◆普通科部隊普及装甲車に必要な要件
大量配備し大量運用する、つまり車体性能を過剰に求め過ぎてはならないことを示しますが、過度に低すぎたり、低性能低価格を妥協し続けると整備性が悪いものとなってしまいかねません。
四輪駆動機動装甲車,具体的にはどのような装甲車として仕上げるべきなのでしょうか。戦車の減勢に対する普通科部隊の動的運用を目指すものですので、軽量安価にまとめる、という大前提は揺るぎませんが、例えば安価にまとめるべく安直に既存トラックの車軸をそのまま利用し車高が高いものに纏めてしまえば、機動戦闘車や軽装甲機動車との連携が行えなくなり、不整地突破能力が低すぎれば演習場内の戦車道や幹線道を使用することが出来なくなり、結局演習場内は高機動車を倉庫から引っ張り出して使わなければならなくなります。演習場を走ってみますと隣は谷でもガードレールなどなく、意外な登攀道路、もちろん未舗装ですが、この連続です。思い切って四輪駆動機動装甲車は駐屯地から演習場まで移動するもので、そのあとは徒歩だ、という選択肢はナンセンスで、求めるべき性能は求めてゆくべきです。
車両は無理に制式化するのではなく、部隊使用認可を行い可能な限り民生部品を応用する軽装甲機動車方式で生産します。車体は、全幅2.5m以内、現在の道交法や道路運送車両法に配慮した構造とします。こういいますのも、恒常的に運用しなければならない車両ですので、防衛出動命令が発令されていない場合での都市部駐屯地からの訓練移動を考えなければなりません。車幅が大きすぎますと中央線をはみ出してしまうため、訓練移動に際し、その都度所轄警察署長の許可を受け、一車線道路では対向車に衝突しないよう交通規制を掛けねばならないわけです。平時から運用するために、大きすぎる車体が使い勝手が悪く、この点に対する配慮は必要でしょう。
車内は小銃班10名が携帯火器とともに収容できる容積が求められます。携帯火器とともに、背嚢などを積載することが求められ、災害派遣を念頭に置いた場合、トレーラとして物資を牽引する能力も求められます。座席は天井部から吊下げ方式を採用し地雷などの衝撃から乗員を防護する構造を採用し、必要であれば取り外して車内をフラットな状態とし、救急車用途では担架を、また誘導弾などの輸送に用いるなど、各種装備品の搭載を念頭とするべきでしょう。全部に操縦区画を置き、後部に人員区画を置きますが、上部にハッチを配置し、必要ならば乗車射撃を展開できる構造でなければなりません。また汎用性を考えれば、降車扉は側面ではなく後部に配置し、大型機材の搬出入に対応できる構造を採るべきです。また、情報RMAに対応するよう、車内には普通科隊員用の充電用コンセント等を配置し、車両運用時には使用できるようすべきです。
エンジンは、3t半トラック、旧称73式大型トラック用エンジンを転用することが望ましいと考えます。いすゞ直列6気筒6UZディーゼルエンジン、3t半トラックに搭載されているものですが、陸上自衛隊全体で最も使用されているエンジンの一つであり、師団にも派生型を含め百両単位で配備されています。出力は285馬力で、フランスのVAB軽装甲車が220馬力、米軍のV-150コマンドー軽装甲車が260馬力ですから十分な出力と言えるでしょう。車輪は現在の整備補給体系に合致させるよう、軽装甲機動車のL302LP275/70R22か重装輪回収車の14.00R20、NBC偵察車の365/80R20、何れかにまとめるべき、と、まあこののように考えるしだい。
整備性と運転性能は、理想としては3t半トラックの教育を受けた隊員であれば操縦することが出来、長距離機動時には操縦者を交代できるようにすべきですし、整備性も3t半トラックを整備する能力があれば整備できる水準とすべきです。もちろん操縦性について、戦闘操縦と高速道路の高速走行は別物ですので戦闘操縦まで広範に求めることは妥当ではありませんが、基本的な操縦が容易であり、加えて第一線の環境下において限られた整備の下でも稼働率を維持できる程度のものが求められます。機動戦から防御戦闘まで求められるのですから、燃料や弾薬などの戦闘継続に必要な物資はヘリコプターにより空輸し戦闘支援を行えばいいのですが、車両を後方の整備拠点まで下げなければならない状況を避ける設計、懸架装置や火器管制装置は常識的な範囲内とするべきです。
打撃力は、重機関銃を搭載するか否か、搭載しない場合は乗車と共に取り外すMINIMIだけとするのかというほどに固有火器の有無を真剣に考えます。基本は降車戦闘を行う装甲車であって、軽装甲機動車のように乗車戦闘を基本と考えるわけではありませんので、降車戦闘の要員を装甲車から火力支援するよう機関銃を搭載するのか、降車戦闘展開時には装甲車は素早く後方に展開し、降車戦闘要員が装甲車の車体により暴露することを防ぐよう運用するのか、この判断が難しいところですが、少なくとも20mm機関砲などは装備するべきではありませんし、火器管制装置は車体価格を大きくしすぎます。後日装備とする場合は別ですが、数を揃えねばならないのだから、過度な装備は持つべきではないでしょう。
12.7mm重機関銃ですが、普通科中隊では中隊本部に装備されている機関銃で、軽装甲車程度に対して威力を発揮し、航空機に対する自衛戦闘にも活躍するものです。取得費用も小銃と比べれば安いものではありません、ただ、当方としては搭載すべきと考えます。この根拠としましては、軽装甲機動車には搭載されていない装備ではあるものの、重機関銃は、降車戦闘を軽装甲機動車が展開する際には操縦手を含め全要員が車両を残し、降車してしまいます。しかし、四輪駆動機動装甲車は降車戦闘に際し、車長と操縦手、少なくとも操縦手は車内に残ります。従って、機銃を操作可能な要員は車内に残るわけですので、重機関銃を搭載するべきでしょう。MINIMIではなく重機関銃とする背景は、MINIMIでは遠距離支援が出来ないためです。このほか、車載装備として車内に110mm個人対戦車弾を二発程度固定する器具は欲しいところ。
機動力は100km/h程度、登攀力は60‰、転覆限界は35‰、求められるのはこの程度です。四輪駆動ですので、高機動車程度に転覆限界は45‰あれば理想ではあるのですが、装輪装甲車でここまで高いものを求めますと、懸架装置に相当な無理が生じてしまいますし、これは後続が複雑化し取得費用が高くなります。このため、窪地に進入した際に運転は少しでも無理をした場合横転する可能性が出てきますので、車内の座席と装備固定具などはしっかりしたものでなければなりませんし、戦闘操縦は充分な訓練を行わねば横転してしまいます、しかし、これ以上強化しては配備数に響いてしまう、ということ。
車高は2.25m、74式戦車の車高と同程度以内とします。車高が低すぎますと、地雷防御などに不利な点が生じる、とされますが、我が国が必要とする防衛出動では我が方が地雷を散布敷設するものであって、相手の地雷敷設まで初動を遅らせてはなりません。こうした中で、無理に車高を地雷防御に重点を置き、高いものとしては遠方から対戦車誘導弾や戦車砲の標的となりかねません。可能ならば軽装甲機動車の車高1.80m程度に抑えたいところですが、無理をし過ぎますと車内容積が確保できなくなり、えっか全長が大きくなってしまいます。すると四輪駆動では超堤能力に限界が生じてしまうため、妥協の産物が74式戦車の車高2.25m、としました。
この機動力は、部隊防御力にも関係してきます。トラックでの自動車化部隊のように、不整地突破能力と防御力が低すぎた場合、普通科隊員は競合地域では装甲車に依存し機動することが出来るのですが、第一線で起動不能となるような状態となれば車体毎小銃班が攻撃され全滅する可能性が出てきますので、第一線後方数kmの位置で装甲車から降車展開し、徒歩機動に写らねばならなくなります。我が国の装甲車は満州の原野シベリアの大平原、中東の砂漠地帯や豪州の大平原で戦う訳ではありませんので展開能力よりは一定の不整地突破能力と協同する部隊を暴露しない程度の大きさが求められるのです。
防御力ですが、正面部分を機関砲弾に耐え、側面に軽機関銃を至近距離で射撃された場合に耐え、車体下部は対人地雷に耐え、一定以下の対戦車地雷には乗車区画に被害が及ばない程度、砲弾落下に対して155mm級砲弾の近距離での爆発に乗員区画が破壊されない程度、NATO防弾規格STANAG 4569に換算した場合、2から3、といった防御力が求められます。これ以下では車列が軽機関銃で射撃された程度や簡易爆発物IEDで容易に爆破されてしまい、装甲車として使い物になりません。過激派の火炎瓶や手製爆弾に対抗する警察用車両ではなく、第一線での戦闘に用いる装甲車という本分を忘れてはなりません。
国際貢献任務等で考慮せねばならない、RPG等の攻撃に対処するために、防御力として追加装備に鳥籠状のスラッド装甲を追加できるよう、固定器具基部を車体に配置する必要は、在ると考えます。中空装甲を常備しても良いのですが、それでは車幅が大きくなりすぎます。また、発煙弾発射装置は対戦車ミサイルからの防御に必要な装備ですし、NBC防御能力も原子力事故などの事案に際し、避難民輸送を行う上では必要です、ただ、どちらも取得費用を上昇させてしまいますので、後日装備扱いとし、NBC防御の場合だけは車体を水密構造として外気侵入を防げる構造とし、更にハッチ部分等に応急的なNBC防御用空調装置を取り付ける事で対応できるよう、後日装備を迅速に配置できるような構造は必要でしょう。
取得費用は以上を踏まえたうえで、約2000両を中期防二期の10年から三期の15年で調達するとし、一両当たり初期生産分で4000万円程度、量産が軌道に乗った際には3500万円程度、10式戦車一両で20両の四輪駆動機動装甲車が製造できるような水準で生産されなければなりません。他方で、防衛大綱の機動運用を念頭とする文言に基づき整備するものであると位置づけ、安易な少量生産では終わらないことを財務当局と防衛産業に提示すると共に、中期防衛力整備計画に全普通科部隊への配備を念頭とした車両を装備してゆく、と明示し、第一線で使用に耐える性能に纏め、且つ活用できるように開発されるべきだ、とも考えます。
全体的には四輪駆動の装甲車ということで、他に海外製の取得性が高い車両がある、という批判があるでしょうし、ただ各国の耐爆車両が軒並み100万ドルを超える中では若干懐疑的で張りますが、また、基本設計について柔軟性を活かせる部分があまりに少なすぎるわけですのでどのように開発しても凡庸な車両として、かつて軽装甲機動車も同様の批判に、特に開発当時曝されましたが、指摘されることもあるでしょう。大きすぎれば他の装備と協同できないと批判され、小さすぎれば汎用性に欠けるとされ、どの大きさで開発したとしても大きすぎるか小さすぎるという批判は可能なわけではあります。ただ、贅沢に通常の装甲車を潤沢にそろえる予算も、それらを運用し続けるだけの基盤も現実的ではありません、四輪駆動機動装甲車はこうした中の苦肉の車両というものになるということです。
大量配備し大量運用する、つまり車体性能を過剰に求め過ぎてはならないことを示しますが、過度に低すぎたり、低性能低価格を妥協し続けると整備性が悪いものとなってしまいかねません。
四輪駆動機動装甲車,具体的にはどのような装甲車として仕上げるべきなのでしょうか。戦車の減勢に対する普通科部隊の動的運用を目指すものですので、軽量安価にまとめる、という大前提は揺るぎませんが、例えば安価にまとめるべく安直に既存トラックの車軸をそのまま利用し車高が高いものに纏めてしまえば、機動戦闘車や軽装甲機動車との連携が行えなくなり、不整地突破能力が低すぎれば演習場内の戦車道や幹線道を使用することが出来なくなり、結局演習場内は高機動車を倉庫から引っ張り出して使わなければならなくなります。演習場を走ってみますと隣は谷でもガードレールなどなく、意外な登攀道路、もちろん未舗装ですが、この連続です。思い切って四輪駆動機動装甲車は駐屯地から演習場まで移動するもので、そのあとは徒歩だ、という選択肢はナンセンスで、求めるべき性能は求めてゆくべきです。
車両は無理に制式化するのではなく、部隊使用認可を行い可能な限り民生部品を応用する軽装甲機動車方式で生産します。車体は、全幅2.5m以内、現在の道交法や道路運送車両法に配慮した構造とします。こういいますのも、恒常的に運用しなければならない車両ですので、防衛出動命令が発令されていない場合での都市部駐屯地からの訓練移動を考えなければなりません。車幅が大きすぎますと中央線をはみ出してしまうため、訓練移動に際し、その都度所轄警察署長の許可を受け、一車線道路では対向車に衝突しないよう交通規制を掛けねばならないわけです。平時から運用するために、大きすぎる車体が使い勝手が悪く、この点に対する配慮は必要でしょう。
車内は小銃班10名が携帯火器とともに収容できる容積が求められます。携帯火器とともに、背嚢などを積載することが求められ、災害派遣を念頭に置いた場合、トレーラとして物資を牽引する能力も求められます。座席は天井部から吊下げ方式を採用し地雷などの衝撃から乗員を防護する構造を採用し、必要であれば取り外して車内をフラットな状態とし、救急車用途では担架を、また誘導弾などの輸送に用いるなど、各種装備品の搭載を念頭とするべきでしょう。全部に操縦区画を置き、後部に人員区画を置きますが、上部にハッチを配置し、必要ならば乗車射撃を展開できる構造でなければなりません。また汎用性を考えれば、降車扉は側面ではなく後部に配置し、大型機材の搬出入に対応できる構造を採るべきです。また、情報RMAに対応するよう、車内には普通科隊員用の充電用コンセント等を配置し、車両運用時には使用できるようすべきです。
エンジンは、3t半トラック、旧称73式大型トラック用エンジンを転用することが望ましいと考えます。いすゞ直列6気筒6UZディーゼルエンジン、3t半トラックに搭載されているものですが、陸上自衛隊全体で最も使用されているエンジンの一つであり、師団にも派生型を含め百両単位で配備されています。出力は285馬力で、フランスのVAB軽装甲車が220馬力、米軍のV-150コマンドー軽装甲車が260馬力ですから十分な出力と言えるでしょう。車輪は現在の整備補給体系に合致させるよう、軽装甲機動車のL302LP275/70R22か重装輪回収車の14.00R20、NBC偵察車の365/80R20、何れかにまとめるべき、と、まあこののように考えるしだい。
整備性と運転性能は、理想としては3t半トラックの教育を受けた隊員であれば操縦することが出来、長距離機動時には操縦者を交代できるようにすべきですし、整備性も3t半トラックを整備する能力があれば整備できる水準とすべきです。もちろん操縦性について、戦闘操縦と高速道路の高速走行は別物ですので戦闘操縦まで広範に求めることは妥当ではありませんが、基本的な操縦が容易であり、加えて第一線の環境下において限られた整備の下でも稼働率を維持できる程度のものが求められます。機動戦から防御戦闘まで求められるのですから、燃料や弾薬などの戦闘継続に必要な物資はヘリコプターにより空輸し戦闘支援を行えばいいのですが、車両を後方の整備拠点まで下げなければならない状況を避ける設計、懸架装置や火器管制装置は常識的な範囲内とするべきです。
打撃力は、重機関銃を搭載するか否か、搭載しない場合は乗車と共に取り外すMINIMIだけとするのかというほどに固有火器の有無を真剣に考えます。基本は降車戦闘を行う装甲車であって、軽装甲機動車のように乗車戦闘を基本と考えるわけではありませんので、降車戦闘の要員を装甲車から火力支援するよう機関銃を搭載するのか、降車戦闘展開時には装甲車は素早く後方に展開し、降車戦闘要員が装甲車の車体により暴露することを防ぐよう運用するのか、この判断が難しいところですが、少なくとも20mm機関砲などは装備するべきではありませんし、火器管制装置は車体価格を大きくしすぎます。後日装備とする場合は別ですが、数を揃えねばならないのだから、過度な装備は持つべきではないでしょう。
12.7mm重機関銃ですが、普通科中隊では中隊本部に装備されている機関銃で、軽装甲車程度に対して威力を発揮し、航空機に対する自衛戦闘にも活躍するものです。取得費用も小銃と比べれば安いものではありません、ただ、当方としては搭載すべきと考えます。この根拠としましては、軽装甲機動車には搭載されていない装備ではあるものの、重機関銃は、降車戦闘を軽装甲機動車が展開する際には操縦手を含め全要員が車両を残し、降車してしまいます。しかし、四輪駆動機動装甲車は降車戦闘に際し、車長と操縦手、少なくとも操縦手は車内に残ります。従って、機銃を操作可能な要員は車内に残るわけですので、重機関銃を搭載するべきでしょう。MINIMIではなく重機関銃とする背景は、MINIMIでは遠距離支援が出来ないためです。このほか、車載装備として車内に110mm個人対戦車弾を二発程度固定する器具は欲しいところ。
機動力は100km/h程度、登攀力は60‰、転覆限界は35‰、求められるのはこの程度です。四輪駆動ですので、高機動車程度に転覆限界は45‰あれば理想ではあるのですが、装輪装甲車でここまで高いものを求めますと、懸架装置に相当な無理が生じてしまいますし、これは後続が複雑化し取得費用が高くなります。このため、窪地に進入した際に運転は少しでも無理をした場合横転する可能性が出てきますので、車内の座席と装備固定具などはしっかりしたものでなければなりませんし、戦闘操縦は充分な訓練を行わねば横転してしまいます、しかし、これ以上強化しては配備数に響いてしまう、ということ。
車高は2.25m、74式戦車の車高と同程度以内とします。車高が低すぎますと、地雷防御などに不利な点が生じる、とされますが、我が国が必要とする防衛出動では我が方が地雷を散布敷設するものであって、相手の地雷敷設まで初動を遅らせてはなりません。こうした中で、無理に車高を地雷防御に重点を置き、高いものとしては遠方から対戦車誘導弾や戦車砲の標的となりかねません。可能ならば軽装甲機動車の車高1.80m程度に抑えたいところですが、無理をし過ぎますと車内容積が確保できなくなり、えっか全長が大きくなってしまいます。すると四輪駆動では超堤能力に限界が生じてしまうため、妥協の産物が74式戦車の車高2.25m、としました。
この機動力は、部隊防御力にも関係してきます。トラックでの自動車化部隊のように、不整地突破能力と防御力が低すぎた場合、普通科隊員は競合地域では装甲車に依存し機動することが出来るのですが、第一線で起動不能となるような状態となれば車体毎小銃班が攻撃され全滅する可能性が出てきますので、第一線後方数kmの位置で装甲車から降車展開し、徒歩機動に写らねばならなくなります。我が国の装甲車は満州の原野シベリアの大平原、中東の砂漠地帯や豪州の大平原で戦う訳ではありませんので展開能力よりは一定の不整地突破能力と協同する部隊を暴露しない程度の大きさが求められるのです。
防御力ですが、正面部分を機関砲弾に耐え、側面に軽機関銃を至近距離で射撃された場合に耐え、車体下部は対人地雷に耐え、一定以下の対戦車地雷には乗車区画に被害が及ばない程度、砲弾落下に対して155mm級砲弾の近距離での爆発に乗員区画が破壊されない程度、NATO防弾規格STANAG 4569に換算した場合、2から3、といった防御力が求められます。これ以下では車列が軽機関銃で射撃された程度や簡易爆発物IEDで容易に爆破されてしまい、装甲車として使い物になりません。過激派の火炎瓶や手製爆弾に対抗する警察用車両ではなく、第一線での戦闘に用いる装甲車という本分を忘れてはなりません。
国際貢献任務等で考慮せねばならない、RPG等の攻撃に対処するために、防御力として追加装備に鳥籠状のスラッド装甲を追加できるよう、固定器具基部を車体に配置する必要は、在ると考えます。中空装甲を常備しても良いのですが、それでは車幅が大きくなりすぎます。また、発煙弾発射装置は対戦車ミサイルからの防御に必要な装備ですし、NBC防御能力も原子力事故などの事案に際し、避難民輸送を行う上では必要です、ただ、どちらも取得費用を上昇させてしまいますので、後日装備扱いとし、NBC防御の場合だけは車体を水密構造として外気侵入を防げる構造とし、更にハッチ部分等に応急的なNBC防御用空調装置を取り付ける事で対応できるよう、後日装備を迅速に配置できるような構造は必要でしょう。
取得費用は以上を踏まえたうえで、約2000両を中期防二期の10年から三期の15年で調達するとし、一両当たり初期生産分で4000万円程度、量産が軌道に乗った際には3500万円程度、10式戦車一両で20両の四輪駆動機動装甲車が製造できるような水準で生産されなければなりません。他方で、防衛大綱の機動運用を念頭とする文言に基づき整備するものであると位置づけ、安易な少量生産では終わらないことを財務当局と防衛産業に提示すると共に、中期防衛力整備計画に全普通科部隊への配備を念頭とした車両を装備してゆく、と明示し、第一線で使用に耐える性能に纏め、且つ活用できるように開発されるべきだ、とも考えます。
全体的には四輪駆動の装甲車ということで、他に海外製の取得性が高い車両がある、という批判があるでしょうし、ただ各国の耐爆車両が軒並み100万ドルを超える中では若干懐疑的で張りますが、また、基本設計について柔軟性を活かせる部分があまりに少なすぎるわけですのでどのように開発しても凡庸な車両として、かつて軽装甲機動車も同様の批判に、特に開発当時曝されましたが、指摘されることもあるでしょう。大きすぎれば他の装備と協同できないと批判され、小さすぎれば汎用性に欠けるとされ、どの大きさで開発したとしても大きすぎるか小さすぎるという批判は可能なわけではあります。ただ、贅沢に通常の装甲車を潤沢にそろえる予算も、それらを運用し続けるだけの基盤も現実的ではありません、四輪駆動機動装甲車はこうした中の苦肉の車両というものになるということです。
北大路機関:はるな
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