北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:戦後から震災後・・・戦後型平和主義が試される多極化時代と脅威の多方面化

2011-08-10 21:54:29 | 北大路機関特別企画

脅威は北方限定から全周囲と遠隔地へ

 原子力災害以降、エネルギー政策転換を強いられる日本において世界とのつながりと世界への関与を行わなければ飢えと貧困の連鎖にこの国が取り込まれる、という内容を掲載しました。これが”戦後日本型”平和主義との両立が難しい。

Img_7517  中国海軍の中古空母ワリャーグ公試、台風で延期されていたものが本日実施されたとの報道がありました。中国の空母、現在はまだ艦載機がどの程度の状態で発信できるか未知数ですし、一隻だけという状況ですので軍事的脅威は大したものでは現在のところないのですが、政治的な脅威は非常に大きなものがあります。

Img_62471 即ち太平洋方面からの航空母艦により脅威が想定される事となり、浜松基地か小牧基地、そして硫黄島基地か父島基地に戦闘機一個飛行隊を基幹とする航空隊を配置しなければ、この海域からの恫喝に対して国民が自らの権利と財産を守るための判断を行う事が出来ない状態に陥る可能性があります。

Img_0141 また、沖縄県島嶼部を巡る日中の摩擦は中比中越間の摩擦とともに解決の糸口が全く見えず、多国間交渉か二国間交渉化の枠組さえも定まっていないとの現状ですから、抑止力の維持により武力紛争への展開を抑制しつつ外交による政治的妥結の手段を模索する時間稼ぎを行うほかない状況です。

Img_4334 加えて脱原発を叫ぶ以上、中東安全保障への関与を筆頭に石油や天然ガスの産出地域の安定維持への軍事的努力を行う必要、そして広大で重要性が第二次大戦以来の水準に達しているシーレーンの防衛を行う必要があり、脅威と任務は今後増大するばかりという状況。

Img_6993  東西冷戦下においては、日本は軍事力を強化して極東地域における対ソ防衛の一翼を担うよりは、元々ソ連海軍の勢力は米海軍の太平洋における戦力と比較した場合決して大きくはありませんでしたので、それよりは米ドル体制を支える国際金融における地位を担う事が望まれていました。

Img_1675  加えて西側経済の安定に寄与する最先端工業生産能力を活かした経済大国としての地位を担う事の方が大きな意味があった訳です。こうした中で経済的繁栄を築きながらも防衛力を最小限度に収めることにより国土の防衛とを両立させることが出来た背景には、日本と周辺国との国境は海を隔てているというものがありました。

Img_2286  国境が海洋でしたから、一種の外交的鎖国政策というような平和主義を第一に掲げ、険某渦巻く国際政治の軍事における分野から一定の距離を置き、またこの地域での軍事同盟は日米同盟のようなアメリカを基軸としたものだけでしたので、日本に求められている役割を果たす事が出来た訳です。

Img_9317  これは同時に北東アジア地域が米ソの太平洋を隔てて向き合う最前線に位置していた事による緊張が、結局のところ東西陣営という一方に与する事で自らの意思により大規模武力紛争を起こす事が抑制されている状況下において意味がありました、ジョンギャディス著書の”ロングピース”なんかはこのあたりを詳しく記載していたように記憶します。

Img_8901  この結果、タガが外れたという表現が良くなされますが脅威対象が多極化してしまった訳です。例えば1950年代の国共内戦、中国と台湾の戦闘が1950年代に日本へ波及する可能性は低かったですし、中国に戦闘機を供給していたソ連も台湾に軍事援助を行っていたアメリカも拡大を望んでいませんでしたので、過剰な戦力の供給が行われる事も無く日本のシーレーンが危険に曝される可能性は極めて限られていた訳です。

Img_7271 しかし、中国は今や独自の判断で武力紛争を行う事が可能でありますから、現在、台湾海峡有事、という状況となった際には上記のような米ソの黙示的合意に基づく紛争の局限化は望まれず、中国が目的を達成するまで、これは単に台湾の国家存続が達成されている限り、という事にもなるのですけれども、日本に対し影響が及ぶ状況がかんがえられる現実があります。

Img_6764  この為、アメリカの沖縄を中心とした在日米軍の抑止力により紛争を抑制する必要が出ている訳です。それだけではなく、東西冷戦下での管理された限定戦争、いわゆる代理戦争の時代と比較して今日では東西冷戦終結後の民族紛争の頻発こそ一段落したものの、これら構造のもとで国際テロリズムネットワークがその必要から形成されました。

Img_66081  このネットワークが世界の秩序と安定に対する重大な脅威となったことから、冷戦時代以上の範囲での軍事行動を介した秩序維持の試みが求められ、米軍再編として世界の重要地域に展開していた米軍を米本土を拠点として戦略拠点を中継して緊急展開させる機動性重視の編成に転換しました。

Img_1432 これは相対的に抑止力へ影響を及ぼすことになり、対照的に日本に近い中国の軍事力拡大が抑止構造の破綻へ均衡を崩しつつある状況となっています。その具体的結果としては、冷戦時代、ソ連に最も近い北海道に陸上自衛隊の主力を駐屯させていた編成から、ロシア軍の再建に伴い北方の防衛には重要性が残りつつも南西諸島を中心とした西方地域の防衛を真剣に考える必要が出てきているという形です。

Img_5163 また、朝鮮半島有事への関心は自衛隊創設以来の課題ではありますが、米ソの支援という概念が霧散した今日、経済力と機械化に重点を置いている等の面では現時点で韓国の軍事力は優位であることは確かではあるもののこのちいきの防衛も重要性があります。そして防災を考える上での基盤的防衛力。

Img_3622  北方防衛・本土防衛・西方防衛・南西防衛・環太平洋シーレーン防衛・インド洋シーレーン防衛・国際平和維持、列挙すると震災後に必要な防衛力はこのようなところでしょうか。戦後だけで見れば北方防衛と太平洋シーレーン防衛、そして西方防衛の準備だけを考えればよかったのですから大きな変化です。

Img_7331_1 北方防衛へは現在の防衛力を維持、西方防衛にも現在の防衛力を維持、本土防衛には太平洋正面からの脅威に対処する航空戦力の充実が必要、南西諸島防衛にも空中機動部隊と沿岸戦能力の抜本的向上が必要、環太平洋シーレーン防衛には現在の防衛力の水準を維持しつつ近代化が必要。

Img_4251 インド洋シーレーン防衛には護衛艦隊の戦力投射能力保持が必要、国際平和活動には現在の軽装備部隊に代えて機動打撃部隊の直轄部隊としての編成が必要。と、まあ列挙してみますとこういうところでしょうか。加えて情報優位獲得と汎地球監視網、弾道ミサイル防衛体制の確立という任務にも忘れてはなりません。

Img_9409  ここまで脅威が拡散している、問う事は平和政策を行いつつも平和が行こうというべき脅威を創出させないという軍備管理や集団安全保障体制の構築という果たすべき義務を放棄してきた結果でもあるのですが、結論として上記脅威に備えつつも平和主義を対外的に喧伝することは、脱原発を唱えつつ原発輸出を掲げる現首相と同じほど矛盾しているものと言えましょう。

Img_7019 すると、日本は敢えて国民の繁栄と生存を忌避するのでなければ、もっともこの選択自体国際公序に反しているのですが、戦後型の平和主義を掲げつつ防衛力を増強させる必要に見舞われる事になり、これでは逆に不信感を招く事にもなりかねません。

Img_7815 こうした意味を見ますと戦後における平和主義という国是、これも諸国の友好と秩序の維持を目的とした平和維持ではなく軍事的な対外影響を根本から否定し非武装を理想とする平和主義、という一種奇妙な平和主義というものは、実行すれば経済大国日本が傾く事により結果として世界の不安定を招き、世界が日本へ求めていることからも忌避している、ということになるでしょう。

Img_9749  すると、これは戦後型平和主義の根本となっている基本法、つまり憲法についても改正とはいかずとも、何らかの措置をとる必要が無いのか、実際に行うのは十年後でいいですから、考えるべきなのでは、と思う訳です。無論、日本型の建て前と本音として現状維持という選択肢でも結構、しかし、外からどう見られるか、国際信義というものも含め個々人の時間を割いて考える必要があるように思う訳です。そういうのも戦後という時代から震災後という時代に移行した、という事は戦後が他平和主義の再検討が必要になる、そういうものだろうと考えるからです。

Img_5733  さて、ここからは余談。ここ十日間分の記事の文字数が35693字、そのうち災害派遣記事引用文が10838字ですから実質かいている文字数は25000、一ヶ月で7万5000字弱。Weblog北大路機関、誤字脱字が多いとの御指摘を戴いたのですが、いずれHP“防衛フォーラム”を稼働させた後に現在記載した記事から抽出した掲載に際して校正を行います。何しろWeblog北大路機関は2130~2200から作成開始、情報収集と事実関係の検証で30分、写真の選定と加工とを完了までに30分、そして本文作成、2400時を過ぎてしまえばその日の記事掲載が出来なかった事になりますから、本文作成に用いられる時間は精々60分から最大で90分、校閲する時間がどうしても無いのです。北大路機関で校閲部でもあれば、また出来るのでしょうけれども、実質一人で運営していますので、第二北大路機関の記事作成も必要ですから、これは無理な話です。

Img_57_27 それくらい無理な事は無いのでは、と思われるかもしれませんが、難しいのは事実です。なにせ、一ヶ月間に第二北大路機関の通常運営時には50の記事を作成していましたので、写真も自分で撮影して、そして調べ調整し掲載、ううむ、もう一人居れば別なのですが、これ、どうやったらいいのですかね、一ヶ月にまともな記事を2~3、というほうが良いのではないか、という声も過去にはあったんですけれども、毎日更新、というところがWeblog北大路機関の長所、という声もありますから一概には・・・。この点、第二北大路機関のほうは誤字脱字が少ない、その分文章が少ないのですが、そちらをWeblog北大路機関の代わりにご覧いただければ、とも思うのですが、どうでしょうか、ね。

Img_5_7426 ううむ、他のWeblogは殆ど見ませんので、行進を定期的に高密度で行うコツは計り知れないのですけれども、なにかあるのでしょうか。当方がチェックしているのはちょっと更新頻度の少ない下総ミリタリースクエア様、とんぺいの機械博物館掲示板、最近は舞鶴でお会いできなかったJ NAVY WORLD様掲示板、最近更新が無いリアリズムと防衛を学ぶ様、あとはコメント欄から幾度かリンク戴きました週刊オブイェクト様、稀に拝見するのですが、最盛期にかなりの更新頻度と文量を誇っておられましたが、あれを年単位で毎日継続する秘訣、というのはどういうものなのかな、とこれが非常に興味ある訳です。こうすれば毎日2000文字の記事を10枚の写真とともに誤字脱字無しで60分で作成出来る!、というような方法がありましたら、こちらも恐縮ですがご教授いただけると幸いです。

北大路機関:はるな

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コメント (4)
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