありません。なんにしても、そろそろ決めなければならないF-X選定ですが、選定が遅れることでF-2の生産継続に繋がるのならば、これも選択肢に入るのかな、と思ったりします。
HARUNA
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