北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:戦後から震災後・・・防衛大綱、”国土の防衛大綱”から”国家の防衛大綱”の必要へ

2011-08-13 22:31:57 | 北大路機関特別企画

■自衛隊活動範囲のグローバル化に不適合

 VAIO-Pで作成している記事なのですが、液晶の小ささはどうにもならずONKYOのタブレットPC,携帯性と画面の見やすさを考えると携行用PCの位置づけを新しく考える必要が出てくるのかな、と電気店を散策したのち印象。

Img_0221  本日も終戦から震災後へ、という記事です。コメント欄でインドとの同盟関係の模索が必要なのではないか、という声も頂いているのですけれども、一歩前に進んだお話、それは防衛大綱という概念について。まず、もともと防衛計画の大綱というものは現在では防衛力の上限、という財務省の防衛費抑制の方便に用いられているのですけれども、実際には日本を防衛する上で必要な防衛力の水準、部隊数や装備定数などのを示していたものですから、財務省が言うところの整備が許される防衛力の上限ではなく防衛省の観念では最低限これだけが必要という下限を示していた、ということが忘れられているように思います。

Img_3576  しかしながら、これは防衛計画の大綱という概念が生まれた1970年代の発想でして、その時代にはヴェトナム戦争の混乱が残る頃ですからカンボジアに国連平和維持活動として自衛隊が派遣される、ということはもちろん、当時の中東戦争と消耗戦争の時代に自衛隊がイラクに派遣される、ということも考えられていなかったわけです。自衛隊は憲法九条に基づく平和主義と専守防衛を念頭に編成と装備体系を考えてきましたので、国際平和維持活動への自衛隊参加の増大を以て海外派遣に必要な第一次派遣部隊を迅速に編成するべく直轄部隊として中央即応集団を編成しました。

Img_7857  日本の防衛力は特に日本本土へ侵攻しようとする限り極めて難しいものがあります、絶対に海を渡らなければ日本へ侵攻することができませんが、上陸船団は潜水艦や護衛艦、航空機と地対艦ミサイルにより徹底的にたたかれ、上陸したとしても戦車部隊と対戦車ヘリコプター部隊、長距離砲と各種誘導弾の洗礼を受け国土は山間部と盆地と限られた平野に急流という野戦築城に適した地皺に富んだ攻めにくい地形、上記上陸阻止部隊は補給線無力化にも威力を発揮しますので上陸部隊は干上がり、変な話革命などを先導して内側から崩壊させない限りこの国へは攻められません。

Img_0477 一方でこれは外征の難しさも端的に示していまして、海外へ自衛隊を展開させ、その任務を継続させるに十分な後方支援能力、これらを包括した戦力投射能力を考えますと簡単ではないということが逆説的にみえてきます。また、日本が関心を持たなければならない地域というと、非常に距離があり、例えば機械化大隊のような小回りの利く部隊や輸送艦、また海外での作戦遂行能力を担保できるだけの航空輸送能力というものを整備する必要が出てきます。こうした編成は、特にコマ割りという概念から陸自の師団ねお旅団化しては、という声があるのですけれども、海外での運用を念頭に必要性があるという意味で根本的に異なる意味を持ちます。

Img_2711  これは、日本を防衛するうえで必要な水準、財務省的には上限ということですけれども、上限をもとに下限を定めていない、いわば負達成の水準もある中で、専守防衛を超えた任務を求められた場合、この達成が非常に難しくなってしまいます。そこで、防衛大綱には日本国土の防衛だけではなく日本社会や日本経済の水準や活動維持のための必要な防衛力を整備する必要がある、そういう概念のもとで自衛隊の装備定数や部隊の在り方、ということを考えてゆけるような、いわば防衛大綱に対する施行の抜本的変革が必要なのではないでしょうか。

Img_6625   たとえば戦闘機定数、すべて要撃飛行隊という運用が課せられているのですが、将来的に例えば日本に死活的重要性のある地域に一個飛行隊を常時抽出する、という政治的要請があった場合、現在の防衛大綱では戦闘機定数が260機なのですが対応できるでしょうか、輸送機と空中給油機を二ケタ台半ばに抜本増強すればそれも可能でしょうが、専守防衛をもとに考えている防衛大綱のもとではトン当たりの輸送キロメートルの計算で整備計画がはじかれてしまうことは必至ですから、要求そのものを考え直す必要が出てくるわけです。

Img_0299  また先日、国連の播事務総長が日本を訪問した際、北沢防衛大臣に対してスーダンPKO任務へ自衛隊の輸送部隊や施設部隊などを派遣するよう打診しましたが、数名の司令部要員を派遣するのが限度である、として大臣は難色を示しています。陸上自衛隊の人員規模はイギリス陸軍をはじめ欧州の多くの陸軍よりも規模が大きいですから可能なのではないか、という打診なのでしょうけれども、専守防衛に基づく管区を持つ部隊を動かす事が出来ないという日本の国情に鑑みればもともと受け入れは難しく、独立した機動運用部隊が多数編成されていなければ不可能、ということがよくわかります。

Img_5922  戦後という平和主義第一の国是であっても対応できた時代が、震災後という原子力事故と地震多発国という現実を受け入れることでその維持が困難になる以上、国民の生命と財産を付託された政府は、結果的にこれらが守りきれるのであれば厳しい判断を迫られることも多くなってゆくのでしょう、そういう趣旨の記事を掲載してまいりました。そこで、防衛計画の大綱も、国土防衛という日本列島守備隊的な鎖国時代の防衛計画から一歩進んだ、国家の防衛計画へ消化する時が来ている、そう考えるわけです。

Img_0068  たとえば危険な地域2箇所に対して一個連隊戦闘団もしくは機械化大隊を展開しこれを維持させるだけの部隊編成と後方支援能力、本土周辺とインド洋に一個護衛隊を遊弋させるだけの作戦単位、一個航空団を基本としたが位置での航空優勢確保や航空阻止任務を本土防衛とともに同時で達成できるだけの航空部隊、こういうものを専守防衛とともに両立させられるだけの防衛力を、国土の防衛大綱ではなく国家の防衛大綱として考えてゆく必要があるのではないでしょうか。またそうしなくては、自衛隊の活動範囲のグローバル化には対応できません。

Img_0440 そうすることで、世界の安定が結果的に日本の安定に機yするという形を実践することが可能となり防衛力が日本の専有物ではなく国際公共財としての地位を担うことも同時に可能となるでしょう。これらの動きに対しては、日本に対して敵対的な政策をとる国々からは抗議を受け、巧妙に世界的世論として抗議がなされているような工作が行われることもあるでしょうが、総合的には世界へ貢献しよう、それが国益のためであり同時に国際公益にも利することである、という意味で賛同する国の方が多いはずです。

Img_3029  冒頭にインドとの防衛協力な同盟関係に関する話が寄せられた、というところを紹介したのですが、それ以前に遠い同盟国を得ようとするのならば、実際に同盟関係としてどこまでの事が出来るのか、そういう視点を持たなければならないように考えます。日米同盟はそうした意味で相互理解がこうした局面の討議に反映されることを避け、建前と本音の世界での相互理解がおこなえているのですが、これがほかの国との場合ではそうはいきません、国家の防衛という防衛政策の開国が求められる、という構図が浮かびます。

Img_2875  冒頭の冒頭、現有の小型ノートPCの後継としてより高性能なタブレット型PCの運用上の要求からの模索、しかし性能てきに時期尚早ではないか、現在のカメラバックにより輸送はどの程度可能なのか、という装備体系の適合性という諸問題から現在も検討中です、しかし、必要とあれば思い切って切り替えることも考えています、ややミクロ的論理とマクロ的論理の飛躍が過ぎるのですけれども、防衛計画も運用上の必要があるのならば、大綱に関する考え方そのものを大きく変える必要はあります、それがなければ単なる教条主義、機械的官僚主義に陥り国が硬直化し動脈硬化に陥ってしまいますから、ね。それが震災後という新しい時代、そう、今なのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする